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NHK放送センター本部(「Wikipedia」より/Rs1421)
NHK、受信料使い膨大な金かけた『トットてれび』への強烈な違和感…採算は度外視
http://biz-journal.jp/2016/05/post_15241.html
2016.05.26 文=木村隆志/テレビ・ドラマ解説者、コラムニスト Business Journal
初回を観て「これはすごい」と思った。ただ、ふと我に返ると、どこか釈然としない気持ちに襲われている。それが『トットてれび』(NHK)を観た印象であり、第4話を見た今でも変わっていない。
黒柳徹子役の満島ひかりはイキイキとした姿を見せているし、『あまちゃん』(同)、『64(ロクヨン)』(同)などを手がけた井上剛の演出も、リアルとけれんのほどよいところを突いている。中園ミホの脚本も、大友良英の音楽も、いわゆる手練れの仕事。60年前のテレビを再現した番組や歌に、懐かしさを覚える人もいるだろう。
とりわけ目を引くのは、テレビ撮影やラジオ収録を再現した美術。NHK放送博物館に収蔵されているテレビカメラのレプリカを何台もつくったほか、セットや照明、俳優やスタッフの服装など、映るかどうかわからないような隅々まで再現しているという。加えて、当時のスタッフに現場の雰囲気や道具の使い方を監修・指導してもらうという徹底ぶりだ。
60年前の番組映像と新たに撮影した映像をオーバーラップさせたり、遊び心のあるCGを入れたり、とにかく「凝っている」「こだわっている」のは誰が見てもわかる。ただ、凝るほどに、こだわるほどに、“連ドラ”というよりも“美術作品”のイメージが色濃くなり、気になるのは人間の物語よりも当時の再現度。そして、こちらの感情は“ある方向”に向けて冷めていく……。
■民放では考えられない、NHKの金銭感覚
そもそも、これほどこだわったものが制作できるのは、「予算と時間たっぷり」のNHKにしかできない力技。『トットてれび』は1本30分弱、全7話のドラマにすぎず、民放なら間違いなく半分以下の予算と時間しか与えられない。いわば、民放では考えられない、「赤字間違いなし」のコスパが悪いドラマなのだ。
民放より予算と時間にゆとりがあるのは、我々が払う受信料がなせる業。実際、NHKの『平成28年度 収支予算と事業計画』を見ると、事業収入7016億円のうち、そのほとんどにあたる6758億円(約96%)を受信料が占めている。
さらに、事業支出6936億円のうち、「国内放送番組の制作と送出」が5279億円(約76%)。なかでも『トットてれび』が放送されている総合チャンネルは、2856億円(約41%)ものお金がかけられているのだ。
NHKは全国放送などの点から、民放との比較は難しいところもあるが、これまで何度となく「倍以上のお金や人がかけられている」という、いわば“疑惑”が浮上していたのも事実。
くしくも、舛添要一・東京都知事が政治資金に関する疑惑に対して「第三者の厳しい目で精査してもらう」というフレーズを繰り返して非難を受けているが、『トットてれび』を観ると、「NHKにも、第三者の厳しい目が必要なのではないか?」と思ってしまうのだ。
『トットてれび』を観て、「これぞ、受信料を払っても観たいドラマ」と感じる人がいるかもしれない。基本的に個別番組の制作に関する予算や時間は公表されないが、もし、実際の制作費やコスパが明らかになった時、そう言えるのだろうか?
■民放は「やりたい放題でズルい」としらけムード
いまだ膨大なお金と時間をかけ、しかも「視聴率をとらなければいけない」というプレッシャーも、スポンサーの顔色をうかがうこともない。そんなNHKのドラマに、民放のドラマ班スタッフたちは「やりたい放題」「ズルいよね」としらけている。
ある民放のドラマプロデューサーは、「小学生の頃、お金持ちのクラスメイトが新しい文房具やおもちゃをそろえて取り巻きを集めていたのと、同じような感覚」と苦笑いで話してくれた。つまり、「指をくわえて見ているしかない」という状況なのだろう。
NHKの予算と時間、それに伴う豪華なキャストやスタッフ、入念なリハーサル。少なくとも、「同じ予算と時間をもらえたら、間違いなく同程度以上のものをつくれる」という口惜しさを抱えているのだ。
「NHKは、朝ドラが成功しているからいいでしょ」という声があるかもしれないが、こちらも例外に漏れず、予算と時間は民放とは比較にならないほど潤沢。「1話あたり4回以上全国放送する」という、CSのような余裕ある編成もNHKにしかできないものであり、多くの点で圧倒的優位な立場にいる。
『トットてれび』の番組ホームページには、「NHKが本気を出して60年前のテレビを作ってみた!」と自信満々に書かれているが、圧倒的優位な立場にいる以上、「その姿勢は素晴らしい」と言いづらいのだ。
■受信料を集めて「自由で破天荒」をうたう、NHKのキレイごと
黒柳徹子さんの自伝エッセイが原作だけに、『トットてれび』のキャッチコピーは「世の中なんだか、徹子さんが足りない」。これは、「“黒柳徹子=自由で破天荒”のイメージであり、それこそが現在のテレビ業界や番組に足りないもの」という意味だろう。
BPO(放送倫理・番組向上機構)、コンプライアンス、インターネット上のクレームを過剰に意識した自主規制。さらに、視聴率に一喜一憂するあまり、民放各局は“お行儀のいい、似たような番組”ばかりになっているのは間違いない。
しかし、予算・時間・視聴率の心配が少ないNHKがそれを言うのは、あまりにキレイごとすぎるような気がするのだ。その予算や時間が、我々視聴者の受信料から得ているものだけに、私には黒柳徹子や『トットてれび』より、NHKそのもののほうが自由で破天荒に見える。
視聴率は、初回から10.1%(関東地区、ビデオリサーチ調べ/以下同)、11.2%、9.4%、8.7%と、「土曜20時15分からの放送」というドラマ視聴習慣のないイレギュラーな時間帯にしては好調。しかし、スタッフたちは、視聴率などにそれほど一喜一憂していないのではないか。
『トットてれび』を観ていると、「数字うんぬんよりも、いい作品にしよう」という、彼らの強烈な自尊心を感じてしまう。だから、私は「ドラマというより、NHK放送博物館の収蔵品が動き出したようなアート作品」という感覚で観ていて、それはそれですごいとも思うが、やはり「お金持ちのやりたい放題」という印象を拭えずにいる。
(文=木村隆志/テレビ・ドラマ解説者、コラムニスト)
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