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入社4時間で辞めた社員…絶対に継続すべき場合も、すぐに辞めたほうがよい場合もある
http://biz-journal.jp/2016/11/post_17176.html
2016.11.15 文=金子智朗/公認会計士、ブライトワイズコンサルティング代表 Business Journal
入社してから4時間で会社を辞めた新入社員の女性がいたらしい。去る9月28日にツイートされてちょっとした話題になった。たった4時間で辞めるというのは前代未聞の出来事と思ったが、それに対する反響を見てみると、もっと短時間で辞めた人もいるようで、どうやら前代未聞ということでもないらしい。
今回の件に関しては詳しいことはわからないので、それに対して何かを言える立場ではないが、少々一般化して「短期間で何かをやめる」ということの是非について考えてみたい。結論からいえば、良し悪しは一概にはいえないと思う。私自身、やり続けてうまくいった経験と、短期間で辞めてうまくいった経験の両方があるのだ。
■プロフェッショナルになる方法はやめないこと
まずは、物事そう簡単にやめるべきではないという話。
大学時代、先生の言うことなどろくに聞いていなかった私だが、今でも覚えている印象深い言葉がある。それは、「何かの専門家になるなんて簡単ですよ」という言葉である。その先生は「何事も誰よりもやり続けていれば、自ずとその道の専門家になるんですよ」と言ったのである。世の中、途中でやめてしまう人が非常に多いので、続けてさえいればいつの間にか専門家になるということだ。これには「なるほどな」と思った。
そういえば、高校時代の校長先生も、全校集会の度に「継続は力なり」と言っていた。私もそれを実践したおかげで、今があるようなものである。私は会計士であるが、別に会計が好きだったわけではないし、今でも好きなわけではない。仕事上の必要性から関心を持ち、「どうせやるなら」と思って働きながら会計士の試験にチャレンジしたのである。
公認会計士の試験は結構大変な試験なので、かなりの人が途中で勉強をやめてしまう。社会人ならなおさらだ。働きながらの受験は今にして思えば狂気の沙汰だが、半ば意地になってやり続けた結果、なんとか合格することができた。
通っていた専門学校の講師があるとき「絶対合格する秘訣を教えましょう」と言ったので、全員が食い入るように身を乗り出したら、「それは、合格するまで勉強し続けることです。そうしたら、何年かかっても必ず合格するでしょ」と言った。教室は失笑と呆れ顔だらけになったが、これは名言である。
その後、現在に至るまでずっと会計の仕事をし続けてきた結果、いつからか人は私のことを専門家と見るようになった。
結局、あるところまで行く人は、何度壁にぶち当たってもなんとかそれを乗り越えて、やめなかった人なのである。
■「違う」と思ったらなるべく早くやめるのも重要
次は、とっととやめるのも悪くないという話。
実は、私は3カ月で会社を辞めたことがある。会計士に合格したのを機に一般企業からコンサルティング会社に転職した。そこには丸4年間在籍した。コンサル業界は5年もいれば長いほうで、丸4年もいるといろいろと不満が募ってきた。そんなこともあって、別のコンサル会社に転職した。
しかし、新しいコンサル会社は仕事のやり方が自分には合わなかった。そして何より、同じ業界内で会社を変えるだけでは不満は解決されないということに気付いてしまった。当時の私の不満を極めて簡単にいえば、それは組織で働くことに起因する不満だったので、会社という場で働いている限り根本的には解決されない不満だったのである。
それで意を決して、2番目のコンサル会社を3カ月で辞めたのである。そしてそのとき、私は独立を決意したのである。もともと、いつかは自分ひとりで仕事がしたいと思って会計士になったので、事の成り行きとはいえ、結果的には独立するきっかけとなったわけだ。3カ月しかいなかった会社にも、そこを紹介してくれたヘッドハンターにも多大なご迷惑をおかけしたと思うが、結果的にはその後の私の仕事を大きく発展させる転機となった。
一般的に、ずっと同じ職場にい続けることは必ずしもいいことではない。現在の日本は、職場に不満があったり、十分な能力が発揮できないような場合であっても、容易に会社を辞められる社会にはまだなっていない。労働市場の流動性がまだ決して高くないのも一因だし、何事も途中でやめることを良しとしないカルチャーも根強い。学校の部活からして、一度入った部活は卒業までやり遂げることが美徳とされている。「やってみなきゃ何に向いているかわからない」という考えの下、学期ごとにクラブ活動を変えるのが普通のアメリカなどとは対照的だ。
現在の職場に合わなかったり、たまたまうまく能力を発揮できないなら、早々に新たなチャンスを探したほうがいい。現に、私はそうやって独立し、今がある。3カ月で辞めるときは相当悩んだし、メンタル的にもかなり参っていたが、今にして思えばあのとき決断をして本当によかったと思う。
だから、何事も「違う」と思ったなら、早々にやめるに越したことはない。次のアクションを取るなら、なるべく早いほうがいいに決まっているからだ。
重要なのはその後である。その後にどのような行動を取り、どのような結果を出せるかがすべてだ。
4時間で辞めた女性も4時間で辞めたことが問題ではない。これからどうするかが一番の問題であり、それによってしか評価は決まらない。
(文=金子智朗/公認会計士、ブライトワイズコンサルティング代表)
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