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エマニュエル・トッド混迷の世界を読み解く グローバル化終焉、貧困と対立へ ドイツ帝国が世界を破滅 核武装大国・日本へ期待
http://www.asyura2.com/16/hasan115/msg/369.html
投稿者 軽毛 日時 2016 年 11 月 06 日 00:54:28: pa/Xvdnb8K3Zc jHmW0Q
 

エマニュエル・トッド混迷の世界を読み解く
2016年11月6日(日) 午前0時00分(50分)
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番組スタッフから
【どんな番組ですか?】
いま、世界が発言に注目をしているフランスの知識人、エマニュエル・トッドさんが私たちが知りたい世界のこれからについて、徹底的に語ってくれます。
10月に来日したトッドさんに密着、4日間にわたってインタビューしました。
そのなかで次々と世界の未来についての「予言」が飛び出します。

【番組の見どころは?】
トッドさんは人口学者であり歴史学者、統計や調査データをもとにクールでユニークな分析で、話をしてくれます。迫るアメリカ大統領選は、どうなるのか、劣勢を伝えられるトランプ候補が善戦すると断言する理由は?イギリスの離脱で揺れるEU、そのうごきを2年まえに「予言」していたトッドさんが見据えるEUの近未来像とは?トッドさんの冷静な分析は、きっと私たちが世界の動きを考えるうえで大きな手掛かりとなるとおもいます。

【心に残った言葉は?】
トッドさんがインタビューのなかで繰り返し強調したのは、おおきな時代の変化を迎える今、「日本が従来の価値観、考え方」から脱却することの大切さでした。その従来の価値観とはどんなもので、なぜ、脱却できないのか。番組でごらんいただけると幸いです。

(番組プロデューサー 日置 一太)
番組内容

エマニュエル・トッド 混迷の世界を読み解く
ソビエトの崩壊、アメリカの没落、イギリスのEUからの離脱など、世界の動きを次々と予言し的中させているフランスの知識人、エマニュエル・トッド氏。この10月来日し、東京でシンポジウムを行った。グローバリゼーションの危機が言われるなかで、これから日本はどう選択をしていけばよいのか、エマニュエル・トッド氏に密着、徹底インタビューすることで、これからの激動の世界を読み解いていく。
http://www.nhk.or.jp/docudocu/program/92779/2779237/index.html

