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トランプが世界経済にばら撒く新たな「想定外」 単なる破壊か、創造的破壊か
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/50238
2016.11.21 週刊現代 :現代ビジネス
「まさか」を何度重ねても追いつかない事態に、世界中が度肝を抜かれた。だが、「本番」はこれから。常識にとらわあれない男・トランプは、世界経済に新たな「想定外」を次々とばら撒いていく!
■「お前らには何も見えてない」
「速報です。ヒラリー・クリントン候補が、ドナルド・トランプ候補に電話をかけ、敗北を認める旨伝えたとのことです。繰り返します……」
その瞬間、アメリカを代表するニュース専門放送局・CNNの特設スタジオは重苦しい空気に包まれた。女性アナウンサーが、淡々と、しかしどこか暗い口調で「トランプ勝利」の速報を伝える。
CNNをはじめ、アメリカの報道機関はほぼすべてが「ヒラリー圧勝」の事前予測を報じていた。ニューヨーク・タイムズは一時、「ヒラリー氏の勝率は93%」との予想を発表。前回・前々回の大統領選で、全ての州の勝敗を的中させた選挙予想サイト「538」も、「302対235でヒラリー氏圧勝」としていた。
しかし——結果はご存知の通りだ。その後、ネット上のCNNニュースの動画に、アメリカの名もなき国民がこんなコメントを寄せている。
〈お前らメディアのエリート様と、ワシントンDCにいるお前らの上司は「まさかこんなことになるとは」「どうすりゃいいんだ」って思ってるだろう。それはお前らが、オレたちアメリカ人とは別の世界に生きてるからだよ!
お前らのアメリカはオレたちのアメリカとは違うらしいな。それこそが、トランプが勝った理由だよ。お前らが、普段『どうしようもない奴ら』と言って蔑んでいる自分たち以外のアメリカ国民と、何の接点も持ってないからだ〉
大マスコミが完全に目算を誤った理由、そして彼らに対する庶民の怒りが、この言葉には凝縮されている。
日本のマスコミも、ほとんどがヒラリーびいきだった。前述した「トランプ氏勝利」の速報がアメリカ本国で流れたのは、日本時間で11月9日の午後4時半過ぎ。その1時間ほど前から、トランプ氏とヒラリー氏の獲得選挙人には大差が付いていた。
しかし、NHKをはじめとするテレビ各局は、「接戦が続いています」「まだまだ分かりませんね」などと、あたかもヒラリー氏に勝ち目が残っているかのような報道を続けた。
ヒラリー支持者は抗議デモを始めた〔PHOTO〕gettyimages
■非常識だから、面白い
嘉悦大学教授で経済学者の橋洋一氏が言う。
「今回の大統領選では、マスコミがことごとく趨勢を見誤っていた。それはやはり、彼らが『建て前』を重視しすぎているからでしょう。トランプの存在があまりにも自分たちの価値観とかけ離れているので、庶民の本音を捉えることができなかったのです。
たとえば、ヒラリー氏は地盤であるはずのミシガン州、ウィスコンシン州などで実際には苦戦していましたが、マスコミは希望的観測で『ヒラリーが取るだろう』と高をくくっていた。しかし、結果は両方の州でトランプ氏の勝利でした。
また、ロイター通信の調査によれば、『今回、初めて大統領選の投票に行った』という有権者が15%もいたそうです。こうした人々の声が、事前の世論調査で予測できるはずもない」
つまりアメリカのマスコミは、「トランプが勝つわけがない」という先入観、さらに言えば「トランプに勝ってほしくない」という願望に基づいて報道していたということだ。
そして、日本の大新聞やテレビ局は、そんな「色眼鏡」を通して現実を見ていたアメリカのマスコミの情報を鵜呑みにし、垂れ流していただけ。「トランプ圧勝」という圧倒的な現実の前に、なすすべもなく右往左往する他なかった。
この現実を受け入れられなかったのは、ずっと「ヒラリー圧勝」を確信してやまなかった知識人たちも同様だった。
過去、本誌に登場したこともあるノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマン氏は、選挙速報が流れる中、こうツイッターに書き込んだ。
〈恐ろしい夜だ。トランプが勝ちそうだから、というだけではない。思っていたよりも深い怒りを、田舎の白人たちが抱いているとわかってしまったからだ〉
この発言には、トランプ支持者からのみならず、こんな非難が寄せられた。
〈あなたがその怒りの原因なんですけど〉
