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サブプライム危機の再来か、米PACEローン(前編)
返済能力の軽視や勧誘方法に問題あり
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排水管の浸食で家が水浸しになり、1万6732ドルのPACEローンを組んだカリフォルニア州サンノゼ在住のシンディー・ベンチュラさん(左)と母親 PHOTO: PRESTON GANNAWAY FOR THE WALL STREET JOURNAL
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KIRSTEN GRIND
2017 年 1 月 16 日 06:49 JST
米カリフォルニア州イングルウッド在住のディアナ・ホワイトさんは業者から勧められた改装工事費用4万2200ドル(約490万円)のローンを抱える余裕はないと伝えた。その業者はホワイトさんに、このローンは「政府プログラム」であり、問題ないと言ったという。そこでホワイトさんはローンを申請し、承認された。
2年後の今、ホワイトさんはローンの支払いに苦しんでいる。ホワイトさんが抱えるローンは、1万件を超える同様のローン債権とまとめて証券化されており、組成された債券が投資家に販売されている。現行制度の下では、ホワイトさんがデフォルト(債務不履行)に陥れば、寝室が5部屋の自宅が差し押さえられる可能性がある。
ホワイトさんが利用したのは、戸建て住宅向けのPACE(Property Assessed Clean Energy=不動産として評価されるクリーンエネルギー設備)と呼ばれる公的ローン制度だ。省エネ設備の設置に融資するもので、太陽光パネルやエネルギー効率の良い窓やエアコンなどの購入を促進させる制度として、全米各地で導入されている。
これまでに住居用として約34億ドルが同制度を利用して融資された。業界からは向こう1年以内に融資総額がこの2倍に膨らむと予測する声も出ている。そうなればPACEは米国で最も急成長を遂げるローンとなるだろう。
PACEローンの利用が拡大するに連れて、サブプライムローン危機と似たような問題も広がっている。ローンに関する書類や数十人におよぶ借り手および業界幹部らの話によると、現場では配管工や修理工といった作業員がローンのブローカーとして機能しており、貸し手から仲介手数料を稼いでいる。だが十分な訓練や当局の監督を受けてはいない。
貸し手にとっては借り手の信用力はほとんど問題ではない。ローンは不動産価値に基づいているためだ。PACEローンは通常、頭金を必要とせず、固定資産税に上乗せする形で債務を返済する仕組みになっている。このためホワイトさんの固定資産税を含む支払額は年間1215ドルから6500ドルに跳ね上がった。
PACEローン融資額の推移(単位:10億ドル)
https://si.wsj.net/public/resources/images/P1-BZ737_ENERGY_16U_20170105174505.jpg
PACEローンの急成長はこのローンから証券化された債券への旺盛な需要も一因だ。とりわけ、投資信託会社や保険会社の間で引き合いが多い。投資家はこの債券の比較的高い利回りや環境問題に取り組んでいるという良い印象、信用格付けの高さを好感している。一方、格付け会社はPACEローンの将来のデフォルト率を予想する長期データが十分にあるわけではないと説明する。
クリーンエネルギーを普及させる手段としてPACEローンを採用した地方政府のなかには、ホワイトさんが抱えているような厄介な成り行きを予想していなかったところもある。
カリフォルニア州の複数の市と郡で構成される団体で、最大のPACEローンの運営を手助けしているウエスタン・リバーサイド・カウンシル・オブ・ガバメンツの責任者、リック・ビショップ氏は「われわれが今耳にしている(PACEローンの)欠点は、何らかの方法で誤った情報を教えられたように感じている人がいることだ」と述べた。
同団体は借り手が抱える問題の解決を試みている。同州リバーサイド郡はPACEローンの勧誘方法に関する調査に着手。同州のジェリー・ブラウン知事は昨年9月、統一された情報開示の確立を新たに義務づける法律に署名した。これは融資条件を住宅ローンに近づけるものだ。PACEローンを組む債務者は3日以内であればローンの取り消しが可能だ。
PACEローンの最大の貸し手であるリノベート・アメリカは昨年11月、借り手から3件の訴訟で訴えられた。争点は、利子や管理手数料の二重取りをしていたなどの点だ。原告は集団訴訟を目指している。一方で同社は原告の主張を否定したうえで、「PACEと自社、そしてプログラムを積極的に守る」としている。
米エネルギー省は昨年11月、ローンの運営事業者に対し、借り手が負担する費用や条件を明確に説明することや、一定期間内であれば解約を認め、仲介業者へのキックバック(見返り)を防止するよう求めた。
*この記事は後編に続きます>>
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サブプライム危機の再来か、米PACEローン(後編)
背後には政府がついているとの安心感
自身を「資本主義者のヒッピー」と表現するシスコ・デブリーズ氏(中央、2015年7月21日、ニューヨーク) PHOTO: GETTY IMAGES FOR NEW YORK TIMES
By
KIRSTEN GRIND
