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「給与の後払い」にすぎない退職金への根本的疑問…度重なる所得控除縮小の盲点
http://biz-journal.jp/2016/12/post_17470.html
2016.12.15 文=深野康彦/ファイナンシャルリサーチ代表、ファイナンシャルプランナー Business Journal
迷走に迷走を重ねた2017年度の税制改正大綱が発表されました。1億総活躍時代、働き方改革などの御旗のもとに、配偶者控除廃止と夫婦控除導入の検討などの議論が進みましたが、結局は元の木阿弥。と思ったら、配偶者控除の適用は世帯年収で段階的に縮小されることが最終的に決まりました。
税制改正の議論のなかでは、給与所得控除と公的年金等控除の縮小もその対象となりました。まさに取れるところから取るというのが国(政府)のスタンスのようですが、すでに給与所得控除の縮小は実施されています。16年から年収1200万円超は一律230万円、17年からは年収1000万円超は同220万円に引き下げられるのです。結果として改正にはなりませんでしたが、議案に上ったことは覚えておくべきでしょう。税制改正大綱の検討事項には、年金課税については、年金制度改革の方向性も踏まえつつ、拠出・運用・給付を通じて課税のあり方を総合的に検討する。今後の個人所得課税改革において給与所得控除などの「所得の種類に応じた控除」と「人的控除」のあり方を全体として見直すことを含め、所得税・法人税を通じて総合的に検討すると記されているからです。
■退職所得控除の見直し
検討課題になった給与所得控除(所得の種類に応じた控除)の上限をさらに引き下げる案ですが、その前にやるべきことがあるのではないでしょうか。それは、退職所得控除の見直しです。
退職金は、「給与の後払い」という性格が強いものです。表面上は長年の勤務に報いるかたちとなっていますが、企業は現役時代に与えるべき給与額を減額して積み立て、晴れて退職のときに退職慰労金として渡しているにすぎません。給与の後払いであれば、給与所得控除の見直しを行う前に、退職所得控除を見直すのが筋ではないでしょうか。
なぜなら、退職所得控除には上限が設けられていないからです。退職所得控除は、勤続20年以下は「40万円×勤続年数」(最低80万円)、つまり毎年40万円ずつ控除額は増えていき、20年超になると「800万円+70万円(勤続年数−20年)」、つまり毎年70万円ずつ増えていくことになるのです。一般的な勤労者の場合、大学を出て定年退職となる60歳まで38年間勤め上げると、
・800万円+70万円×(38年−20年)=2060万円
までは税金がかからないのです。勤続が39年だと2130万円、同40年だと2200万円と青天井になるわけです。「税の公平」という観点からいえば、給与所得控除には上限が設けられているのであれば、退職所得控除にも上限を設けないと整合性が取れないというわけです。
見直されない理由は「公務員」、正確には官庁等に勤務する上級職の人たちの退職金を守るためという都市伝説のような噂があります。民間企業の退職金は右肩下がりですが、公務員の退職金は減額されているとはいえ、その減少率は民間の勤労者よりも穏やかです。さらに定年退職まで勤め上げる人は民間企業よりも多いために議案にのせない――。噂にしては妙に信憑性が高いのは、気のせいでしょうか。
(文=深野康彦/ファイナンシャルリサーチ代表、ファイナンシャルプランナー)
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