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三菱自、ゴーン流「グローバル戦略内での再建」は成功するか
http://diamond.jp/articles/-/111565
2016年12月16日 佃 義夫 [佃モビリティ総研代表] ダイヤモンド・オンライン
■三菱自経営改革は再生のラストチャンス
12月14日、三菱自動車工業(以下三菱自)の臨時株主総会が千葉市・幕張メッセで開催され、カルロス・ゴーン日産社長兼最高経営責任者(CEO)を取締役会長に迎えた新経営体制がスタートした。今年4月の軽自動車燃費不正問題発覚から三菱自のブランド失墜と業績面への多大な影響により、支援を仰いだ日産が34%出資して日産傘下入りした三菱自。14日の臨時株主総会でゴーン社長兼CEO以下日産から4名の取締役(日産出身の山下光彦副社長、三菱商事出身の益子修社長、白地浩三副社長、三菱東京UFJ銀行出身の池谷光司副社長)を含む計11名が選任される一方で、三菱自プロパー(生え抜き)取締役は不在となった。
これにより、三菱自の再生に向けて日産と仏ルノーのトップを兼ねるゴーン氏が三菱自の会長も、という3社を統括する異例の体制となった。つまり、それは三菱自がルノー・日産連合の一員の枠組みとして始動したことになる。
「ゴーン流」の三菱自経営改革は、日産を早期再建させたコミットメント(目標必達)経営の第1弾「日産リバイバルプラン(NRP)」(1999年10月に発表した計画)に倣う方向で進めることになり、来年1月1日付けで全社の組織体制の大幅な改編を発表した。それは経営の監督と執行を明確に分け、新経営体制の中核となるのは機能ごとの4名の執行責任者としCEO・COO(最高執行責任者)から大きく権限委譲し、トップマネジメントとしてのリーダーシップを明確にする。会長はガバナンス、社長CEOは経営戦略の構築を担い、COOは執行責任者を統括し、その実行にあたる位置づけとした。
三菱自にとって最後の再生チャンスとも言える今回の経営改革は、実質的に「日産駐留軍に三菱商事自動車事業本部が加わっての主導」(三菱関係者)となるもので、三菱自のプロパー社員が本当に一丸となって三菱自内部の力を結集できるか、が注目される。
14日の臨時株主総会終了後、取締役会長に選任されカルロス・ゴーン氏は「株主の皆様の利益を守り、長期的な持続可能性を実現することを約束する」と述べた。また(1)燃費不正問題で損なわれた信用を取り戻すこと、(2)会社を黒字化し、持続可能な成長軌道に乗せること、(3)三菱自のアイデンティティ(自主性)を尊重することの3点をコミットメントとして挙げた。
一方でこの臨時株主総会では、取締役報酬額について従来の総額9億6000万円から業績・株価に連動した仕組みを取り入れ、上限を年30億円と従来の3倍に引き上げる制度も承認された。株主から「回復はこれからなのに時期尚早」との批判も出たが、ゴーン氏は「2017年度から部課長以上の管理職を対象に、業績連動報酬制に切り替えることで役員も同様にする」と言う。これを押し切ったのもいかにもゴーン流だ。来春には次期中期経営計画を策定し、発表する。
■業績回復、信用・ブランド回復、社内風土改革が三菱自再生のカギ
ともあれ、ルノー日産連合の両社トップであるカルロス・ゴーン氏自ら会長職に就いて陣頭指揮による三菱自再生がスタートしたわけだが、そのポイントは3つある。
2つの回復と社内改革。「業績回復、信用・ブランドの回復、社内風土改革」だ。
業績回復については、2017年3月期の連結最終損益を2396億円の赤字(前期は725億円の黒字)と、今期中に燃費不正関連で引き当てられる損失を可能な限り織り込んでおり、来期業績のV字回復をもくろんでいる。
