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≪原油価格≫OPEC減産合意の「死角」 2月に40ドル割れも? 米トランプ政権の中東政策にも留意(ZUU online)
http://www.asyura2.com/16/hasan117/msg/129.html
投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 12 月 22 日 23:31:05: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

【原油価格】OPEC減産合意の「死角」 2月に40ドル割れも? 米トランプ政権の中東政策にも留意
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161222-00000016-zuuonline-bus_all
ZUU online 12/22(木) 17:10配信


いまから1年前、「2016年の原油価格の見通し」は弱気に大きく傾いていた。筆者はもちろん、ウォール街の市場関係者の多くが弱気のシナリオを描いていた。しかし、原油価格は年初こそ急落したものの、その後はV字回復となったのは周知の通りである。この年末は前年水準を大きく上回るとともに、年初来の高値圏で新年を迎えそうな情勢だ。

問題は2017年の見通しであるが、ウォール街ではOPEC(石油輸出国機構)を始めとする主要産油国の減産合意を素直に受け止めるムードもあり、「やや強気派が優勢」のように感じられる。果たして期待通りの展開となるのか? 「2017年の原油市場」を展望してみたい。

■なぜ、計算が合わないのか? OPEC減産は本当に可能か

OPECによると、世界の原油需給は2017年後半に均衡する見通しである。2017年のOPEC産原油の需要が3260万バレル(日量、以下同)と予想される一方で、OPECが生産量を3250万バレルに制限することで合意しているからだ。

しかし、この計算は非常に怪しい。

OPECは11月30日の総会で、2017年1月より2016年10月の生産量から日量120万バレル程度減産し、同3250万バレルに引き下げるとした。だが、公表された数字をどう計算してもこの数字にはならない。

OPECが減産基準としている生産量には国内事情が考慮されてインドネシア、リビア、ナイジェリアの3カ国が除外されている。3カ国を除いた合計は3124万バレル。この3124万バレルに除外された3カ国の10月の生産量を加えると3414万バレルとなり、減産量の116万バレルを差し引くと、3298万バレルとなる。

計算が合わないのは、アンゴラの基準値が175万バレルと9月の数字となっており、10月の157万バレルを大きく上回っていること。そしてイランの基準値が398万バレルと10月の371万バレルを大きく上回っていることが主な要因だ。

イランの基準値(398万バレル)は9万バレルの増産が認められたにもかかわらず、1月からの生産量が380万バレルとなっていることも不可思議だ。イランは生産枠として400万バレルを求めていたので、1月は10月比9万バレル増の380万バレルでスタートし、その後400万バレルまでの増産を容認するのかも知れない。

イランを380万バレルで固定し、減産を除外された3カ国の生産量を10月から据え置いたとしても、合計は3271万バレルとなるので、3260万バレルの需要を上回る計算だ。

適用が除外された3カ国はいずれも生産量が回復途上にあり、今後はさらに拡大する可能が高い。イランが400万バレルまで増産した場合は供給過剰はさらに拡大する。

それでなくとも、過去の減産合意の経験から各国の減産遵守には懐疑的な声が少なくない。非OPECが本当に協調するのかも不透明である。

懸念材料は色々とあるが、需給見通しで最も注意すべき点は、そもそも今回の減産合意では「1月からOPECの生産量が3250万バレルに制限される計算にはならない」ことだ。約120万バレルの減産を実施したとしても、OPECの生産量が需給均衡に向かう水準に達していない点を警戒しておくべきだろう。

■減産合意の背景に「トランプ政権の誕生」あり?

主要産油国は今年2月、原油価格の急落を受けて「増産凍結」で暫定合意したものの、サウジアラビアとイランの対立により4月には物別れに終わった。

今回の減産合意に関しても、イランは減産に応じないとの見方から事前予想では合意に否定的な見方も多く、減産合意はむしろサプライズに近かった。

なぜ4月にできなかったことが11月にはできたのか。なぜイランの「増産」をサウジは受け入れたのかは素朴な疑問として残る。

このナゾを解く鍵は、4月にはなくて11月にはあったもの、かつイランとサウジの関係に影響があるものとなる。そう、それは「トランプ政権の誕生」だ。

■米国とサウジは再び蜜月関係へ

1971年にブレトンウッズ体制が崩壊し、金・ドル本位制は原油・ドル本位制へと移行することになるが、この背後には「リヤド密約」があったとされている。すなわち、米国はサウジアラビアの安全を保証する変わりに、サウジは石油代金をドルで受け取り、原油を安定的に供給するというものだ。

