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トランプ占いに揺れる世界経済のリスク 2017年の市場を動かすビッグ3 積立不足に悩む米公的年金、金利上昇は焼け石に水か
http://www.asyura2.com/16/hasan117/msg/267.html
投稿者 軽毛 日時 2016 年 12 月 28 日 17:18:50: pa/Xvdnb8K3Zc jHmW0Q
 

コラム:
トランプ占いに揺れる世界経済のリスク

岩下真理SMBCフレンド証券 チーフマーケットエコノミスト
[東京 27日] - 筆者はクリスマス休暇前にトランプ相場の勢いはいったん止まると見ていたが、NYダウは2万ドル手前で足踏みし、ドル円は15日の118円台後半、米10年債利回りは16日の2.62%手前が差し当たっての上値になったようだ。

トランプ氏の米大統領就任が2017年1月20日であり、その後の一般教書演説、予算教書発表の準備が整うまでは、具体的な政策待ちの時間帯となる。

有識者の話から判断すると、トランプ氏は損得勘定で動くビジネスマンであり、通商政策や移民問題、税制改革への思い入れは強そうだ。それ以外のマクロ政策では、共和党主流派との妥協点を見いだすと思われるが、読み切れない。共和党は財政規律を重視する向きが多く、議会の協力を得るため、新政権は現実路線に徐々にシフトしていくと、筆者は見ている。

例えば、法人税は35%から15%へ一気に引き下げることは難しくても、段階的な引き下げなら議会を通りやすいだろう。また、インフラ投資では、10年で1兆ドルという規模が多少下ぶれしても変革への期待は大きく後退せず、トランプ相場が意外に長期化する可能性はある。ただし、閣僚候補メンバーに軍人とビジネスマンが多いことから、外交手腕は未知数と言わざるを得ない。

<日本に脱デフレのチャンス巡ってくるか>

さて、今後を考える上で、足元の相場状況を整理しておこう。10月以降の相場動向で過去2年との相違点は、1)原油高、2)世界経済に対する弱気風が吹いていないこと、3)人民元安でもドル円下落(円高)とはならず、ドル円上昇(円安)となっていることだ。

一方で、過去3年との共通点は、1)米連邦準備理事会(FRB)が12月に重要な政策決定をしたこと、2)年終盤は日本株が上昇していることが挙げられる。足元はトランプノミクスへの期待先行の動きであること、過去3年の1月がリスクオフ相場となった痛い思い出も強いことなどから、心理的にも1月の荒れる相場が警戒されやすい。

まず相違点である原油から見ていくと、11月30日の石油輸出国機構(OPEC)総会で8年ぶりの減産で合意、難航していた国別減産額でサウジアラビアとイランが土壇場で歩み寄った。サウジは原油相場の回復とOPECの結束力を示すことを優先、自らは約50万バレル減産するのに対して、イランには減産ではなく増産凍結、政情不安のナイジェリアとリビアには適用免除を認めた。

サウジの戦略変化は、原油安でそれだけ厳しい財政状況に追い込まれたこと、および2017年の国営石油会社サウジアラムコ上場に向けたものと推察される。22日にサウジが決定した17年予算では、原油価格底入れで財政赤字は6.2兆円(16年見込みの3分の2に縮小)を見込む形となり、安堵感が出ていた。よって筆者は当面、原油価格は底堅く40―60ドル(WTI)での推移を予想する。

原油価格の安定は、米利上げによる新興国(特に資源国)不安とエネルギー産業への下押し圧力を和らげ、当面は物価押し上げに寄与することから中央銀行にとっても朗報だ。日本にとっても、17年はデフレ脱却のチャンスが巡ってこよう。

ただし、時間の経過に伴い、日本では交易条件の悪化やコストプッシュインフレが懸念される点には注意が必要だ。

<米中貿易戦争は杞憂か>

世界経済については、最新10月分の経済協力開発機構(OECD)景気先行指数で、中国は4月、日米欧は7月に直近の底をつけ、緩やかな回復が示されている。日米中はまだ100割れの水準だが、今後の財政出動があれば、押し上げが期待できる。

16年の場合、年初発表の中国12月指標が弱く、中国発の新興国不安が広がった。17年初に関しては、民間統計の12月分は足取りが堅調であり、16年の再来となるリスクは低いように思われる。

足元で気になる変化は、世界経済の体温計であるメタル価格動向だ。原油価格の安定に隠れてまだ目立っていないが、GSCI国際商品価格指数の工業用メタルは11月28日にいったんピークをつけて、じりじりと下がっている。この弱まりがリスクオフ相場につながらないか見極める必要がある。

