http://www.asyura2.com/16/hasan117/msg/897.html
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田嶋智太郎の外国為替攻略法
2017年01月18日
調整ムードが色濃いドル円の行方
前回更新分で想定したとおり、目下のドル/円は一時調整の局面に突入しており、昨年11月以降にスタートしたトランプ相場は、ここで一旦"壁"にぶつかるような状況となっています。下図にも見られるように、今週16日から17日にかけてドル/円には一目均衡表の日足の「遅行線」が日々線を下抜ける『逆転』の現象が生じており、結果的に「暫くの間は調整含みの展開を続ける可能性が高い」との見方も強まっています。
思えば、ドル/円は今年の年初に一旦118.61円の高値をつけて以来、これまでずっと下値を切り下げる展開を続けており、図中にも示したように「1月3日高値とそれ以降の高値を結ぶレジスタンスラインと、それに平行して1月5日安値を通るアウトライン(サポートライン)とで形成される下降チャネル」のなかでの値動きに終始しています。
よって、足下の調整が一巡して強気トレンドに転換したとの感触を得るためには、一つにこの下降チャネルの上辺をクリアに上抜ける(下降チャネルを上放れる)ことが必要になってくるものと思われます。さらに、上方に控える21日移動平均線(21日線)をも上抜けるような展開となれば、強気のムードは再び盛り上がることとなるでしょう。
また、目先的にドル/円が急激な反発・上昇でもしない限り、このままでは一目均衡表の日足「雲」のなかに潜り込む可能性が高いという点にも要注目です。見てのとおり、この「雲」は非常に分厚いもので、それだけ過去の相場のシコリが溜まっているゾーンであると見ることもできます。よって、この「雲」のなかにひとたび潜り込めば、相応に上値の重い展開が暫く続く可能性もあると見ておく必要はあるでしょう。
ここで、当面のドル/円の下値の目安となり得る水準を幾つか想定しておきますと、それは一つに125.50-60円処ということになるものと見られます。本日(18日)のオセアニア時間帯には一時112.56円まで下押す場面があり、その後一旦113円近辺までの戻りを見た後に再度112.64円まで押し下げるといった場面もありました。
この112円台半ばという水準を下抜けてきた場合、次に注目しておきたいのは、ドル/円の週足チャート上に一目均衡表を描画すると確認できる週足「雲」上限の水準です。今週と来週は週足「雲」上限が112.12円処に位置しており、同水準が一つの下値サポートとして機能する可能性も大いにあり得るものと考えられます。
もう少し目線を下げるなら、次に昨年11月9日安値から12月15日高値までの上昇に対する38.2%押しの水準=112円処、あるいは昨年11月28日安値=111.36円などといった水準も、一応は下値の目安になり得るものとして念頭に置いておきたいと考えます。
なお、仮に昨年11月9日安値から12月15日高値までの上昇を「第3波」(5波構成の展開を想定し、その起点を昨年8月16日安値と考える)とした場合、現在の調整は「第4波」で、いずれ「第5波」の反発・上昇局面が訪れると考えることもできるのではないかと思われます。つまり、現在足下で続いている調整が一巡した後には、あらためて120円前後の水準を試す可能性も大いにあるのではないかということです。よって、当面のドル/円の調整局面にあっては、基本的に押し目買いの方針で相場に向き合いたいと個人的には考えています。
コラム執筆:田嶋 智太郎
経済アナリスト・株式会社アルフィナンツ 代表取締役
前の記事:トランプ相場も一旦は小休止? −2017年01月11日
http://lounge.monex.co.jp/pro/gaikokukawase/2017/01/18.html
トランプ氏が「強過ぎる」ドルに照準、為替相場に追随の米国株に脅威
Luke Kawa、Sid Verma
2017年1月18日 07:38 JST
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• 「ドルは最近、主要通貨で唯一のリスクオン通貨」とゴールドマン
