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【第21回】 2017年3月17日 木原洋美 [医療ジャーナリスト]
謎の皮膚病が妻の手に、「主婦湿疹」ってなんだ
※写真はイメージです
もしや感染症?
痛痒い水泡出現
「うわっ何これ、気持ち悪ーい」
静江さん(仮名・36歳)は小さく叫んでしまった。指や手のひらに、痛痒くて小さなプツプツができていた。熱く、ヒリヒリするような感覚もある。そういえば1週間くらい前から、右手の指の腹がやけに乾燥して、嫌な感じがあった。よく見ると、細かくひび割れ縦縞が入っている。傷というほどではないが割れてしまっているようだった。
冬の間せっせと使ってきた保湿クリームを多めに塗ってみたが効果はなかった。特に変わったことは何もしていない。シャンプーもリンスも食器洗い洗剤も、いつもの通りだ。今までに、手荒れで悩んだことは一度もない。
(だからきっとすぐよくなる)
と思っていたのに症状は左手にも広がり、ついにプツプツまでできてしまった。
夫の昭信さん(仮名・42歳)に見せると、やはり、
「うわっ、地味に気持ち悪いね。なんか感染する病気っぽいよね。痛痒そう。あっちこっち触らないでさ、すぐ病院に行った方がいいよ」
顏をしかめて後ずさる。
(ひどいわ、そんな気持ち悪そうにしなくても)
内心ムッとしつつも、静江さんは皮膚科に駆け込んだ。
「原因は乾燥」?
ストレス・疲労も影響する
手に小さなプツプツができて、痛かったり痒かったりする病気で、静江さんがなりそうなのは3つ。
1つは「掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)」。特に手のひらの手首に近い部分に赤い斑点や小さな水泡、潰すと膿が出るブツブツなどができ、フケのように皮膚が剥がれ落ちたりする。
2つ目は、手白癬(てはくせん)。簡単にいえば、「手の水虫」だ。カユミはなく、あったとしても強くない。水仕事の多い職業の人がなりやすい。
そして、3つ目は「主婦湿疹」。ざっくり言うと「重度の手荒れ」だ。
「乾燥型」と「湿潤型」、「混合型」があり、乾燥型は皮膚がカサカサして、ひどくなるとひび割れが生じる、指紋が消える、皮膚が硬くなるなどの症状が出る。利き手の親指、人さし指、中指などよく使う指先から症状がはじまり、次第に手のひら全体に広がっていく。
一方、湿潤型は指の腹や手のひら、手の甲に、小さな発疹や水ぶくれができる。混合型は、乾燥型と湿潤型が混在したタイプだ。
いずれにせよ炎症が起きているため、かゆみ・傷み・赤み・かぶれ・皮むけなどの症状が出る。
ネットで調べた静江さんは、(「手白癬」だけはヤダなぁ、水虫ってのはねぇ)と思いつつ、診断を待った。
「いわゆる主婦湿疹ですね、主婦の方に多い病気です」
女性医師は微笑みながら、次のように教えてくれた。
「原因は乾燥です。手の表面にある皮脂膜が、お湯や洗剤を使った水仕事によって過剰に洗い流されることがきっかけで起こります。皮脂膜は、天然のバリアです。手湿疹とも呼ばれ、特に主婦の方、飲食店員、美容師、事務職員など、手仕事をされる方にできやすい傾向があります」
「そうなんですか。でも特に洗い過ぎたりして乾燥させた記憶はないんですけど、どうして今回に限って発症してしまったんでしょうか」
率直な疑問を口にすると……。
「そうですね、体調が悪かったんじゃないですか。乾燥が原因といっても、どうして乾燥するのかはよく分かっていません。ストレスや疲労で、体全体のバリア機能が弱っている時は、普段と同じ条件でも、身体が敏感に反応してしまうことがあるので、そのせいかもしれませんね。ですから今日は、保湿効果のある軟膏と、腫れカユミを鎮めるステロイド系の軟膏をお出しします。
