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借金10兆円超え、孫正義とみずほ銀行の「見果てぬ夢」 もう引き返せない運命共同体
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/50368
2016.12.07 週刊現代 :現代ビジネス
1兆円をポンッと貸した際は、周囲も大丈夫かと驚いた。借金をテコに兆円単位の事業を次々断行する孫正義と、その借金経営を支えるみずほ銀行に死角はないか。最近、ヒヤッとする一幕が起きた。
■まだ、足りない
ソフトバンクグループが英半導体設計大手のアーム・ホールディングスに対して仕掛けた3・3兆円の巨額買収劇が、「世紀のビッグディール」と騒がれたのは約4ヵ月前のことである。
あの日以降、ソフトバンクの孫正義社長(59歳)はおどろくほど慌ただしい日々を送っている。
毎週のようにアーム社の経営陣たちとミーティングするのはもちろん、月に一度は互いに顔を合わせて経営議論を交わしている。
アーム社のCEО(最高経営責任者)はサイモン・シガース氏だが、孫氏はみずから実際に経営に入り込むと、サイモン氏を連れ立ってアーム社の主要取引先へトップ外交に飛び回ってもいる。
「今後10年分くらい契約したい」——孫氏はいつもの人懐っこい笑顔で取引先の心を掴むと、さっそくこんな色よい返事を引き出しているという。
今秋には、ソフトバンクからアマゾンジャパンに転じていた田中錬氏も呼び戻した。さっそくアーム関連事業の実働を担うARM事業推進室長に抜擢するなど、孫氏は細かな人事の差配にも抜かりがない。
1981年に孫氏が一人で立ち上げたソフトバンクは、売上高9兆円の「巨象」に成長した。孫氏が創業来保有するソフトバンク株の価値もいまや1兆5000億円に膨れ上がった。並の経営者であれば、「やり尽くした」と経営への熱量が冷めてもおかしくないが、孫氏の場合はむしろここへきてヒートアップしている。
「最近、いろいろと反省することが多い。なにを反省しているかと言うと、保守的に、堅く、小さく、固まっていたのではないかと」
実際、孫氏は11月7日に行った投資家向けの説明会で、こんな胸の内を明かしている。
「目の前の日常業務に忙殺されて、いたずらに年が過ぎていく。もっと積極的に、このテクノロジーの進化に対して、しっかりと取り組んでいかなければならないのではないか。
私が事業家として、また、情報革命に取り組む人間の一人として、忙殺の中に過ぎ行く自身の姿を振り返ってみて、猛反省し、いろいろと手を打っていかなければいけないのではないかと」
そんな言葉を裏付けるかのように、今秋、孫氏はアームプロジェクトに続く「次」も始動させた。
サウジアラビアなど中東の政府系ファンドとともに、10兆円規模の投資ファンドを作るという一大構想がそれ。ソフトバンク自身も2・6兆円ほどの巨額資金をぶち込みテクノロジー企業に投資すると宣言して、世界中の市場関係者の度肝を抜いたのである。
■サウジ王族を攻略せよ
オイルマネー事情に詳しいS&Sインベストメント代表の岡村聡氏は言う。
「孫氏が口説いたサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン副皇太子は同国のナンバー3で、今後トップに上り詰めるにあたって目玉となる功績が欲しい時期だった。孫氏はそんな副皇太子の事情を知ったうえで、彼が来日した際にみずからプレゼンをして、一気に口説いてみせた。
このファンドにはすでにアブダビもカタールも参加したいと言っていて、孫氏はオイルマネーを総なめにしようとしている。中東相手にこんな離れ業ができるのは、世界でも孫氏以外にはいない」
最近、孫氏と会談したという人物によれば、「彼はいつになく上機嫌だった」と言う。
