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日銀の株式保有比率(ETFを通じた間接的保有比率)はすでに10兆円を超えており、GPIF(公的年金積立金管理運用独立行政法人)に次ぐ国内第2位の大株主だ
日銀がETF買いで「日本企業の大株主」になることの大問題
http://diamond.jp/articles/-/110407
2016年12月7日 山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員] ダイヤモンド・オンライン
■日銀の株式保有額は10兆円超
GPIFに次ぐ大株主に
日銀は、ETFによる株式購入をもう止めた方がいいのではないか。本稿では、率直にそう申し上げたい。
「週刊ダイヤモンド」の直近発売号(12月10日号)に、「日銀“大株主化”のいびつ 1年後を初試算! 保有率上位30社」という記事が載っている(ダイヤモンド・オンラインにも転載)。ニッセイ基礎研究所の井出真吾チーフアナリストが試算した、1年後の株主比率上位30銘柄の表が載っている。
例えばトップのミツミ電機は1年後に日銀の株式保有比率(ETFを通じた間接的保有比率)が20.0%にも達すると試算されている。もっとも、同社は、今年の11月10日時点で14.7%も保有されているので、日銀による株式保有は、現時点ですでに「ひどく大きい」。
一般的には、保有比率が5%を超えると、影響のある大株主として保有株式の増減について報告が求められることになっている。先の試算表の30位の東海カーボンを見るとしても、1年後には9.0%と計算されているし、11月10日時点で6.4%と5%を大きく超えている。
筆者は、株式市場の常識を代表するような偉い立場ではないが、率直に言って「ただごとではない」保有比率だ。
記事にもある通り、日銀の株式保有額は10兆円を超えており、すでにGPIF(公的年金積立金管理運用独立行政法人)に次ぐ国内第2位の大株主だ。東京三菱UFJ銀行よりも、日本生命よりも大きい。
加えて、日銀は、ETFを年間約6兆円のペースで買う予定だ。先般、物価目標の「2%」(消費者物価上昇率、対前年比)をはっきり超えるまで、大規模な金融緩和を止めないことを約束したので、今後しばらく買い続ける可能性がある。現状では、2、3日に一度程度、七百数十億円の規模で買い出動しているようだ。上値を買い煽るような買い方はしていないようだが、海外の株価が下落して東証でも株価が下がるような日に、「下げ幅が小さく、買い支えが入っているようだ」と感じている市場参加者が多い。
日銀が大株主であることの問題と、日銀の買いが株価形成に影響を与えていることの問題の大きく2点が考えるべき問題だ。
■株主責任の空洞化と
銀行株については利益相反も
さて、日銀が日本の企業の大株主になることにどのような問題があるのだろうか。
日銀と同じく公的機関で大株主であるGPIFと比較すると分かりやすい。両者は共に個別企業に対して直接投資しているのではなく、運用会社を通じて株式を保有している。
GPIFは、日本版スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードをよしとして、日本の企業の企業統治や経営に株主の利益の立場から関わることを決めたように見える。GPIFは資金運用を委託している運用会社を通じて最終的な株主としての議決権行使に関与しようとしている。
この方針に対しては、政府機関が株式保有を通じて民間企業の経営に介入しようとすることなので、賛否両論がありうる(筆者は「否」である)。
しかし、日銀の場合は、自身が最終的な大株主であるにもかかわらず、議決権行使への関わりについて方針を明らかにしていない。何もしない、ということなら、議決権が空洞化することを意味する。
仮に、先のミツミ電機に対してTOBを仕掛ける投資家がいた場合、推計ベースで20%もの株式を保有する日銀がどのような態度に出るかが極めて重要だが、日銀は関与の方針を明らかにしていない。
例えば、「日銀は株主の利益の立場から議決権行使に関与する」と決めることは可能だ。しかし、国内株式のETFのポートフォリオには銀行株が小さからぬ割合で含まれている。
日銀は、銀行に対して日銀考査等を通じて関わる監督者の立場でもあるが、株主として銀行の利益が上がることを望む立場にも立つ。日銀の立場に深刻な利益相反があることは明白だ。
また、銀行以外の上場企業に対しても、株主としては自己資本をスリムにしてROE(自己資本利益率)を上げてほしいという利害を持つが、傘下の市中銀行にとっては、融資先の企業が自社株買いなどで自己資本を小さくするのは与信リスク上好ましいことではない。
これら複数の観点から、日銀が日本企業の大株主になることは好ましいとは言えない。
■株価形成を歪め
自然な株価が分からない
日銀のETF買いについては、株価形成を歪めることの弊害も無視できない。
先述のように、日銀のETF買いが入ることによって、株価が下がりにくくなっていることは大方の市場関係者が感じているところだ。
日銀の買いによって株価が高止まりすることは、一応は消費や投資を喚起する資産効果につながると考えることができるが、このことによって、自然な株価形成とは異なる株価が形成されていることは、株式市場の関係者にとって不気味だ。
端的に言って、日銀の買いが止んだ後に形成される自然な株価がいくらなのかが分からない。
また、株価形成全般に対する影響の他に、日銀が買うETFの種類、さらに個々の銘柄の流動性の差などに基づく日銀買いの影響の差などがあって、個別銘柄の株価形成にも歪みをもたらしている。
リスクとリターンの計算に基づいて参加するのではない市場参加者は、他の市場参加者にとっての「カモ」になり得るのではあるが、株価形成を攪乱する要因でもある。
日銀が株式市場に介入せずにデフレ脱却とマイルドなインフレの目標が達成できるなら、その方が遙かにいい。
■株式を買うくらいなら
素直に財政も使うべき
率直に言って、日銀が民間企業の株式を買う政策は「筋が良くない」。日銀が民間企業の大株主になることも、日銀のETF買いが株価形成に影響を与えることも、「ない方がいい」ことに違いない。
しかし、仮に日銀が「手持ちのETFを売ります」と方針転換すると、株式市場に与える影響は甚大だろう。ETFの買いを縮小して、遠からず止めることにするのが現実的だろう。手元に積み上がったETFの売り方を考えるのは、その後だ。
かつて、デフレ下にあって中央銀行は「ケチャップでも何でもいいから買え」と言ったのは確か前FRB(米連邦準備制度理事会)議長のバーナンキ氏だったが、マネーを市中に供給することが大事だとしても、買う対象が株式というのは弊害が大きい。ケチャップには議決権がないし、利益相反もない。
ETF買いを止めるとした場合、日銀は何を買ってマネーを市中に供給するといいのだろうか。
端的に言うなら、財政の帳尻を赤字にすることに伴って発行される国債を引き受けるのがいい。付け加えるなら、財政の赤字は、公共事業などの「財政出動!」(=支出の拡大)ではなく、減税や給付金のような現金還元策がいい。日銀がマネーを供給し、政府が有効需要の拡大を通じて資金需要を作って、市中に出回るマネーを増やすのが素直なポリシーミックスだろう。
一部では、国債を日銀が直接引き受けることは(借換債を除いて)「禁じ手」とされているらしいが、現在すでに国債は一時的に民間金融機関が持つだけで日銀が多額に買い取っている。
国債の日銀引き受けの弊害はインフレだ。現在はインフレが足りないことに困っているのだから、ほど良い規模で(少しずつ試しつつ)日銀が国債を引き受けてインフレを目指すのがいい。
日銀がやるべきことは、ETFを通じた日本株買いではない。
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