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気をつけろ!60すぎたら、歯をみがいてはいけない ゴシゴシやると、なんと寝たきりの原因に
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49761
2016.10.01 週刊現代
長寿大国ニッポン。しかし他国に比べ、「歯」がボロボロな高齢者が多いという。人生を最後まで楽しく過ごすためには、歯の健康が必要不可欠。臨床歯科の第一人者が正しいケアの方法を語る。
■アルツハイマーも進行する
「寝たきり」になる原因が、実は「歯」にある。こう言うと驚かれるのですが、日本にいま100万人以上の寝たきりの人がいるのは、多くの人が誤った歯みがき習慣を身につけていることが大きな原因であると私は考えています。
実は、一日3回の「食後の歯みがき」が、歯や歯ぐきにダメージを与え続け、歯の喪失だけではなく、ひいては全身疾患のリスクを高め、深刻化すれば寝たきりになってしまうのです。
「歯みがきをまめにする」というのは、子どもの頃から教え込まれてきた「大常識」のように思える。口臭や虫歯を防ぐために、歯ブラシで歯や舌を丹念にブラッシングする。しかし、『歯はみがいてはいけない』(講談社+α新書)の著者である京都・竹屋町森歯科クリニックの森昭院長は、それは「大きな誤解」だと指摘する。
口の中には約100億もの細菌がいて、口内状態が悪い人だとその数は1兆を超えます。
そのなかのひとつがいわゆる「虫歯菌」で、歯の表面を溶かし、虫歯を作るものです。この虫歯菌以上に恐ろしいのは、歯と歯ぐきの間に入り込んで炎症を起こす「歯周病菌」です。
歯周病菌は口内の毛細血管を通じて血管内に侵入します。その一部は血管壁で炎症を引き起こし、最終的には血栓を作る原因となります。この血栓が、脳卒中や心筋梗塞といった、重篤な疾患を引き起こすのです。
さらに、歯周病菌は肥満や糖尿病と深い関係があることも明らかになっています。歯ぐきの炎症から産生される物質が、肝臓に脂肪を沈着させ、脂肪肝や肥満を引き起こす。また、血糖値を下げるインスリンの働きを阻害し、その結果糖尿病になるという仕組みです。
加えて、最近の研究では、歯周病菌がアルツハイマーの進行を早めるという結果もあります。歯の本数が減ると噛む力が弱くなり、認知能力が衰えることは以前から言われていますが、歯周病菌自体も認知能力に直接影響を与えるのです。
脳卒中に糖尿病、そしてアルツハイマーといえば、重篤化すれば寝たきりになるリスクが高くなる恐ろしい病である。歯周病菌を甘く見ると、人生を棒にふる可能性が高まるのだ。それならば一刻も早く歯ブラシでそれらを「除去」したいと思ってしまうが、そこが落とし穴。下手に歯をみがくと「命の危険に繋がるリスクすらある」と森氏は指摘する。
歯ブラシに歯みがき粉を付け、ゴシゴシと歯をみがく。できれば毎食後すぐ、1日3回する。これを「理想の歯みがき」と思っている人は多いでしょうが、これは「大間違い」なのです。
■市販の歯みがき粉は使うな
歯や歯ぐきに粘着するプラーク(歯垢)と呼ばれる物質を除去することが、口内ケアではなによりも重要です。なぜなら、このプラークが、脳卒中などの重大な疾患の引き金となる歯周病の原因となるからです。
ところが、多くの人はこのプラークの存在をまったくと言っていいほど意識せず、「虫歯にならないために」、口内にこびりついた「食べかす」を歯みがきで落とすことに躍起になっています。
確かに、歯みがきで「食べかす」を落とすことはできますが、プラークの除去という意味では不十分です。それどころか、歯にとって恐ろしいデメリットもあるのです。
そのひとつは、歯みがきで「歯が削れてしまう」ことです。歯は食事をしたあと、リンやカルシウムが唾液に溶け出し「軟らかく」なります。そのとき歯ブラシの毛先が当たると、歯が削れて知覚過敏になります。
