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FX Forum | 2016年 12月 6日 16:54 JST 関連トピックス: トップニュース
コラム:
イタリア国民投票で露呈した真のリスク
山口曜一郎三井住友銀行 ヘッド・オブ・リサーチ
[東京 6日] - イタリアでは4日に憲法改正案をめぐる国民投票が実施され、賛成40.9%、反対59.1%で否決された。この国民投票を自身の信任投票と位置付けていたレンツィ首相は辞任を表明し、金融市場では政治混乱を懸念する見方が台頭している。
状況は複雑で、この先は様々なシナリオが考えられるが、ここでは、重要なリスクをあえて3つに絞り、論じていきたい。筆者は、実は短期的なリスクは人々が考えているほど差し迫ったものではない一方、中期的なリスクに警戒する必要があると見ている。
ここで取り上げる3つのリスクとは、1)イタリアの信用力低下による国債利回りの上昇、2)銀行セクターへの懸念の高まりと銀行システム不安、3)アンチ・エスタブリッシュメント(反既存支配層)の流れの強まりである。
もちろん、これらのリスクはそれぞれが絡み合っている。例えば、イタリア国債利回りの上昇リスクの背景には、政治混乱によるイタリア経済の弱体化に加えて、アンチ・エスタブリッシュメントの流れがユーロ離脱の声につながり、イタリア国債の価値を下落させるという連想もあるだろう。
ただし今回は、問題の所在と警戒すべき事項をイメージするのが目的であるため、複雑な絡み合いもできる限りシンプルに考えていくことにする。
<イタリア国債利回りの上昇リスク>
イタリアの政府債務規模はユーロ圏諸国の中で突出しており、欧州委員会の経済見通しでは2017年は対国内総生産(GDP)比で133.1%に達する。金融市場では、国民投票否決による政治混乱から国債利回りに上昇圧力がかかることが懸念されており、特に先行きの不透明性が強まれば、イタリア国債の3割以上を保有する非居住者を中心とした売りが強まる恐れがある。
ただし、当時とは状況が異なることも確かだ。現在、欧州中銀(ECB)は金融緩和政策の一環として資産購入プログラムを実施中であり、国債を中心に月800億ユーロの債券を購入している。緊急時には、この枠組みの中で、イタリア国債の買い入れを増やすことが可能だろう。
また、ECBは債券購入プログラム(OMT)を有している。こちらは残存期間が1―3年の債券が対象であり、発動に際して厳格な条件が付与されることもあって、2012年9月の発表以来、利用実績はゼロだが、万が一、ユーロ危機を連想させるような展開となれば、政策手段として活用可能だ。
なお、最終手段としては欧州安定メカニズム(ESM)が存在する。現在は4270億ユーロの利用可能枠が残っており、国債売りへの抑止力としての効果が期待できる。イタリアのポピュリズム政党「五つ星運動」の勢力拡大から財政規律が失われ、OMTやESMが実施できない事態を危惧する向きもあるが、今の段階でそのシナリオに賭けるのは時期尚早だろう。一定程度の利回り上昇があっても、上昇が止まらなくなる展開は予想しにくい。
<イタリア銀行システム不安は杞憂か>
銀行セクターへの懸念の高まりと銀行システム不安は大きな問題だ。イタリアの銀行は大手を含めて多額の不良債権を抱えているところが少なくない。特に報道されているように、大手銀の1つであるモンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナ(モンテ・パスキ)は現在、50億ユーロの増資と280億ユーロの不良債権処理を進めている最中であり、政治的な混乱が増資に悪影響を及ぼすのではないかと見られている。
他の大手銀の中にも民間資本による増資を計画しているところがあり、政治混乱から増資や不良債権処理が進まなければ、個別行の問題にとどまらず銀行システム全体に影響が広がるとの懸念の声が聞こえてくる。
この問題をさらに厄介なものにしているのは、万が一、増資が不調となり、公的資金の注入が必要となった場合、株主や債権者に負担を求める「ベイルイン」が行われる点だ。イタリアの家計は現金に近い感覚で銀行債を購入しており、約2000億ユーロの銀行債を保有している。ベイルインが行われれば、彼らも損失を負担することになり、イタリアの現政権や欧州連合(EU)に対する不満が高まる恐れがある。
つまり、この問題は端的に言えば、国民投票の結果が直接的に影響するというよりも、銀行の増資がうまくいくかどうかがポイントだ。国民投票が否決されても、各行の増資が円滑に進めば、短期的なリスクはそれほど高まらず、銀行株への下押し圧力は後退するだろう。