• 年初のドル軟調の勢い増せば株式相場へのリスク浮き彫りに
米S&P500種株価指数にとって、「王様ドル」は味方であると同時に敵にもなり得る。
ゴールドマン・サックス・グループによれば、米ドルは主要通貨の中で唯一、国内株式相場の上昇と同時に値上がりしている。それだけに今年初めのドル相場の軟調に拍車が掛かれば、株式相場へのリスクが浮き彫りになる。
イアン・ライト氏率いるゴールドマンのチームは「S&P500種と米ドルのローリング相関でみると、ドルは最近、主要通貨で唯一のリスクオン通貨だ」と指摘する。
Source: Goldman Sachs Group
同チームによれば、この現象は全てトランプ次期米大統領によるものだ。トランプ氏は最近、ドルが「強過ぎる」と述べたが、実質金利上昇を後押しし、ドル相場を浮揚させてきたのは次期政権下での米景気拡大への熱い期待感であり、こうした高まる成長期待が株式相場も支えてきた。
アナリストらは「米ドルと米株式相場の好調は、トランプ氏当選後の成長や財政政策への楽観論という同じリスク要因が主な源泉だと考えられる」とリポートで分析した。
金融データを見つめるトレーダー(17日、ロンドン)
Photographer: Luke MacGregor/Bloomberg
外為市場は投資家が政策展開について意見を表すうってつけの場となっており、米株式相場はドルの動向を手掛かりにする可能性がある。米株式相場は過去2週間、足踏み状態にある一方、ドル相場は荒っぽい1年のスタートを切っており、株式相場が為替相場にすぐに追随するリスクは高まっている。ブルームバーグ・ドル・スポット指数は大統領選挙後のピークから2.2%下落している。
ソシエテ・ジェネラルのグローバル・ストラテジスト、キット・ジャックス氏は、米財政刺激策に関する詳細が不十分なため、ドル高基調を持続させるけん引役が「実に足りない」という。同氏は17日のリポートで「1回目の米利上げ直後でドル高だった1年前を想起させる。ドルはその後、世界的な市場の混乱で米利上げ観測が後退したことから、5月にかけて下落傾向をたどった」と指摘した。
原題:Trump Takes Aim at King Dollar and It Threatens U.S. Equities(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-01-17/OJY0RI6JTSEG01
歴代米政権のドル高政策、トランプ政権は転換するか
共和・民主両党の政権は1990年代半ば以降、ドル高を後押しする政策を維持してきた
By IAN TALLEY
2017 年 1 月 18 日 17:41 JST
【ワシントン】ドナルド・トランプ次期米大統領はドルの価値を押し下げ、過去20年以上に及ぶドル高政策に別れを告げるかもしれない。
共和・民主両党の歴代政権は1990年代半ば以降、金利を低く抑え、インフレを制御し、米国の高い購買力を保つために、ドル高政策を継続してきた。
歴代の米大統領は、通貨問題については財務長官の意見に従い、自ら言及するのを避ける傾向があった。財務省の高官がこの問題について話す時は、金融市場を動揺させないよう、中立的な態度で慎重に言葉を選ぶことが多かった。
トランプ氏は先週、ウォール・ストリート・ジャーナルとのインタビューで、対中貿易に関する質問に対し「ドルは強すぎる」とし、「今や米国企業は(中国に)太刀打ちできず、(ドル高が)われわれを苦しめている」と述べた。
また、税制改正によってドルが上昇すれば、「ドル相場を押し下げる」必要が出てくるかもしれないとした上で、「ドル高は一定のメリットはあるが、多くのデメリットもある」と語った。
トランプ氏が大統領選で当選した後の数週間で、ドルは通貨バスケットに対し4%近く上昇。2014年以降では約25%上昇している。だが最近、トランプ氏の発言に加え、ホワイトハウスと共和党主導の議会が減税で合意できるかどうか疑念が強まっていることを受けて、ドル高の勢いに陰りが見えている。
