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コラム:
世界的デフレ終焉、今回は本物か
嶋津洋樹MCP シニアストラテジスト
[東京 16日] - デフレの終焉――。筆者がマクロ経済や金融市場の分析に関わって、この言葉をこれほど目にしたのは初めてだ。ほぼ同じ文脈で、債券の強気相場が終わったとの指摘も多い。いずれも半年前には少数派だった。一体、何が変わったのだろうか。
米大統領選でのドナルド・トランプ氏の勝利が1つのきっかけになったとの見方に異論はないだろう。だが、それがなぜデフレに幕を下ろすことにつながるのか、明確な説明は見当たらない。
もちろん、トランプ氏の掲げる大規模な財政支出は、米国景気を押し上げ、需給ギャップの縮小を通じてデフレを終息させる可能性がある。その財源を米国債の発行に頼れば、国債市場の需給が緩み、債券価格には下落(金利には上昇)圧力がかかるだろう。
そして、米景気回復は連邦準備理事会(FRB)に金融緩和の縮小を促すため、米金利には一段と上昇圧力がかかる。さらに、米国以外の国・地域のファンダメンタルズに変化がなければ、ドルは上昇。米国の低金利を嫌気して国外へ向かっていた資金の一部は再び米国へ戻り、他の国・地域では資金流出と通貨下落が顕在化するだろう。
通貨下落は輸入物価の上昇を通じて、インフレ圧力を高める。通貨下落を阻止しようと為替介入に踏み切れば、外貨準備の減少が避けられない。外貨準備は通常、米国債をはじめとする主要先進国の債券で運用されている。米国以外の国・地域での為替介入は、国債の売りを通じて、米国を含む主要先進国の金利を上昇させるだろう。
金融市場間の連動性を踏まえれば、事の発端は米国でも、世界的な金利上昇となることに違和感はない。確かに、トランプ氏の掲げる大規模な財政支出は、デフレを終わらせ、債券相場を圧迫するだろう。
<トランプ氏よりオバマ政権の財政政策にヒント>
しかし、最も肝心なトランプ氏の財政政策は今のところ実現していない。それどころか、いつから、どの程度の規模の財政支出が、どのように具体化するかには高い不確実性がある。
トランプ氏の財政政策が人々にデフレの終焉(しゅうえん)を想起させるきっかけの1つになったことに疑いはないが、決定的とまでは言えなさそうだ。逆説的だが、このことが、今や少数派であるデフレ継続、債券強気派の根拠なのだろう。
筆者はトランプ氏よりも、オバマ米大統領の財政政策に注目している。実際、国際通貨基金(IMF)が2016年10月に公表した「財政モニター」によると、米国のプライマリーバランス(基礎的財政収支、景気循環調整済み)は対潜在国内総生産(GDP)比で2015年のマイナス1.42%から16年にはマイナス1.94%まで赤字幅が拡大。その分だけ、財政再建が後退したと言える。
米国でプライマリーバランスが悪化するのは6年ぶりだ。2016年はユーロ圏でも前年のプラス1.06%からプラス0.61%へ、日本でも前年のマイナス4.54%からマイナス4.80%へプライマリーバランスが悪化し、20カ国・地域(G20)では2年連続で赤字幅が拡大した。
中国の生産者物価指数(PPI)やユーロ圏の消費者物価指数(HICP)、米国の平均時給の伸び加速は、まだ見ぬトランプ氏の財政政策よりも、すでに実現した財政政策によってもたらされたと考えられる。
こうした財政政策の積極化とデフレ圧力の後退は、リーマン・ショック後にも確認できる。実際、米国のプライマリーバランスは住宅市場の崩壊が顕在化し始めた2007年以降、2010年まで4年連続で悪化。G20全体でも2007年にマイナス0.50%だったプライマリーバランスは2008年にマイナス1.52%、2009年にマイナス3.67%と急速に悪化した。
そして、金融緩和に積極的な財政政策が重なったことで、世界景気は2009年の前年比マイナス0.1%から2010年の同プラス5.4%へV字回復。2011年は同プラス4.2%へ鈍化したものの、世界景気の堅調さを示すとされるプラス4%台を維持した。
