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国家に企業が従う統制経済復活
【大予測:資本主義】国家に企業が従う統制経済復活 その2
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20170109-00010002-jindepth-bus_all
Japan In-depth 1/9(月) 18:00配信
自由貿易やカネ・ヒト・モノの自由な移動に支えられたグローバル化の進行する2017年までの世界は、政治が経済に従属するプロセスが進行していた。
企業や投資家の活動は、投資ルールに従えば、共同体や人々の生活への影響がどのように破壊的・持続不能なものになろうとも許された。
一国の法律や、あまつさえ憲法までもが多国籍企業の利潤追求とグローバル経済活動に隷属する、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の「投資家と国との間の紛争解決(ISDS)条項」は、その最たるものだ。
だが、1月20日に就任予定の共和党のドナルド・トランプ次期大統領は、「政治が経済を支配する」統制経済を目指し、1980年代に共和党のロナルド・レーガン政権が解き放ち、歴代共和党・民主党政権が共同作業で育て上げた「政治が経済に従属する」新自由主義型の資本主義という「化け物」を退治しようとしている。トランプ氏はレーガン時代の経済政策を模倣してはいるが、本質においてアンチ・レーガンである。
トランプ次期大統領は、民間の工場海外移転などの経済活動に次々と介入し、資本主義のルールを無力化している。経済学者の小幡績氏は、「トランプの企業への圧力はパフォーマンスであり、実際に大統領になってからは発言にある程度抑制はかかるし、実際に関税などの手段に出るためには、議会を通さないといけないから、さらに抑制がかかる」と予測するが、甘い。トランプ氏は本気であり、だからこそ統制経済に向けた言動には強固な意志と一貫性がある。
事実、米外交問題評議会のエドワード・アルデン研究員が指摘するように、「米大統領が、自動車大手フォードのメキシコ工場投資を国家の産業非常事態とみなし、制裁を発動することを妨げる規定は、どこにもない」のであり、「非常事態権限の濫用ではあるが、トランプは常識や期待に縛られない男」なのだ。
こうしたなか、著名投資家のビル・グロース氏は、「イタリアのムッソリーニ時代の政策や、企業の利益が政府の管理下に置かれた時代を思い出させる」と発言したが、正鵠を射ている。しかし、「管理経済」はオブラートに包んだ言葉であり、実際はソ連など社会主義国家や戦時体制の日本が採用した「計画経済」「統制経済」と呼ぶのにふさわしい。
ローレンス・サマーズ元米財務長官は、トランプ次期大統領が資本主義の根幹を脅かしているとして、次のように警鐘を鳴らす。「米資本主義は、ルールと法に則って運用されており、予測性が高く、不確実性を減少させる。米大統領は巨大な権力を持っており、それが恣意的に使われると、企業は大統領の望む場所に工場を建設し、大統領の望む雇用を創出し、大統領の望む研究を行うようになる。トランプ氏の介入は、資本主義手続きより、政治的結果を重視したという象徴的な意味を持つ」。
そうした意味で、トランプ次期大統領の圧力によりメキシコ工場新設を断念したフォードのマーク・フィールズ最高経営責任者(CEO)の、「私は経営者として、株主に(彼らの利潤最大化という)責任を負っているが、同時に、権力を持つ政府との良好な関係を確実にしなければならない」という言葉が重く響く。
トランプ氏が推進する「経済の政治への隷属」政策の本質を見れば、「中間層や労働者の味方」を標榜しつつも、実際には従来の予測可能な資本主義のルール継承を掲げていた民主党大統領候補のヒラリー・クリントン前国務長官こそが、財界や富裕層の味方であったように見える。
だが、トランプ次期大統領の統制経済的な政策は、本当に財界や富裕層にとって脅威なのだろうか。不動産王で大富豪のトランプ氏こそが、財界や富裕層を代表する人物ではないか。なぜ、そのトランプ氏が、企業にやさしい規制撤廃を標榜しつつも、社会主義的と言われても仕方のない政策を掲げるのだろうか。
(その3に続く。全4回。その1。毎日18時配信予定。)
岩田太郎(在米ジャーナリスト)
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