他方、トランプ氏は21日に通商政策の司令塔になる「国家通商会議」の創設を発表。そのトップに対中強硬策の知恵袋と言われたナバロ氏(カリフォルニア大教授)を起用すると発表したが、これでは米中貿易戦争になりかねない。筆者の懸念は米中関係の緊張に伴う、為替への影響(円高リスク)である。

ただ、17年は秋に、中国にとって5年に1度の共産党大会を控える重要な年だ。筆者が注目するのは、1月下旬発表予定の国際通貨基金(IMF)世界経済見通しでの17―18年の中国の姿だ。

23日の一部報道によれば、習国家主席は政府目標の6.5%を下回る成長率を容認する構えらしい。中国にとって17年の6%台前半への減速は最良の軟着陸シナリオと考えているだろう。その実現のためには、全ての「輸入製品に45%の関税」は受け入れ難い。また中国企業に生産委託する米国企業にも影響が及んでしまう。そう考えを巡らせると、限定された品目での貿易戦争が繰り広げられる可能性がイメージされる。

<FRB議長も悩む「トランプ占い」>

米金融政策については、1年ぶりの利上げ決定は市場予想通りだったが、サプライズは17年の政策金利見通し(中央値)が9月時点の年2回から年3回ペースの利上げへ加速したことだ。しかし、ドットチャートで注意すべきは、中央値の変化と投票メンバーの行動変化が必ずしも一致しないことだ。

今回、タカ派色を強めたメンバーが必ずしも17年の投票権を持っているとは限らない。毎年、地区連銀総裁は投票権を持つメンバーが4人入れ替わる。16年はタカ派が多かったのに比べると、17年はハト派が増えるようにも見える。

ただ、トランプ次期政権は、空席のFRB理事2人を決める意向を示しており、共和党寄りのタカ派の候補者が選ばれる可能性がある。また、大統領選挙中にクリントン氏支持を明確にしていた、ハト派のブレイナード理事、タルーロ理事についても、新政権発足後の去就が注目される。

陣容の変更により、当然ながら採決の行方も変わり得るだろう。すなわち、現時点での米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバー17人の政策金利見通しは、17年3月時点で変化する可能性を秘めており、今の段階で利上げ加速を前提に動くことは、ややリスクを伴うことを念頭に置きたい。

それでも一般的な考え方として、トランプノミクスを見極めた上で、年3回の利上げペースなら、6月、9月、12月を想定するのが自然だろう。しかし、年4回ペースを考えている向きもおり、まずは3月に利上げできる状況であるかを、見極めていくことになる。

ポイントは引き続き賃金上昇と緩やかな成長が持続可能であるかだ。1―3月期は天候要因やドル高の影響がじわりと出てくる可能性がある。ましてや16年7―9月期、10―12月期の成長率が米国の潜在成長率2%程度を2四半期連続で上回る強さとなれば、鈍化するのが自然だ。これが1月20日のトランプ次期政権のスタート、そして政策が具体化していくタイミングと重なるかもしれない。

筆者は現時点で、次回は17年6月の利上げを予想する。FRBが慎重姿勢であれば、米10年債利回りも一気に3.0%を抜けてはいかないだろう。

*岩下真理氏は、SMBCフレンド証券のチーフマーケットエコノミスト。三井住友銀行の市場部門で15年間、日本経済、円金利担当のエコノミストを経験。2006年1月から証券会社に出向。大和証券SMBC、SMBC日興証券を経て、13年10月より現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。

(編集:麻生祐司)
http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-mari-iwashita-idJPKBN14G0KI?sp=true
 

 

コラム:
2017年の市場を動かすビッグスリーは誰か

尾河眞樹ソニーフィナンシャルホールディングス 執行役員・金融市場調査部長
[東京 28日] - 2017年に最も注目される人物は誰か。この問いに、金融市場参加者はどのように答えるだろうか。

筆者の勝手な憶測で上位3人を挙げれば、1位は文句なくドナルド・トランプ次期米大統領だろう。米国で政権が交代する、しかも初のビジネス業界からの大統領就任に、世界の注目が集まっている。トランプ氏の一挙手一投足に反応して相場が変動する可能性は高い。

2位はジャネット・イエレン米連邦準備理事会(FRB)議長ではないか。FRBは12月の連邦公開市場委員会(FOMC)で1年ぶりの利上げを決定。同時に発表されたFOMCメンバーによる政策金利見通しで、2017年に3回の利上げが予想されていたことが話題となった。

果たして予想通りになるか、あるいは利上げに躊躇(ちゅうちょ)するような展開となるのか。米金融政策の動向をめぐり、2017年もイエレン氏が注目の的となることは間違いないだろう。

