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浜田卓二郎氏
出光、合併頓挫の全真相…「大株主に事前説明なく、おかしな話」「合併で楽、は錯覚」
http://biz-journal.jp/2016/11/post_17237.html
2016.11.21 構成=松崎隆司/経済ジャーナリスト Business Journal
出光興産の月岡隆社長と昭和シェルの亀岡剛社長は、10月13日に共同記者会見を開き、来年4月としていた合併の時期を延期すると発表した。会見では出光創業家が現計画での合併に反対していることが理由として挙げられたが、創業家が公然と会社の方針に異議を唱え、経営陣の間で合意した合併話をひっくり返すという異例の事態の裏側では、何が起こっていたのか。出光創業家代理人で弁護士の浜田卓二郎氏に話を聞いた。
――なぜ出光昭介名誉会長は、昭和シェルとの合併に反対されているのですか。
浜田卓二郎氏(以下、浜田) 合併の基本合意書が2015年11月12日に発表され、「対等の精神に基づく経営統合」と書かれているのを見て、それを昭介名誉会長がご覧になってびっくりしたのです。「こういう合併がうまくいくはずがない。経営戦略として、合併を選択すべきではない」とおっしゃられて、私に代理人の依頼がありました。そして同年12月17日に出光に意見書を提出したのですが、向こうはのんびりしておられて、「年末年始で忙しい」ということで、今年1月29日に話し合いを持ちました。そのとき、2、3枚の資料を持ってこられて、合併のメリットを順々と説明されていました。
――どのような説明だったのですか。
浜田 たとえば、「ロゴマークや出光の名前は大事にします」といったもので、合併を前提とした話でした。私と昭介名誉会長は「意見書というのは合併の条件の話を申し上げているわけではない。合併そのものが経営戦略として適切な判断とは思えない。合併というのはものすごい困難とエネルギーを必要とするものだが、出光と昭和シェルとは企業文化がかなり違う。これだけ違う企業同士が合併するためには困難を克服する時間が必要だ。5年も10年もたてばいろんな効果はあるにせよ、それを克服するのは並大抵のことではないのではないですか」と申し上げたのです。
――出光と昭和シェルとは、いったいどのような違いがあるのですか。
浜田 出光は典型的な民族資本の会社であり、昭和シェルは典型的な外資系の企業です。外資系の企業が悪いというわけではないが、やっぱり体質的な違いというのは大きいですよね。しかも昭和シェルには労働組合があり、出光にはない。そんな企業同士が合併するのは簡単な話ではないと思います。それで1月29日の時には「合併する際の条件の話じゃありません。合併そのものに反対なんです」と私から念を押したわけです。
■基本的な疑問
――その後、6月の株主総会では浜田さん自身が株主総会に出席して合併反対の発言をしたわけですが、その間にどのような話し合いが行われていたのですか。
浜田 1月の交渉以降、6月の株主総会が間近に迫るなかで、向こうからなんの対応もなかったので、改めて5月23日に内容証明で反対の論点を整理したものをお送りした。その時点で初めて経営陣は「創業者一族が反対の意向を持っていることを認識した」とおっしゃっているようです。しかし、だとすれば昨年12月の意見書をどう受け止めていらしたのか、我々としては基本的な疑問を抱かざるを得なくなりました。
――出光と昭和シェルの合併話が浮上したのは14年のことだったと思いますが、それから何があったのですか。
浜田 そこは私のほうはタッチしていないので、直接見聞きしているわけではないのですが、昭介氏によると、経営陣が話しているような内容とは違うようです。向こうは「昨年、昭介氏の別荘がある軽井沢に行って説明し承諾を得た」と話しているようですが、そうではありません。その時、昭介氏は単なる経過報告だと受け止めて、「まあ様子を見ましょう」といった対応をとったそうです。別荘ですから、昭介氏としっかりと会議したということでもなく、また、書面に基いて承諾したという話では全然ないわけです。
株主総会が目前に迫っていても向こうからはなんの対応もないわけですから、私のほうが昭介氏に「株主総会が合併の話題一色になりますよ。会社提案では合併を推進している役員の全員を再任するという議案が提出されているので、事実上の大株主である出光家が合併を承認したことになってしまう。それでは反対表明のタイミングはなくなってしまいますよ」と説明しました。
■軽んじられた大株主
――そのとき昭介氏はどのような話をされたのですか。
浜田 昭介さんはかつて12年間社長をおやりになっていましたから、今の月岡隆社長も含めて経営陣はみんなかつての部下です。「会社も大事だし部下もかわいい」という思いが基本的におありだった。だから「争わないで解決したい」「話し合いで解決したい」とずっと言い続けておられたわけで、昨年12月から今年5月までに、対外的にはいろんな作戦があり得たのだろうと思いますが、対外的には何も申し上げないできたわけです。しかし、このまま見過ごしてしまえば、何もなかったかのように株主総会が行われて、合併が進められていくことになる。だから、あえて内容証明を送ったのです。
――そのときの経営陣の反応は?
