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昨年12月20日の働き方改革実現会議では、同一労働同一賃金を推進するガイドライン「案」が提示された Photo:読売新聞/アフロ
「同一労働同一賃金」の政府指針案に産業界が“どこ吹く風”の訳
http://diamond.jp/articles/-/113590
2017年1月10日 週刊ダイヤモンド編集部
ある大手メーカーの人事担当幹部は、ほっと胸をなで下ろした。昨年12月末、安倍政権が進める働き方改革の“一丁目一番地”とされる「同一労働同一賃金」のガイドライン案の詳細が明らかになり、産業界は最悪の事態を回避できたことに安堵している。
そもそも、同一労働同一賃金とは、同じ仕事に従事する労働者には同じ水準の賃金が支払われるべきとする概念のこと。もともとは男女差別をなくす目的で生まれた考え方だが、今回のガイドライン案では、雇用形態による不合理な待遇差をなくすことを目的としている。いまや日本の雇用者の4割が非正規労働者で占められており、まずは、同じ企業内で働く「正社員」と「非正規労働者」との間にある理不尽な差別を解消していこうというものだ。
政府とて、気合が入っていなかったわけではない。2017年度政府予算では、企業への助成金など同一労働同一賃金関連だけで約600億円もの巨費を投じる。
ガイドライン案には、基本給、賞与・手当、福利厚生、教育訓練・安全管理の四つのテーマに関して、非正規労働者をどのように待遇すると問題が生じるのか、具体的に示されている。その実例集はA4用紙で16枚の分量に及んだ。
鳴り物入りで開示された指針案に、本来ならば、産業界は戦々恐々としているはずだった。特に、非正規労働者に昇給や賞与の支払いを課す対応は、総人件費のアップにつながりかねない。となれば、人件費抑制をにらみ正社員の賃金体系・社内規定の抜本的見直しに踏み込まざるを得ないからだ。
■産業界の防御ポイント
ところが、である。政府の締め付けにも産業界はどこ吹く風だ。
まず、今回のガイドライン案はあくまでも「案」にすぎず、法的拘束力を伴うものではない。ガイドライン案が実効力を持つには、労働契約法など3法の改正が必須だが、その日程が定まらない。
「早ければ秋の臨時国会に法案提出は可能だが、現実的には18年秋にずれ込むこともなきにしもあらずだ。それまで、『案』は棚上げになる」(ある官庁幹部)という。
次に、産業界が懸念していた「立証責任の(労働者から企業への)転換」は見送られた。正社員と非正規労働者との待遇差をめぐって訴訟となった場合には、今回のガイドライン案が司法判断の根拠ともなり得る。ただし、その不合理な差別の立証責任は企業ではなく、労働者が負うこととなり、産業界は最大の防御ポイントを守り切った。
もっとも、これで公平な労働ルール策定を進める「働き方改革」を産業界が後退させていいということにはならない。政府方針に依存することなく、格差是正と労働生産性を両立させた対策が急務であることは言うまでもない。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 浅島亮子)
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