報道によれば、モンテ・パスキの債券保有者は10億ユーロの劣後債を株式に転換することに応じた模様であり、資本増強は一歩進んだ。一方、同行関係者やアドバイザーらは資本増強計画を続行するかどうかを数日中に決定する予定であり、これが非常に重要だ。増資がうまくいかないようだと、公的資金注入の可能性が高まり、ベイルインに至るようであれば、国民の政治に対する不満を高めることになる。
<アンチ・エスタブリッシュメントのうねり>
前述した通り、国民投票否決の影響は中長期的に大きいものとなる可能性がある。もちろん、短期的にも政治的混乱を招くリスクがあるため予断は禁物だが、各種報道を追うと、以下のような安心材料が見えてくる。
●レンツィ首相が辞任しても、次期首相の下で現在の連立政権の枠組みが維持されるのであれば、早期の解散総選挙は回避される。
●新しく樹立された暫定政権によって、五つ星運動の影響力を抑えるために、下院選挙で第一勢力に与えられるボーナス議席の仕組みが見直される可能性がある。
●連立協議が難航し、大統領が指名した首相による新内閣が信任されなければ、解散総選挙となる。ただし、総選挙で五つ星運動が躍進したとしても、上院で単独過半数を取れるとは限らず、皮肉なことに、今回の国民投票否決によって上院の権限が縮小しないため、反EUの流れが一気には加速しにくい。
これらを考慮すると、すぐにイタリアの政治が反EUに大きく舵を切る公算は必ずしも大きくない。むしろ、警戒すべきは、イタリアの国民投票が、英国民投票や米大統領選挙同様、世界各地で起こり始めているアンチ・エスタブリッシュメントやポピュリズムといった大きなうねりを表している可能性だ。
その意味で、同じ4日に行われたオーストリアの大統領選挙で、リベラル色の強いアレクサンダー・ファン・デア・ベレン候補が、極右・自由党のノルベルト・ホーファー候補を破ったことは、エスタブリッシュメント陣営にとって一息つけるものだった。
しかし、アンチ・エスタブリッシュメントの流れが食い止められたとは、とても言い難い。来年の、オランダ総選挙、フランス大統領選挙、ドイツ総選挙につながっていくと考えると、欧州の政治イベントは世界中に広がるアンチ・エスタブリッシュメントのうねりを顕在化させる可能性がある。
これらを踏まえてユーロの為替相場を見た場合、短期的には売りよりも買い戻しの動きが出やすく、売り圧力が強まるかどうかは、イタリアの銀行の増資動向を見ておけば良さそうだ。
ただし、中期的には政治イベントに絡んでユーロ売りが強まる局面が出てくると見る。政治問題が顕在化する展開となれば、来年前半のユーロドルは1.02ドル程度までユーロ安が進むだろう。万が一、フランス大統領選挙でマリーヌ・ルペン候補が勝利した場合は、1.00ドル割れの可能性さえある。
*山口曜一郎氏は、三井住友銀行市場営業統括部副部長で、ヘッド・オブ・リサーチ。1992年慶應義塾大学経済学部卒業後、同行入行。法人営業、資本市場業務、為替セールスディーラーを経て、エコノミストとして2001―04年にニューヨーク、04―13年ロンドンに駐在。ロンドン大学修士課程(金融学)修了。
*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(こちら)
(編集:麻生祐司)
*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。
http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-yoichro-yamaguchi-idJPKBN13V0JG?sp=true
日銀、短観調査に海外売上・設備投資を追加 ユーロの想定レートも
[東京 6日 ロイター] - 日銀は6日、全国企業短期経済観測調査(短観)見直しの最終案を公表した。日本企業における海外事業の拡大を踏まえ、短観に海外での売上高や設備投資額、ユーロ/円の想定為替レートなどの調査項目を追加する。来年3月調査での研究開発投資額を皮切りに、2020年頃にかけて導入する予定。
新設する日本企業の海外での事業活動については、連結企業グループの親会社であり、資本金10億円以上の大企業を調査対象とする。具体的には、連結ベースの売上高、海外売上高、経常利益、設備投資額、海外での設備投資額を調査。海外での売上高比率や設備投資比率も公表する。
