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もはや自力再建の能力なし!欠陥エアバッグ「タカタ」の呆れた決算会見 最高責任者が欠席だなんて…
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/50146
2016.11.08 町田 徹 経済ジャーナリスト 現代ビジネス
■7年半の歳月が経ったにもかかわらず
欠陥エアバッグ問題が引き金で破たん寸前のタカタのCFO(最高財務責任者)が、先週金曜日(11月4日)の中間決算発表の席で、同社や100%米子会社の再建策を問われて「コメントする立場にない」と発言し、計らずも同社に経営再建の当事者能力がないことを浮き彫りにした。
欠陥エアバッグが原因で最初に死亡事故が起きたのは2009年5月のこと。米オクラホマ州で、衝突事故の際にインフレーター(ガス発生装置)が異常爆発し、飛散した金属片が、当時18歳の女性の頸(=けい)動脈を切断し、彼女の命を奪った。
さらに、今月2日付のロイター通信によると、米国を中心に死者が少なくとも16人、負傷者が150人以上に達しているという。最初の悲劇から7年半の歳月が経ったにもかかわらず、必要な対策が未だに講じられていないことは信じ難い事実である。
業を煮やした日米の交通当局は今年5月、合計で最大4700万台に達するタカタ製エアバックの追加リコールを自動車メーカーに指示した。
だが、メーカーでは今なお交換部品の確保などに窮しているうえ、車検のない米国では対象車の所有者と連絡をとることも容易でなく、米当局がリミットとした2019年末までにリコールを完遂することができるかどうか予断を許さない情勢だ。
ところが、肝心のタカタの経営は今年度末(来年3月末)の決算を乗り越えることさえ覚束ない。自動車メーカー各社が巨額のリコール費用を立て替えており、タカタに支払いを請求した途端、同社は債務超過に陥るリスクがあるのだ。
これ以上の悲劇を抑えるために何が必要なのか探ってみたい。
■経営責任を放棄した回答
開いた口が塞がらないというのは、このことだ。
リコールをやり遂げるまで会社が存続できるのかどうかに関心が集中した中間決算発表に、タカタは最高責任者である高田重久代表取締役会長兼社長を出さなかった。ディスクロージャー(情報開示)責任を軽視している経営姿勢の表れだと批判されても仕方のない対応である。
加えて、問題の会見で、タカタの野村洋一郎氏はCFOの肩書を持ちながら、無責任かつ支離滅裂な発言を繰り返した。日本経済新聞が報じた議事録から、そのやり取りを拾ってみよう。
会見に臨んだCFOの野村洋一郎氏〔PHOTO〕gettyimages
まず、かねてタカタが「来月(12月)中にメドをつけたい」としていた再建策の策定状況を問われた野村CFOは次のように述べ、記者たちを呆れさせた。
「外部専門家委員会がスポンサー候補を探して、再建計画を立てている。いろいろ情報は入ってくるが、外部が決定する問題で内容についてこちらから意見したり、お話したりするような立場にない。よってここでもしゃべれない。申し訳ないが、ノーコメントだ」
「以前から申し上げている通り、タカタの希望としては再建計画は年内に決まってほしい。ただ、時期についても外部専門家委員会の先生方の判断なので、なんとも言えない」
タカタの対応は、不祥事に揺れる企業が時間稼ぎや自社の論理を代弁させるため、いわゆる第3者委員会を設け、その委員会を隠れ蓑にして矢面に立つのを避けようとする手法を彷彿させる。
だが、この種の外部委員会は、委託した会社の基本方針に沿って再建策を策定するものだ。外部委員会が全権を持ち、独自に物事を決めることなどあり得ない。つまり、当事者能力のある会社ならば、この質問には、「年度内に策定いただくようお願いしている」と答えるはずだ。
また、内容についても、野村CFOの回答では経営責任を放棄したことになってしまう。「意見したり、お話したりするような立場にない」という答えは0点だ。