「孫さんは非常に正直な人で、事業がうまく行っていないとき、たとえば米通信大手のスプリント社を立て直しているときなどは、『ダメだ』という顔をしている。ところが、最近は笑顔があふれてご機嫌で、充実していることが一目でわかった。
実は、サウジの副皇太子が来日した際、財界で1対1で会談できたのは孫さんだけなんです。その話を振ると、すごく嬉しそうにしていました。
一方で、孫さんはこうも言っていました。『これはまだ第一弾なんだ』と。いま世間では10兆円ファンドと騒がれているけれど、孫さんはもっと大きな額をつぎ込もうとしているのでしょう。孫さんは、『まだ入り口だ』とも言っていた」
かつて「異端児」と呼ばれていた頃を彷彿とさせるほどの大暴れぶりと言えるが、いまそんな孫氏を複雑な気持ちで眺めているのがメインバンクであるみずほ銀行の幹部たちである。
というのも、孫氏がビッグプロジェクトを威勢よく打ち上げる裏では、ソフトバンクの有利子負債(借金)が約13兆円と莫大な額に膨れ上がっているからである。
すでにソフトバンクは借金が売上高を上回っていて、その「借金経営」を支えるみずほからすれば肝が冷える事態になってきた。
「実際、アーム買収時にうちが『1兆円融資』を決定した際には、『肩入れし過ぎではないか』『共倒れしないか』と危惧する声が行内からも上がっていた」とみずほ現役行員は言う。
実は最近、そんな危惧が「現実化」して、ヒヤッとする一幕があった。
それはソフトバンクがアーム買収後の財務基盤強化や借金返済のため、「ハイブリッド債」という特殊な債券を発行して資金調達しようとした際のこと。
ソフトバンクは機関投資家から3000億円超の募集があると見込み、主幹事の野村證券も自信満々だったが、実際にふたを開けてみればたったの710億円しか集まらなかったのである。
「生命保険会社や年金基金が、ソフトバンクの信用力に疑問符を持って、買いに動かなかった。こんな危なっかしい企業の債券には手を出せない、ということです。
そんな会社にみずほ銀行は1兆円も貸し付けたのだから、非常にリスキーだと言わざるを得ない。行内から反対の声があって当然です」(元日本興業銀行金融法人部長で経済評論家の山元博孝氏)
■綱渡りの「1兆円融資」
そもそも、アーム買収をめぐる「1兆円融資」それ自体、綱渡りのようなディールだった。
みずほ幹部が匿名を条件に明かす。
「とにかく時間のない案件で、ソフトバンクサイドからの要求に応えるには、1〜2週間で1兆円の融資を決定しなければいけなかった。しかも、これだけ機密性の高い案件だと情報漏洩リスクが巨大なので、関係メンバーが絞られた。
そうした中で、ソフトバンクを担当する営業第17部が中心となって、買収の効果や財務に与える影響など詳細な項目についてのメインシナリオ、バッドシナリオを特急で作り上げた。もちろん、これだけ巨額の融資になると金融当局への報告も必要で、情報が漏れないように細心の注意を払いながら、手順をひとつひとつクリアしていった。
最終的に経営会議、取締役会を開いて、執行役員から社外取締役、頭取などトップマネジメントが融資の可否を議論し、GOサインを出したのは7月13日だった」
孫氏がアーム社に買収を持ち掛けたのが7月4日なので、10日弱で1兆円融資を決めたことになるわけだが、みずほがそんな危なっかしい橋を渡ろうとするのは、「大きな果実」を得ることができるからにほかならない。
実際、アーム買収をめぐってみずほが手にする報酬は巨大だ。
まずは、金利収入。複数の関係者によれば今回は1%を超える金利設定なので、みずほには単純に年間100億円超が入り込む計算になる。マイナス金利時代のいま、こんなに魅力的な案件はどこを探しても見つからない。
手数料収入も大きい。ソフトバンクは直近の半期決算で、アーム買収にかかわる財務や法務のアドバイザー(助言)手数料などが234億円だったことを明かしている。今回、財務アドバイザーについたのは、米レイングループ、英ロビー・ウォーショーとみずほ証券の3社で、法務アドバイザーについたのは海外2社。単純に5社でこれを山分けすると考えれば、みずほには47億円ほどの実入りとなる。
