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なぜこの国の財務省は「経済成長優先主義」を頑なに否定し続けるのか 成長ナシのほうが、権益維持に好都合?
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/50431
2016.12.12 橋 洋一 経済学者 嘉悦大学教授 現代ビジネス
■筆者を「共演NG」にする人たち
最近、財務省ではないが、その関係者と意見をかわすことがよくある。筆者は財務省出身者であるが、これまで財務省関係者に避けられることがしばしばあった。
たとえばかつて、財務省のよき理解者である与謝野馨氏と日本テレビで共演を依頼されていたが、突然「その話はなかったことにしてくれ」と言われたことがある。財務省審議会の常連である某経済学者にいたっては、共演という話があったのに、急に出演しないことになった。いわゆる共演NGである。
こちらに共演NGはないのだが、相手がNGというのだから仕方ない。
今回、ラジオ日本の『清水勝利のこれでいいのかニッポン』からオファーがあり、共演NGを聞かれた。この番組は、政治家の方がよく出ている番組だ。いつものように「特にNGはありません」というと、「高橋さんの財政論を論破したいという政治家がいるので、共演してもらいたい」ということだった。
ところが、その政治家は、財務省から「高橋を論破するのは無理」といわれたようだ。急遽出演しないことが決まった。そこで共演となったのが、中川雅治参議院議員(自民)、宮本徹衆議院議員(共産)、小黒一正法政大教授であった。中川氏と小黒氏は財務省出身である。
共産党の宮本氏に、財務省からの推薦があったのかどうかわからない。が、ポイントは中川氏だ。同氏は、かつて財務省で筆者の上司であった。若いときから、いろいろと世話になった方だ。温厚で、仕事は手堅く、財務官僚の鏡みたいなひとだ。
中川氏は、国家安全保障に関する特別委員長として特定秘密保護法を採決した政治家として有名だ。普通の委員長は議事進行のメモ用紙を見ながら議事進行するので、野党議員からメモ用紙を取り上げられると採決できなくなる。そこで中川氏は、議事進行メモをすべて暗記して委員会採決に臨んだ。このため、野党議員が取り上げられるメモ用紙がなく妨害が不発に終わってしまった。
役人時代にも膨大な想定問答を記憶して、答弁を行っていた。筆者はずぼらで、数種類の基本的な考えを整理した後、その組み合わせてその場で対応するという省エネ・タイプなので、なおさら中川氏の網羅的な記憶方式に驚いた。
ラジオの収録室で、筆者の前に座った中川氏は、膨大な資料をもっていた。筆者がそれを見ると、財務省からもらってきたといっていた。中川氏は資料を読み込み、記憶していた。さすがである。
その一方、筆者はいつも資料なしの手ぶらである。もともと役人に向いていなかったのだと痛感する次第だ。
■財務省の論拠は古すぎる
さて、ラジオの収録開始だ。実際の放送は、年末と年始に分けて放送されるということなので、興味のある方はそれらを聴取していただきたい(年末分は12月31日放送と聞いている)。
テーマは「日本の借金は1000兆円を超え財政破綻の危険性がある」という質問に、○か×で答えるものだ(いまからこのテーマについて議論するが、可能であれば昨年12月の記事をご一読いただきたい。より理解が深まるはずだ http://gendai.ismedia.jp/articles/-/47156)。私は×であったが、残りの3人は○だった。
中川氏の答えは、今の財務官僚そのものであるので、とても興味深かった。中川氏は、国のバランスシートで、負債から資産を差し引けば、日本の財政は大丈夫という人(これは筆者のことである!)もいるが、資産が全部売れるといわんばかりで誤解を招くといった。そして、
@資産のうち固定資産は、道路など公共用財産であり、これは売れない。
A資産のうちの(関連法人などへの)「出資金」は、法律に基づき政策のために出資しているから、売れない。
B貸付金、有価証券は、負債の財投債、短期証券と見合いになっている。
と答えた。元財務官僚らしく、よどみなくスラスラと説明した。これには、ラジオ担当者も「さすが」とうなっていた。
