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「認知症になっても楽しく暮らすことができる」と話す丹野智文さん
39歳でアルツハイマー 診断後も幸せで居続けられた理由〈dot.〉
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170526-00000093-sasahi-hlth
AERA dot. 5/28(日) 7:00配信
認知症になると何もできない、もう終わりだ――なんて思っていないだろうか。答えは否、だ。39歳のときにアルツハイマー型認知症と診断された仙台市の丹野智文(ともふみ)さん(43)は、今も仕事を続け、妻や子どもたちとともに幸せな日々を送っている。病気とつきあい、ともに歩みながら、診断後も幸せでい続けられる理由とは何なのだろうか。本人のメッセージをお届けする。
* * *
私は39歳の時に若年性アルツハイマー型認知症と診断されました。営業の仕事をしていましたが、その5年ほど前から人より物覚えが悪いなと感じ、それまでは手帳に予定を記入していましたが、ノートに変更し、仕事の内容を書くようにしました。
ある日、毎日顔を合わせているスタッフの名前も出てこなくなり、声をかけたくてもかけられなくなりました。おかしいと感じ、病院へ行きました。大学病院で詳しい検査をした結果、アルツハイマーだと診断を受けました。妻と一緒に医師の話を聞きましたが、その時には心配をかけたくないと思い、平然とした顔でいました。妻は泣いていました。
■「認知症=人生の終わり」だと思っていた
自分一人になると目から涙がこぼれてきました。私の中で「アルツハイマー=終わり」だと思いました。病気の事で頭が一杯になり、不安で夜は眠れませんでした。病気のことをインターネットで調べると、悪い情報ばかりが目につきました。調べれば調べるほど絶望を感じていきました。
ある日、「認知症の人と家族の会」というものがあるのを知り、集いに参加しました。私より前に不安を乗り越えた認知症当事者との出会いにより、10年たっても元気でいられることを知り、少しずつ不安が解消され、「認知症=終わり」ではないことに気付きました。私が選んだのは認知症になったことを悔やむのではなく、認知症と共に生きるという道です。
■勤務先の社長が言った言葉は「長く働ける環境をつくるから」
アルツハイマーとわかった後、妻と二人で職場の社長と上司に診断内容を話しました。社長は「長く働ける環境を作ってあげるから」とおっしゃり、会社の理解のもと、今も事務の仕事を続けています。
生活していて困った事は、認知症当事者だと誰も気がつかない事です。初期の認知症の人は、見た目には普通の人と何も変わりがないからです。普通に物事も頼まれますが、出来ないこともあり、そうするとすべてが嫌になってしまいます。
そこで、私は病気を周りにオープンにしようと思いました。病気とわかってもらうことで、サポートをしてもらえ支えてくれる人がたくさんいる事を知ったからです。
そう思うまでには葛藤がありました。まだまだ偏見を持っている人が多いからです。家族に迷惑がかかるのではないか、子供達がいじめられたりしないかなども考えました。ある日、両親に相談したら「何も悪いことをしているのではないのだから私達のことは気にしないで自分の思うようにオープンにしなさい」と言われました。子供達にも、もしかしたら友達に知られるかもしれないよと話をすると「パパは良いことをしているのだからいいんじゃない」と言ってくれました。
■人生は認知症になっても新しく作れる
病気をオープンにすることでサポートや支援を受けられるようになります。私は認知症になっても周りの環境さえよければ笑顔で楽しく過ごせることを知りました。認知症と診断された後は、環境が一番大切だと感じています。
できることを奪わないで下さい。時間はかかるかもしれませんが待ってあげて下さい。一回出来なくても次、出来るかもと信じてあげて下さい。そして出来た時には当事者は自信を持ちます。失敗しながらも自信をもって行動する、周りの人は失敗しても怒らない、行動を奪わない事が気持ちを安定させ進行を遅らせるのだと思います。失敗しても怒られない環境が認知症当事者には必要なのです。
病気になった時、最初の一歩を踏み出すのは大変なことでしたが、踏み出すことにより人生が変わり、多くの認知症とかかわる人と知り合うことができました。私自身、これからの暮らしに対し安心することができ、進行も遅くなっていくような気がしています。
認知症になったら、当事者や家族は、どうしても認知症になる前の姿を追い求めてしまい、出来なくなることを受け入れることができません。今までとは違う姿を見せたくないと思っている家族も多くいます。今までのようにはいかないと受け入れる勇気が必要だと私は感じています。出来なくなった事を受け入れ、よい意味であきらめる事で、できることを楽しんで生活するようになった全国にいる私の仲間たちは、とても輝いています。
認知症と診断されることを恐れて病院へ行きたがらない人が多くいます。楽しい「人生の再構築」をする為にも早期診断、支援とのつながり、社会参加が必要で異変を感じたら早く、病院や相談窓口へ行ってほしいと思います。
人生は認知症になっても新しく作ることが出来るのです。認知症は、けっしてはずかしい病気ではありません。誰でもなりえる、ただの病気です。これからますます増えてくる認知症、みなさんもいつなるかわかりません。ぜひ、みんなで支えあう社会を作りましょう。私も認知症ですが、同じ認知症の仲間を支えていきたいと思っています。
*4月に京都で行われた国際アルツハイマー病協会国際会議で丹野さんが発表されたものを、本人の許可を得て編集部で再構成しました
(構成/平井啓子)
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