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2016年の新規上場マーケットを一挙総括! 浮かび上がった傾向は? 投資家にとっては魅力が薄れた!?
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/50634
2016.12.31 田中 博文 現代ビジネス
12月28日で、昨年の新規上場案件が全て終了しました。一昨年に引き続き、2016年の新規上場マーケットの総括をしてみたいと思います。
【ハイライト】
1.新規上場社数は昨年の92社から83社と7年ぶりに減少。
2.昨年の目玉は日本郵政上場だったが、今年はLINEとJR九州以外は小粒。
3.時価総額、予想PER、株価騰落率の下落傾向にあり、投資家からの魅力が薄れつつある。
■新規上場社数は7年ぶりに減少。マザーズが圧倒的
過去10年の新規上場社数とその年の大納会の日経平均終値をグラフにしました(※2016のみ12月28日終値)。
2007年の世界的なサブプライム問題表面化より、日経平均と新規上場社数は下げに転じ、2008年のリーマンショックを機に日経平均が大きく下がるとともに 2009年には新規上場社数は19社まで落ち込みました。
それ以降、日経平均は東日本大震災の影響を受けるも、2015年までは新規上場社数は6年連続増加しましたが、今年は83社と7年ぶりの減少となりました。
今年はこの原稿を書いている時点では日経平均は昨年の大納会を超えてはいますが、まだマーケットは開いており、ここにきて下げが続いていることも勘案すると、新規上場はやはりマーケット環境に大きく影響を受けると言ってよいでしょう。
ただし、今年(12月28日終値時点)は日経平均は過去10年で一番高かったのですが、新規上場社数は150社を超える水準にまで到達していません。個人的にはもう新規上場が 150社とか200社という時代は来ないと考えていますが、この話はまた別の時にしたいと思います。
今年の市場別の上場社数は、マザーズが54社と全体の3分の2となっており、全体の上場社数が減少してもこの傾向は変わっていません。一方で今年はジャスダックスタンダードが昨年の11社から14社に増加しました。
また、昨年は札証アンビシャス、名証セントレックス、福証Qボードなどの地方新興市場への上場もありましたが、今年は名証2部に丸八ホールディングスと岐阜造園、の2社のみの上場となりました。
東証一部への直接上場は今年も8社と変わりませんでした。
■主幹事はみずほが首位となるが、上位は僅差
次に主幹事証券ですが、今年はみずほが18社と首位となりました。私の記憶が間違いなければ、みずほの首位は初めてだと思います。しかし2位の野村、3位の大和も1社、2社違いであり、今年は僅差の争いでした。
その中で特筆すべきは、SBIが昨年の8社から5社増やして13社となったことです。SBIは毎年着々とその実績を積み上げており、今年はSMBC日興の12社を抜くなど、大手の一角を切り崩すところまでになりました。ネット証券にも引受の人材が集まってきたということになります。
■経常利益5億円未満が全体の半数以上
これはLINEが申請期の業績見込みを開示していなかったので82社となります。
昨年と比較してみましょう。今年は売上高50億円未満が46社と、昨年と同様、全体の半数以上という状況です。一番売上高が小さいのはAI(人工知能)技術をベースにしたウェブマーケティングサービスの開発・提供を行っているシルバーエッグテクノロジーの7億4100万円、一番大きいのは九州旅客鉄道の3788億円でした。
一方で経常利益ですが、昨年は赤字が4社でしたが、今年はゼロです。さらには今年1億円未満の発行体もありませんでした。業績見込みの利益額は1億円から5億円未満まで52社であり、全体の60%以上となっています。
利益が一番小さかったのは、 法人向けオンライン企業・業界情報プラネットフォーム「SPEEDA」の提供、経済ニュースサービス「NewsPicks」の提供を行っているユーザベースの1億1700万円。一方で経常利益が一番大きかったのは九州旅客鉄道の535億円でした。
昨年との比較ですが、全体で9社の減少数を考慮する必要はありますが、今年は利益のばらつきが小さくなりました。特に少額の利益の発行体の上場は見合わせた印象です。
これは、昨年のgumiショック以降、主幹事証券、証券取引所の審査が申請期の業績の精査を行った結果、それなりの売上規模、経常利益の発行体を中心に審査が行われたということが言えると思います。
全体的な印象としては、引き続き、申請期売上高 50億円程度、経常利益は1億円以上5億円未満という発行体のイメージができそうです。
■予想PERの平均は昨年の19.8倍から16.4倍へ
次に公開価格(※初値ではない)による予想PERですが、PERが一番高かったのは、ユーザベースの199倍、次に高いのがPXBマウスを用いた受託試験サービスのフェニックスバイオの45倍だったので、ユーザベースのみ突出していました。
ただし昨年は Gunosyの5241倍、一昨年がフリークアウトの6451倍、アキュセラインクが2195倍だったことを勘案すれば、PER倍率はかなり落ち着いてきました。
この予想PERは一昨年が22.4倍、昨年が19.8倍、今年が16.4倍と明らかにバリュエーションが下がってきています。先ほども書いたように、審査の厳格化と投資家保護の観点から、IPO全体感としては徐々に魅力が薄れつつある状況になってきています。
■株式時価総額は4160億円から11億円まで
公開価格で計算した株式時価総額の分布ですが、50億円未満で46社、100億円未満で62社と全体の 75%になります。一昨年は60%、昨年は72%でしたので、より小型化が進んでいることになります。一番小さいのは不動産販売事業、不動産賃貸管理・仲介事業及び海外不動産事業のデュアルタップで11億5400万円でした。
昨年は札幌アンビシャスのエコノスで4億4500万円、名証セントレックスのアートグリーン、福証Qボードのエスケーホームが10億円未満でしたが、これはいずれもマザーズの上場基準である株式時価総額10億円を超えられないための上場市場選定と思われます。