そうではなくて、「逐一報告を受けているが、重要機密なので、できあがった計画を会社として機関決定したうえ、関係方面の同意・協力を取り付けるまでは公けにできない」というのが、まともな回答だろう。
さらに、株主に対する配当金の問題もある。前中間期(今年9月末)はリコール問題が不透明なため、「無配当に決定した」としながら、来年3月の期末配当に関しては「引き続き未定」とした点が不可解なのだ。
冒頭でも述べたように、リコールは3月末までの5ヵ月弱で完了するような容易なミッションではない。「無配」は避けがたいのに、なぜ、株主や潜在株主をミスリードする情報開示姿勢を採るのだろうか。
それは、創業家の資産管理会社TKJが発行済み株式の52.1%を保有するほか、第2位以下の大株主にも同社の代表取締役会長兼社長の高田重久氏ら高田ファミリーの名前が並ぶ同族会社という事情があるからではないか。
速やかに「無配」の決定を下せない背景として、この創業家一族の経済的利益への配慮があると映るのである。
世界中の自動車ユーザーを不安の嵐に巻き込みながら、この期に及んで、創業家の利益を優先しているととられかねないような配当政策はもってのほかである。
様々な角度から見て、タカタという会社は、リコールを完遂して再建に臨む当事者能力を欠いていることを露呈した。
■明日、破綻してもおかしくない
ここで、タカタの経営がいかに待ったなしの状況にあるか、その一端を明かそう。
タカタ製のエアバッグの最大のバイヤーだったホンダは、問題のリコール費用として、一昨年度(2015年3月期)に1200億円、昨年度(2016年3月期)に4360億円、この2年間の合計だけで5560億円の引当金を積んだ。
この引当金の中には、タカタが負担すべき費用の立て替えも含まれている。両社はリコール費用の分担額に合意していないとされるが、仮に折半(2780億円)としよう。この金額はタカタの純資産額(今年9月末で1240億円)を大きく上回るため、ホンダが請求した途端、タカタは債務超過(実質経営破たん)に陥ってしまう。
実際には、外国メーカーを含めるとタカタのエアバックをリコールしている自動車メーカーは12社程度ある。リコールが進めば、いつ、どのメーカーが立て替え費用の返済を迫ってもおかしくない。
つまり、極端なことを言えば、論理的には、今日であれ、明日であれ、大手自動車メーカーが立て替えリコール費用の請求に踏み切った途端、タカタは破綻する。そういう綱渡り状態に直面しているのである。
では、タカタの野村CFOが「スポンサー候補を探して、再建計画を立てている」と述べた外部専門家委員会は、きちんと機能しているのだろうか。
同委員会は、タカタの取締役会決議に基づいて今年2月に設置されたもので、同5月にはM&Aの助言会社である米ラザードをアドバイザーに起用した。狙いは、新たな出資者を募り、自動車メーカーの協力を得ながら、リコール問題を解決することとしていた。
外部専門家委員会は9月に入札を行い、出資者候補を5陣営に絞り込んだ。そして、10月にニューヨークで開いた会合で、候補者から自動車メーカーに再建計画の骨子を説明させたという。
そうした中で、折に触れて取り沙汰され、中間決算発表日(11月4日)の朝刊でも改めて報じられたのが、すでに債務超過に陥っている米子会社TKホールディングス(ミシガン州)について連邦破産法11条の適用を申請して法的に債務を確定させる一方で、日本のタカタ本体は私的整理で債務を減らすという再建案だ。
これにより、米国では、タカタの撤退を演出して米当局からの懲罰的制裁を回避しつつ、日本ではタカタを存続させて、リコールも進めるという。
自動車業界で連邦破産法11条の適用を受けて再生型の破たん処理をした企業としては、2009年のゼネラル・モーターズ(GM)とクライスラーの2社が有名だ。連邦破産法11条は、日本が2000年に施行した民事再生法のモデルでもある。
■「国内、海外ともに私的整理による解決を望む」