筆者は、20年前に国のバランスシートを政府内で初めて作成した当事者である(単体ベースは http://www.mof.go.jp/budget/report/public_finance_fact_sheet/fy2014/national/fy2014-gassan.pdf 等で、具体的な係数に興味のある人は参照していただきたい)。
作成当時、それまでバランスシートの負債側(つまり、質問にある借金1000兆円を強調するやり方)のみの説明との齟齬を言われると困るので、そのような想定問答を用意した。
びっくりしたのは、そのときとほぼ同じ説明をいまだに財務省が使っていたのかという点だった。実は、バランスシートから見ると、従来財務省が行ってきた負債だけを強調して財政危機をいう手法は苦しくなる、と当時から思っていた。
■財務省のデタラメな反論
@(固定資産は売れない)はある程度は正しい。それは各国ともに同じ事情なので、筆者はその国際比較も資料にして、小泉政権の時に経済財政諮問会議で議論した。それでも、公務員宿舎など売れるものもかなりあるというのが、小泉政権時の結論であり、そのための専門調査会もつくった。しかし、これも財務省が抵抗して竜頭蛇尾になっている。
Aの財務省の言い分は苦しい。関連法人などへの出資金を回収すればいいという意見に対し、「そう簡単に回収できるものではない」という反論だ。しかし、政策のために出資しているというが、天下り先の法人への出資ではないか。
そこで筆者は、「出資というが、天下りのための出資なのか、政策のためなのかよくわからないだろう」と冷やかした。中川氏は、ここが筆者の得意分野であることを熟知しているので、まともな反論は返ってこなかった。
B(貸付金・有価証券は、負債の財投債・短期証券と見合いになっている)を書いた意味を、財務官僚はわかっているのだろうか。資産と負債の両建てなのだから、資産をさし引いてもいいという意味だ。実は、ここも、貸付金と有価証券は法律に基づき政策のために実施している、という説明が必要で、Aと同じ答えなのだ。
ところが、中川氏は資産と負債の見合いになっていると言うだけで、筆者に反論したつもりになってしまった。
その部分をあえて指摘すると、あまりに小馬鹿にした再反論になってしまうので、筆者は、Aと同じ反論をした。つまり、有価証券は外為特会の運用有価証券であるが、GDP比で変動相場制の先進国と比較すると一桁大きいとして、今の法律に基づく政策のデタラメさを指摘した。
筆者は、国のバランスシートを使った説明を十数年間も続けている。最近は、負債だけをみて日本の財政は大変なんだという財務省の説明に疑問を持っていた人から、かなり好意的に受け入れられているのがわかる。
本コラムでも、2015年12月28日付け本コラム「「日本の借金1000兆円」はやっぱりウソでした この国のバランスシートを徹底分析」(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/47156)は、英語にも翻訳され、数多くの外国人からも説明してほしいという依頼が殺到した。
この考え方は、ファイナンス理論の基本なので、下手に財務省に洗脳されていない外国人のほうが簡単に理解できるようだ。
これに財務省も相当な危機感をもっているようだ。別コラムであるが、財務省OBの学者から筆者への反論がでているが、さすがにこれには筆者とはまったく関係のない学者からも「財務省OBの学者の意見がおかしい」という、まともな反応が聞かれる(http://diamond.jp/articles/-/109754)。
なお、小黒氏の一部の言い分は、別コラムの財務省OBの学者と同旨であるので、本コラムでは省略する。
■小泉・安倍政権は他と何が違ったか
どうも財務省は、OB関係者を使って、筆者に「財政再建を無視する危険人物」というイメージを植え付けたいようだ。
しかし、少なくとも筆者の関与した小泉政権、安倍政権ともに、他の内閣より結果として財政再建がはるかに進んだという事実を見過ごしている。
筆者の論説を見ればわかるように、財政再建の重要性を無視しているわけではない。ただし、経済成長すれば財政再建は後からついて来るので、経済成長を優先すべきとする「財政再建セカンドの経済主義」を採っている。