ドル高を維持するという古いスローガンは、ビル・クリントン政権で財務長官を務めたロバート・ルービン氏が提唱した。同氏は1998年、「われわれの政策は一貫している。強いドルは米国の国益にかなう」と述べた。後任者たちもおおむねこの方針に従ってきた。
カリフォルニア大学バークレー校のエコノミスト、バリー・アイケングリーン氏は、米政府当局者のドル高支持発言は国内経済に対して自信があるというメッセージを送っただけでなく、通貨問題についての発言を避ける手段でもあったと指摘した。
失言すれば大きな代償を払うことになるからだ。
ポール・オニール財務長官は2001年、ドル高は政府が推し進めているのではなく、好景気のたまものだとドイツ紙に語った。これを受けて、ドル相場は下落した。
金融危機以降、バラク・オバマ政権で財務長官を務めたティモシー・ガイトナー氏は国内経済に対する投資家の信頼を示す尺度としてドルの価値に盛んに言及した。
米政府は過去に態度を急変させることがあったため、市場は通貨に関する政府当局者の発言に目を光らせている。
トランプ氏の通商政策の顧問であるダン・ディミッコ氏は15年に出した自著で、1985年のプラザ合意は素晴らしい戦略だったと指摘。「その後、貿易が増加し、為替操作が収まった」としている。
一部の観測筋は政策転換が迫っているとみている。ピーターソン国際経済研究所のシニアフェロー、フレッド・バーグステン氏は、中国や日本、欧州は米国で高まる保護主義を回避するために、通貨関連の協定の交渉に乗り出すかもしれないと述べた。
だが、トランプ氏がドル相場を押し下げるための選択肢は限られている。為替相場の主なけん引役は経済成長と投資の見通しによって異なり、トランプ氏が左右できるものではない。中央銀行の政策も為替相場の変動要因だ。
17日にスイス・ダボスで開幕した世界経済フォーラムで、トランプ氏の側近のアンソニー・スカラムッチ氏は、米国は「ドルの上昇に気を付ける」必要があるとしながらも、次期政権はFRBの独立性を維持すると述べ、ドル相場を軟化させる手段としてFRBの金利政策を利用することへの懸念を一蹴した。
オレゴン大学の教授で財務省のエコノミストだったティム・デュイ氏は、特に為替の口先介入の権限は通常、財務省にあるため、トランプ氏のドル相場関連の発言は市場を動揺させる可能性があると述べた。
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwji2MjLs8vRAhXDlZQKHRtNAPkQFggcMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB11163456931573304514904582566642888050860&usg=AFQjCNG219gQJGMQa4WM4YeQw862OvW_kQ
【寄稿】米新大統領、84年ぶりの変革を起こすか 大統領選から新たな秩序が派生することはまれだが、トランプ氏は例外かもしれない
就任の宣誓を行うアンドリュー・ジャクソン大統領を描写した絵画
https://si.wsj.net/public/resources/images/ED-AV996_Gordon_M_20170112192913.jpg
By JOHN STEELE GORDON
2017 年 1 月 18 日 13:18 JST
――筆者のジョン・スティール・ゴードン氏は「An Empire of Wealth: The Epic History of American Economic Power」の著者
***
米大統領選はニュースで大きく取り上げられ毎回大騒ぎとなるが、その結果によって国が一変するようなことは実はあまりない。これは米国民主主義の力強さを示すものであり、決して悪いことではない。選挙によって政府が左右に大きくぶれることは少なく、正しい政策もちょうど中間にある場合が多いからだ。
しかし歴史の大きなうねりと類いまれなる政治的才能を持つ人物の登場によって、大統領選が新たな秩序がもたらすこともまれにある。過去の例で言えば1828年、1860年、1896年、そして1932年がこれに当たるだろう。そして2016年の選挙も、この中に加わる可能性が高いと言える。
ジャクソニアン・デモクラシー
