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※2025年1月17日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大 文字お越し
※紙面抜粋
※2025年1月17日 日刊ゲンダイ2面
居直り逃げ切りは絶対許されない(中居正広)、ようやくきょう会見を開くフジテレビの港浩一社長だが…(C)日刊ゲンダイ
役所や自民党政治家は動かせても外資の株主はそうはいかない。いよいよ、追い詰められた女子アナ献上テレビ局は火ダルマ、解体の運命だろう。第三者委員会をつくれば、次々と悪事が露呈しそうなジレンマにどう対応するのか、けだし見ものだ。
◇ ◇ ◇
年の瀬から列島を騒然とさせている元SMAPの中居正広の女性トラブルをめぐり、新たな動きだ。
フジテレビの編成部長A氏が性被害に遭った芸能関係者のX子さんを“上納”した疑いが取り沙汰される中、知らぬ存ぜぬを決め込んできたフジの港浩一社長が17日、会見。「視聴者、関係者に多大なご心配をおかけしていること、現在まで説明ができていなかったことについておわび申し上げる」と謝罪し、今後は第三者の弁護士を中心とした調査委員会を新たに設けるという。
ただ、会見に参加できたのはいわゆる大手メディアのみ。フジは「2月の社長定例会見を前倒しする」(企業広報部)としていて、ラジオ・テレビ記者会や東京放送記者会の加盟社に限定された。閉鎖的だ。際どい質問や厳しい追及を避けようとする意図がミエミエ。有力な芸能事務所や大物タレントに女性をアテンドする醜悪な接待文化を培ったひとりとして、港社長の名前が挙がっているのも無関係ではなさそうだ。いずれにしても、時すでに遅し。社長が何を言っても火に油を注ぐだけだろう。
中居とフジの問題が火を噴くに至った経緯はこうだ。
先月19日発売の「女性セブン」が〈中居正広 巨額解決金乗り越えた女性深刻トラブル〉と題し、中居の性加害疑惑を特報。バラエティー番組「だれかtoなかい」(放送休止)を発案するなど、公私ともに中居と近いA氏がX子さんに声をかけ、3人の会食をセットしたもののドタキャンし、密室で2人きりになった中居とX子さんの間でトラブルが起きた-――というものだった。2023年の出来事で、双方の代理人を通じた協議の結果、中居は解決金として9000万円を支払ったと報じられた。目をむく額だ。
女子アナが「私も献上された」
フジの“ドン”と呼ばれる日枝久相談役(左)は安倍晋三元首相とは昵懇の間柄、ゴルフ仲間でもあった(C)日刊ゲンダイ
後追いした「週刊文春」の「SEXスキャンダル追及」キャンペーンの内容はどぎつい。それによると、トラブルが発生したのは23年6月、中居の自宅マンション。X子さんは意に沿わない性的行為を受け、精神疾患症状に苦しみ、入院に至ったという。X子さんの知人による次の証言にはゾッとする。
「X子さんは当日の鍋の具材を見るだけで、フラッシュバックの症状が起こり、入院を余儀なくされた。彼女は皮膚科や消化器内科でも治療を受けていました」
2人きりの密室で一体何が起きたのか。X子さんは当時のアナウンス室部長だった佐々木恭子アナら、フジの管理職2人に報告。医師を交えて4人で話し合い、当時の編成制作局長にも報告されたが、幹部3人が対応に乗り出すことはなかったという。
16日発売の文春は〈中居正広 新たな被害者が爆弾告白「私もAさんに“献上”されました」〉と見出しを打ち、匿名のフジ女性アナによる告発を報じた。コロナ禍まっただ中の21年冬、「中居さんたちと飲み会をやるんだけど」というA氏側近からの連絡で都内ホテルのスイートルームに誘われ、もうひとりの女子アナと一緒にマッチングされたという。相手は中居と男性タレント。A氏が上下関係を利用し、女性を接待要員に仕立て上げたのは疑いようがない。功を立て出世、視聴率を稼いで金儲け。手段は選ばない。組織に通底する異様な独善性が浮き彫りだ。