為替レートの調査も拡充する。これまでは、輸出企業を対象に米ドル/円についてのみ想定為替レートを調査していたが、新たにユーロ/円を加えるとともに、調査対象を金融機関を除く全企業に拡大。輸入や対外直接投資などを含む事業計画の前提となる想定為替レートを調査する。
こうした海外での事業活動の新設と為替レートの拡充は、2020年頃の公表開始を予定している。
また、国際基準の変更に伴って国内総生産(GDP)に新たに研究開発費が参入されることに足並みを揃え、来年3月調査から研究開発投資額を追加する。これによって投資関連の年度計画には、従来の設備、土地、ソフトウエアに研究開発の項目が新たに加わることになる。
日銀では、調査項目の新設、拡充を行う一方、回答企業の負担を軽減するため、一部の項目の廃止などを進める。
(伊藤純夫)
http://jp.reuters.com/article/boj-tankan-idJPKBN13V0RV
コラム:トランプ相場は「根拠なき熱狂」か
12月5日、トランプ相場は、20年前にグリーンスパン元米FRB議長が初めて用いた「根拠なき熱狂」なのか。写真は、トランプ次期米大統領を映すTV画面。フランクフルト証券取引所で11月撮影(2016年 ロイター/Kai Pfaffenbach)
Tom Buerkle
[ニューヨーク 5日 ロイター BREAKINGVIEWS] - ちょうど20年前、アラン・グリーンスパン元米連邦準備理事会(FRB)議長は、株式市場について「根拠なき熱狂」という言葉を初めて用いた。実際ハイテクバブルが崩壊するまでには、それから3年を要した。しかし、今の市場の活発な性質を考えると、反応スピードはもっと速いだろう。
グリーンスパン氏が講演した1996年12月時点で、S&P総合500種の年間上昇率は21%近く、株価収益率(PER)は平均して予想利益の19倍強だった。同氏の発言は一時的な揺り戻しをもたらしたとはいえ、S&P総合500種は2000年3月のピーク前には2倍以上の水準になっていたとみられる。
足元ではドナルド・トランプ氏の米大統領選勝利によって、減税とインフラ支出拡大、規制緩和が実施されるとの期待から新たな熱狂が生まれた。S&P総合500種は、大統領選当日から数週間で3%強上昇し、より小型の株で構成されるラッセル2000指数は最高値を更新した。
現在のバリュエーションは、グリーンスパン発言当時よりも高い。S&P総合500種のPERは25倍強で、長期平均の15.6倍を上回っている。もっとも未踏の領域とは言い難い。アナリストの予想では、初期段階にある企業利益の回復は今後加速し、ファクトセットがまとめた来年の増益率見通しのコンセンサスは11%を超える。金利水準も最近上昇したもののまだ歴史的には低く、投資家は増益に対して喜んで対価を支払う。
この先はトランプ氏が壮大に打ち上げた多くの公約を実行できるかどうかが重要になる。選挙期間中、トランプ氏は財政赤字に反対しながらも、赤字を劇的に増やすのは必至である減税をすると表明した。自由貿易や海外への雇用移転に対する厳しい姿勢は、売上高を外国市場に依存する米多国籍企業にとって脅威になりかねない面もある。
議会共和党は、歳出拡大の取り組みにはこれまで熱意を示してこなかった。さらにドルと金利はここ数年、米経済のブレーキ役になっており、次期政権でも状況は変わらないだろう。FRBは利上げを再開し、回数は昨年の1回よりも増やす構えだ。こうした中で資産価格が再び根拠なき熱狂の範囲に入っているのかどうか投資家が判断を下すまでに、それほど長い時間がかかるはずはない。
●背景となるニュース
*グリーンスパン氏はFRB議長だった1996年12月5日に、「根拠なき熱狂」という新しい表現を世に広めた。
*グリーンスパン氏は当時の講演で「持続的な低インフレは先行き不透明感を後退させ、リスクプレミアムが低下して株式その他の資産価格が上昇することを意味するのは明らかだ。しかし根拠なき熱狂が過度に資産価格を押し上げ、その後日本で過去10年間起きたような予想外の長期にわたる縮小にさらされてしまう局面を、われわれはどうやって知るのだろうか。またそうした事態を金融政策にどう織り込むのだろうか」と語った。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにロイターのコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。
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