 
「ドイツ帝国」が世界を破滅させる。エマニュエル・トッド氏が日本のエリート層に波紋を起こす © AP Photo/ Amel Emric

オピニオン 2016年02月06日 17:31(アップデート 2016年02月07日 00:11) 短縮 URL 1483081728 2015年末、日本の知識人たちは、フランスの社会学者でジャーナリスト、ロシアでも定評のあるエマニュエル・トッド氏の新刊『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる 日本人への警告』について、盛んな議論を行なった。この種の本としては異例の10万部を売り上げ、日経のランキングでは2015年で最も印象的な本ベスト3に選ばれた。 世界秩序の転換が既に明白化している。欧州においてはドイツが力を増し、ドイツ周辺には「ドイツシステム」が形作られ、それは既に膨大な物質的・人的リソースを手にしている-これが同書のライトモチーフだ。周辺諸国、たとえばウクライナは、非工業化する。「ドイツシステム」が周辺諸国に求めるものはただ人力のみ。その人力は、貪欲に吸い上げられるだろう。米国には既に挑戦状が叩きつけられている。米国に残された唯一のドイツ抑止策は、ロシアとの同盟である。 © AFP 2016/ JOHN THYS 欧州委員会委員長:シェンゲン圏には存続の脅威が差し迫っている トッド氏はロシアに多大なシンパシーを寄せている。そして、ロシアのポテンシャル、競争力、将来性を高く評価している。いくつか目に付く記述を引き写してみよう。 ドイツには明確な将来設計がある。南欧諸国を隷属させ、東欧から人的リソースを吸い上げ、フランスの銀行システムを配下に置く。2008年の世界危機はドイツの力を明るみに出した。ドイツは欧州に対する権力を手に入れ、欧州をロシアとの潜在的戦争状態へと追い込んだ。ドイツの切り札は、コンパクトな、歴史的に工業生産と戦争に特化したドイツ民族の持つ恐ろしいほどの生命力である。人間的価値観、家族および社会構成といった面で、ドイツは、米国その他のアングロサクソン国家と根本的に異なっている。両者の衝突は不可避である。ドイツは古来、「君主制民主主義」「民族的民主主義」、アパルトヘイトを信奉し、実行している。つまり、ドイツ人のための民主主義、「君主制民族」、他の民族を従属国・奴隷として服属させる、ということである。 事実上「ドイツシステム」の管理下に置かれた欧州は、既に付加価値生産性、人口および人口に占める工業従事者比率(米国17%に対し27%)について、米国を遥かに上回っている。輸出は年々増加しており、一般的な意見に反して、交渉中のTTIP(環大西洋貿易投資パートナーシップ)も、米国よりはむしろドイツを利するものである。 ガスパイプライン「サウスストリーム」敷設計画の停止もドイツの仕組んだことだ。ドイツは欧州でドイツ以外の国が主要なガス取得・分配者になることを望まなかった。そして、国民および政府の間でロシアへのシンパシーが強い南欧が経済的に自立することなど、全く許容できなかった。 © SPUTNIK/ MAKSIM BLINOV ロシア イノベーション化が進んだ経済を持つ国のランキングで12位に ドイツの増強が危険なのは、増強が進むに従い、エリート層の予見可能性が低まっていることにある。ドイツは歴史的に隷属するか支配するかの民族であり、民族間の平等という観念はドイツ人にとって極めて理解しにくいものだ。 米国指導部はどうやらドイツ増強の脅威を自覚していない。ロシアがたとえばウクライナ問題で後退し、どころか敗北すれば、既に存在している物的・人的リソースの多寡が、ますますドイツ有利に傾くばかりである。ロシアが世界を舞台とするゲームから撤退するのが早ければ早いほど、米国とドイツの間の対立はより強く先鋭化するのだ。そうしたことを米国指導部は理解していないようだ。 米国がウクライナ問題に介入したのは、欧州秩序の見張り番という役割を強調したかったから。そして、ドイツに対するコントロールを失いかけているという現実を覆い隠したかったからだ。しかし米国指導部でも、最後には健全な理性というものが勝利を収めずにはいない。欧州で冒険主義が高まり、危機が中国に波及しようとする中では、米国にはロシアへの接近以外に正しい道はない。 ロシアはソ連崩壊から復興し、現代的で、ダイナミックで、偉大な社会になっている。その国民は、多くの欠点や、権威主義への傾きを持ちながらも、それでも未来を楽観視している。トッド氏は人口学者として、その最大の証拠となるのは出生率と平均寿命の堅実な増加である、としている。加えて極めて重要なのは、1990年代以降ロシア・ベラルーシの乳児死亡率が減少し、ほぼ先進国の水準に達したことだ。ロシア指導部の主な課題は、豊富な資源と軍事力を利用して、領土と国民を守り、工業力を維持し、この歴史的時間を勝ち抜くことだ。 日本が危険視すべきは、「ドイツシステム」が中国との接近の道を今後ますます模索するだろうということだ。トッド氏によれば、ヒトラーも1930年代、中国か日本かで揺れ、蒋介石の軍に資金を注入し、教練を行っていた。現代では、事実上、他ならぬドイツこそが「ウクライナ問題」を引き起こし、日本にとって極めて重要だったロシアとの接近を寸断した。 どうやら、国際情勢のこのような解釈は、ロシアとの接近を望みながら、一方で中国の権威に従うことや米国と仲違いすることを決して望まぬ日本の一部知識人に、深い感銘を与えたらしい。

続きを読む: https://jp.sputniknews.com/opinion/201602061563797/
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フランス最大の知性エマニュエル・トッド独占インタビュー「最も愚かなのは、私たちフランス人だ!」
From L’OBS(France) ロプス(フランス)
Interview by Aude Lancelin
2016.5.8
エマニュエル・トッド Emmanuel Todd
1951年生まれ。歴史人口学者・家族人類学者。フランス国立人口統計学研究所(INED)に所属。作家のポール・ニザンの孫。1976年、『最後の転落』(新版の邦訳2013年)で、弱冠25歳にして旧ソ連の崩壊を予言。1983年、『世界の多様性』(邦訳2008年)で世界の家族構造を7つに類型化。9・11の1年後、イラク戦争開始前の02年9月に出版された『帝国以後』(邦訳03年)では米国の金融破綻を予言し、28ヵ国以上で翻訳され、世界的ベストセラーとなった。
その他の著書に、『移民の運命』、『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』、『シャルリとは誰か?』など多数。
エマニュエル・トッド Emmanuel Todd
1951年生まれ。歴史人口学者・家族人類学者。フランス国立人口統計学研究所(INED)に所属。作家のポール・ニザンの孫。1976年、『最後の転落』(新版の邦訳2013年)で、弱冠25歳にして旧ソ連の崩壊を予言。1983年、『世界の多様性』(邦訳2008年)で世界の家族構造を7つに類型化。9・11の1年後、イラク戦争開始前の02年9月に出版された『帝国以後』(邦訳03年)では米国の金融破綻を予言し、28ヵ国以上で翻訳され、世界的ベストセラーとなった。 その他の著書に、『移民の運命』、『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』、『シャルリとは誰か?』など多数。
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歴史人口学者エマニュエル・トッドは、あの「私はシャルリ」デモを批判する著作が大論争を引き起こして以来、フランスでは発言を控えていた。
だが今回、難民問題、パリ同時テロ、困窮する若者たちの暴発、こういった切迫する危機について、ついに口を開くことを決意。「ロプス」誌の独占インタビューをお届けする。