この計画案は、タカタ製エアバッグのリコールを進めている自動車メーカーにとっても都合のよい面がある。エアバッグは自動車の安全部品として欠かせないが、タカタを含む上位3社が世界シェアの7〜8割を握っているのが現状で、供給できる部品メーカーが他にない。
このため、タカタが存続すれば、自動車メーカーは、生産がストップするような混乱を避けられるのだ。
また、タカタが破たんして清算されれば、自動車メーカーはこれまでに立て替えたリコール費用の大半を回収できなくなる。これに対して、連邦破産法11条ならば、立替金を長期の負債と位置付けて、時間をかけて回収する余地ができるというメリットもある。
しかし、予断は許さない。前述のように、当のタカタの野村CFOが中間決算発表の席で支離滅裂な受け答えを繰り返し、外部専門家委員会案を真っ向から否定する発言も行ったからだ。
「関連会社との話し合いによる私的整理での解決を望む方針は当初から変わっていない。製品の安定供給を続けるにはそれしかないと考えているからだ。法的整理となると、国内のみならずグローバルで事業の継続が厳しくなる。国内、海外ともに私的整理による解決を望む」
この発言の背景に何らかの意図があるとすれば、それは、大株主である創業家が株主責任を問われて減資により株主の座を追われることを防ぐことか、創業家出身の3代目経営者である高田重久氏が経営責任を問われて現職(代表取締役会長兼社長)を解任されるのを防ぐことが考えられる。
仮に、そうした意図があるとして、それを黙認したのでは、経営的に何のけじめもつかない。自動車メーカーはもちろん、外部専門委員会の求めに応じて名乗りをあげた出資候補者も態度を翻して協力を拒むだろう。
一連のリコール騒ぎの渦中で、タカタは事故調査に不満を抱いていたと聞く。インフレーターがエアコンのすぐ脇に設置されており、使用環境が要求スペックを大きく上回る過酷なものになっていた可能性が十分検証されず、タカタが必要以上の責任を負わされたというのだ。
また、膨大な数の部品を組み合わせて自動車として販売する責任は自動車メーカーにあり、リコール手続きもユーザーと接点の自動車メーカーがやるのが慣例だ。なのに、それを無視してタカタにリコールを強要しようとしたとして、タカタが反発しているという話もある。
しかし、ユーザーの死亡事故が多発しているのは、紛れもない事実である。むしろ、タカタが原因究明を理由に、のらりくらりと抜本的な対応を先延ばししてきた結果、問題が大きくなった点を痛切に反省すべきだろう。
■タカタに残された道
最後に筆者が提案したいのは、すでにリコール費用の立て替えによってタカタの大口債権者になっている自動車メーカー有志による民事再生法の適用申請だ。
これなら、投資資金の早期かつ高利回りでの回収を宿命づけられている投資ファンドや、内外の独禁当局に待ったをかけられかねない他の部品メーカーを交えることなく、言い換えれば、いたずらに船頭を増やさずに、リコールの完遂とタカタの再建を両立できる可能性が大きい。
自動車メーカーにとっては、自動車の安全確保に必要なエアバッグの安定供給のメドが立つメリットと、時間的な猶予を与える代わりに立て替えたリコール費用の多くを回収できるメリットもあるはずだ。
当事者能力のないタカタ経営陣に代わって、ホンダやトヨタがタカタ再建のリーダーシップを果たすべきだと筆者は考えるが、いかがだろうか。
そして、もう一つの提案が、インフレーターの定期交換部品化だ。この議論は、本コラムの2015年5月12日付『タカタ製だけじゃない。経年劣化ですべてのエアバッグが危ない!? 』で書いたので、詳細はそちらを参照していただきたい。
要点だけ記すと、経年劣化する火薬を使用しているような部品は、例えば偶数回の車検などのタイミングに合わせて、きちんと定期交換する仕組みの早期確立が求められているのではないかという議論である。こちらも、長々と放置すべき問題ではないはずだが、いかがだろうか。
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