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米FRBが「タカ派」になる可能性にご用心 早期利上げを検討中
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/50430
2016.12.12 真壁 昭夫 信州大学経済学部教授 現代ビジネス
連邦準備理事会(FRB)関係者から、今後の利上げに関して前向きな発言が増えている。背景には、米国の経済指標が良好な内容を示していることに加え、先々の財政出動や減税による景気底上げへの期待がある。
大統領選挙以降、米国の株式市場は史上最高値を更新し、期待インフレ率も上昇している。米国の物価動向を取り巻く環境が大きく変化しており、それに伴いFRBは利上げのペースを速めることを真剣に検討しているようだ。
12月13日、14日の連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げが確実視される中、金融市場では、来年以降の金融政策がどのように進むかに関心が集まっている。現状、市場参加者の間では、2017年6月、12月に2回の利上げが行われるとの予想が多い。
すでにイエレン議長は政策が後手に回るリスクは低下したと述べている。従来よりもFRBが利上げを進める可能性は高まっていると考える。
■堅調な展開を続ける米国経済
2016年の年初以降、ドル高による企業収益の伸び悩み、原油価格の下落などを受けた設備投資の減少、新興国経済の混乱を受けて、米国の景気減速への懸念が高まった。6月には予想外に英国がEU離脱を決定し、世界の金融市場は株価急落などの大きな混乱に直面した。
こうした展開の中で、FRBは米国経済には低金利環境が必要であるとの見解を示すとともに、世界の金融情勢、大統領選挙にも配慮して政策金利を0.25%〜0.50%で維持してきた。
そして、11月8日の米国大統領選挙にてトランプ大統領が当選して以降、今後の経済政策への期待から、米国を中心に金融市場の参加者は先行きに強気になっている。
加えて、米国の経済指標にも予想を上回るものが多い。ISM製造業、非製造業景況感指数ともに景気の強弱の境といわれる50を上回り、消費者心理も上向いている。労働市場も改善基調を維持している。
この状況下、FRB関係者からは利上げに関する発言が増えてきた。景気後退局面ではないため財政出動が必要な状況ではないとしながらも、シカゴ連銀のエバンス総裁やNY連銀のダドリー総裁は、物価目標や完全雇用の達成に自信を深め、利上げのペースが加速するだろうとの見方を示している。
こうした発言を受けて、市場参加者の利上げ予想も高まってきた。米国の金利先物市場では、13日、14日のFOMCで0.25ポイントの利上げが決定される確率が90%超に上昇し、利上げは確実視されている。
そして、12月のFOMCでは参加者による経済、金利の予想が公表される。ドル高、金利上昇の影響に配慮しつつ利上げのタイミング、回数がどう示されるかが、FOMCの重要なチェックポイントだ。
■FRBもタカ派になる?
今後の米国経済の動向を考えると、すぐに景気のピークアウトや減速が懸念される状況ではないだろう。
短期的には金融市場の安定と景気の堅調さが維持されると考えられる。それに加え、今後の財政出動への観測から期待インフレ率は上昇基調で推移している。
この状況の中、FRBが慎重さを維持しつつも、やや積極的に早期の利上げ機会を模索する可能性がある。米国外の動向を見ても、FRBが目先の利上げ余地を確保する理由は相応にありそうだ。
2017年、世界経済は政治に大きく左右されるだろう。特に、欧州主要国での選挙には注意が必要だ。3月にはオランダ総選挙、4〜5月にフランス大統領選挙、9月にはドイツ総選挙が実施される。いずれの国でも右派の台頭が顕著だ。
12月4日の国民投票にて憲法改正案が否決されたイタリアにも関心が集まる。市場では暫定内閣が発足し、総選挙は2018年1〜3月に実施されるとの見方が多いが、野党は早期の総選挙を主張し、予断を許さない。
もし、欧州各国でポピュリズム政党が獲得議席数を伸ばしたり、政権を獲得すれば、急速にEU離脱を求める動きが欧州全体に広がるだろう。イタリアでは不良債権問題への懸念も追加的に高まるだろう。
その結果、FRBは国際金融情勢への配慮が必要な状況に直面することが想定される。そうなると、いくら米国の景気が好調でも、国際的な資金フローなどへの影響を考慮し、利上げへの抵抗感は高まりやすい。
イタリアの国民投票後、世界の金融市場は安定を保ち、大きな変調は見られない。その中でFRBが慎重な政策運営を重視すると、結果的に対応が後手に回り、物価上昇に遅れて急速な引き締めが必要になるかもしれない。そうしたリスクを防ぐためにも、足許の市場環境の好転は、ある意味、FRBにとってチャンスだ。
当面、FRB関係者は利上げが近いことを示し、市場参加者に利上げへの準備を促す可能性が高いとみる。
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