ドイツが考えていることを直視しないフランス

――私たちは、第二次世界大戦以来、もっとも大きな難民の波に直面しています。
すでに欧州は、巨額債務による危機で足元がおぼつかなくなっていました。そこに難民問題が起きたことで、かろうじて欧州を支えている最後の大きな柱まで倒れてしまいそうです。こうした現状について、どのようにお考えでしょうか。

まず強調するべきことは、「フランスにとって『難民危機』とは、実体をともなわない観念的な現象だ」ということです。
この理由はとても単純です。難民たちは私たちの国に来たがらないのです。

これはフランスにとっては不愉快な事実ですよね。移民を惹きつける力とは、すなわちその国の活力なのですから。
これは、フランス女性1人が2人の子供を産むという人口的に安定した状況も関連してはいますが、とりわけ失業中の若者が多いことに関係しています。

ドイツではまったく事情が異なります。ドイツは国民全体の高齢化と闘っていて、常に労働力を求めているのです。

ドイツと日本について、私はかなり研究してきましたが、この両国の人口は世界で最も高齢化していて、平均年齢はそれぞれ46.2歳と46.5歳です。
一方、米国は38歳、英国で40歳、フランスは41.2歳です。

日本は移民の大規模な活用を拒否し、国力が低下しないようにする闘いを諦めてしまいました。ところが、ドイツは世界で最も年老いた2つの国のうち1つでありながら、経済力についてはまったく諦めていません。

──ドイツは人口構成の弱みを補うために、経済面で現実的な策を取っているということでしょうか。フランスのメディアでよく言われるように、メルケル首相が歴史的な責任を果たしているわけではない、と……。

メルケルの移民政策は、1960年代からの政策と、まったく同じ路線上にあります。
この間、ドイツ人支配階級が考えていることは、いつも同じです。「労働力の若返り」です。

2015年、ドイツは緊縮財政によって、ギリシャ・イタリア・スペイン・ポルトガルの経済を破壊しました。世界中がドイツを糾弾していたまさにその時に刊行された「シュピーゲル」誌は傑作ですよ。
表紙に、ドイツが南欧の若者の新たな楽園として描かれていたのです。才能と能力にあふれ、好調なドイツ経済に加わるべく呼び集められた、地中海沿岸部の若者たちの幸せそうな顔とともに。

フランス人はこういった側面を見ていません。自国に対する間違ったイメージのなかに生きているからです。
私たちは、「我らがフランスこそ移民大国だ」と思いこんでいます。でもそれは、長い歴史をみると、ごくわずかな期間のことにすぎないのです。
実際、太古の昔から、移民と創造的な関係を築いてきたのはドイツなのです。たとえばプロシアは、フランスから逃れてきたユグノーを含む外国人たちによって築き上げられた国です。

そして戦後のドイツには、ユーゴスラビア、トルコ、そしてあらゆる東欧諸国から、大量に移民が流れ込み続けました。
戦後ヨーロッパにおける移民大国は、フランスではなくドイツなのです。

フランスには、「ドイツは中近東からの移民を受け入れることで、過去の贖罪をおこない、善意の国だと見せたがっている」と考える人たちもいます。
ですが、これは典型的な「お人よし」の考えです。そんなこと、ドイツ人はこれっぽっちも考えていません。もちろん、償うべき過ちがあるとも考えていません。