この立場から言えば、採るべき政策手段は「金融政策」、「財政政策」、「規制緩和」の3種類。それがそのまま、アベノミクスの3本の矢になる。
一方、財務省は財政再建至上主義である。財政再建がまずありきで、それをやらなければ経済はダメになるという、財政再建ファーストである。財務省に言わせれば、アベノミクスは、金融政策、財政政策、規制緩和の3本の矢に加えて、財政再建が第4の矢になるという。
2000年以降の歴代政権は、小泉政権と安倍政権以外は、財務省の言いなりで財政再建ファーストを採っていた。小泉政権と安倍政権は、財政再建セカンドだった。たまたま筆者は財政再建セカンドの政権にしか関与していない。財政再建セカンドは財務省セカンドなので、筆者のような「変人」を関与させてくれたのだろう。
しかし、財政再建セカンドの政権のほうが、財政再建とともに経済パフォーマンスがいい。ここでいう経済パフォーマンスとは雇用である。政権の経済政策のマストは、雇用確保である。そこができれば、まずは及第点である。それに加えて、賃金やGDPがよければさらによい。
小泉政権では「私の在任中には消費増税をしない」、安倍政権では「消費増税して経済が悪くなったら元も子もない」が、財政再建セカンドの代表的な決め台詞だ。筆者は、経済主義をいうために「増税ではなく経済成長による増収」という言い方もよくする。
■筆者がゴジラになった日
ナイーブな読者は、経済成長すれば財務省も喜ぶはずと無邪気にいうが、実態はまったく違う。経済が悪くなっても、既得権のある人は相対的に有利になることを理解する必要がある。
例えば、官僚は雇用の心配がなく、給与カットも民間ほどでない。官僚の中の官僚である財務官僚は、経済が悪くなっても相対的に官僚の地位向上になることを知っている。
逆にバブル期には、民間では雇用の心配がなく、ボーナスも増額するのに、官僚は雇用確保のメリットを感じなく、給与も民間ほど上がっていなかったので、相対的に惨めであった体験がある。有り体にいえば、官僚は不況に強く、好況に弱い業務なのだ。
しかも、既得権の大きなものとして天下りがある。日本でのバランスシートでの出資金比率は先進国の中で際立って高い。というか、これほど天下り法人を国が保有している国は珍しい。
海外から見れば、この出資金は法人を民営化すれば容易に回収できるのに、一方で財政危機をいいながら、それを行わないことに大きな疑問を持っている。もし本当に財政危機になれば、天下りなんて言っている場合でなく、出資金を回収するはずだ。それをやらないのは財政危機ではない証拠だ、ともいえる。
この観点から、「出資金を回収できない」という財務省の反論を読み返してみると、結局、彼らは既得権を守ろうとしていることがわかるだろう。
財務省がここまで必死なるのは、ある程度わかっていた。それは、2016年10月12日日経新聞1面の「「財務省を信じない」首相、「異端」影響力には陰りも」(http://www.nikkei.com/article/DGXLASM103H0O_T01C16A0MM8000/)にもでている。
その紙面の中に、筆者も安倍政権の経済政策を支えるものとして出てくるが、筆者への取材はまったくなく、単に財務省関係者の言い分だけを流す記事だった。
そこには、安倍首相を「シン・アベ」として、シン・ゴジラに見立て、日銀や財務省を破壊しているイラストがある(下図)。
筆者は「シン・アベ」のまわりの子ゴジラになっているが、他の子ゴジラは、「シン・アベ」の後ろでほえているだけだが、なぜか筆者だけは前面にでて日銀を潰している。「シン・アベ」は財務省を潰す寸前である(余談だが、映画「シン・ゴジラ」は安倍首相の好みでないかもしれない。なにしろ映画では総理が死んで官房副長官が活躍するからだ(笑))。
それでも再び言っておこう。従来の財務省(と日銀)の意見を聞かない方が、経済パフォーマンスと財政再建のパフォーマンスはいい。それを古ぼけた反論で仕留めようとするのは甘い。なにしろ、相手は通常兵器では太刀打ちできない「ゴジラ」だからだ。
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