かつては蜜月だった米サウジの関係も、オバマ政権ではサウジへの武器輸出を制限する法案が提出されるほどまで冷え切っていた(注:法案は共和党の反対で否決されている)。

しかし、トランプ政権の誕生で現在の「冷たい」関係は再び「蜜月」となる公算が大きい。

現在、サウジアラビアとイランはイエメンを舞台に代理戦争の真っ只中にある。トランプ次期政権は親イスラエルであり、イランに対しては強硬姿勢で臨んでいることから「敵の敵は味方」となる。

イランと米国を含む6カ国は昨年7月に核合意し、今年1月からは経済制裁が解除されている。この経済制裁の解除により、イランからの原油輸出が増加したことも原油急落の背景にある。

トランプ氏はイランとの核合意を破棄することを公約としており、新たな経済制裁を検討中である。米国がイランへの経済制裁を再び強めるのであれば、サウジはイランと「減産」で合意する必要はないと考えても不思議ではない。

■シェール企業とサウジを結ぶ「点と線」

トランプ氏は次期政権でのエネルギー長官に前テキサス州知事のリック・ペリー氏を起用する方針だ。

テキサス州は言わずと知れたシェール企業の牙城である。

さらに、次期国務長官には石油メジャー、エクソンモービルの会長兼CEOであるティラーソン氏を指名しており、テキサスとサウジを結ぶ橋渡しも万全である。

トランプ氏はエネルギーの自立を政策の柱に掲げているが、米国内の原油生産量は原油価格の下落を受けて低下しており、関連する雇用も減少した。米国内で雇用を創出し、エネルギーの自立を目指すのであれば、価格はある程度上昇する必要がある。トランプ次期政権にとって、価格はむしろ上昇したほうが政策目標は達成しやすいと言える。

米国内ではリグ稼動数が増加しているものの、シェールオイルの生産量は微増に留まっている。シェール企業にとっても原油安は頭痛の種であり、価格の反落を恐れて増産には慎重となっている様子だ。また、利益を確保するためには価格の上昇がまだ不十分で、増産には55〜65ドルが必要との見方もある。

サウジのファリハ・エネルギー産業鉱物資源相は12月10日、「米シェール企業が来年、供給面で大規模な反応を示すとは予想していない」と述べている。ファリハ氏が何の根拠もなく期待だけで発言しているとは考えづらい。

トランプ新政権の誕生、シェール企業の慎重な増産姿勢、イラン増産でもOPECが減産合意という流れを踏まえると、サウジはシェール企業から「価格が値崩れするような増産をするつもりはない」といったメッセージを何らかの形で受け取っているのかも知れない。

■コアレンジは40〜60ドル、上下どちらにもリスクを内包

原油価格は今年4月から11月のOPEC減産合意まではおおむね40〜50ドルのレンジ内を推移しており、下値の目途は40ドルと考えて問題なさそうだ。一方、OPECが目標価格を55〜60ドルと設定しているので、上値目処は60ドルが妥当であろう。

したがって、2017年の原油価格は40〜60ドルのレンジを中心とした動きが予想され、ここがベースラインとなるが、上下どちらにもリスクがあり、注意が必要だ。

まず、下方リスクはOPECが減産を遵守しないことである。数字で確認できるのは「2月」となるが、恐らく、期待された数字にはならず、需給の均衡見通しは2018年以降にずれ込むことになりそうだ。この場合、一時的には40ドルを割り込む場面も想定される。ただし、これまで同様、40ドルを割り込めば追加減産などの「口先介入」などで相場は下げ止まることになるだろう。

また、シェール企業の増産が加速することもリスクとして残されている。サウジアラビアの見込みが外れ、米生産が急速に回復し価格が弱含むようだと、OPECとシェール企業が再びシェア争いに戻り、下値を模索する可能性がある。

上方リスクは米国の対イラン政策となる。経済制裁となれば、イランからの供給減で需給均衡が前倒しとなるかも知れない。また、トランプ政権の中東への関与が中東情勢を緊迫化させ、短期的に価格の上昇を招く恐れもある。

米シェールオイルの増産ペースが需要の増加ペース並みとなり、歩調を合わせてサウジも増産を見送るなどした場合、テキサスとサウジの暗黙の了解が予想外に需給改善ペースを速める可能性がある。2017年のうちに需給が均衡するとの見方が強まれば、年後半の中心レンジが60ドルを超えてくるかも知れない。(NY在住ジャーナリスト スーザン・グリーン)
 

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