http://www.asyura2.com/16/hasan117/msg/217.html
Tweet |
東北大学片平キャンパス(「Wikipedia」より/Los688)
東北大、3200人を一斉「雇い止め」に職員が反対運動…大学側が一方的に規則変更
http://biz-journal.jp/2016/12/post_17576.html
2016.12.27 文=林克明/フリージャーナリスト
2015年5月1日現在の東北大学の職員は1万457人。そのうち非正規職員は5771人で約55%を占め、「非正規なくして東北大学なし」といえるほどだ。ところが、同大学は、3243名もの非正規職員を事実上クビにしようとしている。
今年2月から4月にかけての説明会等で東北大が、18年4月から数年で大量の非正規職員について、契約更新をしないと宣告した。いわゆる「雇い止め」だ。ただでさえ正規職員に比べてはるかに低い給与を強いられている非正規職員の雇用を奪い、その家族まで窮地に陥れる方針との批判も多い。
これに対して、非常勤職員に正職員も加わって、雇い止めに反対する署名が1200筆以上集まり、国会議員会館内において複数の労働団体が共催して緊急集会も開かれた。この様子を見た東北大当局は10月18日、東北大学職員組合に対し「この問題を見直し年内に新たな方針を示したい」と連絡した。
この連絡により、雇い止めの方針を改める可能性もあると思われたが、12月15日に行われた団体交渉では「検討中」と話すにとどまり、「雇い止め=大量首切り」の方針は撤回されていない。
■労働契約法の主旨に逆行する東北大
問題の背景には、13年4月1日に施行された改正労働契約法がある。最大のポイントは、施行日以降に締結した有期契約で、更新を繰り返して契約年数が通算5年に達した場合、労働者が無期契約を申し込めば、その時点で使用者が申し込みを承諾したものとみなされることだ。
細切れに契約を更新する有期雇用労働者は全国に1200万人と推計されており、彼らの雇用を安定化させることを目的とした法改正である。
しかし、5年たてば無期雇用契約に変更する権利を得るだけで、給与その他の条件は直前のままだ。つまり、給与などの条件が悪いまま雇用だけが確保されるという側面もあるため、“第二正社員”的な新たな身分をつくる可能性もある。
法改正によって多くの混乱も生じた。改正法施行前に契約を繰り返して通算5年を超えていた非正規社員たちが、全員正社員になれるかのように誤解する向きもあった。その一方で、“正社員のような”地位の労働者が増えることを防ぐために、改正法が施行される前に、契約の最長期間を5年以内とする就業規則を定めてしまえばいいという考え方をする雇用者も現れた。
今回の東北大は、この考えに基づいた行動をとっている。非正規職員が無期契約に転換できないように、法の趣旨とは真逆に5年で雇い止めにする就業規則を制定したことが騒動の原因なのだ。
労働基準法89条で、労働者を10人以上抱える職場は就業規則を作成して労働基準監督署に届けることが義務づけられており、同法90条では、改正するときは職場の過半数の労働者から意見を聴取することが定められている。これらに違反した場合、罰金30万円以下の刑事罰を受ける。
職員の過半数が加入する労働組合があれば、経営側は労組から意見聴取することもできるが、そのような労組がない場合は、意見を聴くための「過半数代表者選挙」を実施する。ところが東北大学では、5年で雇い止めとする条項を盛り込んだ就業規則改正に際して、過半数代表選挙を実施しなかった。
この点について大学側は、6月に東北非正規教職員組合および首都圏大学非常勤講師組の2労組が参加して行われた団体交渉において、「5年上限の改正案を出した直後に過半数代表選挙は実施していないが、以前(それより約1年前)に選出した過半数代表者が意見を述べられるため問題ない」という趣旨の説明を行った。
■東北大の強弁
さらに、「従来3年が雇用期限上限だったのを、新しい就業規則では5年に伸ばしたのだから不利益変更に当たらず、過半数代表選挙を実施する必要がない」と述べ、そもそも職員側の意見を聴く必要もないとの見解を示した。
確かに、東北大には非正規職員の雇用期間に関し、3年を上限とする就業規則があった。しかし実際には、毎年契約を更新し続け、通算10年、20年と勤め続けている人が多くいることがわかった。形式は契約期間を定める有期契約だが、実質的に無期雇用に近い状態の人たちも多いのだ。つまり、3年を上限とする従来の就業規則は形骸化していたといえる。
従って、上限を3年から5年に伸ばしたのだから職員側に不利益はないという大学側の説明は詭弁といえる。今までは、10年、20年と勤められた人たちの契約期間が、一律最長5年に短縮されてしまうわけで、不利益をもたらすことは明白だ。
そのうえ、団交に出た人事担当者は「解雇に慣れていないので」と一言漏らした。職員を解雇するには、さまざまな条件を満たしていなければならず、多くの手続きも要する。その点、最初から5年を上限とする契約を締結し、雇い止めにしてしまえば、トラブルの種となりかねない解雇を避けられる。こういった発想が、当事者の非正規職員らの反感を買っている。
しかも、5年で雇い止めとする就業規則の変更は14年4月1日に行ったが、起算点は1年さかのぼって13年4月1日とした。つまり、その時点で雇用契約を結んでいた職員たちは、18年3月末で雇用期間が終わるのだ。
■他大学も一般企業も無期雇用への流れ
他方、多くの大学では、非常勤職員や非常勤講師を5年で雇い止めにする方針を撤回し始めている。象徴的なのは、早稲田大学だ。
早大は東北大と同じように、雇い止めをするための就業規則改正を行う際に、過半数代表選挙を正しい形で行わなかったため、非常勤講師らに刑事告訴されて大騒動になった。
その結果、早大当局は当初の方針を撤回し、膨大な数の職員が実質的にクビになりそうだったところが、18年には約3000人の非常勤講師らが、希望すれば無期契約に転換できることになった。
この“早稲田ショック”は全国に波及し、日本大学、法政大学、中央大学、千葉大学などが、次々に雇用期間5年上限を撤回していった。また、早大の問題解決に先立って、全国大学高専教職員組合の取り組みにより、信州大学、徳島大学、国立高等専門学校(51校)などで、非正規職員の無期転換が約束されている。
さらに、大学よりもむしろ企業で、法改正の趣旨に沿う動きが強まっている。たとえば日本郵便グループは、5年を超えて働く有期契約の非正規社員について、希望すれば来年4月から無期転換を始める。同グループの非正規従業員は約20万人いるため、影響は非常に大きい。
独立行政法人労働政策・研修機構が15年7月に4854社を対象に行った調査が興味深い。
東北大のように、非正規職員の雇用年数が通算5年を超えないようにすると答えた企業は、フルタイム有期契約労働者の場合で6.0%、パートタイム有期契約労働者で5.8%のみ。逆に、無期契約に転換するという企業は、5年を超える前に転換する例も含め、フルタイム有期契約労働者で65%、パートタイム有期契約労働者で61.9%に上る。
これらと比較すると、東北大の3200人以上雇い止め方針への頑なさが目立つ。そもそも大学における非正規という雇用形態は、一般企業よりもはるか以前に始まっている。非常勤講師という身分をつくり出し、正規教員の5分の1から6分の1の低賃金で授業を担当させる人員を大量に生み出した。事務方の非常勤職員も、これに準じて拡大していった。
雇用を安定させるために改正した労働契約法の主旨を尊重するのか、それとも大量雇い止めを実行するのか。名門・東北大の見識が問われている。
(文=林克明/フリージャーナリスト)
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
▲上へ ★阿修羅♪ > 経世済民117掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。