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朝日新聞のあまりに稚拙な「経済成長否定論」を一刀両断してみせよう 経済面でも、この国をミスリードするか
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/50671
2017.01.09 橋 洋一経済学者 嘉悦大学教授 現代ビジネス
■朝日はなぜそこまで成長を否定したいのか
また慰安婦像を巡って、日韓で大問題が起こった。
2015年12月、ソウル日本大使館前の慰安婦像撤去などを約束した日韓合意が行われたが、ソウルの慰安婦像撤去が進められない中、釜山領事館前に新たな慰安婦像が設置され、日本政府は合意違反であることを訴え、駐韓大使一時帰国などの対抗措置を講じた。
韓国が、国家間の約束違反を平気で行うことにあきれる。さすがに今回は韓国人のなかにさえ、「韓国が悪い」という人が多いようだ。
韓国内で慰安婦問題が正しく理解されない原因の一つは朝日新聞の誤報にあるが、そんな朝日新聞が、国際面だけでなく経済面でもやってくれた(http://www.asahi.com/articles/ASJDY5DR2JDYULZU005.html)。
新年特集の記事のなか(4日付)で、
《ゼロ成長はそれほど「悪」なのか。失われた20年と言われたその間も、私たちの豊かさへの歩みが止まっていたわけではない》《いまのような経済成長の歴史が始まったのは200年前にすぎない》《成長の鈍化はむしろ経済活動の「正常化」を意味しているのかもしれない》
といった論評をしている。
この「成長否定論調」には、すでにネット上でも批判が出ている。一言でいおう。成長を否定したら、幸福の実現は難しくなるのだ。
この論評は、いろいろな識者の意見や身の回りの経済現象をつまみ食いしながら、今の安倍政権の経済政策を批判している。識者の意見の引用も的外れで、最近の経済現象にも無理解があるなど、ほぼ全編に突っ込みどころが満載である。だから、ネット上でも叩きやすい。
特に茶化しやすいのは、
《いまのような経済成長の歴史が始まったのは200年前にすぎない》
《成長の鈍化はむしろ経済活動の「正常化」を意味しているのかもしれない》
という箇所だ。例えば、
《朝日新聞が読まれていたのは、せいぜい140年にすぎない》
《朝日新聞を読まないのは、正常化を意味している》
といったように、これを引用して皮肉で返すこともできる。この「200年に過ぎない」という指摘は、現代のもののほとんどに成り立つことなので、論法としては説得力のないものになる。
筆者は、いくつかの正月番組に出演したが、やはりこの話題を聞かれた。例えば、5日のテレビ朝日「ワイドスクランブル」で、成長不要論が出ているがどう思うかと聞かれた。
ちょうど番組では、人々の満足度をどのように高めるかという話題になっていたので、筆者のほうから、経済成長と失業には密接な関係があり、経済成長しないと失業が増えるという「オークンの法則」(Okun's Law なお番組後、出演者から英語のスペルを聞かれた)を紹介し、成長なしでは人々の満足度は高まらないと説明した。
失業は人々をもっとも不幸にするものだし、本コラムでも紹介したが、失業が増えると自殺率や犯罪率が高くなったり、生活保護率も高くなるなど、社会へのマイナス効果ははかりしれない。
このため、少なくとも筆者が首相官邸で経済担当として働いていた小泉政権や第一次安倍政権では、最優先で改善すべき経済指標は失業率だった。
■朝日新聞「経済政策批判」の常套手段とは
テレビ朝日の番組では、この点を踏まえて、失業の低下は最低限政府が行うべきことで、日本の場合成長率が1%下がると失業率は0.2%くらい上がると指摘した。
この対応は、その場のやりとりで出た話であるが、成長率と失業率の関係を示すオークンの法則について筆者は常に意識しているので、定量的な関係もすぐわかる。以下は、その根拠となる図である。
なお、メインキャスターの橋本大二郎さんから、人口減少が進んだとしても、オークンの法則は成り立つのかと聞かれたので、成り立つと答えている。もちろん日本を含め先進国で成り立つことが知られているからこそ、経済法則の名前に値している。
朝日新聞の成長否定論はおかしいことが、多くの人にもわかるだろう。
成長否定論は、これまでも経済運営がうまくいっているときに、戦後左翼系の識者がしばしば行ってきた。成長という実績の前に、政権批判したいときの常套手段である。こうしてみると、安倍政権の経済運営は朝日新聞が批判するほどになったかと笑ってしまう。
1970年代、日本経済が急発展を続けていた頃、やはり朝日新聞は「くたばれGNP」という連載を行っていた。その後、石油ショックで本当に日本経済が成長しなくなると、「くたばれGNP」どころでなくなったため、このスローガンは消え去った。経済がダメになったら、そもそも日本が終わりになるからだ。
上のオークンの法則が如実に示すように、経済成長は失業を減らす。そうなると、自殺率、犯罪率、生活保護率なども良くなる。
このように、経済成長は全ての問題に万能とはいえないが、それでも経済成長がないよりは、ある程度の問題を解決できる。経済成長は国民全ての所得を増やすことになるので、弱者を助ける分配問題においても、パイが大きくなるので解決が容易になる。
ボーリングでたとえれば、経済成長は1投目でセンターピンを倒すのに相当する。1投目でセンターピンにあたれば、うまくいけばピン全てを倒せるが、そうでなくても7、8本を倒せて、2投目でスペアがとりやすい。
逆にセンターピンを外すとスペアをとる確率が悪くなる(なお、筆者は50年ほど前のボーリングブーム時代にボーリングにのめり込み300点ゲームを達成したこともあるので、このたとえが好きである)。
さて、問題はこれからだ。
たしかに、成長否定論はおかしいことが今では多くの人にもわかる。しかし、どのようにしたら成長できるのか。ここがわかっていない人は多い。