政治的庇護、にじみ出る特権意識
この間、フジと中居の対応はシレーッとしたものだった。フジは先月27日、公式サイトで〈当該社員は会の設定を含め一切関与しておりません。会の存在自体も認識しておらず、当日、突然欠席した事実もございません〉などとするコメントを発表。中居は今月9日、個人事務所の公式サイトで文書を公表し、〈トラブルがあったことは事実です〉としながらも、〈示談が成立したことにより、今後の芸能活動についても支障なく続けられることになりました〉と居直った。
事態が動いたのは14日。「物言う株主」として知られる米投資ファンドのダルトン・インベストメンツと関連会社がフジ・メディアHDの取締役会宛てに書簡を送りつけてからだ。グループでフジ株の7%超を保有しているというダルトンは、フジの対応が透明性に欠けているなどとして、「コーポレートガバナンス(企業統治)に重大な欠陥があることを露呈している」「視聴者やスポンサーからの信頼を維持することは、会社の持続的な成長を維持するために不可欠な要素」などと指摘。「この問題をあいまいにせず、適切かつ迅速に扱う」ことを求め、第三者委員会での調査や信頼回復を要求した。すると、フジはすぐさま反応。昨年から外部の弁護士を入れ、事実関係を調査していると15日に釈明した。ホンマかいなの急展開である。
高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)はこう言う。
「報道されている内容が事実であれば、刑事事件に発展しかねない事案です。にもかかわらず、フジは1カ月にわたってスットボケていた。ようやく動きを見せ始めたのは、外資の株主によるプレッシャーのほか、フランスなどの海外で一連の問題が報じられた影響もあるでしょう。テレビ事業は放送法に基づく認定に拠って立つため、歴史的に政治と至近です。政治的庇護、在京キー局というアドバンテージ。フジのぬるさには、そうした特権意識がにじみ出ています」
フジのドンと呼ばれる日枝久取締役相談役は、安倍晋三元首相と昵懇の間柄だった。安倍の甥の岸信千世衆院議員は元フジ社員だ。
放送免許も電波も公共財
フジに限らないが、いつの間にやらテレビ局が要所要所に配置するのは粒ぞろいの女性記者ばかり。オッサン社会の永田町や霞が関ではそうした力学を働かせることができても、新自由主義の権化と言っていい外資の株主には通用しない。
「フジの株価はただでさえ、ずるずる下落しています。何の手も打たなければ、世間から隠蔽体質だと猛批判を浴びるのは目に見えている。スポンサーが離れ、企業価値が低下するリスクは高まる一方です。ダルトンが口を挟んだのは言うまでもなく、株価を上げるためですが、フジがマトモに要求に応じたら何が出てくるか分からない。先行きは極めて不透明です」(金融関係者)
追い詰められた女子アナ献上テレビ局は、いよいよ火ダルマ。腐敗堕落メディアを待ち受けているのは、解体の運命だろう。額面通りの第三者委を立ち上げれば、悪事が次々と露呈しかねないジレンマにどう対応するのか。けだし見ものだ。
立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)はこう指摘する。
「放送法は第1条で〈放送を公共の福祉に適合するように規律し、その健全な発達を図ることを目的とする〉と定めています。女性の基本的人権を侵害した疑いが濃厚なテレビ局に対し、無条件で放送免許を与えていいのか。公共財である電波を割り当て続けていいのか。政治に対し、市民側からもそうした問題提起をすべきです」
衆院総務委員会には、政治的公平をめぐって総務相時代に「停波」に言及した自民党の高市早苗前経済安保相が名を連ねている。理事を務める立憲民主党の大築紅葉議員は、元フジ記者。24日召集の通常国会で俎上に載せてもらいたいものだ。
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