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トランプ氏は選挙期間中、保護主義的な政策を重視する姿勢を取っていた(写真:Gage Skidmore/flickr,CC BY-SA 2.0)
トランプ大統領誕生で、トヨタとスバルが「大ピンチ」の理由
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20161117-00032900-biz_plus-bus_all
ビジネス+IT 11/17(木) 6:40配信
自動車メーカー各社の中間決算が冴えない状況となっている。主な要因は今年に入って進んだ円高だが、主戦場である北米市場での販売が鈍化したことも大きい。北米は先進国で唯一、長期成長が見込める市場であり、自動車メーカー各社の業績は北米での販売台数にかかっている。トランプ政権の誕生で保護主義の台頭が懸念される中、北米市場でいかに稼いでいくのか、各社は知恵を絞る必要がありそうだ。
●自動車メーカー各社の中間決算から見える風景
トヨタ自動車の2016年4〜9月期の決算(中間決算)は、売上高が前年同期比7.2%減の13兆705億円、営業利益も29.5%減の1兆1,168億円と5年ぶりに減収減益に転じた。想定よりも円高が進んだことで、日本から輸出している製品の採算が悪化したことが主な要因。
日産の売上高は前年同期比10.3%減の5兆3,210億円、営業利益は14.0%減の3,397億円となり、こちらも7年ぶりの減収減益だった。日産の場合には、円高による海外事業の採算悪化に加え、三菱自動車の燃費不正問題で同社から供給を受けていた車種の販売が滞ったことも影響した。ちなみに主要7社の売上高はすべて前年同期比マイナスとなっている。
主要自動車メーカーの2016年4〜9月期(中間決算)の業績
ドル円相場は2015年まではしばらく1ドル=120円前後で推移していたが、2016年に入ると1ドル=100円前後まで円高が進んだ。2016年4月から9月を平均すると約105円になるので、昨年の中間決算と比較すると12.5%ほど円高が進んだ計算になる。円高が各社の業績に逆風となったことは間違いないだろう。
2015年以降の為替相場の推移
ただ、日本の自動車メーカーは現地生産化をかなりのレベルまで進めている。本来であればそれほど為替の影響を受けない構造になっているはずだ。
かつての自動車メーカーは、国内で生産した製品を海外で販売するという典型的な輸出ビジネスであり、業績は為替に大きく左右された。円安になれば売上高は増加するものの、製造原価のうち人件費や自国で調達した部品については為替の影響を受けない。円安が進んだ場合には、売上高、利益率ともに上昇する一方、円高になれば業績は大きく落ち込むことになる。
こうした自動車メーカーの収益構造が大きく変わるきっかけとなったのは日米間に生じた貿易摩擦である。日本メーカーによる米国への輸出攻勢は政治問題に発展。メーカー各社は貿易摩擦を回避するため現地生産化を進める決断を下した。各社は相次いで現地工場を設立し、海外で生産し海外で売るというビジネスモデルに転換した。貿易摩擦が一段落した後も、経済のグローバル化を背景に海外生産はさらに進んだ。
海外生産、海外販売の場合には、円換算した見かけ上の売上高は為替によって変動するが、原価についても同じように変動するので利益率は変動しない。為替の影響をゼロにすることはできないが、現地生産の方がその影響は圧倒的にマイルドになる。
●主戦場は完全に北米市場にシフト
それにもかかわらず、依然として業績が為替に左右されるのは、国内市場が縮小したことで、販売の主力が海外にシフトしているからである。
日本の主要メーカー3社の海外生産比率は、トヨタが54.6%、日産が78.2%、ホンダが84.9%(四輪車のみ、グループ全体)となっている。一方、販売比率についてはトヨタは75.3%が海外向けとなっており、日産に至っては90.1%、ホンダは84.7%が海外向けである。今や自動車メーカーにとってビジネスの主戦場は完全に海外であり、日本円ベースの業績はやはり為替に大きく左右されてしまうのだ。
