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OPEC減産合意は効き目なし?突如「伏兵」現わる 経済成長著しいインドで原油需要に赤信号(JBpress)
http://www.asyura2.com/16/hasan116/msg/531.html
投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 12 月 09 日 11:11:15: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

              インド・ニューデリーの街の様子。経済成長が著しいインドだが、原油需要の停滞が危惧されている


OPEC減産合意は効き目なし?突如「伏兵」現わる 経済成長著しいインドで原油需要に赤信号
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48608
2016.12.9 藤 和彦 JBpress


 12月5日のWTI原油先物相場は4日続伸、一時1年5カ月ぶりの高値となった(米原油在庫が急増したことから7日の原油価格は再び1バレル=50ドル割れとなった)。

 OPECが12月10日にウィーンで開催する会合に非OPEC加盟14カ国を招待したことで、「産油国の生産調整の動きが非OPEC諸国にも広がる」との観測が買い材料だった。OPECが非OPEC諸国と減産について協議するのは2002年以来である。

 OPECが非OPEC諸国に期待する減産分(日量60万バレル)の半分を担うとされるロシアは「生産調整に前向きである」との見方が広がっている。だが、ロシアの11月の原油生産量は日量1121万バレルとソ連崩壊後の最高水準付近にとどまった(過去最高は先月の1123万バレル)。ロシアの石油会社は政府の協力要請に応ずる気配を見せておらず、「ロシアの減産は来年第2四半期からになるだろう」(ロシアの大手会社幹部)との声も聞かれる(12月2日付ロイター)。

 減産合意を成立させたOPECも頭が痛い。ロイターによれば11月の原油生産量が日量3419万バレルとなり、減産の基準となる10月の生産量より37万バレル増加した。最も増産したのはアンゴラだが、原油輸出量が過去最高となったイラクや減産が免除されたナイジェリアやリビア(両国合計で14万バレル増)も押し上げ要因となっている。

 このためOPECは、11月30日の総会で決定した120万バレル分に加え、さらに50万バレル減産しなければ、合意した生産水準(日量3250万バレル)を満たすことができなくなってしまった。

■インドの原油需要に赤信号

 原油の需要面に関しても、ここに来て「伏兵」が頭をもたげてきている。インドで原油需要に赤信号が灯り始めていることだ。

 インドの経済成長率は昨年7.3%と中国の成長率を上回り、今年の成長率についても世界銀行は7.5%と予測している。インドの足元の原油需要は日量約410万バレルで、今年は日本を抜いて世界第3位の消費国になる見通しである。国際エネルギー機関(IEA)は「2040年までに原油需要は日量1000万超になる」と予測しており、インドは「第2の中国」として世界の今後の原油需要を拡大する牽引役として期待されている。

 世界で最も急激な伸びを示すインドで、なぜ原油需要が停滞するのだろうか。

 その理由は、インド政府が高額紙幣の回収を行ったため、経済成長が鈍化することが見込まれるからである(12月5日付ブルームバーグ)。

 インドのモティ首相は11月8日、ブラックマネー(不正資金)をあぶり出すため、最高高紙幣の1000ルピー札(約1600円)と500ルピー札を翌日から廃止することを突然発表し、新たに発行する紙幣と銀行で交換するよう求めた。

 廃止された2種類の紙幣は流通している紙幣の80%以上を占めていることから、新札の発行が追いつかず、1カ月以上経っても銀行に新札を手に入れようとする人たちが押し寄せ、毎日長い列ができるなどの混乱が続いている。紙幣が国民全体に行き渡り経済が正常化するには半年以上かかるとの見通しが多い(12月7日現在でも現金の6割が消えた状態となっている)。

 現金決済が一般的なインドでは、現金不足から買い物を控える人々が増加し、消費が落ち込んでいる。さらに賃金の支払いが滞る企業が相次ぐなど、経済全般に悪影響が広がっている。今回の混乱を受けて「インドの今年度の成長率が昨年度より1%程度下がる」と予測する専門家も出てきており、景気減速が一気に現実味を帯びている。

 中でも心配なのは金融システムへのダメージである。

 米格付け会社フィッチの試算によれば、インドの銀行融資の20%に相当する約1950億ドルが既に回収困難な状況となったため、インド政府は2016年2月経営不振に陥った国営銀行に対し340億ドルの資金を投入する事態に追い込まれていた。

 アナリストたちは「今回の措置に伴う中央銀行の不手際により、危機的な状態にある金融セクターへかなりの悪影響が生じる」と警告を発しており(11月30日付フィナンシャルタイムズ)、今後インド経済が急減速する可能性がある。

 販売の7割が現金決済というホンダの二輪子会社では、4月から10月まで前年比21%増だった販売台数が11月に25%減となり、12月まで生産水準を引き下げるとしている(11月30日付日本経済新聞)。新車販売台数の急減に加え、現金決済で取引される輸送用燃料の販売に大打撃になるのは火を見るより明らかだろう。

 このようにインドの原油需要の伸びは、今後半年以上低迷する可能性が高い。原油需要の過半を占める輸送用燃料が既に1割減になっているとの報道がある。仮に1割需要が減少すれば日量40万バレルの原油が半年にわたり在庫として積み上がることになり、回復基調にある原油価格に冷水を浴びせることになる。

■中国からの資金流出と金融市場の変調

 需要面の心配はまだある。

 米国と並ぶ原油の輸入大国となった中国だが、今後の原油需要の伸びが低迷するとの予測が相次いでいる。

 加えて資金流出に歯止めがかからないのも気がかりである。12月2日、中国政府は外貨準備高がピークから約25%減少した事態を踏まえ、金の輸入と人民元の流出制限措置を強化するなど警戒感を強めている(11月の外貨準備高は10カ月ぶりの大幅減となった)。資金流出が続けば国内で流動性が枯渇し、不動産分野をはじめとするバブル経済が崩壊してしまうからである。

 世界の金融市場の変調が原油需要に悪影響を与える可能性も出てきている。

 次期大統領のトランプ氏が打ち出している減税やインフラ投資拡大という政策が、債券から株式へのシフトを引き起こしている。世界の株式市場の時価総額は11月に6350億ドル増加したが、債券市場では株式市場の「上げ」の3倍近くに相当する1兆7000億ドルもの価値が吹き飛んでしまったのである。

 米FRBの12月の利上げを前に、米国の長期金利は12月1日に2.45%まで上昇し、来年1月には2.7%に達する可能性が指摘されている(12月1日付ブルームバーグ)。リーマンショックの遠因が「デッド・バブル」の崩壊だったことから、「トランプ旋風」による株高・円安に浮かれている場合ではないのかもしれない。

 4月のドーハ合意決裂の後、カナダの山火事など供給途絶事案が相次ぎ、原油価格は上昇した。だが、今回のOPEC合意の成立後は、需要面での悪影響が続発して原油価格が下落することになるのだろうか。

 OPEC総会が開催された11月30日のWTI原油先物市場の取引高は過去最高の約25億バレル(1日の原油生産量の約25倍)に達し、未決済取引残高も未曾有の水準に達している。このことはちょっとしたきっかけで「大きく山が動く」ことを意味している。産油国全体の減産合意失敗よりも需要減の材料が引き金となって、原油価格が暴落することになるかもしれない。

 

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