多くの人は、歯みがきの時にしみるような痛みを感じると、「虫歯なのでは」と疑い、より強く歯をみがくようになります。これは逆効果で、強くみがけばみがくほど、歯は削られていくのです。人によっては、歯の根元が楔状にえぐれてしまうこともあります。
さらに問題なのは、食後すぐの歯みがきにより、唾液が持つ効能を得られなくなることです。
実は唾液には、食後軟らかくなった歯の表面を修復する働きがあります。また、唾液には強い抗菌作用があり、歯周病菌をはじめとする口内細菌を除去する役割があります。
食後は、食物を消化するために最も多く唾液が分泌される瞬間です。それを、歯みがき粉とともに洗い流して吐き出してしまうのが「食後の歯みがき」なのです。
中高年から高齢者の人は、特に歯みがきには気を付けたほうがよいでしょう。というのも、年を取るにつれて、人の唾液の分泌量は少なくなっていくからです。また、歯や歯ぐきもかなり弱っているので、強いブラッシングで歯が傷つくリスクが高くなっているのです。
他にも、誤った歯みがきの習慣は多くあります。
まず、1ヵ月以上使っている歯ブラシは、雑菌が繁殖していて、バイ菌でみがいているのも同様なので捨てるべきです。また、市販の歯みがき粉は、よく泡立って歯ブラシの毛先が歯にきちんと当たっているか確認できず、歯の表面をツルツルにして「みがけた感」を出すため、プラークの危険に気づかなくなるので使う必要がありません。
あと、「研磨剤入りの歯みがき粉」は歯を傷つけるリスクを増大させるので危険です。研磨剤入りのものは、確かに歯の表面の汚れを落としますが、同時に歯の表層にある白いエナメル質を削ってしまいます。エナメル質が削れると、象牙質という黄色い層が露になります。すなわち、研磨剤を長期的に使うと歯が黄色くなるのです。
■大切なのは唾液の量
それに加えて、歯と歯ぐきの間の部分にも悪影響を与えます。ここは非常に弱い酸でも溶けてしまいます。特に高齢者は、歯周病が進行している人が多く、さらにこの部分が弱っています。そこを研磨剤でみがくというのは、あえて傷をつける「自殺行為」なのです。
食後の歯みがきは歯周病の予防になるどころか、歯や歯ぐきを傷つける。しかも口内環境を整えるはずの唾液を洗い流してしまい、逆効果だと言う森氏。では、正しい口内ケアはどのようにするべきなのか。
殺菌作用のある「唾液」をたくさん出すことが重要です。唾液は、頬を押したり、舌を動かしたりすることで分泌を促すことができます。
右回りと左回りを10回ずつ毎食後に行う
私が患者さんにオススメしているのは、「舌回し」と呼んでいる運動です。口を閉じ、歯ぐきに沿って、舌を左右回り両方にぐるぐると回します(上図参照)。
高齢者の方にこの「舌回し」をしてもらうと、「首が痛くなった」と訴える人が多いのですが、これは舌を動かす筋肉が弱っている証拠です。寝たきりになってしまう人たちの多くは、うまく舌を使えず、食事に大きな問題を抱えています。舌を動かすことは、歯周病予防と併せて、二重の意味で健康寿命を延ばす方法なのです。
また、唾液を歯面に効率的に届けるために、デンタルフロスや歯間ブラシを使用して、歯の間にあるプラークを除去し、唾液の通り道を作ることが大切です。
日本ではこれらの器具はあくまで「歯ブラシの補助」と思われがちですが、実は歯ブラシよりもこれらの器具のほうが、プラーク除去率は高い。もし、歯ブラシを使うのであれば、寝る寸前、および起きてすぐ、「唾液」でみがくのが最も効果的です。なぜなら、寝ているときにいちばん菌が口内で繁殖するからです。
正しい口内ケアをすることは、健康寿命を延ばすことに直結します。日本には、まだその意識が足りないのです。
「週刊現代」2016年9月24日・10月1日合併号より
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