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カルシウム摂取、骨折リスク低減と無関係…サプリは死亡リスク増大、骨粗鬆症への誤解
http://biz-journal.jp/2016/10/post_16810.html
2016.10.04 文=石原藤樹/北品川藤クリニック院長 Business Journal
寝たきりにならずに健康的に年を取ることは、誰でも一番に願う年の重ね方です。寝たきりになる大きな原因のひとつは、骨折をすることです。
骨折の原因はなんでしょうか?
それは骨が外の力に対して弱くなることと、転ぶことです。このように病的に骨折をしやすくなった状態のことを、医学用語で「骨粗鬆症」と呼んでいます。
そうはいっても、年齢と共に誰でも骨は弱くなりますし、体力の衰えから転びやすくもなりますから、どこまでが正常の加齢の範囲で、どこからが病的なのかというのは、難しい判断になり、まだはっきりと結論が出ているわけではありません。骨がスカスカの状態になっているかどうかは、レントゲンで判断が可能なのですが、数値化するのは難しく、あまり客観的ではありません。
そこで登場するのが「骨密度」という検査です。皆さんも「骨粗鬆症の検査」として、受けられたことがあるかもしれません。市町村の健診などでも行われています。
骨密度(骨塩量)というのは、骨の成分の主体であるカルシウムやリンなどのミネラルの量のことです。基本となるのはレントゲンの検査で、骨は筋肉や脂肪などの他の組織と比べて、レントゲン(放射線)の吸収率が違うことを利用して、「大体このくらいの量のミネラルが含まれている」という単位当たりの量を計算して数値化したものです。
年齢と共に骨がスカスカになると、当然そこに含まれているミネラルも減っています。そんなわけで、このミネラルの量を測定することにより、骨折の危険性を推定しているのです。骨密度がある基準より低くなると、骨粗鬆症と診断されます。
そもそもは骨粗鬆症とは骨折になりやすい状態のことですが、それを骨密度という指標で診断するようになったので、骨粗鬆症予防と骨折予防という本来は同じ目標が、微妙に違うのが実際です。
骨量が維持されていれば、骨粗鬆症予防に有効、ということになるのですが、転びやすい人はそれでも骨折してしまいますから、骨量の維持と骨折予防とは意味が違うのです。
私たちにとって重要なことは、骨粗鬆症という病気の予防ではなく、寝たきりの原因となる骨折の予防です。その点を間違えないようにしないといけません。
■骨粗鬆症の予防にはカルシウムを摂ればよいのか?
骨粗鬆症の予防には、カルシウムを摂ることが一般的には推奨されています。骨というのは決してカルシウムだけでできているわけではありませんが、主成分がカルシウム塩であることは間違いがなく、そのためカルシウムが欠乏すると骨粗鬆症になり、カルシウムをたくさん摂取することで、骨粗鬆症やそれに伴う骨折が予防できると、広く信じられてきました。
疫学データからの推測では、高齢者においては1日1000ミリグラムから1200ミリグラムのカルシウムを摂ることが、骨の健康と骨折予防のために、世界的に推奨されています。
しかし、実際には欧米でも食事からのカルシウム量の平均は、1日700から900ミリグラム程度で、日本を含むアジアやアフリカでは、もっと低いことが知られています。そのため、カルシウムやその吸収を高めるビタミンDが、サプリメントとして広く使用されています。
ところが、実際にはカルシウムの摂取量と健康との関連性が、精度の高い臨床試験で証明されている、ということはありません。それどころか、2013年に「British Medical Journal」という医学誌に発表された論文によると、1日量で1400ミリグラムを超えるカルシウムのサプリメントの使用により、心血管疾患による死亡リスクの増加や、総死亡のリスクの増加が報告されています。サプリメントのカルシウムが健康に悪いという、ビックリするような結果です。
こうした知見があるので、最近のガイドラインでは、食事からのカルシウムの摂取は1200ミリグラム以上を目標とするけれど、サプリメントの使用自体は推奨しないという流れになっています。
■カルシウムは骨折予防には効果がない(高度の不足の場合を除く)
そもそもカルシウムを多く摂ることは、本当に骨折予防に有効なのでしょうか?