しかし、その後、ギリシャの財政問題などを受けて、欧州で財政再建への取り組みが本格化。米国でも財政均衡を主張する共和党茶会派が台頭し、リーマン・ショック後の積極財政路線は大幅な修正を余儀なくされた。当時、G20のプライマリーバランスは2010年にマイナス3.90%まで悪化した後、2011年にはマイナス2.83%と大幅に改善。2014年にはマイナス1.14%まで赤字幅が縮小した。
筆者は2016年にかけての世界的なデフレや低成長の原因について、構造問題よりも、拙速な財政政策の転換や金融緩和の修正にあったと考えている。2016年以降、それが再び修正されたのだから、デフレや低成長が終息するのも当然だ。
<欧州で強まる緊縮財政への拒否反応>
むろん、逆に言えば、このことは、今後の政策次第でデフレや債券の強気相場が再び訪れる可能性を示す。今の段階で、デフレや債券の強気相場が終焉したと結論付けることは難しい。
とはいえ、足元で2011年から2014年にみられた財政政策の急速な転換は起きそうにない。当時、いち早く緊縮財政に舵を切った英国は、欧州連合(EU)離脱への対応で景気を下支えする方針を明確にした。大陸欧州では、南欧諸国を中心に緊縮財政への拒否反応が強まっている。
これまで財政健全化に固執してきたドイツでさえも、国内では総選挙後の減税方針を示し、ギリシャのクリスマス手当の支給を阻止することができなかった。欧州各国の政治家にとって、難民に衣食住を提供する一方で国民に緊縮を求めることは難しい。
米大統領選でのトランプ氏の勝利は、各国政府が国民に不人気な政策を先送りせざるを得ない現実を改めて浮き彫りにしたと言える。財政再建の取り組みはいずれ避けて通れない道とはいえ、明日の生活に不安を抱える失業者や不安定な雇用環境にいる労働者などにとっては、理想論にしか聞こえないだろう。低成長と所得の伸び悩みは、緊縮財政に伴う国民の負担を一段と大きくする。
筆者はトランプ氏の勝利後、多くの国・地域で予想物価上昇率が上昇したことについて、緊縮財政への転換に時間がかかることを反映したと解釈している。そして、予想物価上昇率の上昇は、金融緩和の効果や原油価格の安定などとも相まってデフレの終焉を確実なものとするだろう。今回の債券相場の下落は、短期的なスピード調整があったとしても長期化する可能性があり、強気相場を終わらせるだけの材料もそろっているようにみえる。
*嶋津洋樹氏は、1998年に三和銀行へ入行後、シンクタンク、証券会社へ出向。その後、みずほ証券、BNPパリバアセットマネジメントなどを経て2016年より現職。エコノミスト、ストラテジスト、ポートフォリオマネジャーとしての経験を活かし、経済、金融市場、政治の分析に携わる。共著に「アベノミクスは進化する」(中央経済社)
*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。
(編集:麻生祐司)
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ドル高再開へ、不安は「ポスト真実」
山口曜一郎三井住友銀行 ヘッド・オブ・リサーチ
[東京 16日] - 昨年12月に、筆者は今年のドル円相場について、第1四半期に112円まで調整したあと、第4四半期には125円まで上昇するという見通しを立てた。現在は、まさにその調整の過程にある。相場はもうしばらく調整が続いたあと、反転上昇に向かうと見る。
そこで、改めて、今年のドル高円安見通しを支える要因とそれに対するリスクを考えてみたい。まず、ドル円の上昇見通しを支えるストーリーは以下のようなものだ。
1)米経済は財政政策なしでも2%前半の成長が可能
2)減税や財政支出による景気刺激が加われば、2%台後半を超える成長とインフレ上昇が見込まれる
3)米連邦準備理事会(FRB)が年3回の利上げを行う可能性がある一方、日銀はイールドカーブ・コントロールによる金融緩和を継続することから、日米金利差は一段と拡大。米国で財政刺激が実施されれば、金利差拡大の確度はより高まる
4)トランプ次期大統領による「米国第一主義」が強い米経済と強いドルを実現する
これに対するリスクを考えると、以下の5点が挙げられる。
1)楽観的な米成長見通しは期待先行であり不確実
2)期待先行でドル高、金利高が大きく進んでしまうことが、先行きの米経済にネガティブな影響を与える
