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脳トレの効果は限定的？ 心理学者が指摘
脳全体の認識機能改善に役立っていない可能性も
ポジット・サイエンス社の脳トレゲーム「ダブルディシジョン」の上級レベルの一場面。プレーヤーは多くの障害物の中でルート66の標識の位置を見つけないといけない
By SUMATHI REDDY
2016 年 10 月 12 日 13:41 JST
脳全体の認識機能を改善できるとされるコンピューターの脳トレーニング（脳トレ）やゲームは、実際にはプレーする特定のゲームをうまくこなすことにしか役立っていない可能性がある。
これは学術誌「サイコロジカル・サイエンス・イン・ザ・パブリック・インタレスト」で先週発表されたレビュー論文の結論だ。400件近くの脳トレ調査を幅広く評価した結果、介入（脳への働きかけ）を受けるグループと介入を受けないグループ（対照群）を比較する際に科学的なベストプラクティス（最善慣行）に従っていた調査が1件もなかったという。
「こうした種類の介入が現実世界における改善の客観的測定につながることを示す有力な証拠はないことが分かった」。レビューの筆頭著者でイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校の教授（心理学）のダニエル・シモンズ氏はこう述べた。
一般的な脳トレに含まれるタスクは、処理スピードや記憶など特定の知的能力を向上させるために設計されている。ポジット・サイエンスやルモス・ラブスといった企業は、認知症を食い止めるなどの大胆な宣伝文句で製品を売り出している。レビューに引用された市場調査データによると、消費者は2013年、脳トレ用ソフトに3億2200万ドル（約330億円）を費やしたという。
ルモス・ラブスは今年、米連邦取引委員会（FTC）が起こした虚偽広告訴訟の和解金として200万ドルを支払った。FTCは、ルモス・ラブスが同社の脳トレプログラム「ルモシティ（Lumosity）」で年齢に伴う認識機能の衰えが防げるという虚偽の宣伝を行ったと主張していた。
ポジット・サイエンス社の脳トレゲーム「ダブルディシジョン」の一場面。プレーヤーは2台の青い車を見分けないといけない ENLARGE
ポジット・サイエンス社の脳トレゲーム「ダブルディシジョン」の一場面。プレーヤーは2台の青い車を見分けないといけない PHOTO: POSIT SCIENCE
心理学者7人が参加した今回のレビューに対し、ポジット・サイエンスの神経科学者たちは反論した。同社の製品は調査の多くで利用されている。ヘンリー・マンキ最高経営責任者（CEO）は「これは伝統的な心理学と神経科学との間の、学問的な境界を巡る論議だ。われわれ神経科学者は30年かけて脳の可塑性（柔軟性）が本物であることを発見した。脳の構造と機能を再編成することはできる」と述べた。
レビューの筆頭著者であるシモンズ氏によると、調査の一部は規模が小さすぎるか、研究基準に満たない統計分析手法しか用いられていなかった。一部の調査では並行介入を与えられていなかったか、脳トレ介入と十分に合致しないタスクをこなす対照群を利用していた。シモンズ氏は、調査が現実世界における成果を評価する時、客観的に測定されたというよりも主観的で自己申告的な結果となることが多かったとも付け加えた。レビューでは2015年末までに実施された調査を対象としている。
また、調査結果にはプラセボ効果（偽薬効果）が影響した可能性もある。数時間の脳トレを終えると、被験者には「何が改善されるべきで、何が改善されるべきでないかに対する期待が形成され、それが結果に影響する可能性がある」と、シモンズ氏は指摘する。脳トレ療法が効果的であることを証明するためには、介入調査で対照群が活動しており、実際に介入を受けているグループの期待と動機に合致する行動を取っている必要があるという。
シモンズ氏は脳トレに価値がないとは言わず、「楽しむためだけにゲームをしているのなら、いいのでは」と述べた。
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http://jp.wsj.com/articles/SB10300543608222564163304582369002955532524?mod=wsj_nview_latest
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