テネシー州のアンドリュー・ジャクソン氏は下院による「不正な取引」によって1824年の大統領選で落選したが、その4年後には大勝を収めて当選した。ジャクソン氏はアパラチア山脈より西側出身の初の大統領であっただけでなく、バージニア州とマサチューセッツ州以外で生まれた初の大統領でもあった。極貧の家庭に生まれた同氏は、自らの努力のみによって富を手にした初めての大統領でもあった。
米国の政治に新たな時代が訪れたことは、ジャクソン氏の就任後すぐに明らかになった。いわゆる「ジャクソニアン・デモクラシー」は権力の中心を社会の経済階級の下層部分に移した。大半の州ではその後、選挙権を土地所有者のみに限定する要件が撤廃され、普通選挙への第1歩が踏み出されることになった。
ジャクソン氏は現代の民主党を創設した人物でもある。また同氏の政策に激しく反対する勢力がホイッグ党に集結したことで、今も続く二大政党制の基盤が形成されるきっかけともなった。このため、19世紀に活躍した著名歴史家のジョージ・バンクロフト氏はジャクソン元大統領を「最後の建国の父」と呼んでいる。
リンカーンと南北戦争
次の大きな転換は、エイブラハム・リンカーン氏がもたらした。1850年代には米国の政界でも奴隷制が大きな議論となっていたが、1854年に結党された共和党は奴隷制廃止を大々的に掲げ、ホイッグ党が衰退する中で一気に勢力を拡大させた。その共和党候補のリンカーン氏が1860年に大統領に当選すると、合衆国は直ちに分裂する。サウスカロライナ州は、大統領選から約1カ月後に合衆国からの脱退を決定。リンカーン氏の就任式は1861年3月4日に行われたが、同年の2月1日までにさらに6州が合衆国を去っていた。
国家が再び結束したのは、米国史上最大の戦争を経てからのことだ。南北戦争が終わる頃には米国は大きな変貌を遂げていた。貧困や政治的混乱に包まれた南部は、その後100年にわたり先進国内における途上国のような地域となっていった。一方で北部は産業が発達し人口も増え、政治的にも絶対的な力を手に入れる。南北戦争以前に大統領に就任した人物の半数以上が南部の出身者だった。しかし南北戦争後の100年間、南部出身者が大統領に就任した例は2度しかなかった。ニュージャージー州でキャリアを積んだバージニア州出身のウッドロー・ウィルソン氏と、テキサス州出身のリンドン・B・ジョンソン氏だ。
南北戦争後の数十年間、大統領選は僅差の勝負になることが多かった。1884年の選挙ではグロバー・クリーブランド氏がジェームズ・G・ブレイン氏をわずかな差で破った。その4年後、クリーブランド氏は一般投票での得票は上回ったものの選挙人投票でベンジャミン・ハリソン氏に敗北。そして1892年の大統領選ではこの2人が再び顔を合わせ、クリーブランド氏が僅差でハリソン氏を上回った。クリーブランド氏は連続しない2期の大統領を務めた唯一の人物となる。
マッキンリー大統領と共和党の躍進
1896年の選挙におけるウィリアム・マッキンリー氏の決定的勝利は、その後数十年にわたって続く共和党の時代の到来を告げた。マッキンリー氏は 「健全な通貨、保護、そして繁栄」というスローガンで選挙に挑んだが、この綱領が米国内に急速に増えた富裕層の利益と一致した。対立候補である民主党のウィリアム・ジェニングス・ブライアン氏は、米政治における偉大な演説家だった。ブライアン氏は金本位制に反対を示し、債務を抱えた西部や南部の農家などを救うため、インフレを誘発する金融政策を訴えた。
しかしマッキンリー氏は北東部や中西部の北の地域で圧勝を収め、ハリソン氏が1892年に獲得した投票数に約200万票を上積みした。マッキンリー氏は1901年に暗殺されることになるが、同氏が残した政治的遺産はその後も引き継がれることになる。1896年から1932年までの間、共和党が上院の過半数を獲得していなかったのはわずか6年だけだ。また下院でも、この期間に共和党が過半数を獲得していなかったのは10年のみだった。
1912年にセオドア・ルーズベルト氏が党を離脱して大統領選に出馬するまで、共和党は大統領の座も独占し続けた。同年の選挙では一般投票の得票率がわずか41.8%だったウッドロー・ウィルソン氏(民主党)が当選を果たしている。
大恐慌とルーズベルト
