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百貨店の弱体化を招いている深刻な「王族意識」とは(※写真はイメージ)
複合店とネット台頭に加え、百貨店の弱体化を招いた「王族意識」〈週刊朝日〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20161104-00000093-sasahi-soci
週刊朝日 2016年11月11日号より抜粋
今年9月にそごう柏店、来年3月に三越千葉店など閉店が相次ぎ、百貨店にはずっと逆風が続いている。麗澤大学経済学部の圓丸哲麻准教授はこう解説する。
「ライバルが少ない時代の百貨店はいわば“王族”でした。ところが1960〜70年代にダイエーなどの総合スーパーが現れ、90年代には百貨店の主力だった衣料品でユニクロなどの専門店も増えた。競争にさらされ、パイも縮小、利益率もどんどん下がった。本店の縮小コピーのような店を地方展開するモデルが通用しなくなったんです。最近では柏などの都市部近郊でも新たに進出してきたモールなどに押され、潰れるケースが出てきています」
圓丸氏などによると、百貨店はフランスが発祥で日本では1904年、呉服店がルーツの三越が東京・日本橋に開いたのが始まり。その後、呉服系、電鉄系の百貨店開業が続く。欧米では地域に根差す大型小売業の一つにすぎないが、日本では独自の進化を遂げてきたという。ただ経済産業省の定義をみても総合スーパーとの大きな違いは「セルフ方式」の割合ぐらいしかない。品ぞろえで差別化できなくなっているだけでなく、今では交流や娯楽といったさまざまな機能も備え、さらに集客力のある複合大型施設に押されている状況なのだ。
一方で“王族”意識が災いしてか、変化への対応に出遅れている。
「経済成長があったお陰で生き延びてきたという面があります。ただ体制がほとんど変わらずきているため、依然厳しい。リーマン後は高額商品がますます売れなくなっています」(圓丸氏)
弱体化を招いている要因の一つは独特の商習慣だ。圓丸氏によると、百貨店は自前の仕入れは少なく抑え、取引先にリスクを負わせて得る収益のほうが大きい。そのためリスクは抑えられる一方、それと引き換えに利益が薄くなる。
人材育成も課題が多い。インターネットの普及で客との商品情報の格差が縮まり、売り場のプロが育ちにくい。バイヤーも「卸におんぶにだっこ状態」で目利きの力が育たず、その結果、百貨店同士で同質化が進むという悪循環に陥っているというのだ。
また、コンビニなどが得意な売れ筋を把握する商品管理も不得手という。一部で取り組みは始まっているものの、業界全体をみると対応は遅れ気味で、例えばある百貨店の外商担当者は高齢男性で、刑事が持つようなパンパンのメモ帳を携え、顧客情報を記入。顧客データを電子化しようとしたが、達筆すぎて読めなかったり暗号ばかりで使い物にならなかったりという状況で、結局諦めたという。
百貨店ブランドの生命線となる「品質」でも差別化が難しくなっている。ファッション業界関係者は言う。
「結局、コストを抑えてとなっていくと、製品を作る所もアジアなど同じ場所に集約されていく。そうなれば百貨店用でも量販店用でも、値段の差ほど品質面で差が出にくくなってくる。ブランド側が百貨店を選別するところも出てきているのでは」
頼みの衣料品市場も失速続きだ。総務省家計調査によると、2000年に年7万円を超えていた家計に占める洋服代は15年には5万98円まで低下。
「アマゾンなどのEC(電子商取引)も発達して世界のブランドも簡単に買える時代です。よほど工夫しないと客足が店舗に向かわない。ここ数年、とくに消費がモノからコトに変わり、衣料品の優先順位も下がった。モノがあふれ、本当に欲しいものだけにお金を使うが、ブランドだから買うという人はいません」(ファッション業界関係者)
低迷の影響は流行をリードしてきたファッション雑誌にも変化を招いている。
前出の圓丸氏は、
「発信するコーディネートが高級ブランド一点張りでなく、量販店商品も組み合わせたものに変わってきています。服選びにしても、自分が所属する集団に受け入れられれば良し、という価値観に変わってきている」
と指摘する。
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