浜田 さすがに「内容証明」には対応が早く、2〜3日後にはお見えになりましたが、やっぱり合併のメリットを説かれるばかりで、それでは話になりません。「このまま株主総会がやられてしまうと既成事実が積み上がってしまう」と思っているところに、株主総会の案内状がきた。その案内状には案の定、合併のメリットや今後のスケジュールが書いてあったというわけです。
私はその時、昭介氏には「この株主総会で反対表明をしないと、これだけきちんとした手続きを踏んで反対を表明してきたのに、無視されてしまいます。これは最後のチャンスですよ」と申し上げて、あえて私が株主総会の時に代理人として反対表明を行ったわけです。そこから大騒ぎになった。しかし、私どもは昨年12月17日の内容証明には「出光昭介、代理人弁護士・浜田卓二郎」ときちんと明記して株主としての見解を示しています。正規の書面を提出し、それ以来、一貫して我々の主張はまったく変わっていません。
――なるほど。
浜田 2014年に出光が昭和シェルの株式を取得しようとしたときには、吸収合併になることを嫌った昭和シェル側の反対で潰れた。そういう経緯が残っていますから、前述した軽井沢での会談も、昭介氏はその後の経過報告に来られたというぐらいの理解だったようです。昨年7月の時点から基本合意書が締結されるまでの4カ月の間、この内容についての説明も報告もまったくないわけですよね。
――昭介氏は出光の3分の1超の株式を持っているので、合併に反対できる。本来でいえば、大株主の権利を侵すような行為になるわけだから、少なくとも事前に説明しておくべきだったということですね。
浜田 34%の株を持った大株主がいる大企業は少ない。出光は10年前に上場しましたが、そのときはいろいろ議論があったようです。しかし、昭介氏はその後の10年間、株主として一切発言してこられなかった。月岡社長とは同じビルの1階違いにおられるにもかかわらず、やり取りは何もなかったわけです。それは昭介氏からすれば「もう経営は任せたよ」という話で、株主総会の議決権行使書も「みんなお任せします」でやってきたわけです。経営陣のほうもそれに慣れていたが、合併となると基本的な企業のあり方に変えることになる。ましてそれが対等の合併ということになれば、なおさらのことです。それを大株主に対して事前にきちんと説明もなく進めているわけですから、「それはないんじゃないか」というのが昭介氏の受け止め方だと思います。
――特定の株主だけに事前に合併の話をすることは、インサイダー取引規制に関する法律に抵触する心配はないのでしょうか。
浜田 株を売り買いしたら別ですが、なんの売り買いもしていない。資本主義の論理では、34%株を持っている人が会社法上、合併に必要な特別決議を否決できます。それを無視してなくても軽んじたかたちで確認もしないで、合併の手続きを進めるというのは、これは基本的におかしな話です。会社側は「他の株主との関係もありますから」と言って、きちんと了解を得ようとはしない。「じゃあ、大株主というのはなんなのか」「会社の所有というのはどういう意味合いがあるのか」という話になってしまうわけです。「昭介氏が横車を押した」「ワガママを言った」という話ではありません。
厳密にいうと、33.92%、約34%の株を持っていて、特別決議を否決できる立場にある株主としては、今回の昭介氏の行動は株主としての一種の責任なのです。経営のあり方に対して、しょっちゅううるさく注文をつけているというわけではなくて、合併という基本的に企業のあり方を変えるという判断については、株主としての責任を果たす。そんなときには大株主は「物言う株主」にならなければならないと思います。
■自分の経営を見直すべき
――石油業界はますます厳しくなり、国内でのガソリンの需要は今後大幅に減少していくといわれています。業界再編の必要性については、どのようにお考えでしょうか。
浜田 たしかに、ガソリンなどの需要が減ってくることは間違いないと思います。しかし、それに合わせて企業の数を減らしていくという再編成で成功した例はありません。JXホールディングスと東燃ゼネラルは8月、経営統合することで合意しましたが、途端にマスコミの扱い方は「これから苦しみが始まる」といった論調に変わっている。合併が唯一の解決策だと考えることは問題だと私は思っています。それは「つらいから数を減らす。そうすると楽になるだろう」という一種の錯覚です。
――ではなぜ、合併すると厳しくなるのでしょうか。
浜田 合併の効果を上げるためには、たとえば、競合している給油所を統廃合しなければならないからです。そうしたら解雇という問題も出るし、製油所だって潰れる。前回はそういう理由で買収話が潰れたのだろうと推測しています。愛知県駿河湾を挟んで目と鼻の先の対岸に、出光と昭和シェルの製油所があるのです。合併したらどちらかを潰す。そういうことをしなければ、合併効果なんて出てきません。「合併すりゃ、楽になるだろう」というのは錯覚なので、そんなところに大きなエネルギーや時間を使うよりも、今は石油危機の時ですから、それと正面から向き合い、まず自分の経営を見直すべきなのではないでしょうか。
たとえば販売政策、落ちているシェアをどう取り戻すのか。国内だけのマーケットで考える必要はない。いろいろな投資を出光はやってますが、海外投資のプロジェクトはしんどい状況になっている。ほっておけばいずれ決算でそれが損失として出てきてしまう。だからその前に再点検をして問題点をできるだけ解消する。さらに多角化は必要です。合併に逃げ込むんじゃなくて、まともに今の現況に取り組んで、経営戦略を展開しろというのが株主としての昭介氏の要請です。
――合併以外にもまだやるべきことが山積しているということですね。
浜田 たとえば、経費の節減です。無駄なお金をたくさん使っているじゃないですか。出光には相談役が2人もいて、多額の報酬を出している。何兆円も売り上げている企業には無駄も多い。合併で大騒ぎをして、昭和シェルの株式取得をめぐり頭を悩ませて色々動いているようですが、私どもが期待しているのは、そんなことにエネルギーを使うのではなく、目の前の石油危機に立ち向かうためにエネルギーを使うことです。出光は、戦後の海外の国際石油メジャーを向こうに回し、国内では国内カルテルという動きにまったく迎合しないで、独自に苦労してきました。企業は苦労しなければ強くなれません。
(構成=松崎隆司/経済ジャーナリスト)
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