3番目に注目される人物は、2017年に欧州で選挙が相次ぐことを考慮すれば、秋に連邦議会選挙を控えるドイツのアンゲラ・メルケル首相が有力だ。

メルケル氏は12月6日、与党キリスト教民主同盟(CDU)の党大会で党首に再選された。ただ、その後12月19日に起きたベルリンのトラック突入事件により、容疑者とみられる人物が難民として入国していたことから、メルケル氏の「難民受け入れ」に対する批判も強まっている。同氏は欧州連合(EU)の要として統合を進めてきただけに、選挙動向には世界の注目が集まるだろう。

<次期米財務長官の気になる発言>

一方、為替相場という観点で考えるなら、筆者個人としては次の3人を挙げたい。1番目はスティーブン・ムニューチン次期米財務長官だ。トランプ氏による指名後、これまでのムニューチン氏の発言で2点、注目したいポイントがある。

1つは通貨政策に関する発言だ。ムニューチン氏が米経済番組CNBCにゲスト出演した際、キャスターに「米国は今後、通貨安にして輸出を伸ばすのか、あるいは通貨高にして投資を促すのか」とコメントを求められると、同氏は「米国が素晴らしい国で、投資マネーが流入しているからこそドル高が起きていると見ている。したがって米国の経済成長と雇用の拡大こそが、我々のトッププライオリティーだ」と述べた。

つまり、選挙中のトランプ氏の発言に垣間見られた「通貨安思考」は特に強くなく、米国の景気が良いうちは、ドル高はある程度許容できるというスタンスだろう。ただし、ドル高が米国経済の足かせになり始める、あるいは製造業などトランプ氏の支持層からドル高に対してブーイングが出るなどした場合には、ムニューチン氏のドル高容認姿勢も変化する可能性がある。

このインタビューでも、「もし本当に中国を為替操作国に認定する必要があると判断すれば、そうするだろう」と述べている。ビル・クリントン政権下のロバート・ルービン財務長官(在任期間1995―99年)が、「強いドルは米国の国益にかなう」との発言を繰り返し、実際にドル高が進んだように、米財務長官の通貨政策に関する発言は為替相場に大きなインパクトを与える。ムニューチン氏は足元のドル高を問題視していないようだが、これが変化することはあるのか、あるとすればどういったタイミングかに注目が集まろう。

もう1点は、「インフラ投資銀行を検討し、道路・港湾改修の資金調達方法を探る」との発言だ。トランプ氏が掲げる大型減税とインフラ投資については、市場関係者の間で「本当にできるのか」との懸念の声は多い。減税ならまだしも、1兆ドル規模のインフラ投資は共和党の伝統的な政策である「小さな政府」と相反するもので、議会を通らない可能性が高いとの見立てだ。

しかし、民間企業が主体となって資金調達を行い、足りない分は米国版インフラ投資銀行から「融資を受ける」という形を取れば、財政赤字が莫大に膨らむようにはならないし、プロジェクト自体も民間企業が運営すれば効率的だろう。問題は、民間企業が「儲かる」仕組みをいかに作るかだ。

道路・港湾の「改修」だけでは魅力に乏しく請け負う企業も限られる可能性があるうえ、大量の資金が集まるとも考えにくい。いかに魅力あるプロジェクトにして巨額の資金を調達できるか、ムニューチン氏の手腕が問われるところだ。

その点、ムニューチン氏は大統領選挙中、トランプ陣営の資金調達を担当。市場ではゴールドマン・サックス・グループのパートナーだったことが注目を浴びているが、退職後に自身が設立したヘッジファンドで、大ヒット映画「アバター」の資金調達を手掛けた経験も持つ。加えて破綻した住宅金融機関インディマックの再生にも一部関与していたという。

経歴から見ても、ひょっとするとムニューチン氏の指名はトランプ政権の運営においてきわめて理にかなっている可能性があり、経営者目線でのトランプ氏の人選が的中するかもしれない。インフラ投資銀行の構想が具体的になれば、ドル相場にとっては支援材料となろう。

<難しいかじ取り迫られる日米の中銀トップ>

2番目はやはりイエレンFRB議長だ。理由は前述した通りだが、退任を2018年に控えて、どのような金融政策のかじ取りをするのか注目したい。

景気が堅調な中で財政政策を実施した場合、放置すればイエレン氏の言う「高圧経済(high-pressure economy)」となる可能性もある。引き締めを早めれば、株価急落など金融市場のボラティリティー(変動率)を高めるリスクもある。2017年のかじ取りは、2016年にもまして難しくなりそうだ。

3番目には、黒田東彦日銀総裁を挙げたい。足元、株高・円安が進み、日銀の金融政策に対する注目度は低下しているが、2017年は注目を集める場面があるかもしれない。日銀は現在実施している「イールドカーブ・コントロール」によって、10年債利回りをゼロ%付近に維持しているため、米国で期待インフレ率が上昇し米10年債利回りが上昇すれば、日米の金利差が拡大してドル高・円安が進行する。