──ですが長い間、それは事実でしたし、ドイツの「贖罪」は欧州統合にも大きく影響を及ぼしたではないですか。

もはやそんな段階など、とっくに終わっています。
特に2015年の夏、ギリシャ危機への対応をみれば、ドイツ人にはもう何の良心の呵責もないとわかります。

東西ドイツは1990年に統合されました。それ以来25年間、ドイツは共産主義で疲弊していた国々を立ち直らせてきました。ドイツは東欧経済に秩序を取り戻し、東欧の労働力人口をドイツの産業システムに組み込みました。
その結果、ドイツはユーロ圏内の競争相手を蹴散らして、ハイテク部門では中国、米国、日本をはるかに凌ぎ、世界トップクラスの輸出国となりました。このプロセスを、8200万人しかいない高齢化した国民の力でなしとげたのです。

少し考えてみればわかりますよね。そうです、ドイツはものすごい国なのです。
並外れた組織力、効率、能力のある国ですよ。

この背景を理解したうえで、ドイツが火をつけたいまの「移民の波」を分析しなければなりません。
同じような出来事は以前にもあったのですから。

異なる家族構造を持つ民が同化するのは難しい

──今日、そのドイツにおいてさえ、大規模な人口流入を止めようとする動きがあります。移民の受け入れに慎重なフランスも批判されるべきなのでしょうか。

フランス政府がやることなど、何の重要性もありません。ドイツもフランスの政策を考慮していません。
目を覚ましましょう。いまや、フランスは歴史の中心にある国ではないのです。

フリードリヒ・エンゲルスが1848年の革命の時代に用いたコンセプトがあります。
それは、チェコ人に対して語った「歴史なき民」というものです。自ら蜂起して歴史を形成したハンガリー人やポーランド人の対極に位置づけたものでした。
現在は、フランス人が「歴史なき」民なのです。

私たちはいま、世界の歴史が大きく変わりうる潮目に立ち会っています。米国ではトランプやサンダースが台頭し、ロシアは中東政策を転換しました。そしてドイツの選択は世界に注目されています。
それに比べれば、フランス大統領選は何のインパクトもありません。

ドイツ人には、これから厳しい現実がのしかかるでしょう。
彼らにとって、東欧の人々を吸収することは簡単でした。なぜなら、ドイツ国家の民族は単一であったためしがなく、国民の大部分は常にゲルマン系スラブ人で構成されていたからです。
でもこれからは、話が完全に変わってきます。いまドイツに押し寄せているのは、まったく別種の移民なのです。

実は、トルコ人を受け入れたときに、すでに歯車が噛み合わなくなっていました。
それは、彼らがイスラム教徒だからではありません。フランスでは多くの人がそう煽りたがりますがね。そうではなくて、トルコ人の家族構造が父系制、つまり非常に男性優位であり、同族結婚に基づいていることが原因だったのです。
人口学においては、これが重要なポイントです。地中海の南岸・東岸の人々は、いとこ同士で結婚します。この伝統は、家族システムを内部で完結させるように働きます。

つまり問題は、彼らの家族システムがどれほど私たちの族外婚文化からかけ離れているか、ということなのです。ヨーロッパでは、いとこ同士の結婚率は常に1%を切っていますからね。

──シリアやリビアからの移民は、どのような家族構造が問題になるのですか。

いとこ婚率はスンニ派シリア人で35%ですが、アサド大統領の基盤であるアラウィー派では19%です。イラク人で36〜37%。リビア人についてはいい統計がありませんが、いとこ婚率はおおむね高い、といっていいでしょう。

シリアやイラクで難民が発生しましたが、これは始まりでしかありません。サウジアラビアも崩壊しつつあります。これらの国から、同族婚の伝統を持つ何百万という難民が流出してくるのです。

ドイツのような年老いた国が彼らを受け入れるのは、どう考えても信じがたい挑戦だと思います。
こんなにも多くの、こんなにも文化が違う人々を、こんなにも急速なスピードで、社会に組み込みコントロールするとなると、ドイツの階層化、硬直化はどうしても進むでしょうね。
移民受け入れの代償として、ドイツは警察社会あるいは軍事社会へとは変わっていくかもしれません。

──そうはおっしゃいますが、かつてあなたは「幸福な移民の擁護者」などと言われていたではないですか。つまり2000年代なかばまで、移民問題は世代が変わることで解決されるだろう、とあなたは楽観的に語っていたはずです。当時の考えを捨てたということですか。

