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国内ではすっかり見掛ける機会が減ったアコードだが、北米では車名別販売台数で5位を獲得する主要車種だ
それでいいのかホンダ!?
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161226-00000017-zdn_mkt-bus_all
ITmedia ビジネスオンライン 12/26(月) 7:03配信
12月8日、ホンダは中国における四輪生産販売合弁会社「東風本田汽車有限公司」による第3工場の建設を決定し、起工式を行った。
余談だが、中国で自動車を作ろうとすると現地資本との合弁会社を作らざるを得ず、かつ現地資本に51%の株式を持たせなくてはならないのが法的な原則である。原則と言うのは、経済特区だなんだとさまざまな抜け道があり、共産党の中枢部と太いパイプがあれば、できないはずのことができたりする。フェアにやっていたのでは埒(らち)があかない世界があるらしい。
さて、主題はこの凍結していた中国工場建設の再開である。これは2015年7月の八郷隆弘社長就任後の所信表明演説で白紙撤回されたはずの600万台体制のプランの一部復活と筆者は見なしている。八郷社長は600万台体制について「販売力が追いつかない」と述べ、新たな方針について、商品力重視でホンダらしさを取り戻すと宣言していたはずである。
つまり、常識的に考えれば、新工場設立の凍結解除は何らかの問題が解決して、増産体制に向かえる環境が整ったということになるはずだ。何も問題がなければ、600万台計画は取り下げる必要がなかったからだ。本当にこの1年で、販売力が飛躍的に向上したのだろうか? ホンダに正式に質問すれば600万台プランの復活とは答えないだろう。あくまでも過去のプランとは別に販売実績に鑑みて生産設備の増強が必要なのだと答えるだろう。それはウソではないかもしれないが、ホンダには生産設備拡大への執着が根強く残っているのではないか? だから自身でも気付かないうちに、ことあるごとに工場建設へと引っ張られているのではないだろうか?
●数字と言葉、その裏側に見えるもの
その販売実績を見てみよう。ホンダは2015年度に474.3万台の四輪車を販売しており、同年3月期の決算時には2017年3月期(2016年度)の販売見通しを491.5万台としている。17万2000台、3.6%の台数増ということになる。これに対し、2016年1〜10月の累計実績を参照してみると積算の方法が違うらしく、約413.1万台で前年比110%となっている。とりあえず110%の方を信じるとすれば、なるほどホンダの販売力は向上しているように見える。
新工場の生産能力は12万台とされている。前述の1〜10月の累計を見る限り、グローバル生産台数が110%であるだけでなく、地域別に見てもほとんどのエリアで伸ばしている。特に中国の126.2%とアジアの117.4%は目を引く。
次いで伸ばしているのは意外にも巷間に不振が伝えられている日本マーケットの112.3%だが、これはあくまでも生産ベースであり、輸出を含んでいるので、国内販売に直結するわけではない。同じくホンダが長年伸び悩みに苦しんでいる欧州も106.2%と好調だ。逆に台数を落としているのは「その他」でまとめられているエリアの83.4%で、消去法で見るとアフリカとトルコということになるだろう。表を確認してもらえればお分かりいただけるように、どちらも総生産台数におけるインパクトは小さく、影響は限定的だ。
確かに中国での生産力の増強は数字を見る限り妥当とも思える。しかし、話を根底から見直してみたときに、本当に600万台計画の白紙撤回原因は販売力が原因だったのだろうか?