1933年以降は大恐慌とフランクリン・D・ルーズベルト氏の希代の才能によって民主党が再び米政治を支配する時代が訪れる。1928年の大統領選挙では共和党のハーバート・フーバー大統領が48州のうち40州で勝利を収め、議会でも共和党が過半数獲得した。しかし4年後にはルーズベルト氏が42州を奪取。議会でも民主党が過半数を大きく超え、連邦政府の権力と影響が及ぶ範囲を拡大させた。政府は富裕層に対して大幅な増税を行い、社会保障などの新たな人気政策に関しては財政赤字を生じさせながらも実現させた。
その後48年の間にホワイトハウス入りを果たした共和党候補者はわずか2人。ひとりは国民的英雄のドワイト・アイゼンハワー氏で、もうひとりは民主党がベトナム戦争で分裂する中でわずかな得票差で勝利を収めたリチャード・ニクソン氏だ。1932年から1980年にかけて共和党が上下両院で過半数を占めたのは、合計でわずか4年間だった。
しかし1970年代に入ると「ニューディール政策」や「偉大な社会」を支えたリベラル思想が、政治学の基本的法則によって崩れ去った。物事は両極端に進化する傾向がある。しかし1960年代の公民権運動で勝利を収めたリベラル層はそのまま同じ戦いを続け、アイデンティティー政治内における人種間の亀裂を深めさせた。組合員の数は長年にわたり減少していたにもかかわらず、過去の法律によって労働組合は巨大な政治力を持ち続けた。全体像を考えずにさまざまな政策が実行され、連邦政府の官僚主義は拡散を続けた。環境保護局などといった政府機関も、民主党の選挙民が作り上げていった。
リベラルな政策はやがて政治エリートに向けられたものとなり、国民全体のためのものではなくなっていった。そしてそれに国民が気付く。突如現れたジミー・カーター氏は米国政治を一掃することを宣言し、1976年に民主党の大統領候補に選出。同氏は結果的には挫折するが、同じく政治の部外者を名乗るロナルド・レーガン氏がその後に大統領に就任し、国内でも海外においてもルーズベルト氏以来の影響力を持つ大統領となった。
レーガンからオバマまで
民主党が下院を支配していたためレーガン氏は動きを制限され、ジャクソン氏、リンカーン氏、そしてマッキンリー氏やルーズベルト氏のような変革をもたらすことはできなかった。しかしその影響力は後世にも引き継がれている。レーガン政権後初の民主党大統領となったビル・クリントン氏は、中道派として選挙を展開。同氏のリベラルな政策を有権者が拒絶し1994年に40年ぶりに共和党が議会を獲得すると、クリントン氏はその流れに乗った。1996年には「大きな政府の時代は終わった」と宣言し、福祉制度などでは多くの議員に歩み寄り、約30年ぶりとなる財政黒字の達成に成功する。
しかしそれも長くは続かなかった。議会の共和党議員たちはやがて財政規律よりも自らの再選運動に関心を持つようになり、リベラルな社会工学に基づいた住宅政策は住宅バブルと金融危機を引き起こす。そして歴史上初めて金融パニックが起こる中で実施された2008年の大統領選では、不安定と見られた共和党の候補が若くてカリスマ性のある民主党候補に敗れることとなった。
バラク・オバマ氏が大統領に就任した際、民主党は上下両院で過半数を占めていた。オバマ氏は、極めてリベラルで極めて人気の低い政策を押し通した。その結果、オバマ政権の日々は民主党にとっては悲惨なものとなる。選挙では大きな変動が起こり、民主党は2010年には下院で敗北。2014年には上院でも過半数を失った。現在は共和党がほとんどの州で知事席を埋め、州議会でも過半数を確保している状態となっている。
2016年のトランプ
ドナルド・トランプ氏の驚きの当選は、ジャクソン氏、リンカーン氏、マッキンリー氏、そしてルーズベルト氏のように何か普遍的な変化をもたらすのだろうか。事前の段階における共和党の躍進を考慮すれば、そう考えていいだろう。トランプ氏は確かに有権者の過半数から支持を受けていない。しかしその一方で、ヒラリー・クリントン氏の290万票のリードも極めて限られた層から獲得したものだ。クリントン氏は東海岸と西海岸の都市部や高学歴層が集まる地域、そして貧困に悩むミシシッピ・デルタの地域やアラバマ州のブラックベルト地域などでしか勝利を収めなかった。ニューヨークのスタテンアイランドを除く4つの行政区とロサンゼルス群での得票を除けば、クリントン氏は全米でトランプ氏に50万票以上の差をつけられて敗北を期している。