たしかに、この話題について私が1994年に書いた『移民の運命』には楽観的な予測が載っています。ですがこの本には、現実的な分析もいっぱい書いています。

当時の分析はこのようなものでした。文化の違いというものを簡単に考えてはいけない。たとえすべての人がいずれは同化されるものだとしても、人々のアイデンティティの問題は危険をもたらしかねないのだ――。

私は、「道義上、断固としてすべての移民を最優先で受け入れるべきだ」などと語ったことはありません。こんな抽象的な道徳を振りかざすのは無責任な態度です。
この際、ああいう無責任な優等生たちに言いたいことがあります。難民のなかで多くを占める、高等教育を受けたアラブ人を片っ端から欧州に定着させるということは、中東からエリートを奪うことです。そして、これから何世紀にもわたって、中東をバラバラにして後退させてしまうことです。

これはハイチがたどった運命そのものです。
この続きは
COURRiER Japon会員(有料)
になるとご覧いただけます。
https://courrier.jp/translation/51242/


 

日本で広がる「ドイツ脅威論」への冷静な反論
経済・金融政策において無力なのは明らかだ
幻冬舎plus 2016年4月21日

長らく「ドイツを見習おう」と連呼していた反動かもしれません(写真:claudiodivizia / PIXTA)
エネルギー政策にせよ歴史問題にせよ、「ドイツを見習おう」という論調がこれまでの定番だった日本。だが昨年、続けざまにドイツに警鐘を鳴らす本が出され、注目を浴びた。エマニュエル・トッド著『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる 日本人への警告』(文春新書)と、三好範英著『ドイツリスク 「夢見る政治」が引き起こす混乱』(光文社新書)の2冊である。これで世論が極端なドイツ批判に傾いたわけではないが、メルケル首相率いる“強いドイツ”に対する潜在的な警戒心を触発された人は多かっただろう。

だが、こうしたドイツ批判の高まりを、ドイツ人はどう受け止めているのだろうか。日本への留学経験と勤務経験があり、現在ドイツのルートヴィヒスハーフェン経済大学東アジアセンターの所長を務め、同学で教鞭を執るフランク・レーヴェカンプ氏に寄稿してもらった。

ドイツ人は、ヒステリックな理想主義者か


「幻冬舎plus」(運営:株式会社 幻冬舎)の提供記事です
ドイツを批判する2冊の本が、日本で話題になった。

三好範英『ドイツリスク 「夢見る政治」が引き起こす混乱』では、ドイツの時事的なテーマを取り扱っており、エマニュエル・トッド『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる 日本人への警告』では俯瞰的にドイツの政治と歴史を論じている。

どちらも興味深く読んだ。日本でより売れたのはトッドの本のようだが、論じるに値するのは三好の『ドイツリスク』のほうだ。

三好は長年にわたって読売新聞の特派員としてドイツに滞在した経験があり、ドイツ事情に通じているという点は折り紙付きだ。ドイツに向ける鋭い視線と記事はドイツ人読者にとっても「なるほど」と思わせられるところがある。とはいえ、ドイツ人全体を「夢見るドイツ人」、言い換えれば「現実離れした傲慢なドイツ人」というイメージでひとくくりにして語るときに、危うさがあるのも事実である。ある事実を恣意的に選り分けて印象操作している点では特にそれが目立つ。以下ではそれぞれの論点について詳しく見てみよう。

まず、福島の原発事故に関する報道についての章で、英国BBCの報道も引き合いにしながら、ドイツのメディアの報道姿勢について、不確かな情報を元に拙速と言える結論(事故を過小評価する、事実をひた隠しにする等)を出してヒステリックに騒ぎ、過度な一般化を行う傾向があるという。

しかし、報道の評価をどのような基準で行っているかを詳しく見ると信憑性は揺らぐ。例えば三好は、様々な事故評価やリスク評価の中から「原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)」の評価を基準にしたという。その2013年の報告書は、福島ではチェルノブイリ原発事故に比べて10-20%しか放射性物質が大気に放出されていない、としている。福島の原発事故はチェルノブイリに比べてさほど深刻ではなく、結果として騒動の数々には特に意味が無かったというわけだ。しかし事故のもたらした結果について、ある程度の全貌が見えた時点から、このような誘導を行うのは読者の誤解を招くだろう。なぜなら政府事故調と国会事故調の報告書や、吉田昌郎(事故当時福島第一原子力発電所所長)、近藤駿介(事故当時原子力委員長)といった関係者の証言によれば、当時、原発事故が全く別の経過をたどる可能性があったのは事実だからだ。

それは東京全域からの避難が必要になるというケースであったが、事故が最悪のシナリオ通りにならなかったのはひとえに幸運が重なった結果である。日本と各国の報道については、紙一重で首都圏を含む東日本一帯が何年、いや何十年にもわたって人が住めなくなる恐れがあったという背景を念頭に入れて判断する必要がある。三好がこの事実に全く触れようとしないのはどういうわけだろうか?