3)財政政策がどの程度の規模となるか不透明
4)トランプ次期大統領は保護主義であり、国内企業と雇用を守るためにドル安政策を取る
5)欧州の政治イベントがリスクオフ要因となって円高が進む
確かにどれも一理ある。だからこそ今年のドル円見通しは上下に大きく分かれているのだ。よって、これらのリスクをどう評価するかが重要なポイントとなる。筆者は次のように考えている。
<足元の調整はかえって望ましい>
まず、トランプ政権はまだ始まってもおらず全ては期待にすぎないと言うには、最近の米経済指標の強さには目を見張るものがある。
景況感などのソフトデータが中心ではあるが、12月のISM製造業指数は54.7と2年ぶりの水準に跳ね上がり、12月のNFIB中小企業楽観指数は105.8と12年ぶりの水準まで急上昇。1月のミシガン大消費者信頼感指数も98.1と約13年ぶりのレベルでの推移が続いている。企業や家計の初期の行動やセンチメントは間違いなくポジティブに動いている。
また、期待先行で金融市場が動いているのはその通りであり、筆者はドル高と金利上昇があまりに先に進んでしまうことを心配していた。期待先行で通貨高と金利上昇が進み過ぎると経済活動に負の影響を及ぼし、年後半から来年にかけて財政政策が実行される前に経済活動が減速してしまう恐れがあったからだ。
しかし、足元では為替、金利ともに調整が入った。財政政策の中身が見えてくるまでしばらく間が空いてしまうことを一部の市場参加者が嫌気したためだが、これによって期待が実体を押しつぶしてしまう展開は避けられたと考える。2月下旬以降になると思われる予算教書演説と、その後の上下院による予算案作成あたりから、財政政策や税制改革に関する具体的な絵が見えてくるだろう。
その財政政策に関する規模の不透明性が、具体化した際に失望を招くという見方もあるが、市場参加者が100%の楽観を織り込んでいるようには見えない。ゼロ回答であれば当然失望だが、インフラ投資には不透明性があるものの、所得税や法人税の減税は実施される公算が大きく、一定の景気刺激効果は期待できると考える。
大統領案と下院共和党案の差異などを指摘する声もあるが、大統領選後にトランプ氏と共和党のライアン下院議長が関係修復した意味は大きい。ライアン議長は今後のキーマンの1人となるだろう。
確かに、保護主義によるドル安政策への転換リスクには警戒が必要だ。ただし、現在のトランプ氏は、国内企業の国外進出けん制、海外進出企業に対する国内回帰圧力、中国やメキシコなどへの攻撃、といった手段を用いて保護主義的な行動を取っており、必ずしも為替レートに焦点を当ててはいない。大統領就任後にスタンスが変わってくる可能性は排除できないが、「強い米国」の実現にはある程度「強いドル」が必要と考えている側面もあり、経済にマイナスの影響が出てくるまで、為替については放置するのではないか。
FRBが発表するドル実質実効為替レートを見ると、足元の102.82は、直近2016年1月の高値を抜け、2003年以来の高い水準だが、過去の最低値が80.26、最高値が128.44であることを考えると、必ずしも今すぐ対処が必要というレベルではないだろう。
また、為替レートは水準とともにスピードも重要となる。2014年からのドル高局面では、一時前年比プラス14%までドルが上昇したが、足元では前年比プラス4%程度にとどまっている。この点においても年始に調整が入っているのは望ましい。年明けから一段のドル高が進むようだと、水準、スピードともに無視できない展開となるところだった。
むろん、欧州の政治イベントがリスクオフ要因となる可能性は排除できない。特に、フランス大統領選で極右政党・国民戦線(FN)のルペン党首が勝利した場合、欧州は大混乱に陥り、グローバルな金融市場に大きな影響を与えることになるだろう。
ただし、それ以外のケースについては、政治的なショックがドル円に与える影響は永続的ではないと見る。政治イベントによる為替レートへのショックは短期間にとどまることが多く、また為替市場でユーロが大きく下落した場合、円と同様にドルも買われる可能性が高い。円独歩高が続く公算は大きくないだろう。
<事実に基づかない政治がもたらす危険>