カルシウムは骨の材料ではありますが、口から摂取したカルシウムが効率よく骨に取り込まれるという保証は、どこにもありません。高齢者ではむしろ動脈硬化や炎症などの部位にカルシウムが沈着して、病気の原因となることが知られています。
15年の「British Medical Journal」に、ニュージーランドの研究者によって過去に行われた主だったこの分野の臨床研究をまとめて解析し、食事のカルシウムと骨折リスクとの関連、そしてサプリメントとしてのカルシウムと骨折リスクとの関連を、トータルに検証した論文が発表されています。
食事によるカルシウムの摂取量と骨折リスクとの関連を検証した、50以上の臨床データをチェックしたところ、その大部分では骨折リスクとカルシウム摂取量との間に、有意な関連は認められませんでした。
カルシウムのサプリメントを使用した、介入試験と呼ばれる精度の高い26の臨床試験をまとめて検証したところ、トータルな骨折リスクはサプリメントにより、有意に11%低下し、脊椎の骨折リスクも14%も有意な低下が認められましたが、股関節や前腕の骨折のリスクには、有意な低下は認められませんでした。ただし、より精度が高く、バイアスの少ないデータに絞って再検討すると、サプリメントによる骨折予防効果も有意には認められなくなってしまいました。
要するに、これまでの臨床データからわかることは、食事からカルシウムをたくさん摂っても、それほど摂らなくても、それで骨折が予防されたり、リスクが上がったりすることは、どうやらないと考えたほうがよいということです。
もちろん、カルシウムに高度の欠乏があれば、それは骨のみならず全身の健康に影響を与えることは間違いがなく、そうした場合の補充には効果が期待できますが、カルシウムの摂取量が許容範囲で多めでも少なめでも、あまり差がない可能性が高いのです。
そして、サプリメントとして比較的大量のカルシウムを摂ったり、ビタミンD【25(OH)D】を併用すると、骨折リスクはやや低下する可能性がありますが、それほど明確な差ではなく、かつ過剰摂取のリスクもあるので、こちらもそれほど推奨されるような行為ではなさそうです。
■骨折予防のための生活習慣とは?
それでは骨の健康を守るには、どうすればよいか、ということになります。適度な運動の習慣と充分な睡眠、カルシウムは適度な摂取を心掛け、あまり神経質にはならず、50歳を超えたら一度は骨密度を測定して、その後のプランを建てることが肝要のように思います。
カルシウムの不足が疑われる場合には、カルシウム自体の補充より、ビタミンDの補充のほうが有効だと考えられます。低栄養は骨も脆くするので、たんぱく質を充分に摂ることが骨の健康のためには必要です。過度のアルコールは骨の形成を抑えるので骨粗鬆症を進行させます。この場合の適度というのは、概ね1日3合を超えるような飲酒です。喫煙は骨の形成を抑え、女性では早期の閉経に結びつきやすいので、骨にもよくありません。禁煙が骨のためにも推奨されます。
骨折予防のためには、このように一般に健康的とされている生活習慣が、実はもっとも効果的なのです。それでも、病的な骨折をしたり、骨密度が急激に低下するような時は、骨粗鬆症という病気が疑われるので、医療機関において治療を受けることが必要です。
皆さんも正しい知識を身に着けて、骨折を予防するようにしてください。
(文=石原藤樹/北品川藤クリニック院長)
【参考文献】
1.Michaelsson K, Melhus H, Lemming EW, et al. Long term calcium intake and rates of all cause and cardiovascular mortality: community based prospective longitudinal cohort study. BMJ 2013; 346: f228.
2.Bolland MJ, Leung W, Tai V, et al. Calcium intake and risk of fracture: systematic review. BMJ 2015; 351: h4580.
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