ステロイドは怖いとおっしゃる方がいますが、使用法を守ってくだされば問題ありません。軟膏は手全体に、べたつきがなくなるまで、優しく擦りこんでくださいね。特に指の股のところは入念に塗ってください。あとは、手はできるだけ休ませてください。水仕事をなさるときはゴム手袋をしたほうがいいですよ。正式な病名は接触性皮膚炎といいまして、手に刺激を与えるのはよくないんです。といっても、主婦業は休めないですよね。根気よく治しましょう」
話し終わると医師は、静江さんの手に丁寧に軟膏を擦りこみ、「こうした方が早く治りますから」と包帯でぐるぐる巻きにしてしまった。
休もうにも休めない
ついに「発熱」も
「なんか大袈裟だなぁ」
静江さんは、痛々しい見かけになった手を隠すようにして保育園に子どもたちのお迎えに向かった。
長男は5歳。昨年生まれた長女はまだ1歳になったばかりだ。
「おかあさん、どうしたの。お手手痛いの。大丈夫」
案の定、息子は目を丸くして尋ねてきた。お母さん子の甘えん坊だけに、今にも泣きだしそうだ。いつもは必ず手をつなぐのに、「大丈夫だから」と言っても、怖がってつながない。
静江さんも、息子には「大丈夫」と言ったが、昭信さんに対しては「もう大変なの。手は使っちゃいけないんですって」と大袈裟に報告した。
「わかったよ、食器洗いと洗濯は僕に任せて。明日の夕食は外食にしようか」との協力を取り付けた。内心、(そこまでしてもらうほど重症ではないんだけど)と思いつつ……。
しかし、思ったよりも主婦湿疹はやっかいだった。
2日間ほどは夫に水仕事を頼み、極力手を休めていられたが、それ以上は無理だ。包帯ぐるぐる巻きで仕事に行くわけにはいかないし、育児も家事も実際問題、待ったなしの状態だ。
仕事には100円ショップでまとめ買いした白い手袋、水仕事にはゴム手袋着用した。
「手タレ(手の撮影専門のモデル)みたいでしょ」と冗談めかして笑ってはみたものの、症状は進行しているように見える。
プツプツの水泡ができていたところは全部皮が剥けてしまった。しかも、なんだか全身が熱っぽい。
厳密には「原因不明」
産後の肥立ちも関与?
実は静江さん、長女を産んだ後、1ヵ月から2ヵ月に1回ずつ風邪をひき、38度以上の発熱で内科を受診していた。
その日も保育園に迎えに行く前にクリニックに寄り、主婦湿疹の件も伝えると、主治医は心配そうにこう言った。
「身体が弱っているんですね。普通は38度以上の発熱なんて、年1回ぐらいです。でもあなたの場合、この1年、ほぼ毎月です。いわゆる“産後の肥立ち”がよくないんじゃないでしょうか。何か積極的な健康対策をしてみたほうがいいと思いますよ。湿疹も、少なからず関係しているはずです。実のところ、主婦湿疹とかは、いろいろと原因はいわれているものの、はっきりしたところは不明ですからね」
言われてみれば、確かに……。
腑に落ちた静江さんはさっそく薬局に行き、薬剤師に相談した。そして、薬剤師に勧められた漢方薬と「未病に効く」という生薬のお酒を飲み始めた。
もちろん皮膚科でもらった塗り薬も地道に使用していたところ、症状は文字通り「薄紙を剥ぐように」改善し始めた。気がつくと手はすっかりキレイになっていたし、月1回の発熱もなくなった。
諸々の薬が効いたから治ったのか、自然に回復したのかはわからない。ただ、体調がいいのは確かだ。出産は女性の身体に、思っている以上のインパクトを与えるようだ。
「僕たちも、年齢的には中年世代。気持ちは若くても、肉体的にはもう若くはないと自覚しなさいってことなんじゃないかな。子どもたちのためにも、健康に気を使って、自分の身体を大切にしないといけないね」
静江さんも昭信さんも、しみじみそう感じている。
(医療ジャーナリスト 木原洋美)
http://diamond.jp/articles/-/121591
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