トランプ氏は民主党が目を向けなかった「嘆かわしい」白人労働者階級の有権者を効果的に取り囲み、米国中部の有権者からも支持を受けた。その結果、1980年代から民主党が勝利を収めていたミシガン州、ペンシルベニア州、そしてウィスコンシン州を奪取することに成功している。2012年の大統領選において、共和党のミット・ロムニー候補はグリーンベイを含むウィスコンシン州ブラウン郡を1.8ポイント差で獲得した。しかしトランプ氏は同地域で10.7ポイントの差をつけて勝利をしている。
その近くにある農村地区のマリネット郡では、より大きな変動が見られた。2012年にはロムニー氏が3.5ポイントで勝利したが、トランプ氏は実に33ポイント差をつけることに成功している。ミルウォーキー近くのウォキショー郡には、共和党寄りの富裕層が住む。ここではトランプ氏はロムニー氏よりも7.8ポイント低い投票率となり弱さを見せたが、その他の地域での大勝で十分に補える形勢を作ることができた。
オバマ政権はリベラリズムが疲弊していることを露呈させただけでなく、その思想が時代遅れのもので、その提唱者が空想上の過去に取り残されていることを明らかにした。民主党がここまで貧弱になり、高齢化したことはなかった。下院における民主党の要職議員3人の中で、1番の若手は76歳だ。それに対して共和党の要職議員3人の平均年齢は49歳だ。現在は共和党が上院で過半数を占めているため、亡くなったアントニン・スカリア最高裁判事の後任の任命を遅らせることができた。これによりリベラル派の判事が最高裁で多数を占める事態は免れることになる。その他の連邦裁判所にも100以上の空席があり、新たな判事の任命が待たれている。
トランプ氏は既存の政治体制に全く借りがない点も注目だ。ここまで影響を受けていない新大統領は、少なくともジャクソン氏以来は初めてのことだろう。トランプ氏はワシントンに広まっている政治家のための政治を変えることを目的に選ばれた。これにより、同氏はより自由な行動を取れることになるだろう。トランプ政権の閣僚メンバーも、大幅な変化をもたらせる顔ぶれだ。減税や規制緩和といったことが実現し、企業にとって好環境が整う可能性も高い。トランプ氏は国民に直接話しかける能力にもたけている。長期にわたって問題となっていたいい加減なメディアを仲介する必要もない。
永続的変化をもたらすため、トランプ氏は理論だけではなく現実社会で成功できる政策を実現させる必要がある。より速い経済成長と収入増は、選挙ではいい結果を常に招く。次期大統領が経済政策を言葉の通りに実行すれば、疑念を持っていたウィスコンシン州ウォキショー郡の有権者たちも2020年には1票を投じてくれるかもしれない。
社会のマイノリティーへの対応をしっかり続けることも重要だ。トランプ氏は民主党が数十年にわたり無視してきた都心部の問題にも着手すると約束している。昨年秋のある集会では、トランプ氏が同性愛のシンボルである虹色の旗を手渡される場面があった。同氏が満面の笑みで旗を掲げると、集まった人たちは歓声を上げていた。前世代の共和党からはすでに変貌を遂げたと言っていいだろう。
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トランプ氏と株主のあいだで板挟みとなる経営幹部
ENLARGE
「マー氏と私は素晴らしいことをするつもりだ」とトランプ氏は述べた。 PHOTO: MIKE SEGAR/REUTERS
By
DAN GALLAGHER
2017 年 1 月 18 日 17:14 JST
米国内での事業拡大計画を発表した企業は、数カ月後の年次株主総会で、その決断を投資家にどう説明するつもりなのか。今から興味深い。
明らかな見返りがほとんどない支出の増加は、通常その企業の株価を急落させてしまう。とはいえ、今は通常と呼べる時期ではない。たとえば、米アマゾン・ドット・コムは先週、向こう18カ月間に国内の従業員数を55%も増やすと発表した。正規従業員を10万人増やすというのだ。