筆者は販売力を原因とする見方に否定的である。八郷社長の「商品力重視でホンダらしさを取り戻す」と言う発言にこそ真実が潜んでいると思う。その言葉の中にはっきりと商品力という言葉が軸として置かれている。商品力はあるのに販売力が足りないのではなく、足りないのは設計リソースだ。
ホンダは現在いかなるアライアンスにも参加せず、独立独歩の道を歩んでいる。にもかかわらず、エンジンが10機種以上(数え方による)もあり、下は軽自動車からレジェンドやNSXといったフラッグシップまでラインアップし、ミニバンマーケットにも参画し、さらにハイブリッドと燃料電池もカバーするという具合で、トヨタ並みの広範囲戦線を展開中だ。
常識的に考えて戦線の拡大し過ぎである──と言いたいところだが、日米欧の旧三極に加えて、中国、ASEAN、インド、南米、アフリカといった今後の伸び代のある新興国マーケットにはアクセスしておきたい気持ちも分かる。しかし、そのためには世界各地で求められる多種多様なクルマを開発し続けることが必要なのだ。
北米はどうか? ホンダに限らず日本のメーカーは北米に強い。日本と北米は会社の屋台骨を支える売り上げの重要な戦略拠点だから、何があっても止められない。ところがその北米で戦うためには、巨大なドメスティックマーケットである米国に合わせた製品が必要になる。
具体的に言えば、SUVやDセグ以上の中大型セダンだ。北米で売れ筋の商品の半分は他国では売れない。SUVは大きくなければ他地域でも売れるが、他地域でのセダンはもう凋落(ちょうらく)を指をくわえて見るばかりのありさまだ。アコードは日本ではハイブリッド専用になったこともあり、まず見掛けることが少ないが、北米では2015年の車名別販売実績で第5位を獲得している。北米でしか売れないとしても作らざるを得ない。
●トヨタやマツダとの違い
そうして個別の戦局を見ながら対症療法的に対応していけば、開発すべき商品がどんどん増えていくのだ。エリアを個別に見ていけば、どこも一筋縄で割り切れない気持ちは分かるが、見切るべきところを見切って選択と集中を成し遂げていけるかどうかがホンダの未来を決めるだろう。
他社の例を見てみよう。何も選択と集中はエリアだけに限らない。開発リソースの選択と集中という方法もある。マツダとトヨタは、それぞれSKYACTIVとTNGAというコモンアーキテクチャー作戦を打ち出して、開発リソースの選択と集中を行っている。コンポーネント化されたパーツ群の順列組み合わせで商品群を構築することを前提に、それらすべてを貫く汎用部分に開発リソースを重点投入する。そこに人とお金のリソースを厚く投入しつつ、実は製品軸で見れば割り勘にする車種が増えるため、一製品当たりのリソース節約になる仕組みである。
コストダウンを図りつつ、より高級な仕組みを採用し、潤沢(じゅんたく)なリソースによって商品力を底上げしながら、コストダウンを同時に推し進める。利益率の確保をトレードオフにしない戦術である。正直なところ「そんなにうまくいくのかよ」と思わないでもなかったが、現実としてマツダとトヨタはそれに成功しつつある。
ところが、ホンダは大量の製品群を全部ゼロからスクラッチで作る方法を改める気配がない。個別に設計されたエンジンは永遠に個別に改良開発を続けなくてはならない。そういう意味で永遠のリソース食いだが、コモンアーキテクチャー化されていれば、モジュール本体を進歩させることで全製品のボトムアップが可能になる。例えて言えば年賀状の宛先だ。エクセルに打ち込むのが面倒で毎年手書きを続けているような状態になっている。一度大変な思いをしても、以後は圧倒的に楽になる。企業の成長速度を決める重要な要因である設計リソースを永遠に縛り付けておくのは愚かな選択に思える。
そして、販売台数を増やしたければ、どうしても新型車を投入しなくてはならない。例えば、今売れているヴェゼルはフィットのシャシーを流用しているが、なぜだがホンダはそこでシャシーが「ほとんど作り直しレベルである」と自慢する。
「あり合わせの素材で作ったのではない」という点を強調したいのだろうが、そうやって車種ごとに細切れにされ配給された限定的なリソースで厳しい開発を行うくらいなら、フィットのシャシーをコモンアーキテクチャーとして、人も資金も重点投入し、それを他車種に水平展開していった方が良いものが早くできる。トヨタはプリウスをコモンアーキテクチャー化したからこそ、リヤサスペンションに旧来はコスト的に許容できなかったダブルウィッシュボーンを投入できたのだ。ヴェゼルが成功した以上、当然アコードベースのSUVも出てくるだろうが、これも本来アコードの開発に織り込んであれば、より良い製品が安く早くリリースできるはずである。