これが2016年11月以降のドル円相場であり、今のところうまくワークしているが、仮に欧州の選挙など、何かのきっかけで金融市場が混乱し急速な円高が進んだ場合、通貨安政策に対して批判的なトランプ政権を意識すれば、追加緩和は決定しづらいのが実情だ。「日本は金融緩和を通じて為替操作をしている」などと言われかねない。

それでも追加緩和をする場合、何ができるのだろうか。日銀は今後のあり得る追加緩和として、1)短期金利の引き下げ、2)長期金利操作目標の引き下げ、3)資産買い入れの拡大、4)(「状況に応じて」という条件付きで)マネタリーベース拡大、の4点を示している。

前者の2つは、再び金融株の下落につながりやすく、できれば実施したくないだろう。後者の2つは、せっかく「量」から「イールドカーブ」へと市場参加者の注目をシフトさせたのに、再び後戻りすることになり避けたい。現実問題としては、追加緩和の手段は極めて限られていることに変わりなく、それが何かのきっかけで試される可能性はあるかもしれない。

このように最も注目したい人物を挙げるにつけても、2017年はボラティリティーの高い相場展開が予想される。基調はドル高・円安トレンドと見ているが、ムードが良いときほど、投資家は、きっちりとシートベルトを締めておく必要がありそうだ。

*尾河眞樹氏は、ソニーフィナンシャルホールディングスの執行役員兼金融市場調査部長。米系金融機関の為替ディーラーを経て、ソニーの財務部にて為替ヘッジと市場調査に従事。その後シティバンク銀行(現SMBC信託銀行)で個人金融部門の投資調査企画部長として、金融市場の調査・分析、および個人投資家向け情報提供を担当。著書に「本当にわかる為替相場」「為替がわかればビジネスが変わる」「富裕層に学ぶ外貨投資術」などがある。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。

(編集:麻生祐司)

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

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Kevin Allison

[シカゴ 27日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 積み立て不足に見舞われている米国の公的年金基金にとって、来年は金利上昇が助け舟になるだろう。しかし米経済が失速するようなら、安心は長続きしないかもしれない。特にイリノイ州やテキサス州ダラス市の事態は、先行きを暗示している。

公的年金の資産評価額は、保険数理士の計算による支払い必要額を1兆ドル弱下回っている。別の見方をすれば、加入者に対する負債総額3兆7000億ドルに対して保有資産がおよそ25%足りない。2008年以降続いた低金利が債券投資のリターンを押し下げ、既に難しくなっていた年金運用を一段と苦しくしてしまった。

年金債務の割引率の計算に政府債利回りが使われるため、金利上昇は積み立て不足を減らす上で役立つ。とはいえ、それはあくまで形式上の話でしかないだろう。積み立て不足が1兆ドルというのは、年金システムで想定された長期的な投資リターン(予定利率)を前提としているが、これ自体が現実離れしているからだ。

ウィルシャー・コンサルティングによると、公的年金基金の今年6月までの年度の平均リターンは1%にすぎない。またクリフウォーターのコンサルタントの推計では、昨年6月までの10年間に米公的年金基金が得た年間リターンの中央値は6.8%だった。ところが大半の基金は今もなお、予定利率を7─8%にしたままだ。

国債利回りがさらに上昇するとしても、予定利率は5%に設定するのがより現実的かもしれない。BREAKINGVIEWSの計算に基づくと、予定利率を7.5%から5%に下げると、積み立て不足額は2倍強に膨れ上がる。この不足分を解消するには金利急騰が必要だが、それは経済全般に打撃を与えかねない。あるいは積み立て不足を埋めるために、基金は幸運をあてにしながら比較的リスクの高い資産に投資せざるを得なくなる。どちらのシナリオでも、結果は凶と出る公算が大きくなる。

テキサス州では既に最悪の展開になっている。ダラス市の警察官・消防士の年金基金は、不動産投資失敗をきっかけに加入者からの解約が相次いだ。イリノイ州では8月、当局者が州最大の年金基金の予定利率を0.25%ポイント下げるだけで、多額の増税か公共サービスの削減が避けられないと警告した。

年金基金の首脳にとっては、金利が上がったところで大した慰めにはならないという希望の持てない結論が下されている。

●背景となるニュース

・ピュー・チャリタブル・トラスツは8月24日公表した調査報告書で、米国の公的年金は、予定給付額に対して実際の支払い可能額が9340億ドル少ない状態にあると指摘した。入手可能な直近の全米データである2014年度の年金資産・負債を分析した。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
http://jp.reuters.com/article/usa-pensions-breakingviews-idJPKBN14H07Z
 

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