「みずほにはこれに加えて、融資手数料も入る。助言手数料と合わせれば、みずほグループ全体で100億円以上を得る形になる」(前出・みずほ幹部)
つまりは、たった10日間ほどで金利収入+手数料収入の合計200億円超が手に入る見通しが立つのだから、こんなにおいしいビジネスはない。
「みずほがソフトバンクを支えようとするのは、みずほフィナンシャルグループ社長の佐藤康博氏と孫さんが親しい仲にあるのも大きいでしょう」と言うのは、元ソフトバンク社長室長の嶋聡氏である。
「もう時効でしょうから言いますが、孫さんと佐藤社長が急接近したのは、民主党政権時代に孫さんが仕掛けた『光の道構想』のときです。全国に光ブロードバンド網を整備しようとする挑戦的な試みでしたが、実は佐藤社長はこの構想に絡んでいて、それから二人は日本を変えていく『同志』として親しくなっていったのです。
二人は普段から情報交換もしていて、佐藤社長からすればいまも孫氏のチャレンジを応援したいという気持ちがあるのでしょうが、みずほにとってのソフトバンクはもはやToo Big To Fail(大きすぎて潰せない)という状況になってきているのもまた事実です。
実は借金というのは額が大きくなるほど、借りているほうが力を持つようになる。そして孫さんは、その力関係がよく見えている。もはや無茶を言ってもみずほはついて来ざるを得ない、と」
莫大な借金をテコにして大胆に投資をする孫流は、成功すれば得るものは大きいが、失敗すれば一気に経営の根幹が揺るぎかねない危険をともなう。
みずほは旧富士銀行時代からメインバンクとしてそんな孫流に付き合ううちに、いつの間にか生死をともにしかねない「運命共同体」になっていたわけだ。
■孫がいなくなったら……?
もちろんそんなリスクについては、孫、佐藤両社長ともに百も承知だが、それでも突き進もうとするのは、「孫氏からすれば、ソフトバンクが保有する株の含み益が膨れ上がっていて、それを売れば借金はすぐに返せると考えているから。みずほとしても、ソフトバンクは国内の携帯事業が『ドル箱』で、年間5000億円以上のフリーキャッシュフローを生むので、これが借金返済の原資になると考えている」(前出とは別のみずほ幹部)。
しかし、果たしてそんな楽観はいつまでもつだろうか——。
実はソフトバンクがこの11月に発表した決算資料には、ソフトバンクが巨額を投じているインド企業向け投資をめぐって、581億4000万円もの損失を計上したことが記載されている。
それだけではない。ソフトバンクの稼ぎの柱である国内携帯事業についても、KDDIとドコモは「本業」の営業利益が直近決算で2ケタで伸びていたのに対して、ソフトバンクだけがひとケタ台と伸び悩んだ。借金の「担保」の役割となるべき株と本業が、ともに足元で揺らぎ始めている。
「ソフトバンクは『ソフト』を扱う会社なので、製造業と違って担保にできる確たる資産もありません。だから、みずほからすれば、最大の担保は孫正義その人しかない。孫さんが語るビジョンを信じられるか、この男を信じていいのか。みずほの佐藤社長は、最終的にはその一点に賭けているわけです」(孫氏をよく知る人物)
来春には、ソフトバンクとみずほが共同出資した会社が、新たな金融事業を始める。新会社設立の記者会見では孫、佐藤両氏が居並んで、握手をして「蜜月」をアピールして見せた。
「これから考えられる最大のリスクは、不謹慎ながら孫氏がまさかの事態で急死してしまうことです。仮にそんなことになれば、ソフトバンクもみずほも経営陣は大混乱に陥る」(前出・みずほ幹部)
ただ、もう引き返せないし、これからも突き進み続ける。「見果てぬ夢」が終わる時、そこにあるのは歓喜の声か、あるいは絶望の風景か——。
「週刊現代」2016年12月10日号より
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