〈そういうエリート主義的な考え方だから、あなたのような既得権益者は嫌われるんですよ〉
日本でも、大新聞、テレビ、そしてそこに登場する知識人の多くが「トランプ勝利の原動力は、貧しい田舎の白人男」という月並みの結論で、この想定外の状況を「説明した」ふりをしている。
だがすでに、トランプ氏に投票した人々の収入が決して低くはないこと、女性の約4割がトランプ氏に投票したことが分かっている。経済が行き詰まり、社会が息苦しくなる中で、ヒラリー氏のような「面白くもない建て前」しか言わない政治家に、局面を打開することはできない——彼らはそう言っているのだ。
トランプ氏はエリートから見れば「非常識」かもしれない。だが、「非常識だから、面白い」。それが、アメリカ国民の出した結論だったのである。
みずからの勝利で、トランプは大マスコミに「死刑宣告」をした〔PHOTO〕gettyimages
■レーガンみたいになる
ドナルド・トランプ大統領誕生を受けて、世界各国の株式マーケットでは同時多発的な株価の乱高下が勃発し、いまだその余波は収まらない。
大統領選投開票の当日、日本市場でも脅える投資家がリスク回避のために円に殺到して円高が急伸したが、実はこのパニック相場は「賞味期限が短い」——。
経済のプロたちはそう口を揃える。
「マーケットが不透明感を強めているのは、トランプ氏が大統領になってどんな政治をするかが明確になっていないことを嫌気しているからにほかなりません。
一旦市場は落ち着きを取り戻したかに見えますが、これからも国務長官、財務長官など主要閣僚の人事情報が出るたびに大きく荒れて、最悪の場合は株価が1万5000円割れ、為替は1ドル=90円台前半まで下げる場面も覚悟しなければなりません。
しかし、年明け以降、政府の布陣や政策の方向性が見えてくると、そうした不安は急速に後退することはほぼ間違いない。トランプ大統領はまともなブレーンで固める可能性が高く、経済政策もまともだと確認された時点からマーケットは一転、再び円安株高へ動き出すと考えています」(FXプライムでチーフストラテジストを務める高野やすのり氏)
恐怖相場はあくまで一時的なもので、その後はむしろ株高局面に突入していく。
というのも、実はトランプ氏の経済政策はアメリカを「大復活」させるだけではなく、世界経済を大きく浮上させる可能性も秘めているからだ。
エコノミストの安達誠司氏も、「トランプ効果が出てくる来年には、むしろ世界的な株高局面に入っていく可能性がある」と指摘する。
「アメリカ経済はいま『長期停滞』と言われる状況に陥っていて、かつてのような高成長を達成できなくなっている。これは米国民に蔓延しているネガティブマインドが払拭されないことが原因ですが、トランプ氏が打ち出している大胆な減税策と財政策であれば、それをブレークスルーできる可能性がある。
トランプ氏の経済政策は、1980年代に不況に苦しんでいたアメリカを大きく浮上させたレーガン大統領のレーガノミックスに非常に似ています。長い経済的停滞を打破する強烈なリーダーシップを国民が求めるという状況も、レーガン政権誕生前と近いものがある。
大雑把なようでいて、トランプ氏が掲げる経済政策はマクロ経済学の最先端理論に裏付けられてもいる。トランプ氏がアメリカ経済を立て直し、ひいては世界経済に漂う閉塞感すら打破することは十分にあり得る」
■壮大なバラマキが始まる
レーガノミックスならぬ、「トランプノミクス」が世界中の景気を沸騰させていく。
実はその詳細なロードマップは、すでに用意されている。
以下順を追って見れば、まずは「原油安問題」。いま世界全体を悩ませているこの大問題が、トランプ大統領誕生によって一気に解決する。
「いま原油価格が暴落しているのは、アメリカとロシア、中東などが自分の利益を主張するばかりで、生産協調ができていないことが要因です。
一方で、トランプ氏はロシアに対して、『プーチン大統領はオバマ大統領より指導者らしい』と語るほど友好的で、プーチン大統領もトランプ氏を『聡明で才能のある指導者』と持ち上げている。
トランプ大統領になれば、これまでに冷え切った米ロ関係の改善は必至で、その先には両国が原油減産で協調するシナリオが見えてくる」(証券アナリストの植木靖男氏)
そんな米ロの「協調」を示す報道がメディアで出ればマーケットは即座に反応し、暴落したまま浮上できなかった原油価格は一転、急上昇を始める。植木氏が続ける。
「原油価格の上昇が一旦始まれば、米ロや中東の景気が潤い出すのはもちろんのこと、ブラジルなど資源安で疲弊している新興国も急回復してきます。