この疑問へのヒントはドイツの脱原発とエネルギー転換について述べた次章に見られる。このような政策上の大転換に困難さが伴うのはごく当然のことで、南北送電線の建設計画が一度は合意に達したにもかかわらずバイエルン州が抵抗している例のような対立は、政策の障害となっている。現在のドイツが置かれた状況については大まかに言って正確に記されているが、それは三好がほのめかしているような、脱原発とエネルギー転換が「理性的」な産業国にとって根本的に間違った道であるという結論を正当化するものではない。とりわけ日本はドイツのエネルギー転換で見られた過ちから学び、2030年か2040年をめどに脱原発を視野に入れることも可能である。三好が原発賛成派なのは歴然としており、原発依存度の低減の可能性について無視しているのは明白だ。

ユーロ危機? 各国の債務危機が顕在化してはいるが…

本書はさらにユーロ通貨の問題へと切り込む。欧州債務危機に際して、ユーロの構造上の欠陥を指摘し、ユーロが欧州の統一ではなく分裂を招いているという。三好はユーロ導入を失敗と位置づけており、ユーロ導入の経緯を示してドイツこそが失敗の主犯であるとしている。ドイツ主犯論は丁寧に展開されているが、その一方で自説に都合の良い事実だけが示されている。

例えば、本書ではユーロ導入が経済学者の反対を押し切ってドイツ政府主導で行われたかのように書いているが、これは事実に反する。とくにユーロ導入に関しては1999年のノーベル経済学賞受賞者であるカナダ人経済学者ロバート・マンデルの強い支持があり、マンデルは「最適通貨圏」という概念を提唱して、ユーロの理論的根拠を作り上げた。貨幣経済学者であり、後に欧州中央銀行初代チーフ・エコノミストに就任したオットマー・イッシングなどの高名な経済学者は、欧州での共通通貨を支持していた。

今日、ユーロ圏に多くの経済的問題が存在していることは明白な事実だ。ただしこれらの問題は通貨危機ではなく国家債務危機として理解する必要がある。ユーロそのものが問題を引き起こしているのではなく、負担不可能な国家債務が急速に深刻な状態にまで膨れ上がってしまうのを助長しているのである。経済政策の担当者はこの問題に適切に対処しなくてはならなかったが、その際に欧州で多くの間違いがあったとは言えるだろう。巨額の公的債務を抱える日本はユーロから多くの教訓を引き出すことができるだろうが、それは三好が論じたものではない。

また、ユーロは断じて、本書で取り上げられている右派知識人ティロ・ザラツィンが分析するような、ドイツによるナチスの過去とホロコーストを清算するための努力の産物ではない。仮にドイツでもデンマークで行われたような国民投票が実施されていたら、ユーロ導入反対派の方が多数を占めていただろう。

ドイツメディアは、中国には好意的どころか批判的

最終章で三好は、ドイツ・ロシア間およびドイツ・中国間の国際関係をとりあげる。ドイツ・ロシア間の共通の歴史や地理的な近さに根差す特殊な関係については実に正確に述べている。ドイツにはウクライナ危機などのため、ロシアに対しては様々な意見や観点がある。状況が複雑であるだけにこれは驚くようなことではないだろう。ドイツ国民が全面的に「プーチン理解者」として振舞うような状況は現在のところ見られない。ちなみに日本政府は北方領土問題に関してロシアと良好な関係の保持に腐心している。

さらに三好はドイツと中国の関係について非常に表面的で誤解を招きかねない紹介をしている。

本書の主張とは裏腹に、ドイツメディアはほぼ一貫して中国には批判的な論調であり、環境汚染や人権問題から汚職に至るまで定期的に報じられている。また中国による2013年の東シナ海防空識別圏の設定は、同年11月13日付「ヴェルト」紙が「中国による挑発」と表現するなど、各紙が否定的なトーンで報じた。ドイツメディアの中国報道があまりにも批判的なので、舞台裏でジャーナリストと財界人との間に対立が生じることもあるほどだ。財界側は中国との経済的な利害関係のため、「穏健な」論調の報道を望んでいるのである。

