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ワタミのお株を奪った電通「ブラック」問題はどこも他人事ではない 「アンチ長時間労働」実現に向けて
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/50295
2016.11.25 山崎 元 経済評論家 現代ビジネス
■ブラック企業の新代名詞
広告代理店最大手の電通が、若手女性社員が過重労働で自殺した問題で悪い意味で注目を集めている。かつて、労働が過重な所謂「ブラック企業」とし世間で名前が出るのは居酒屋チェーンのワタミだったが、今や電通がすっかりそのお株を奪った感がある。
電通は、労使協定の残業時間上限を短縮し、夜10時には本社ビルを消灯して、それ以降の残業ができないことをアピールしている。
先日、筆者は電通が関係する仕事のメールを夜9時45分くらいのタイム・スタンプで受け取ったので、担当の電通マンに、「さすがに、10時前のメールでしたね」と言ったところ、「はい。間に合いました」と苦笑していた。10時消灯は、実際に機能しているようだ。
現実問題として、社員が抱える仕事自体が減る訳ではないだろから、多くの電通社員にとっては、ただ不便になっただけかも知れない。しかも、実際にどこかで仕事をしても、残業代が付かなくなったのかも知れず、気の毒にも思える。
とはいえ、電通は本気で働き方(より正確には「社員の働かせ方」)を変えねばならないのだろうし、他の企業にとっても他人事ではないはずだ。
今回の電通と同類の問題が表面化した場合、同様のバッシングを受けるだろうし、後発である分、電通以上のダメージを受けるかもしれない。
また、行政も企業の過重労働により厳しく対応することが予想されるし、その場合、定量的に最も分かり易いのは労働時間なので、多くの企業にとって「アンチ長時間労働」は重要な経営課題になるはずだ。
■限りなくブラックに近い人気企業
長時間労働に付き合わされる職場は、電通ばかりではない。
筆者は、過重労働の弁護をしようとは思っていないが、銀行、総合商社、コンサルティング会社、それに中央官庁に上級職で就職する場合なども含めて、就職市場で競争力のある(端的に言って偏差値が高い大学の)学生に人気の組織の多くは、長時間労働を含めてハードワークであることを特色とする限りなく「ブラック」に近い職場だ。
これらの会社の経営者や人事部員の中には「電通の一件は他人事ではない」と思っている人が少なくないはずだ。そして、その問題意識は正しい。
若手社員・官僚にとって、電通も含めたこれらの人気の職場が100%ブラック「ではない」理由は、人材として将来も大切にされ、且つ職位や報酬に「上がり目」があるという2点だけだろう。若手も含めて社員に、真正ブラック企業と同類のプレッシャーが掛かることは、しばしばあるはずだ。
他方、特に仕事を覚える段階の若手社員の中には、経験値を増やすために職場に長時間居たい場合もあるだろうし、納得が行くまで時間を掛けることが成長につながる場合もあるだろう。また、ライバルとの競争にあって、「体力勝負」に持ち込みたいタイプの社員もいるにちがいない。
職場の現実を考えると、長時間労働を形式的に規制するのではなく、(1)社員(官僚)の心身のコンディションに注意を払うべきであること、(2)過重労働のプレッシャーを部下の教育に使わないこと、この二点が守られることが理想だろう。
しかしながら、いずれの職場にあっても、(1)、(2)が適切に行える保証が無い以上、「アンチ長時間労働」が必然的に取り組むべき課題となる。
時代は変わったのだ。
■「〆切」は人類の偉大な発明
企業も官庁も、長時間労働からは離れたいが、同時に仕事の質と量は落としたくないはずだ。そうすると、必然的に「時間効率」を追求せざるを得ない。
日本の職場では、これまで長時間仕事の場に居ること、長時間を耐えることの我慢比べが競争の有力種目の一つだったが、このゲームは無くなる。
これに変わって、一つの仕事をいかに短時間で仕上げたかの「時間効率」を競うゲームが流行するのではないか。人々は、一定の仕事をいかに短時間で完成させたかを競う。あるいは、時間に制約がある中での仕事の完成度を競う。
例えば、「A部長には、新人時代に、X社向けの完璧な提案書を45分で完成させたことがあるらしい」といった話が職場の伝説となり、A部長が尊敬されるといった案配だ。
時間効率を追求する上で最も効果的な方法は、ズバリ「〆切」を有効に活用することだろう。
「〆切」は、人類の偉大な発明の一つだとつくづく思う。筆者も含めて凡人は、〆切が無ければ、仕事の能率と総量が激減するだろう。
これまで、日単位で設定していた仕事の〆切を、時間単位・分単位に分割して設定するようなマネジメント(より前向きには「自己管理」)が有効であり、必要になるはずだ。
〆切は集中力を増進する妙薬だ。また、人は〆切に合わせて仕事をする柔軟性をかなりの程度持っている。適切に〆切を設定できると、仕事の能率は驚くほど向上するはずだ。
ただし、〆切が真に〆切であるためには、それが本当に〆切であることと、〆切を約束する相手が必要だ。
職場の上司と部下の関係は、有効な〆切を作る基礎となり得るが、上司は部下が尊重し時には恐れる「権威」を持たなければならないし、リーダーシップの常であるが上司の言葉が彼(彼女)の本音であることが信用されねばならない。
また、上司が適切に〆切を設定するためには、部下の仕事の内容と、部下の能力やコンディションについて、今までよりもずっと深く知らなければならない。
老婆心ながら付け加えると、仕事を適切に分割できたとして、一個一個の仕事を隙間無く並べてぎりぎりの時間短縮を目指すのは下策だろう。仕事と仕事の間に時々は余裕(端的に言って「休み」)を、半ば強制的に挟むべきだろう。
隙間無く〆切を並べると疲れを感じる以前に効率が落ちてくるし、余裕の時間には、無意識がフル回転して次の〆切に備えてくれることが多いので、これを有効活用したい。
もちろん、「時間効率」が職場の価値観になると、実は不要な形式的な会議のようなものを無くしたり、短縮したりする効果もあるだろう。
「アンチ長時間労働」は、いずれの職場にあっても、マネージャーに対して、これまで以上の力量と努力を要求することが確実だ。上司の方々は覚悟されたい。
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