なお、今回は深く触れないが、為替に限らず今後の市場・経済動向を読み解く上で、筆者が注視している論点が2つある。1つは米中関係であり、もう1つは「ポスト真実(post-truth)」の政治行動がもたらす危険性だ。中期的にはこれらがストーリーの構成要素として台頭してくると考える。
ポイントだけを簡単に述べると、前者は、通商担当に対中強硬派をそろえ、厳しい姿勢で臨むことにより米中で貿易摩擦が発生する。中国からの輸入規制や関税引き上げによって米国内の製造業と雇用を守ろうとした場合、国内のコスト増加要因となる。
この行き着く結果は企業収益の減少か、販売価格の引き上げか、IT化の促進による生産コスト削減であり、家計にとっては雇用削減や購買力の低下につながる恐れがある。加えて、中国側が報復措置を取って米経済に打撃を与えたり、中国の景気減速がグローバル経済にマイナスの影響を与えたりする可能性もあるだろう。
次に、ポスト真実の政治とは、真実のように感じられるが実は事実無根の主張に依拠した政治のことを指し、英エコノミスト誌などがしばしば懸念を示している。
ポスト真実の政治の下では、客観的な事実よりも感情的な主張が人々の判断基準となり、為政者が情報操作や扇動といった行動に走りやすくなる。そうなれば、真実がますます見えにくくなり、経済や社会の摩擦が高まり、将来的に政治経済に大きな混乱が生じる恐れがある。
むろん、景気が拡大している間は、恐らく問題は表面化しないと思われるが、トランプ次期米政権がこうした政治手法を取るならば、水面下で歪みが大きくなり、2018年以降のリスクとして台頭するシナリオには警戒が必要だ。
*山口曜一郎氏は、三井住友銀行市場営業統括部副部長で、ヘッド・オブ・リサーチ。1992年慶應義塾大学経済学部卒業後、同行入行。法人営業、資本市場業務、為替セールスディーラーを経て、エコノミストとして2001―04年にニューヨーク、04―13年ロンドンに駐在。ロンドン大学修士課程(金融学)修了。
*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(こちら)
(編集:麻生祐司)
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米実質利回りが低下−トランプ政策の景気浮揚効果に疑問
米国債の実質利回りが急落している(写真は米財務省)
By MIN ZENG
2017 年 1 月 16 日 13:44 JST
米国債の実質利回りがこの1カ月で急落している。ドナルド・トランプ次期米政権の経済政策に対する市場の期待が後退しつつあることをうかがわせる最新の兆候だ。
実質利回りとは債券利回りからインフレ率を差し引いたもの。10年物米国債の実質利回りは2016年12月半ばに米大統領選後で最も高い0.74%をつけたが、足元で0.38%に低下している。実質利回りは景気改善に伴い上昇する傾向があることを考えると、トランプ氏が11月8日の選挙で勝利して以降の実質利回りの急伸は、経済活動の世界的な拡大を示唆していたといえる。
利回り低下や最近のドル安を見る限り、投資家は当初抱いていた「トランプトレード」への意欲を見直しつつあるようだ。トランプ氏の当選後しばらくは、経済成長やインフレが加速するとの期待を背景に米主要株価指数やドル、コモディティー(国際商品)価格が軒並み急伸した。
ダウ工業株30種平均の終値が1万9974.62ドルをつけて最高値を更新した16年12月20日から4日後、実質利回りは直近の高水準をつけた。
ペン・ミューチュアル・アセット・マネジメントのポートフォリオマネジャー、ジーウェイ・レン氏は実質利回りとドル相場の下落について、「トランプ氏の政策に経済成長押し上げ効果は期待できず、せいぜいインフレに影響を与えるだけだと人々が考えているしるし」との見方を示した。
10年物米国債の実質利回りは現在、大統領選前の水準よりもまだはるかに高い。選挙投開票日の16年11月8日には0.15%だった。この先も世界的に超低金利と成長低迷が長く続くとの懸念を背景に、同利回りは16年中に一時、マイナス圏に沈んだ。
