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信託銀行、再編の裏で問われる根源的な「存在意義」(週刊ダイヤモンド)
http://www.asyura2.com/16/hasan115/msg/438.html
投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 11 月 08 日 11:15:15: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

三菱UFJ信託銀行は、今年7月に明らかにした米資産管理会社の買収に続き、新たな買収案件を発表。重点戦略である資産管理関連ビジネスの強化を進めている Photo by Takahisa Suzuki


信託銀行、再編の裏で問われる根源的な「存在意義」
http://diamond.jp/articles/-/107025
2016年11月8日 週刊ダイヤモンド編集部


10月31日、三菱UFJ信託銀行は「信用金庫の中央銀行」と呼ばれる信金中央金庫の傘下にある、しんきん信託銀行の買収を発表した。超低金利が続く状況で経営環境が悪化する中、信託業界では買収や提携が相次いでいるが、実はその裏では、信託銀行のビジネスモデルを根本から揺るがしかねない事態が進行していた。(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木崇久)

 10月下旬、ある信託銀行幹部は金融庁幹部と向かい合い、神経戦を繰り広げていた。監督官庁である金融庁が、現在の信託業界に対して持っている問題意識を探るためだった。

“台風の目”である森信親長官を中心に今、金融庁は金融業界全体に及ぶ改革に突き進んでいる。

 その代表例が地方銀行だ。金融庁は地銀に対して、ジリ貧に陥っているビジネスモデルの抜本的な変革や、地元経済への貢献を強く迫っている。そのプレッシャーの余波は業界再編の呼び水となり、地銀業界は激動期に突入している。

 こうした地銀の苦境は信託業界にとっても対岸の火事ではない。金融庁の改革の矛先が信託業界にも向き始めていることを感じて、その信託銀行幹部は金融庁幹部との会談を取り付けたのだった。

 その会談から程なくして、信託業界の地殻変動の一端が垣間見える出来事が起きた。

 10月31日、三菱UFJ信託銀行が「信用金庫の中央銀行」と呼ばれる信金中央金庫の傘下にある、しんきん信託銀行の買収を発表。来年9月をめどに、全国の信金が販売する残高約1.3兆円の投資信託の資産管理を引き継ぐ。

 三菱UFJ信託は安定的な収益を稼ぎ出す資産管理関連ビジネスの強化を重点戦略として掲げており、今年7月にも管理残高を約6兆円抱える米資産管理会社のライデックス・ファンド・サービシズを買収すると発表したばかりだ。今回もその一環での買収となる。

 一方、三菱UFJ信託の競合である三井住友信託銀行は昨年8月、ゆうちょ銀行と日本郵便、証券大手の野村ホールディングスと共同で資産運用会社を設立。さらに、2014年11月には、大手地銀の横浜銀行(神奈川県)とも資産運用会社を共同設立している。

 多くの金融機関が、日本銀行が導入した異次元金融緩和やマイナス金利政策による超低金利状況で資金運用難に陥り、経営環境は悪化を続けている。事情は収益改善を金融庁に迫られている地銀だけでなく、信託銀行も同じだ。

 そして、そのビハインドを少しでもはね返そうと、信託業界は買収や他業態との提携などが相次ぐ激動期に突入しているのだ。

■金融庁の行政方針で決定版から消えた信託関連の幻の一文

 ただ、実は信託業界に地殻変動を引き起こす最大の脅威は、経営環境の悪化とは別に存在する。信託銀行のビジネスモデルを根本から揺るがしかねない“パンドラの箱”が開きかかっているのだ。

 それが、信託銀行の利益相反問題だ。冒頭の会談で、信託銀行幹部が金融庁幹部に探りを入れたかったのも、まさにそこへ金融庁が本気で切り込むつもりがあるのかどうかだった。

 信託銀行は企業に融資を行う銀行業務と、投資家の資金を預かって資産運用を手掛ける信託業務を兼業している。これは日本の信託銀行特有のビジネスモデルだが、そこに潜む利益相反の問題が指摘されている。自社の銀行業務の利益を優先したり、その顧客である融資先企業に配慮したりすることで、信託の資産運用業務の顧客である投資家のための利益追求がなおざりになるリスクがあるというわけだ。

 この利益相反問題に関しては、金融庁が開いている有識者会議でも問題提起されている。会議の委員で、三菱UFJ信託を傘下に持つ三菱UFJフィナンシャル・グループの元幹部である田中正明氏からも同様の指摘が出るなど、金融庁の“宿題”となっている。

「信託銀行においては、銀行業務と信託業務の双方を行うことに鑑み、信託業務において顧客よりも銀行部門の利益を優先することがないよう利益相反管理を行っているかなどについて検証する」

 10月21日、金融庁は今後1年間の道しるべとなる金融行政方針を発表したが、実は公表直前の案には盛り込まれていたこの一文が、決定版からは姿を消している。信託業界の“パンドラの箱”を開くには監督当局側にも相応の覚悟が必要なため、金融庁も揺れ動いているとみられる。

 ただ、これをもって信託業界は一安心というわけにはいかない。ある金融庁幹部は「信託銀行は信託機能を持っていながら、社会にとって何の役にも立っていない」と切り捨てる。

 信託業務では、高齢化が進む日本において社会的ニーズが強い、事業承継や相続に関するサービスもメニューに並ぶ。しかし、今の信託銀行は、そうした信託ならではのサービスよりも「十分なリスク管理が伴わない拙い海外展開や、体力にものをいわせた住宅ローンの金利ダンピング競争」ばかりが目に付くと、前出の金融庁幹部は憤る。

 信託業界は、存在意義という根源的な問いに直面している。
 

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