そのニュースを受けて、アマゾン株は1.8%上昇した。アマゾンの株主は支出の増加を特に気にするので、これは驚きだった。同社株は昨年10月、第3四半期決算で予想を上回る支出が示され、同社がそうした支出の年内継続を示唆した翌日、5%も急落した。
アマゾン・ドット・コムの世界の従業員数
https://si.wsj.net/public/resources/images/BN-RQ795_amazon_G_20170117105718.jpg
自動車メーカーや他の企業は、米国での雇用を維持しながら一部の事業を海外に移す計画を推進することでうまく問題を回避した。米ゼネラル・モーターズは、そうした設備投資計画について、数年前に決めていたと述べるなど、最も正直でそつのない対応をした。
トランプ次期大統領にとって自動車メーカーはいろいろな意味で標的にしやすい業界である。貿易がまだそれほど盛んでなかった時代の米国の製造業者として誕生し、海外での販売や製造を徐々に拡大してきたからだ。グローバル化の時代に生まれたハイテク企業、バイオ企業のほとんど、それに多くの小売業者にとっては、世界的なサプライチェーンや販売は創業当初から事業の一環だった。そうした企業がトランプ氏の要求に従うには、抜本的な企業再編が必要になるだろう。
今のところ、トランプ氏をなだめ、その後で計画通りに事業を進めるというのが最善策のようだ。投資家向け広報活動(IR)部門の幹部がウインクで合図すれば、株主たちはそれが政治的な駆け引きだと理解してくれるだろう。
アマゾン・ドット・コムは広大な商品発送センターのネットワークを拡大しつつあり、実際に10万人を新規雇用するかもしれないが、そのすべてがトランプ氏が創出すると約束してきたような仕事になる可能性は低い。企業調査・投資情報会社ロバート・W・ベアードのコリン・セバスチャン氏は同社の現在の求人の53%が技術部門、21%が管理部門だと指摘する。またアマゾンは大量採用を約束しても、多くの小売業者は同社のせいで大幅な人員削減を余儀なくされてきた。同社はまた、他社に先駆けて荷物の配送にドローンを使ったが、それはいずれ配送業者たちを廃業に追い込む可能性もある。
企業収益の対国内総生産(GDP)比は賃金のそれに比べ大幅に増加してきた
https://si.wsj.net/public/resources/images/BN-RQ810_corphe_G_20170117113121.jpg
今後については大統領に就任してからのトランプ氏の行動にかかっている。トランプ氏が企業に一層の圧力をかければ、企業は約束を守らざるを得なくなるかもしれない。ただ、その場合、投資家への説明は、しやすくなるだろう。投資家はそうした資本配分の誤りを黙認して株主であり続けるか、トランプ大統領に目をつけられていない業界の株に乗り換えるかの選択を迫られることになる。
強権的で予測不能な政府の下での企業経営に定評がある中国の電子商取引大手、阿里巴巴集団(アリババグループ)の創業者、馬雲(ジャック・マー)氏の中国でもよく知られている言葉、政府とは「恋に落ちろ、でも結婚するな」は株主たちの気持ちを代弁している。今月9日にトランプ氏と会談した後、マー氏はその製品を中国で販売することで米国の中小企業100万社を支援するという曖昧な約束をした。
「マー氏と私は素晴らしいことをするつもりだ」とトランプ氏は述べた。
トランプ氏が承知しているのか定かではないが、同氏の企業に対する脅しは米国経済の重大な懸念に関連している。この数十年間、企業収益の対国内総生産(GDP)比は賃金のそれに比べ大幅に増加してきた。賃金の上昇は増加してきた企業収益の一部を回すことで可能になるはずだ。
トランプ氏の大統領就任前のツイッターでの脅しは交渉開始の号砲でしかないのかもしれない。あるいは企業収益という富を分配したいと考えているのかもしれない。全体的な経済成長が停滞し続けるとすれば、労働者の賃金を増やすにはパイの切り方を変えるしかない。
企業の経営幹部は予測不能な大統領と要求が多い株主のあいだで板挟み状態になるだろう。経営大学院でも教わらない未知の領域である。
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