ところがホンダはそれをやらない。しかもコモンアーキテクチャー化が進んでいる競合他社と戦う以上、同等のスピードで開発を進めなくてはならない。ちょうどコンピューターシミュレーションによる設計が当たり前になった結果、とにかく作れば良いというのであれば時間短縮は可能なのだが、そこに問題が潜んでいる。そうやって従来方式で培われた検証期間をショートカットしてリリースするからリコールが増える。リコールが増えれば、仕事が手戻りしてまた開発リソースが逼迫(ひっぱく)する。そして新型車の投入が遅れ、無理に急ぐことでリコールが発生しやすい状況を再度生み出すという悪循環である。そうして、せっかく虎の子をはたいて準備した生産設備の稼働率が落ちる。
ホンダのここ数年を見ていると、内部で起きていることはそういうことなのではないかと筆者は思っている。つまり、「どんどん新型車を作れ!」「早く安く作れ!」ということを現場にただ押しつけている。本来「どんどん新型車を安く早く作れる仕組み作り」をしていかなければならないのは経営側であって設計現場ではないのだ。この状況で生産キャパシティを上げれば、また生産設備の稼働率を上げるための新型車開発のスパイラルに入っていく可能性が高い。だから順番として、生産設備の拡充よりも、モノ作りの合理化を先に進めなくてはならないはずだ。
●3つのシナリオ
では、どんな戦略があるのだろうか? 筆者は3つのシナリオがあると思う。マツダとトヨタのコモンアーキテクチャー戦略をよく研究し、ホンダの新しいアーキテクチャー設計に早急に入ること。これが一番順当なプランだ。
次に、欧州マーケットを重点目標から外し、英国・スウィンドン工場を閉鎖すること。実際スウィンドンの第2工場は2001年に竣工したにもかかわらず休止中であり、当面生産能力に見合うレベルで稼働させるのは不可能に近い。言葉を選ばなければ不良債権化しており、いずれにせよ余剰生産力を調整しなくてはならない可能性が高い。
スウィンドン工場には、英国のEU離脱問題もある。もし英国が最終的にEU離脱となれば、域内経済特典としての非課税輸出ができなくなり、他国からの輸入と何も変わらなくなる。であれば、労働単価の安いインドやタイで生産した方がはるかに合理的なはずである。ただし、スウィンドン工場は現時点で欧州唯一の四輪車生産拠点であり、スウィンドンの撤退は四輪車の欧州生産からの撤退に直結する。ただでさえEU離脱で微妙な英国政府は、自動車メーカーの工場撤退に頑強に抵抗するだろう。
自動車工場は、通常どこかのメーカーが撤退したら他メーカーが譲り受ける。だから雇用がまるっきりなくなるわけではないし、買収後、新規の投資が行われるなどのメリットも考えられるのだが、EU離脱で税優遇がなくなる英国でわざわざ新規投資したいメーカーがあるとも思えない。
この案の眼目は、生産設備の能力に合わせて商品企画するという現在の無茶な方向を、もっと現実的な商品企画と販売力に合わせた生産規模に変えるというところにある。問題はスウィンドンの閉鎖だけでその調整が可能かどうかであるが、少なくとも補正の方向としては間違っていないはずだ。
3つ目は、トヨタ・アライアンスへの参加ということになるだろう。ホンダがグローバル販売台数を伸ばしていきたいのだとすれば、伸び代があるのは中国の非富裕層、インド、ASEANというアジアマーケットである。それらの新興国で求められるのは、経済性が高いことを最低条件に、それ以上の魅力のある小型車である。向こう10年を見るとそれは小型ガソリンエンジンか、それにマイルドハイブリッドを組み合わせたものになると考えるのが妥当だろう。ホンダは開発リソースをここに充てん投下すべきである。
残る部分、特に北米の規制強化でマストになった燃料電池や電気自動車、先進国での実用的なエコカーであるハイブリッドなどの開発はもうアライアンスに任せてしまう時期ではないか? こうした技術は大きなコストがかかるわりに、利益を出すまでに時間がかかる。ホンダはそういうものに単独で挑む規模にないことを知って、オールジャパン・プロジェクトととらえた方が良いのではないか? 同じようなものをみんなで作って争ってもあまり意味はないし、北米のゼロエミッション・ヴィークル規制はさすがに理想主義が過ぎてひっくり返る可能性がある。そういう博打性のある投資に耐える体力は今のホンダにはないだろう。
さて、中国の新工場は果たして大丈夫なのか? 51%の議決権を中国側に握られた中国法人にどんどん投資して本当に大丈夫なのか? 共産党の都合次第で法律が変わる国であることをしっかり考えておくべきである。それはカントリーリスクである。何も中国だけではない。前述のように英国にもカントリーリスクがある。平穏を前提の投資でいいのかと筆者は言いたいだけである。
そしてそもそも本当に最初に手を付けるべきは生産設備なのか? 恐らく今、最も痛切にコモンアーキテクチャーの導入を求めなくてはならないのはホンダだと筆者は思うのだ。
(池田直渡)
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