■「成長率批判」はあまりに身勝手
マスコミでよくある意見は、成長戦略こそがその解決策というものだ。そして、安倍政権では成長戦略ができていないのでダメだ、という批判にもってくる。
この論法は一部当たっているが、多くは的外れだ。
そもそも成長戦略は、長期的には成長率を高めるだろうが、短期的な効果はまずない。成長戦略の効果が出るのは早くても数年先であり、短期的な効果はない。
しかも、成長戦略で当てるということは、成長産業を探すことであり、それは至難の業である。筆者は、しばしは成長戦略を当てることは、千に三つほどの確率で、下手な矢でも1000本打てば、数年後に3本も当たれば御の字であるといっている。
短期的な手法は、アベノミクスの第一の矢の金融政策と第二の矢である財政政策によるしかない。
この意味で、アベノミクスが金融政策、財政政策、成長戦略という3本の矢を用意したのは、短期的・中長期的には正しいのだが、マスコミはその関係をきちんと理解できないために、処方箋の説明はかなりデタラメになっているのだ。
その理由は、マクロ経済学への無理解にある。そもそも、オークンの法則はマクロ経済学の基本原理であるが、こうしたことを理解せずに、アベノミクスを語りたがるのはマスコミの悪いところだ。
せっかくであるから、この際オークンの法則を題材として、失業を可能な限り減少させるような経済政策を考えてみたい。
オークンの法則の背後には、マクロ経済の基本概念として総供給と総需要の差であるGDPギャップがあり、景気の良し悪しはGDPギャップではかることができて、成長できずにGDPギャップが大きくなると、失業が増えることがわかる。
ここまで来ると、次に述べるように、金融緩和と財政出動はともにGDPギャップを縮めることもわかる。
財政出動は公的部門の有効需要を直接創出するのでわかりやすい。一方、金融緩和については、実質金利の低下、為替安などで民間部門の有効需要短期的に、長期的には効果累積額でみると大きく作用する。
財政政策は直接有効需要を作るので、短期的な効果は大きい。一方、財政政策が財政事情などで継続的にできない中、金融政策は継続的に実施しやすいので、金融政策は長期的に効果が出やすいともいえる。
こうして、短期的な効果は財政出動の方が強いが、中長期的には金融緩和も効果が出る。となると、金融緩和のほうが失業率低下の累積効果が大きくなる。
こうしたマクロ経済学の基本的な理解があれば、財政出動とともに、金融緩和も失業を減らすということがわかるはずだ。そして、累積効果が大きくなる金融緩和の場合、インフレ目標は緩和しすぎないための歯止めだ。これは欧米先進国の常識でもある。
また、最近の失業率の低下は、金融政策の効果ではなく、生産年齢人口の低下のためであるという議論もあるが、これは、人口減少だからデフレになると同じくらい、間違った考え方である。それは、生産年齢人口が増えていた以前のときのほうが失業率が低かったことからもすぐわかる。
こうした誤解は、マクロ経済学の理解ができていないばかりか、統計データのリテラシーに欠けていることの問題でもある。
■失業率を上げないための、具体的な策とは
失業率と生産年齢人口の推移をみれば、最近の失業率の低下は生産年齢人口の低下とは結論付けられない。
失業率は、労働力人口から就業者数を引いたものを労働力人口で除して定義される。労働力人口は「15歳以上の人口」であり、生産年齢人口は15歳以上65歳までの人口。
両者はパラレル概念だ。労働力人口(生産年齢人口)が減少するとき、それを所与とし、経済状況によって就業者数が決まってくる。なので失業率は分子も分母も労働力人口の動きを見込んだものとなって、景気だけに左右される。
まともに統計分析すれば、生産年齢人口はコンスタントに減少する一方、失業率は景気で上下となるので、傾向を除去して考えれば両者は無関係であることがわかる。
ちなみに、オークンの法則のように前年からの失業率の差と前年からの生産年齢人口伸率をみれば、無関係であることは明らかだ(下図)。
雇用を守るべき左派系識者や経済評論家はそうした常識が欠けていると、筆者は本コラムで何度も指摘してきたが、実は右派系にもいるのが現実だ。
金融政策と雇用の関係はマクロ経済学のイロハである。もっとも、日本では、金融政策を正しく理解しているに過ぎないのに「リフレ派」と呼ばれ、特殊扱いされてしまうのは困ったモノだ。
そこで、今の日本で、失業を増やさないための、具体的な政策を提示しよう。
昨年に日銀は金利管理に移行した。これは、金融緩和に対し積極的ではなく受け身になったことを意味する。この方式では金融政策が財政依存になる。政府が国債を発行しないと金利が下がる。それを日銀が引き上げると金融引き締めになりかねないが、政府が国債を発行すれば逆に金融緩和になるという具合だ。
そうした状況では、財政政策の出番(国債発行)であり、そうなれば、財政・金融一体発動になって、日本経済に好都合となる。
幸いなことに、日本の財政問題も、現時点で考慮しなくてもいいくらいだ。この点は、本コラムで再三指摘してきている。
さらに、国債を発行して財源調達すべき分野も、法律改正が必要だが、教育など未来への投資と言われる分野で多い。金利環境がいい現在は、未来への投資に事欠かない状況である。
というわけで、未来への投資として、国債発行による財政出動(自動的にこれは金融緩和にもなる)をすべきというのが、失業を増やさないための筆者の解である。
朝日新聞の論評が文中で言及しているシェアリングエコノミーは経済成長を促進するものであるため、朝日新聞の主張は支離滅裂になっている。いっそのこと、そういた新しい動きを利用するとともに、政府に国債発行による教育支出増などを提言し、さらに経済成長して、貧困をさらになくせという言うべきなのだ。
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