2017 年 1 月 16 日 09:21 JST
エネルギー効率の良い設備の設置を促進させる制度として、全米各地で導入されている公的ローン制度のPACE(Property Assessed Clean Energy=不動産として評価されるクリーンエネルギー設備)。同制度の利用が拡大するに連れて、サブプライムローン危機と似たような問題も広がっている。
• サブプライム危機の再来か、米PACEローン(前編)
PACEローン最大の貸し手リノベート・アメリカの創業者、JP・マクニール最高経営責任者(CEO)によると、「消費者の利益にならない事態を防ぐため」、ローンの貸し手は消費者団体と協力して全国的な統一基準を作成中だ。
業界関係者は、こうした成長痛はPACEプログラムが始まってまだ日も浅いことが主因だと指摘する。最初のPACEプログラムは2007年にカリフォルニア州バークレー市長の首席補佐官を務めていたシスコ・デブリーズ氏によって始められた。
ニューヨーク州にある業界団体PACEネーションによると、これまでに34の州と首都ワシントンの地方議会がPACEプログラムの採用を承認している。
自身を「資本主義者のヒッピー」と表現するデブリーズ氏は現在、カリフォルニア州オークランドに本拠を置くクリーンエネルギー設備に特化した融資を手がけるリニュー・フィナンシャル・グループのCEOを務めている。同氏は「われわれが成し遂げたことを本当に誇りに思う」とし、次にこう述べた。「お金とエネルギーを節約する手助けになることを目指した。今それが進行中なのだ」
昨年7月に米住宅都市開発省が、PACEローン付き物件について連邦住宅局(FHA)が保証するローンで購入することを認めたことで、PACEローンの広がりに一段と弾みがつくかもしれない。
PACEローンの融資額は5000ドル〜10万ドル超と幅広いが、平均は約2万5000ドルだ。金利は6%〜9%で、返済期間は通常5年〜25年となっている。
返済は毎月ではなく年に1回〜2回、固定資産税と一緒に支払う。市や郡の当局は返済額をまとめて融資業者に受け渡す仕組みだ。
PACEローン制度を採用した州の数
https://si.wsj.net/public/resources/images/P1-BZ739_ENERGY_16U_20170105174810.jpg
地方政府は融資業者から手数料を受け取る。昨年6月30日までの1年間で、ウエスタン・リバーサイド・カウンシル・オブ・ガバメンツは710万ドル(予算規模の約15%)の収入をPACEプログラムから得ている。
PACEローンのもう一つの特徴は、住宅ローンよりも優先される債務であることだ。これはPACEローンでデフォルト(債務不履行)を起こした場合、物件は担保として差し押さえられ、資金回収のために売却されることを意味する。
この仕組みは地方政府を複雑な立場にさせる。デフォルトが発生し、物件の価値が債務の額を下回っていた場合、税金による穴埋めが起こりかねないからだ。ただこれまでのところ、そうした事態には至っていない。
投資家らは、背後に政府がついているとの安心感がPACEローンを担保にした債券に引きつけられる主因だと話す。
アイオワ州ウェストデモインにあるファーム・ビューロー・インシュランスの親会社、FBLフィナンシャル・グループでポートフォリオ管理担当のバイスプレジデントを務めるマイク・ウォーマス氏によると、同社は昨年9月末時点で、2200万ドル相当のPACEローン担保債券を保有している。利回りは4%前後だという。
米格付け会社クロール・ボンド・レーティング・エージェンシーによれば、PACEローンのデフォルト率は1%未満だ。同社のシニアディレクター、セシル・スマート氏は、投資家ではなくローンの貸し手が損失を負担するような仕組みになっていると指摘した。
PACEローン債権の証券化で最大級の規模を手がけた金融機関のひとつはドイツ銀行だった。昨年12月中旬には予想をはるかに上回る2億8400ドル相当の需要があった。関係者によると、同行はブローカーによるローンの仲介から生じている問題を認識している。
現在および元従業員の話によると、仲介業者は戸別訪問の際にPACEローンを案内することが多く、契約者1人あたり最低500ドルの手数料を稼ぐことができる。ローン契約者は、地元のイベントや勧誘電話でもローンを勧められたと話す。
リノベート・アメリカはこの数カ月間、消費者団体と協力して全国的な統一基準の策定に取り組んでいる。新たな基準には、経済的苦境に陥っているローン契約者に1年間の返済猶予を設けることが盛り込まれる可能性がある。
カリフォルニア州イングルウッド在住のディアナ・ホワイトさんは、ハウス・ネクスト・ドアという業者の担当者は2年前に、4万2200ドルのローンの支払いで心配することはないと言ったと話す。その際、「あなたのポケットから出て行くものではないから」だと説明したという。 (前編テキストリンク貼る)
ホワイトさんのローンは1万1282件のPACEローンとともにまとめられ、ウエスタン・リバーサイド・カウンシル・オブ・ガバメンツが発行する債券の担保となっている。その債券をドイツ銀が「HERO Funding Trust 2015-1」として証券化し、2億4000万ドルを集めた。同証券は格付け会社クロールから3番目に高い「AA」の格付けを与えられている。
次の返済日を4月に控えたホワイトさんは、どうお金を工面すればいいのか分からないと話した。
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