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ついに政府が「税逃れ富裕層」を狙い撃ち! 相続税の「5年ルール」を撤廃へ
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/50172
2016.11.10 伊藤 博敏 ジャーナリスト 現代ビジネス
■政府ににらまれたカネ持ちたち
超富裕層の究極の「節税術」が、来年度から奪われようとしている。
政府・与党は、海外資産への相続課税を抜本的に見直し、被相続人(親)と相続人(子)が1年の半分以上を海外で過ごす非居住者の場合、相続税がかからないという「5年ルール」を撤廃する方針。2017年度税制改正大綱に盛り込む方向で議論を始める。
99%以上の庶民にとって、節税のために5年以上を海外で過ごすなど理解不能だし関心もない。だが、数十億円の金融資産を抱える富裕層にとって、最高税率55%の相続税は我慢がならないほど重く、子孫に残してやりたいと移住する。
そんな富裕層の気持ちと生態と現実を、リアルにわかりやすく伝えたのが、清武英利氏の『プライベートバンカー』だった。富裕層と彼らを護る「プライベートバンカー」と呼ばれる傭兵たちの物語。そこから浮かび上がってくるのは、租税回避地・シンガポールで「退屈」という“病”に冒されながら、5年の月日を「出所」を待ち望む囚人のように暮らすカネ持ちたちの、決して豊かで幸せとはいえない姿だった。
国税当局は、富裕層包囲網を確実に狭めている。一昨年から5000万円超の海外資産を申告する「海外財産調書」を義務化。昨年7月からは、1億円以上の有価証券を持つ富裕層が海外移住する際、その含み益に対して「出国税」が課せられることになった。
そして今、究極の節税である海外逃避を封殺。背景には、二極化の進展による「99%層」の憤懣の高まりと、その解消と同時に税収も増やしたい国家の思惑がある。
従来、租税回避は憲法で認められた権利である。憲法第84条は、「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする」と、定めており、「租税法律主義」という。つまり、法律にないことは許される。
租税回避地利用は、98年の外為法改正以来、海外に投融資などを目的に会社を設立し、資金を移動させることが原則、自由になったことで活発化。その後、グローバル化が進み、ネット環境が整い、外資を中心とした金融機関がプライベートバンクサービスを開始したことで、富裕層の間に浸透していった。
ただ、いかに「租税法律主義」があり、合法のための金融テクニックが弄されようと、租税回避地利用の節税は、「税逃れのズルい行為」と見なされがちだった。それが、ヒト、モノ、カネの移動が容易になり、国境のカベが低くなったことで、次第に特別な行為とは見なされなくなった。
世界でテロが勃発、国家が国民を護りきれるものではない以上、人間が資産を分散・逃避させるのは当然だという認識も高まった。それだけ「外資の論理」が浸透した。
そこから国税当局と富裕層との「徴税いたちごっこ」が始まる。
■富裕層、受難の時代
プライベートバンクが、国際的な税法に詳しい弁護士、公認会計士、税理士などでチームを編成、富裕層向けオーダーメイドの資産逃避を構築すると、国税当局がその穴を塞いでいった。
もともと国家と国民は、税で対立してきた。“酷税”は一揆や反乱をもたらすものだが、現代は、プライベートバンカーという「富裕層の傭兵」が国家と対峙。資産だけでなく人も移動させる。「5年ルール」に則って、子供の留学先や就職先の世話を行い、親も移住させて「無聊のケア」まで行う。
『プライベートバンカー』では、冒頭、シンガポールの繁華街・オーチャードロードの裏手の焼き鳥屋で、30億円を持つ資産家が、「あかん、もう退屈で死にそうや。日本に帰りたいわ」と、ボヤキ、シンガポール銀行の若い日本人女性行員が、顧客の憂さを晴らす接待係として登場、適当に相槌を打つシーンが描かれている。
そこまでして資産を残したい。海外逃避のラッシュは、昨年6月末までだった。7月から出国税が課せられるというので、その前に相続税対策もあって次々に出国した。
ドンキホーテHDの安田隆夫・創業者最高顧問は、家族とともにシンガポールに移住。シンガポールの人気は高く、金融グループ・Jトラストの藤澤信義代表、ニュースアプリ・Gunosyの木村新司創業者、ソーシャルゲーム・gloopsの梶原吉広創業者などもシンガポール在住である。
シンガポール政府は、世界各国から富裕層を呼び込むために、国策でオフショア(相続税や贈与税廃止した課税優遇地)のメリットを発信。日本からの移住組が目立ち始めたのはシンガポールのひとり当たりのGDP(国内総生産)が、日本を抜いた2007年頃からだという。
治安が良く、日本から7時間と近い上に時差がなく、日本人学校なども充実、約2万5000人の日本人が暮らすシンガポールに、資産逃避名目でどれだけの日本人が移住したかという統計はないが、数百人規模で存在するのは間違いなく、移住組が増えたのが07年以降だとすると、「5年ルール」を完全にクリアしていない人は少ないだろう。
租税法律主義を掲げ、「外資の論理」で資産の分散・逃避が認められた時代は、短命に終わった。08年のリーマン・ショックを機に、過剰な金融資本主義の歪みが明らかとなり、グローバルな市場中心主義が二極化を進展させ、貧困層が中間層を侵食して拡大。そこにタイミングよく富裕層の工作を暴露する「パナマ文書」が表れた。
国際金融の世界ではこれまで顧みられなかった「モラル」という言葉が、租税回避地利用の富裕層に浴びせかけられるようになり、世界の指導者も「パナマ文書」の世界を批判、富裕層の税逃れを許さない。そこには、グローバル化のなか、企業も個人も自由に資産を飛ばし、税収が少なくなっているという「国家の事情」もある。
半分、日本を捨てても追ってくる税――富裕層、受難の時代である。
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