ドイツ・中国関係を扱った章は、本書の中でも最も論拠に乏しい章であるが、重要な章でもある。中国を軸にドイツと日本の歴史認識が対立的に論じられている。

三好はドイツ人が中国の歴史認識、特に第二次世界大戦前夜から戦中期にかけての歴史認識について特別な共感を持っていると見て、ドイツ、ロシア、中国などが属する「大陸国家」と、日本、英国、米国などが属する「海洋国家」の歴史認識が存在しているという。果たしてアジア・太平洋戦争中の出来事について、多くの米英の歴史家が三好の論に同意するものだろうか。歴史記述をめぐるドイツと中国の特別な親近感なるものはこじつけに過ぎないように思われる。中国の「公的」歴史記述はトップダウンであり、中国共産党の主導の下、国家レベルで行われる。ドイツにはこのような要素は無いため、歴史記述は幅広い。今日、ドイツと日本で言論の自由が保障されているのは明らかであり、三好が主張するような大きな差異は両国間の言論には見られない。

個別の具体的な記述はさておき、抽象的なレベルを見ると実は第二次世界大戦開戦から戦時中にかけての、ドイツと日本両国の歴史記述は類似している。つまり両国の歴史記述には感情的な要素が重大な位置を占めているのである。しかし感情的な要素をはらんだ歴史に対して、ドイツでは時に極端すぎると言って良いほどの歴史との直面が見られるのに対して、日本ではこのテーマについて話すことを避ける傾向が見られる。

かつて元駐日大使であるギュンター・ディールは日本滞在時を振り返って『遠方の友』(Ferne Gefährten)という本を出版した。この題は実際、日独間の関係を表すのに最もふさわしい表現だ。一方では両国が地理的に遠く離れていること、他方ではお互いについての知識が足らず、時にお互いに理解し合おうという姿勢も見られないことを表現しているからである。

しかし両国が共有している多くの特徴は、様々な危機に見舞われている現在という時代に、お互いを「友」として結び付けている。その根本には民主主義、思想の自由、平和と安定を目指す外交政策が挙げられる。少子高齢化、社会福祉と国家財政の健全性の確保、そして経済構造の変化といった重要な課題も共通している。友として歩む以上、地理的な位置と歴史的な経験に基づく両国の根本的な差異にも注意を払うべきだ。そうすることによって様々な分野でさらに効果的に協力し、お互いに利益を得ることができるだろう。そしてほんの少しでもより良い世界について夢見ることは決して悪いことではない。

トッドの言う「ドイツ帝国」の「帝国」の定義は?

2冊目のドイツ批判の書は、フランス人人類学者・知識人であるエマニュエル・トッドの『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる 日本人への警告』である。三好とは異なり、トッドの著作は体系的、論理的なものではなく、様々なインタビューを集めている。本書には一貫した理論的根拠や明確な結論は見られない。また具体的な政策テーマではなく、トッドが政治的・歴史的に関連すると考えるテーマが大局的に論じられる。

本書の基調となるのは、「ドイツ帝国」が欧州の大部分を「支配」し、ドイツの利益のみを追求した、徹底した利己主義的政策が欧州大陸を壊滅させるという議論である。残念ながらトッドは読者に対して何をもって「帝国」としているのか、そしてなぜ西欧や中欧のいくつかの国が「ドイツ帝国」の一部であるのかを説明していない。一般的な定義によると、帝国とは中央権力が支配し、領域の全土において政策を決定し実行する意志と能力を持つ体制である。ドイツ政府は決してフランス、スペイン、ポーランド、ギリシャなどの主権国家の主権を奪う意志は無いし、それが可能な状況下にもない。

ユーロ導入による“ドイツ一人勝ち論”は幻想

またユーロ制度は本書の多くの部分を占め、最も強く批判されているが、「ドイツ帝国」の定義の糸口にはならない。トッド自身が認めているように、フランスはユーロ導入に関して主導的な役割を果たしたし、ユーロ加盟国は一連のマーストリヒト基準を適用して、共通通貨導入を決定したのである。ドイツも含めて各国は金融政策の立案能力を欧州中央銀行に明け渡した。欧州中央銀行は確かにドイツのフランクフルト市に所在しているが、総裁はイタリア人のマリオ・ドラギである。そして金融政策は25人のメンバーのうち、持ち回り制の投票権を持つ理事からなる政策理事会の単純多数決によって決定される。ドイツ人の理事はそのうち2人に過ぎない。