日本にしても、これまでは日ロが関係を深めようとするとアメリカが不快感を表明したが、今度はそれがなくなる。この先は日本がロシアと平和条約を結び、北方領土問題も解決する可能性が高まる。日本経済には当然、メリットになる」
暴落の翌日には1000円以上急騰した〔PHOTO〕gettyimages
このように原油高の好循環が猛スピードで各国にめぐりわたることで、世界全体を好況化させていくというわけだが、これはまだ「トランプ効果」の序章に過ぎない。
原油高で一度火のついた世界経済に、さらに油を注いで燃え上がらせる——。トランプ氏が次に仕掛けていくのは、アメリカ、欧州、そして日本までを巻き込んだ「金融バズーカ合戦」である。
経済評論家で、『財務省と大新聞が隠す本当は世界一の日本経済』などの著書のある上念司氏が指摘する。
「最近までアメリカではFRB(米連邦準備理事会)のイエレン議長が12月に利上げに踏み切ると言われてきましたが、トランプ大統領の誕生によって一気に潮目が変わりました。トランプ氏はイエレン議長に対して利上げどころか、むしろこれまで以上の大規模な金融緩和策を求めていく可能性があります。
具体的には中央銀行がおカネを刷って政府の財政支出を支える『ヘリコプターマネー政策』です。マスコミは勝手に禁じ手と言っていますが、すでにアメリカの著名な経済学者もその可能性について言及し始めています。この政策は即効性があるので、実行されればアメリカ経済は瞬く間に空前の好況となり、『繁栄の'90年代』のような活況を呈する可能性すらある」
ポイントは、アメリカがこの大胆な金融策を打ち出すと、先進各国が追随するということ。「禁じ手」と言われてきた策だけあり、各国の当局者は本当はやりたいのに躊躇してきたが、今後は「アメリカがやったのならば、うちも……」と雪崩を打っていくわけだ。
上武大学教授の田中秀臣氏も言う。
「世界的な金融緩和合戦になった場合、乗り遅れた国だけが通貨高を強いられることになるので、追随せざるを得ない。トランプ氏はイエレン議長が言うことを聞かなければ更迭をちらつかせてでも金融緩和させるでしょうから、今後はEU(欧州連合)、イギリス、そして日本の黒田東彦・日本銀行総裁も金融緩和合戦に突入していく。
さらに、トランプ氏は1兆ドル(約100兆円)という超巨額の財政出動もする見込みで、こうした大盤振る舞いの財政政策も各国が追随するでしょう。つまりは世界中で金融、財政の巨額のバラマキが行われることになり、世界大好況時代に突入していくわけです」
トランプ氏が、世界経済を一度「ぶっ壊す」。だがそれは、単なる破壊ではなく、創造的破壊なのだ。
「成長を2倍にして、最強の経済を作っていこう。そしてスラム街を再建し、多くの人たちに雇用を生み出そう」
トランプ氏は大統領選の勝利宣言の中でこう語ったが、これは絵空事ではなく、近未来に実現しそうな世界の姿そのものなのである。
■橋も道路もつくり直せ!
当然、日本経済、そして日本企業もその恩恵を十分に享受することになる。真っ先に儲かるのは、日本の自動車メーカーである。
「トランプ氏は個人所得税などの引き下げを終始主張していて、今回の選挙では上院も下院も共和党が勝利したため、この政策は実現確率が非常に高い。当然、アメリカのGDPの7割を占める個人消費は旺盛になり、日本の自動車メーカーはその恩恵を享受できます。
トランプ氏はアメリカの雇用を奪う外国企業は排除するとの発言もしていますが、トヨタやホンダなどはアメリカで作ってアメリカで売っている会社なので、実はこの排除対象に含まれない。逆に、アメリカへの輸出が多い独フォルクスワーゲンに対しては規制が強化される可能性があるので、これも日本企業にとっては追い風になります」(前出・高野氏)
実際、トランプノミクスの目玉となる「減税策」は、10年間で4・4兆ドル(約450兆円)と前代未聞の巨額になる予定で、アメリカで消費が沸騰することは間違いない。
しかも、個人所得税は最高税率を39・6%から33%に引き下げるのみならず、子育て世代に優遇税制を設けたり、一部の低所得者層は免税にするなど、すべての世帯に優しい減税策になっている。その財源は、景気回復にともない急増する財政収入で賄う予定だ。
「当然、アメリカでは家電製品などの消費も盛り上がってくることは間違いないので、パナソニックやソニー、さらには任天堂なども収益を上げることになるでしょう。
さらに、トランプ氏はエネルギー政策にも力を入れており、アメリカ国内の石炭火力発電所を増やしたり、アメリカ産のシェールオイルを輸出しようとしている。この流れは日本企業にメリットが大きく、まず石炭火力発電所は三菱重工業と日立製作所のジャパン連合が新規受注することが考えられます。