大統領選以降、トランプ氏が公約に掲げる大規模なインフラ投資や減税、規制緩和に注目が集まり、経済成長やインフレの押し上げにつながるとの期待が高まった。米主要株価指数は何度も最高値を更新し、10年物米国債利回りは12月16日、2年ぶりの高水準となる2.6%をつけた(選挙当日は1.867%、先週末の終値は2.38%)。また、主要6通貨のバスケットに対するドルの価値を示すICEドル指数は17年1月初め、02年以来の高水準に上昇した。
債券市場が予想する将来のインフレ率は実際、この数週間で上昇している。10年物ブレークイーブン・レート(名目国債と物価連動国債=TIPSの利回り差)は直近で2%と、12月16日の1.873%を上回る。
SEIインベストメンツの債券部門責任者、ショーン・シムコ氏は「債券市場はトランプ氏の政策やその実行性を疑問視しているようだ」と指摘。実質利回りが下がり始める前は、債券市場は「全ての政策が完全な形で実施されると見込んでいた」という。
トランプ政権が中国からの輸入品に高関税を課す可能性について懸念する向きもある。これが導入されれば中国が報復措置を講じる恐れがあり、そうなれば米国では経済成長の勢いがそがれる一方、輸入品の値上がりでインフレ圧力が高まりかねない。
一部のアナリストは、市場の動きを深読みしすぎるべきではないと警告している。流動性の変化などの要因でゆがみが生じ、急に取引が膨らんでも価格に影響しない可能性があり、直近の相場はヘッジファンドや債券トレーダーの短期的なポジション調整の表れということも考えられるからだ。
今月初め、米国債先物が08年以来の大幅な売り越しとなった。一斉に買い戻しが入れば、国債利回りの低下が加速する可能性がある。
TD証券の金利戦略部門グローバルヘッド、プリヤ・ミストラ氏は「トランプトレードが終わったと言うのは時期尚早だ」と述べた。
だが今のところ、多くの市場関係者は、経済成長が小幅にとどまる一方でインフレが加速する可能性が高いとみている。このシナリオが現実化すれば、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ計画は複雑なものになりかねない。
資産運用会社アッシュモア・グループの調査部門責任者、ジャン・デーン氏は「インフレが進めば、米消費者の実質所得は減り、FRBは利上げせざるを得なくなるだろう。そうなれば株高基調は崩れ、長らく心配されてきた経済のリセッション(景気後退)入りがいよいよ現実味を帯びる恐れがある」と語った。
ECB、今年遅くまではテーパリング検討せず−エコノミスト予想
Alessandro Speciale、Andre Tartar
2017年1月16日 18:11 JST
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欧州中央銀行(ECB)は今年遅くになるまでは債券購入の縮小を検討しない。2018年に入っても当分の間、購入プログラムを継続する。ブルームバーグの調査に答えたエコノミストらがこのように予想した。
調査ではエコノミストの75%がECBの景気刺激策の大きな変更が発表されるのは早くても9月との見通しを示した。3分の2の回答者はECBが月々の購入額を減らすとともに期間を今年12月より先まで延長すると予想した。19日の政策委員会後に新たな措置が発表されると考えるエコノミストは皆無だった。
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原題:Draghi Seen Staying Strong on QE With Faster Inflation No Bar(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-01-16/OJV5QN6VDKHS01
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東京株式相場は反落。20日に控えるトランプ次期米大統領の就任会見に加え、英国の欧州連合(EU)からの強硬離脱リスクが懸念される中、為替の円高を嫌気する売りが広がった。鉄鋼や海運、鉱業、機械など景気敏感株中心に幅広い業種が安い。政府保有株の追加売却観測で、日本郵政も下げた。