この傾向は今後、さらに顕著となる可能性が高い。国内市場は縮小する一方であり、自動車メーカーの業績は、唯一の成長市場である北米市場の販売動向に大きく左右されるからである。その点において、今回のトヨタと富士重工(スバル)の業績は象徴的であった。
富士重工の売上高は前年同期比1.5%減の1兆5,776億円、営業利益は前年同期比26.9%減の2,085億円だった。輸出比率の高い富士重工は、本来であれば業績が大幅に落ち込むはずである。同社の業績が他社と同レベルにとどまったのは、北米での販売が好調だったからである。
好調な北米市場を背景に海外の販売台数は9.4%の伸びを記録し、為替による損失分を販売台数の増加が相殺した。一方、トヨタは北米での苦戦から海外の販売台数が前年同期比3.2%増と振るわなかった。日産やホンダも程度の違いこそあれ、北米市場での販売鈍化が業績に影を落としている。結局のところ、各社の決算でもっとも重要なのは、為替ではなく北米での販売力だった。
このところ全世界的なレベルで経済の低成長が続いており、米国もその影響を受けている。だが相対的に見れば、米国の成長率は依然として高い。しかも米国は先進国としては珍しく、しばらく人口増加が続く可能性が高い。自動車メーカーにとってこれほど魅力的な市場は他にはなく、各社の業績は今まで以上に北米市場での販売動向に左右されることになる。
国内市場がさらに縮小するのは確実であり、各社は北米市場を拡大させなければ、従来の成長を維持することは難しくなるだろう。近い将来、為替の水準よりも北米市場での販売台数の方が自動車業界にとってより重要なニュースとなっているはずだ。
●トヨタがエコカー戦略を大転換した理由
つい先日、こうした現実をまざまざと見せつけられる出来事があった。トヨタがこれまでの方針を180度転換し、2020年までに電気自動車(EV)を量産する方向で検討を始めたのである。
トヨタはこれまでエコカー戦略の中心にハイブリット車(HV)と燃料電池車(FCV)を位置付けてきた。特に燃料電池車については、日本の国策となっており、全国に水素ステーションを建設するという話まで浮上している。しかしトヨタはこれまでの方針を大転換し、2020年までに電気自動車(EV)を量産する方向で検討を開始した。専門部署を設置し、1回の充電で300キロ以上を走行できる車両を開発するという。
トヨタが方針を転換させた理由のひとつは、世界の潮流がEVに傾きつつあるという現状もあるが、それ以上に大きいのが北米市場の動向である。
米国は産業政策としてEV普及に舵を切りつつあり、すでに米カリフォルニア州では、一定の割合で電気自動車の販売を義務付ける規制が設けられている。こうした政策が全米に広がり、EV以外の車種はエコカーとして認めないという状況になった場合、トヨタは壊滅的な打撃を受ける可能性がある。
北米の販売動向が経営を左右するという現実を考えると、米国の政策に合わせて企業戦略を変えていくのはむしろ当然といってよいだろう。そして、この傾向はトランプ大統領の登場でさらに拍車がかかる可能性が高い。
●トランプ氏の政策はまだはっきりしていないが…
トランプ氏の政策はまだはっきりしていないが、選挙戦において保護主義的な主張を繰り返してきたのは事実である。大統領に就任した後は、ある程度、現実的な判断が求められることになるだろうが、交渉パッケージの一貫として、日本の自動車メーカーに対し圧力をかけてくる可能性は十分に考えられる。これはかつての貿易摩擦の再来ということになるが、これに対する日本勢の防御策は現地生産の強化しかない。
国内生産比率が高いトヨタや富士重工は、米国での現地生産比率をさらに引き上げることを検討する必要があるかもしれない。そのような状況になった場合、トヨタは極論すれば、日本を取るのか米国を取るのかという、難しい選択を迫られることになるだろう。
為替というお化粧がなくなり、北米市場への依存がよりはっきりした今回の中間決算は、自動車業界の近未来を暗示しているのかもしれない。
経済評論家 加谷珪一
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