興味深かったのは、時価総額下位10社のうち、6社がジャスダックスタンダード銘柄だったことです。ジャスダックスタンダードは今年14社が上場しましたが、そのうちの6社が下位10社に入っており、ジャスダックスタンダードの審査が「企業の存続性」を中心に行われた結果、将来の成長性が少なくても、安定的に事業が継続可能と判断された発行体はバリュエーションが付きにくいということになります。一方、マザーズは「成長性」を審査しています。
また、時価総額で一番大きかったのは、LINEの6929億円で、次に九州旅客鉄道の4160億円でした。1000億円以上はこの2社です。昨年は日本郵政3社の株式時価総額は全て1兆円以上で、その次はベルシステム24ホールディングスの1136億円、デクセリアルズの1080億円でした。
一昨年はリクルートホールディングス1兆7994億円以下、西武ホールディングス5474億円、ジャパンディスプレイ5412億円、すかいらーく3378億円、日立マクセル 1104億円だったことを比較すると、1000億円以上の大型案件の数が少なかった年でもありました。
■初値騰落率は67勝15敗1分け
83社の公開価格に対する初値の騰落率は初値が公開価格を上回ったケースが67社、公募割れが1社。公開価格と同じが1社でした。これは昨年と比較すると公募割れが倍に増えており、前述のPERが下がっていることも含めて、明らかに投資家の購買意欲が弱くなっていることの表れと考えています。
また昨年は300%以上が6社ありましたが、今年は1社です。全社平均は71.2%であり、昨年の80.9%と比較しても下がっています。
もちろん、主幹事の立場からすれば、初値が高いことが必ずしも、良いことだとは考えていません。
公開価格のプライシングですが、通常のバリュエーション(フェアバリュー)からIPOディスカウントは20%〜30%が多いと思われます。要は想定時価の20%〜30%安で売っているわけですね。
このようにする理由は大きく2つあります。
ひとつは投資家からの目線です。今この値段が正しいのはわかる。投資家は正規の値札では買いづらい。それは言い換えれば「いつ買っても同じ値段」ということであり、今買わなくてもよいと言うことです。その場合、投資家から見たIPOの魅力が薄れ、発行体が考えている株数を消化できない可能性があります。
換言すれば「100円のものを100円で売っているのでは、芸がない」ということです。
投資家は短期的・長期的に株価上昇が見込めればいいわけで、別にこの銘柄でないとダメな理由はあまりありません。
もうひとつは、「情報の連続性」の部分です。既に上場している会社は過去暦年で財務諸表を定期的(四半期毎)に開示しており、その数値の連続性については担保されているわけですが、ハイライト情報含め5期の財務諸表が開示されていたとしても、まだまだ情報の開示体制が不慣れであることは否めず、その部分のディスカウントがかかります。
要はこのフェアバリューとIPOディスカウントのギャップが、公募価格と初値との関係に近いと考えていただければと思います。よって、IPOすることによって、このディスカウントが解消され、通常、初値は公開価格の20%〜30%になるのが一番良いディールだと言われています。
よって、その時のマーケット環境にも影響は受けますが、初値が公開価格の2倍にも3倍にもなるのは、当初のバリュエーションが妥当であったかということになり、主幹事証券としてはあまり褒められたケースではないということになります。
■ファイナンス総額は九州旅客鉄道4160億円が最大
公募・売出しを含むファイナンス総額(OAは含まず)ですが、10億円未満が38社、20億円未満で 60社とこれもやはり全体の70%近くになり、昨年と同程度でした。
一番小さいのは料品等の製造・販売業を行うグループ会社の経営管理及びそれに付帯する業務のヨシムラフードホールディングスの2億6400万円(うち公募2億4300万円)一方で一番大きいのは、九州旅客鉄道で政府が全株売出しを行う4160億円でした。
次にファイナンス総額と同じくらい重要で、株式時価総額の何%をマーケットに放出するかという指標のオファリングレシオ「(公募数+売出し数)÷発行済株式総数(公募含む)」ですが、これは、平均が25.3%でした。昨年が25.9%、一昨年は26.1%だったので、ほとんど水準は変わっていません。
要は新規上場時に約4分の1のファイナンスを行っているということになります。これはマーケット環境に関係なく、従来からこの程度の比率になっています。
今回一番小さいのは、ヨシムラフードホールディングスの6.9%でした。そして一番大きかったのは、 当然九州旅客鉄道の100%で、政府保有のすべてを売出しました。普通は100%売り出しなど無理なのですが、政策銘柄なので、公開価格2600円に対し、初値は3100円となり、何とか無難な滑り出しとなりました。
<まとめ 件数減少、バリュエーション、騰落率が下がり、IPOマーケットは伸長な姿勢へ>
昨年の新規上場は日本郵政グループ3社の上場が、大過なく終了したことで、非常に安心感のあったマーケットだったと思います。一方で春先のgumiの業績下方修正による、いわゆる「gumiショック」によるIPOマーケットへの不信感の拡大が危惧されました。
今年は年央においてマーケット全体が停滞気味であったことに加え、昨年からの上場審査における業績予想の厳格化に伴い、投資家がIPOに対して慎重な姿勢を持ち出した年といえます。
特に今年は7年ぶりに上場社数が減少したわけですが、上場社数が増加することは、市場の活性化を行うためには非常に重要なことだと考えています。
引き続き、来年も新規上場が活況であります様に、祈念したいと思います。
拙い文章ではありましたが、最後までお読みいただき、まことにありがとうございました。来年も何卒、よろしくお願い申し上げます。
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