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大和住銀投信投資顧問・株式運用部の小出修グループリーダーは、「トランプ氏の大統領就任以降の発言による金融市場の方向感を見極めたい」と指摘。「電子部品など自動車以外でも保護主義的な話が出てくれば、グローバルでサプライチェーンが混乱する恐れがあり、関連株も調整しかねない」と懸念を示した。
東証1部の売買高は14億6955万株、売買代金は1兆8873億円にとどまり、代金は前週末から16%減少。2兆円を割り込んだのは昨年の大納会以来だ。上昇銘柄数は323、下落は1601。
東証1部33業種は鉄鋼、海運、鉱業、その他製品、石油・石炭製品、不動産、保険、非鉄金属など32業種が下落。上昇は空運の1業種。鉱業など資源株は、前週のニューヨーク原油先物が昨年11月以来の大幅安となったことが響いた。
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●長期金利が小幅上昇、20年入札控えて売り圧力−米大統領就任に警戒感
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債券市場では長期金利が小幅上昇した。20年利付国債の入札を翌日に控えて投資家需要に対する警戒感から売り圧力が掛かった。
現物債市場で長期金利の指標となる新発10年物国債の345回債利回りは、日本相互証券が公表した前週末午後3時時点の参照値より0.5ベーシスポイント(bp)高い0.05%で寄り付き、その後も同水準で推移した。新発20年物の159回債利回りは0.5bp低い0.585%で開始した後、横ばいの0.59%に戻した。新発30年物53回債利回りは1bp高い0.74%となっている。
メリルリンチ日本証券の大崎秀一チーフ金利ストラテジストは、「20年債入札を前に同利回りが0.6%を割り込む水準では若干不安があり、積極的になりにくい」とし、やや弱い相場展開になっていると説明。「0.6%を超えてくれば押し目買い需要も期待され、無難な入札になる可能性もあるが、そこまで調整できるのかが一つのポイントになる」と付け加えた。
長期国債先物市場で中心限月3月物は前週末比1銭安の150円26銭で取引を開始。いったん5銭高の150円32銭まで水準を切り上げたが、午後には150円24銭まで売られる場面も見られた。結局は1銭高の150円28銭で引けた。
●円全面高、英強硬離脱懸念でドルは114円台割れ−ポンド急落
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東京外国為替市場では円が全面高。英国の欧州連合(EU)からの強硬離脱を懸念してリスク回避の動きが強まったことが背景で、ドル・円相場は1ドル=114円を割り込み、昨年12月以来の安値を付けた。
午後3時57分現在のドル・円相場は前週末比0.6%安の113円79銭。早朝のポンド急落でいったん114円67銭までドル高に振れた後は、対ポンドでの円買いが波及し、114円10銭付近までドル安・円高が進行。その後、しばらく一進一退の展開が続いたが、徐々に円買いが優勢となり、欧州市場に向けては113円63銭と昨年12月8日以来の水準まで円高が進んだ。
先週末に1ポンド=139円台だったポンド・円相場は、早朝に昨年11月21日以来となる136円台後半まで急落。137円台後半まで反発した後は伸び悩み、午後には再び137円を割り込んだ。
ソシエテ・ジェネラル銀行東京支店の鈴木恭輔為替資金営業部長は、ドル・円の下落について、単体というよりも「英国発のリスクオフ的な材料に対するクロス円(ドル以外の通貨の対円相場)の軟調が重しになっているのだろう」と説明。「ひとまずは欧州勢が英国材料にどのように反応するかが目先の鍵になりそう」と語った。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-01-16/OJUYID6S972901
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