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トランプ氏へのマーケットの期待は大。だが、市場はFRBの役割を忘れていないか(写真:AP/アフロ)
金融市場はこれから不安定化する危険がある マーケットは「FRBの役割」を忘れていないか
http://toyokeizai.net/articles/-/147759
2016年12月02日 近藤 駿介 :金融・経済評論家/コラムニスト 東洋経済
トランプ氏は米国の大統領選挙期間中から世界を震撼させてきた。だが、市場参加者にとって想定外だったのは、選挙後、金融市場に流れ込んだ「トランプ旋風」が「強烈に暖かい南風」だったことだ。
NYの株式市場はトランプ氏が次期大統領に決定すると、連日のように史上最高値を更新。日経平均株価も、12月1日終値で年初来高値を更新した。市場参加者からは、トランプ氏の経済政策への期待がますます強まってきている。彼の政策評価に対する豹変ぶりは、トランプ候補勝利を受け「トランプ当選で米国株は上昇の可能性もある」(11月9日付東洋経済オンライン)と指摘した筆者の予想を上回るものだった。
■なぜ市場はトランプ次期大統領に「寛容」なのか?
だが、その実行性に否定的な見方も依然として根強く残っている。選挙期間中、トランプ氏が訴えてきた政策の中には、確かに実行性や効果に疑問符がつくものが含まれていることも事実だからだ。
そのことと、市場が大きな下落に見舞われるということは必ずしもイコールではない。実行性や効果が確認できるまでにはかなりの時間が必要だからだ。仮にトランプ氏が、選挙期間中に主張して来た政策を自ら取り下げていくならば、金融市場は大きな失望に襲われることになる。しかし、政策を推し進めようとする姿勢を見せ続けるのなら、しばらくの間金融市場は「期待」を胸に、実行と成果を待つことを選択するだろう。
重要なことは、トランプ氏が訴えている政策は、これまでの米国や先進国の政策の延長線上にないことだ。これまでG7等では「世界経済の持続的成長のためには過度に金融に依存する政策から、財政を加えた政策への転換が必要である」と、幾度となく指摘されてきた。しかし財政的な制約もあり、こうした政策転換は、ほとんどなされて来なかった。トランプ氏が主張している政策は、こうした手を付けられずに放置されてきたものだといえる。
もし、提唱する政策がこれまでの延長線上にあるものだったのなら、市場はその実行性と成果を求めるだろう。しかし、これまでの延長線上にない政策に対する期待がある間、市場は寛容になるものだ。
実際、政策の方向性が変更になった際に、市場が実際の成果よりも期待で動くことは「異次元の金融緩和」を市場が歓迎したことでも証明済みだ。
しかも、ゼロ金利下でも量的緩和をすれば物価上昇と経済成長が実現できるという「異次元の金融緩和」の効果に関しては、当初から疑問視する向きもあった。それに対して、トランプ次期大統領が提唱する財政主導の政策は、政策実現に向けて財政面でのハードルは低くないものの、必要性とその効果は認められているものだ。
こうした中、市場参加者が気にしなければならないことは、トランプ氏の政策の実行性や効果ではなく、FRBの金融政策との関係である。認識しておかなければいけないことは、トランプ氏の政策に対する市場の期待が高まれば高まるほど、FRBの利上げの可能性も高まるという関係だ。
■FRBは高まるインフレ圧力を止める必要がある
11月17日に行われた議会証言で、イエレンFRB議長は「引き締めが遅れれば、経済が過熱して急激に利上げしなくてはならなくなる」と、改めて「Behind the curve(政策が後手に回る)」のリスクに言及し、早期の利上げに意欲をみせている。
その背景にあるのは、法定準備預金の13倍にも及ぶ約2兆ドルもの資金が超過準備預金としてFRBに積まれていることである。現在の経済活動に使われていない大量の資金がFRBに積まれているのは、有望な投資先が少ないことの裏返しでもある。
こうした状況の中で、1兆ドル規模のインフラ投資計画を主張するトランプ次期大統領の誕生は、投資機会が増えることを意味し、多額の超過準備預金の一部が市中に流出する可能性を高めるもので、インフレ圧力が急速に高まることを意味する。これを食い止めるためにも、FRBにとって利上げは必要になってきたといえる。
金融市場は期待をエネルギーに動く。したがって、「物価の安定」という責務を負うFRBは、トランプ次期大統領の政策が実行され効果を発揮するかどうかを確認するまで待つことはできない。インフレを防ぐために、期待の芽を摘み取っていかなければならない。期待は市場だけでなく、物価も動かすからだ。
イエレン議長には、2代前の議長だったグリーンスパン氏の先例も当然ながら頭にあるはずだ。同氏は1990年代前半に「preemptive strike(先制攻撃)」と称してインフレが顕在化する前に小刻みな利上げに動き、米国の持続的成長と堅調な株式市場を達成し、「マエストロ」と呼ばれた。だが、2000年代に金利を歴史的な低水準に放置したことで、リーマンショックを招いたと後に批判に晒された。このことはイエレンFRB議長の教訓となっているはずだ。
■FRBがブレーキ役に回ったことを忘れてはならない
大統領選挙後にFRBが利上げに動くことは、経済指標等から想定されていたものだ。ただ、これまでの延長線上にない政策を掲げるトランプ大統領誕生は、クリントン大統領誕生よりもFRBに利上げを強く促すものだ。
金融市場でトランプ氏の政策への期待が高まったのは、米国の経済政策が「限られた財政支出+金融緩和」から「積極的財政支出+金融引き締め」へと方向転換したことによる。忘れてはならないのは、積極財政への期待がバブルを生まぬように、FRBがブレーキ役に回ることだ。
それゆえ、足元の金融市場が抱えるリスクは、トランプ次期大統領の政策の実行性や効果ではない。市場が、FRBがブレーキ役側に回ることになったのに、そのことを忘れて暴走することだ。
12月2日には11月の雇用統計が発表される。ここからFOMC(米公開市場委員会)が開催される13〜14日にかけて、金融市場が不安定な動きになる可能性があることだけは、頭に入れておく方がよさそうだ。
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