http://www.asyura2.com/16/hasan116/msg/645.html
Tweet |
解体業の仕事をする68歳の男性(手前)。仲間から「こんちゃん」の愛称で慕われている(写真:NPO法人ふれんでぃ・株式会社たつみ提供)
79歳でパートを掛け持ち…“過労老人”に転落する人々〈週刊朝日〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20161209-00000157-sasahi-soci
週刊朝日 2016年12月16日号
年金制度改革法案が、衆議院で可決された。支給額引き下げの新ルールが盛り込まれ、野党は“年金カット法案”と呼んで猛反発。将来の支給額を心配する高齢者が多い。かさむ出費と、細る年金。生活のために過重な仕事を強いられる“過労老人”が、ますます増えそうだ。
「こんなおばあさんを雇ってくれるかしら」
職探しのまっただ中の東京都内の80歳の女性はつぶやく。専業主婦として夫を長年支えてきたが、夫は2年前に亡くなった。今は40代の息子と2人で暮らす。
夫の事業がうまくいかず、年金の大半が借金返済に消えた時期が10年ほどあった。十分な蓄えがなく、今は17万円の年金の大半が家賃と生活費に消える。さらに、息子の奨学金さえ自らの年金から返しており、家計を圧迫する。
「奨学金はこれまで少額ずつ返済してきたので、今でも100万円単位で残っているんです。息子は正社員ですが、給与が低いために貯金もできていません」。女性は苦しい胸の内を話す。
今秋は野菜が高騰し、「28円のもやしばかりを食べていた」。体がやせ細って一気に老けたように感じるが、次の年金支給までは1カ月以上ある。おいそれとは病院にも行けない。生活を安定させるため、スーパーでのレジ打ちなどの仕事を探しているという。
穏やかな老後を迎えるはずだったのに、年をとっても生活のために働かざるを得ない。こうしたお年寄りは今や珍しい存在ではない。
内閣府「高齢者の経済生活に関する意識調査」によると、60歳以上の人が働く理由(複数回答)は、「生活費をまかなうため」が最多で、2011年度に59%。01年度調査の52%から上がっている。
「将来に備えた蓄えのため」なども含め、経済的理由をあげる人の割合は10年前より増える傾向だ。一方で、「生きがい」「健康」を理由にあげる人の割合は減った。
昨年、『下流老人』(朝日新書)で高齢者の貧困に警鐘を鳴らした、社会福祉士の藤田孝典さんは話す。
「高齢者の貧困問題は、改善するどころか、悪化しています。11月には“年金カット法案”が、強行採決された。生きるために働かざるを得ない老人は、これからも増えるはずです」
下流老人とは、病気や事故、熟年離婚などのやむを得ぬ事情で、貧困に陥った高齢者。生活保護基準相当の収入で暮らす人や、その恐れがある人をさす。
「収入が少ない、貯蓄がない、頼れる人がいない、の“3ない”の状態にあるのが下流老人です。自力ではなかなか、貧困状態から抜け出せない。まずは生活や貯蓄を見直し、助けを求められる人や場所を探してほしい」(藤田さん)
今月13日には、『続・下流老人』を出版する。前著の副題は「一億総老後崩壊の衝撃」だったが、今回は「一億総疲弊社会の到来」。高齢になっても、過重な労働に追い込まれる人たちの姿を伝えている。
たとえば、元大手物流会社員の66歳男性。
50代でリストラにあって退職を迫られた。以来、妻と子3人の5人の生活は一変した。当時は学費や仕送りに月10万円、住宅ローン返済に月13万円など出費がかさむ時期。新たな正社員の仕事を探したが、50代の年齢がネックとなり、見つからなかった。
「男性は、運送会社のバイトをしたものの体がついていかず、2カ月で辞めました。病院清掃員、デイサービスの送迎運転手など職を転々と変え、今はコンビニのバイトに行きつき、時給900円で週5〜6日働いています」(藤田さん)
現在もらっている年金は、妻と2人分で月18万円。大半は住宅ローン返済に消える。2千万円以上あった貯蓄も徐々に減り、今や数百万円。バイトをやめると、生活は立ちゆかなくなる。
新著ではほかにも、お金のために必死に働く高齢者の姿を伝えている。
病気の親や配偶者の介護、離婚などの問題を抱えて実家に戻ってくる子や孫の世話……。浮かび上がるのは、現在の社会問題と結びついた高齢者の貧困だ。
妻の脳梗塞を機に、半世紀ほど営んだ豆腐店をたたんだ70代男性。妻の医療費負担などが重く、廃業から5年ほどで蓄えが尽きた。国民年金だけでは暮らせず、75歳で新聞配達を始めた。
悠々自適の生活を送るはずだった元公務員の70代男性。夫の暴力で離婚した娘が、2人の孫を連れて実家へ戻ってきた。肉体的にも精神的にも疲れ果てた娘は、うつ病となって働けない。男性は孫の教育費のため、マンション管理の仕事を72歳から始めた。
「こつこつと働いていても、レールから外れたら、人生が一変してしまう。それが今の日本の恐ろしさで、老後の計画にまで大きな影響を及ぼしかねない」
藤田さんは、社会保障など公的な支援が弱い日本社会の問題点を指摘する。そして、生涯働き続けないと暮らせなくなる日本社会のあり方を問うている。
藤田さんが代表理事を務めるNPO法人「ほっとプラス」の生活相談窓口には、長年地道に働いてきた高齢者からの相談も多い。無計画で怠惰な生活を若いころからしてきたわけではない。そんな人も、いつ貧困の道へ転落するかわからない。
相談者の高齢男性には、プライドからか、貧しくなっても生活保護受給を拒む人が多いという。ただ、命と引き換えのような過重な仕事をするならば、「受けられる支援を受けるべきだ」と藤田さんは言う。
生活不安を感じながら、無理をして働き続ける高齢者は多い。記者が出会った東京都内の79歳の一人暮らしの女性もその一人。2カ所の職場で、パート事務の仕事を掛け持ちする日々だ。
医師の家に生まれて何不自由なく育ったので、「80歳を前に生活のために働く老後を想像できなかった」。
築40年の賃貸マンションに住み、13万円の年金の大半は家賃と生活費に消える。生活苦からかつて自殺を図ったこともある。
「30年前に夫が亡くなるまでは専業主婦だったので、特に資格があるわけでもなく、簡単な仕事しかできなくて……。毎月、食べていくのがやっとです」
女性は今後も体が動く限り、仕事を続けるという。
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
▲上へ ★阿修羅♪ > 経世済民116掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。