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トランプ通商政策のメキシコ排除で日産、マツダが大打撃 「週刊ダイヤモンド」2016年11月26日号特集「トランプノミクスの正体」より
http://diamond.jp/articles/-/108688
2016年11月22日 週刊ダイヤモンド編集部
日系自動車メーカーがピンチだ。メキシコシフトを強めた矢先に、トランプが北米自由貿易協定(NAFTA)の見直しを宣言。環太平洋経済連携協定(TPP)の雲行きも怪しい。
「サプライチェーンがメキシコに出そろったタイミングでの米国の“仕打ち”に戸惑っている。経営者が一世一代の賭けをして進出を決めたサプライヤーも少なくないのに──」。ある自動車メーカー幹部は嘆く。
かねてトランプはメキシコを敵視した発言を繰り返してきた。隣国に雇用を奪われているとして、メキシコ・カナダ間のNAFTAからの撤退、あるいは、再交渉による関税引き上げを主張している。これが実現すると、日本の自動車関連産業は大打撃を受ける。
日本をはじめ世界の自動車メーカーは、安価な生産コスト、米国との地理的近接性、そしてNAFTAの関税メリットを生かしてメキシコを重要な輸出拠点と位置付け、投資を加速させてきた。近年、日本勢では日産自動車、マツダ、ホンダが相次いで能力増強を図ったばかりだった。完成品メーカーの進出に足並みをそろえるかたちで、下請けの部品・素材メーカーの進出ラッシュが続いており、2015年の進出企業数は東レや不二越など自動車関連産業を中心に957社に上る。
その結果、メキシコの生産台数は346万台(15年実績)となり、世界7位の自動車生産国に躍り出た。実は、この生産台数のうち、国内販売向けはわずか2割。残り8割は輸出へ回されており、その仕向け地の81.1%を北米が占めている。堅調な北米需要を当て込んで、自動車メーカーはメキシコの生産計画を策定。20年に586万台に達するというばら色の将来設計を描いていた。
ところが、である。トランプの当選で、自動車メーカーの目算は大きく狂った。トランプはNAFTAの修正でメキシコへの締め付けを強める一方で、法人税減税など米国国内の生産を優遇する戦略を取るのが濃厚。世界の自動車メーカーは、為替動向を勘案しながら、米国生産とメキシコ生産をてんびんにかけることになる。
日本勢の中でも深刻なのは、メキシコシフトを一気呵成に進めた日産とマツダだ。殊に、マツダは20年時点で世界生産の12%をメキシコが占める計画で、経営へのダメージは大きい。
日本の基幹産業のピンチに、政府はどう動くのか。ある官庁幹部は、「世界で保護主義化が進む由々しき事態。追い込まれたメキシコが泣き付くかたちで、英国離脱に揺れるEUと、米国撤退でTPPの空中分解に揺れる日本が“何らかの経済連携”を模索する動きが生じるだろう」と読む。
もっとも、自動車メーカーが政府のフォローを受けることは難しいという見方も根強い。まず、米国に主要拠点を持つトヨタ自動車やホンダにとっては、経済連携が棚上げとなっても影響は比較的軽微である。また、「仏ルノーの顔も持つ日産や、マツダの政治交渉力は弱い」(経済産業省幹部)。
そして、「冷たい言い方かもしれないが、グローバルな生産拠点の分散化は企業のリスク管理の基本。民間企業のために国の経済連携政策を修正することはあり得ない」(内閣官房関係者)。そもそも、「経済政策にさしたる興味のない安倍首相が、TPPの陣頭指揮を執った背景には、経済上ではなく安保上の意味がある」(同)。
■巨額の農業補助金がムダに
どういうことか。2年ほど前から、安倍政権は水面下でロシアとの親交を深める下地を整えてきた。その最たるものが、今国会に提出されている石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)法の改正である。改正の目玉を簡単に言えば、国が海外資源会社に投資することができるようになる。財政難に苦しむロシアに対して、資源権益獲得の見返りとしてキャッシュを渡す制度ともいえる。
ところが、ロシア傾斜を強める日本に米国がかみついた。「あくまでも米国が日本の最重要国であるという根拠として、安倍政権がオバマ政権に差し出したのがTPP妥結だった」(同)というのである。
そのため、仮にトランプがTPP撤退を決めても、安保優先の安倍政権がどこまで経済連携に執着するかは分からない。
米国抜きのTPPが破綻するのは時間の問題──。このドタバタ劇の裏で、喜びを隠せないのがTPPに反対してきた日本の農業界である。
15年秋の妥結以降、実は、農業関係だけで総額6575億円ものTPP対策予算が積み上がっている。農家の施設整備費を補助する「産地パワーアップ事業」などが目玉だ。TPP発効が見通せなくなった今、農家には関税撤廃の打撃がないのに補助金だけはもらえる“おいしい状況”が続いている。
だが、そんな農業界のわが世の春も続かないだろう。トランプの通商政策は白紙の状況だが、「トランプがビジネスの才覚で米国にうまみがあると判断すれば、個別国同士の連携、例えば日米FTA(自由貿易協定)を締結することだってあり得る」(経産省幹部)。
日本の通商政策が、トランプの一挙手一投足に振り回されることだけは間違いない。
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