すでに、5月に日産による三菱自へ34%出資の資本提携(三菱自の日産傘下入り)を決めて以降、ルノー日産連合と三菱自のシナジー効果創出を進めてきた。具体的には、共同購買コストの削減・車両プラットフォームの共有・技術の共有(プラグインハイブリッド[PHEV]、パワートレイン、自動運転)、発展途上市場及び新興市場における連合(アライアンス)チームのプレゼンス拡大、三菱自のユーザーにルノー日産連合の販売金融機能を活用・生産設備の共用である。
これにより、2017年度で日産との提携で約250億円、営業利益率向上で約1%、2018年度は約400億円、営業利益率向上で約2%とシナジー効果を早期に取り込んでV字回復を狙う。元々、2016年度前期は725億円の純利益黒字を計上しており、燃費不正問題がなければ今期が中期経営計画の最終年度であり、黒字体質の仕上げの総決算だった。今期末までに燃費不正関連損失2062億円を計上することで、業績影響面で負の部分を一気に吐き出してしまう格好だ。
■今回の燃費不正の露呈は過去の教訓を学んでいなかった証
三菱自再生への最大の難関は、信用の回復であろう。2000年代初期の二度に渡るリコール隠し事件は、当時の社長逮捕にまで至るブランドの失墜と業績悪化で独ダイムラー・クライスラー(現ダイムラーAG)との資本提携解消から三菱グループ支援へと経営主体が変遷する結果となった。
一時は、ダイムラーから社長を迎え入れて外資主導となったが、ダイムラーがトラックの三菱ふそうを子会社化して三菱自の経営から手を引いた後にいわゆる「スリーダイヤ」の三菱グループ支援で再生を進めた経緯がある。しかし、三菱重工・三菱商事・三菱東京UFJ銀行の三菱主力3社支援は優先株という重しがあり、三菱商事出身の益子社長にとってその再生主体は何よりも業績回復だったのだ。
10年近くに渡った益子体制は、タイを中心とするアセアン(東南アジア)地域での収益力を向上させる一方で、車種をスポーツ用多目的車(SUV)と軽自動車に絞り込み、軽電気自動車(EV)も業界に先駆けて投入した。軽自動車開発で日産と手を組んで合弁会社を設立し、コスト削減も徹底した。結果、2年前の2014年3月には三菱3社の優先株を解消し復配を成したが、三菱自社内におけるリコール隠しの教訓、自浄作用が徹底されていなかったことが今回の燃費不正の露呈に繋がる。
確かに今期で燃費不正問題に関わる金銭的な損失を可能な限り計上して業績V字回復に向かおうとする「ゴーン流」の三菱自再生計画は、アセアン地域等において三菱自の強みを生かそうとするものであり、ルノー日産連合の枠組みには得策となろう。また、EVやPHV技術の共通化は、連合の強みとなるだろう。
■グローバル戦略に目を奪われ国内市場を軽視することが心配
しかし、リコール隠しから燃費不正に続いた三菱自のブランド失墜は、国内市場においては非常に大きな痛手となった。三菱自の国内主力軽自動車工場である岡山・水島工場は、2016年4月20日に生産停止となってから7月4日に生産再開(昼間のみ)。12月からようやく正常の月2万台体制に戻った。
水島工場は、周辺に地場サプライヤーを固めて岡山県経済にも多大な影響を及ぼす。また、国内三菱自ディーラーは生産・販売停止の期間、苦しい中でしのいできた。ブランド失墜から信用回復に至るまでの道のりは、業績V字回復のような一朝一夕にはいかない。
ルノー日産連合に100万台規模の三菱自が組み入れられてグローバルでは1000万台規模と世界トップ3(トヨタ、VW、GM)と肩を並べることになる。「ルノー日産連合に三菱自が加わり、スケールメリットを生かして成功に導く自信がある」と言うゴーン氏の野望。だが、三菱自の生きる道がドライに三菱商事主導のアセアン地域主体となり、連合として「世界のEV首位の座を狙う」グローバル戦略の中で日本国内市場の軽視が進むことがないように願うのは筆者ばかりではないはずだ。
(佃モビリティ総研代表 佃 義夫)
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