シェールオイルの輸出では日本郵船、商船三井などの海運各社が潤うだけでなく、ガスを運ぶLNG船の需要増から川崎重工業、IHIなどの造船メーカーは受注ラッシュの可能性も出てくる。世界の造船会社に内燃機関を提供している三井造船も増益期待大です」(ちばぎん証券顧問の安藤富士男氏)
トランプ氏の打ち出す巨額の「インフラ投資」もまた、多くの日本企業に増益効果をもたらすので、嬉しい悲鳴は止まらない。SBI証券シニアマーケットアナリストの藤本誠之氏が言う。
「トランプ氏は老朽化している橋、道路、鉄道、港湾などを整備するインフラ投資に巨額をつぎ込む予定で、それらの工事に絡めるコマツ、古河電気工業、太平洋セメントなどは、『トランプ関連銘柄』として株価上昇が期待できます。
そもそも、トランプ氏がインフラ投資に積極的なのは、アメリカの不動産市況を活性化させる狙いがある。鉄道や道路などを整備していけば各地の不動産価値が上がるというわけで、アメリカに進出している三菱地所などの大手デベロッパー、積水ハウスなどのハウスメーカーにも好機となる」
世界経済のネガティブマインドをぶっ壊す〔PHOTO〕gettyimages
■日本の消費税は5%に戻る
前述した通り、アメリカ景気の活況はそのまま、ドイツ、フランス、イギリスなどの先進各国から、ブラジル、インドなどの新興国にまで広がっていく。そんな「グローバル好景気」がまた、各国でビジネスをしている日本企業に利益を運び込む。
「たとえば、いまASEAN諸国で大型バイクが売れているヤマハ発動機などは利益を膨らませるでしょうし、アジアでビジネス展開するユニクロのファーストリテイリングにも恩恵大。
世界各国で景気が上向いて設備投資が増えれば、ファナックや安川電機などの工作機械メーカーの商機も広がります。また、ロシアなど新興国の資源開発が活況となれば、三井物産などの大手商社から、日揮などのプラントメーカーにも増益期待が膨らみます」(前出・安藤氏)
トランプ氏は日本に対して、在日米軍を撤退させるとほのめかすなど強硬姿勢を見せている。安全保障の観点では問題山積みだが、こと経済面だけに限定すれば、これすらもプラスのエンジンになる。株式評論家の渡辺久芳氏が言う。
「それがいいか悪いかは別問題として、トランプ氏が強硬姿勢を貫けば、日本では防衛予算が増額され、これまでにはなかった大きな軍需マーケットが生まれるでしょう。
実際、トランプ大統領が決まった11月9日、日経平均株価は一時1000円以上も大暴落しましたが、防衛関連銘柄の石川製作所の株価は14%も上昇しており、市場関係者はすでに『買い』に入っている。三菱重工業などもこれから超優良銘柄になっていくでしょう」
トランプ氏が大統領に就任するのは、'17年1月20日。トランプ氏は「100日プラン」と宣言しており、見てきたような減税政策などを、大統領就任から100日以内に矢継ぎ早に実行する予定だ。ここを機に、マーケットは本格相場入りする。マーケットバンク代表の岡山憲史氏が言う。
「トランプ氏が宣言通り、1月20日の大統領就任演説で大胆な政策を打ち出せば、それが一気に来年のマーケットの方向性を決定づけることになるでしょう。ここで予定通りの好材料が出揃えば、不透明感が拭い去られ、相場が上昇トレンドに入っていくわけです。
トランプ政権の布陣が固まってくる年末には、すでに日本株は1万8000円台を回復している可能性があります。さらにその流れを後押しするように、1月20日から、株価は2万円を目指す展開に入る」
つまりは2月以降、日本の株は「爆上げ」し、企業は好決算のラッシュを迎える。
「トランプ大統領の誕生で超円高を懸念する声もありますが、世界的な好景気となれば為替はマイルドな円安方向になる。好景気で財政的な余裕が生まれれば、日本では減税の可能性も浮上し、消費税の10%への増税は延期になる。5%への消費減税の議論が高まってきてもおかしくはありません」(前出・岡山氏)
アメリカ国民が最もトランプ氏に期待しているのは、その経済政策。仮に経済政策でこけたら支持率が急落することは目に見えているだけに、トランプ氏も本気だ。アメリカのために、そして世界のために、トランプ氏がビジネスマンとして鍛えてきたその経営手腕を発揮する時が来た。
「週刊現代」2016年11月26日号より
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