2人のドイツ人理事は「量的金融緩和政策」、つまり国債の購入などの決定の際に反対票を投じたが、政策は可決されており、あまりの影響力の無さをドイツメディアは嘆いている。ドイツが無力であることは経済及び金融政策において現れており、EU各国に課せられた基準を貫徹するメカニズムすら存在していないことからも明らかだ。

そのため「ドイツ帝国」なる概念は有意義なものとは言いがたい。トッドの著作は、大まかに言って体系的ではないドイツおよびフランス批判のインタビューの寄せ集め以上のものではない。三好の本が体系的かつ多方面にわたっての分析の結果であるのに対して、トッドの本はそれには遠く及ばない。二冊とも読んだ読者はさらに露骨な矛盾点をいくつか見つけて戸惑うだろう。ロシアをめぐって、三好はドイツ国民がウクライナ危機に際して親ロシア的であると非難するが、トッドは自身がクリミア併合を含むロシアの行動を肯定する立場から、ドイツが反ロシア的だと非難している。

エマニュエル・トッドは駆け出しの頃から挑発的な主張で目立ち、その結果成功した。1976年には『最後の転落 ソ連崩壊のシナリオ』で、ソビエト連邦の終焉を予測しており、この本に書かれたことの多くは現実となった。2002年の『帝国以後』もまたベストセラーとなった。しかし同書でトッドが展開した命題の多くはすでに誤っていたことが明らかになっている。常に先鋭的なテーゼと挑発によってキャリアを築いてきた人間は、もはや理性的で客観的な分析には戻ることができないのかもしれない。常に過激な物言いをしなくてはこれまでに獲得した読者が満足しないという不安があるのだろう。いずれにせよ『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる 日本人への警告』は、真剣に読むに値する著作であるとは言えない。

(文:フランク・レーヴェカンプ)

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核武装大国・日本への期待
激動のウクライナ、束アジア情勢を読み解く

ロシアのサバイバル能力は高い

− 私は、ロシアのプーチン大統領は時勢を読むに長けた、強かな権力者と考えています。今回のクリミア侵攻も、かなり戦略的なものでしょう。

トッド 多くの人がプーチンは「チェス・プレイヤー」だといいますが、他国のプレイヤーはその動きについていささか高を括ってきた感があります。ロシアのサバイパル能力はきわめて高く、クリミア半島奪取は「新しいロシア」の安定化につながるでしょう。

人口学・歴史学の専門家としてみると、ロシア人の気持ちが高揚している理由がよくわかります。いまや乳幼児死亡率が下がり、平均寿命は上がり、暴力事件やアルコール中毒患者は減少。出生率は1.7まで上昇しています。ロシアは再び国際社会の主役になっている。

クリミアに関していえば、巷間いわれる武力侵略とはまったく違います。そもそも共産主義の崩壊後につくられた国境は異常なものだったのです。ロシア人はクリミアを手放すという、普通ならとても受け入れられないことを甘受してきた。歴史上、西洋がロシア人にしてきたことは言語道断な振る舞いであった、というのが私の持論です。ロシア人は民主化という、いささかエレガントなかたちで共産主義から脱しました。彼らはいかなる種類の軍事的な反動を伴うことなく、自らの帝国を失った。ウクライナに関する米ロの交渉に際して「冷戦時代に戻りつつある」という人がいますが、私はその説を信じていません。米ロ合意の可能性はあると思います。

− 英米に比べて、独仏両国はロシアに対する経済制裁に消極的だと日本では報じられています。

トッド ウクライナのような東欧の話をするとき、独仏の指導によって西欧が動くという認識は考えられません。たとえば、スウェーデンやポーランドはロシアとの関係が複雑で、基本的にはロシアに対する見方はネガティブです。私自身、この事実を数年前にストックホルムで知ったときは驚きました。スウェーデンは中立国で平和主義という評判がありますからね。しかし実際のところ、彼らはロシア人には我慢がならないのです。これは歴史上の記憶が関係しているでしょう。ロシアはかつて北方戦争(1700?21年)でスウェーデン帝国を破壊した国です。一方、ポーランドについては、ロシアとのあいだに問題を抱えていることは誰でも知っているでしょう。

たしかに現在、ドイツのロシアに対する態度は曖昧にみえます。ドイツ人は、かつてのビスマルクのようにロシアとの同盟が必要だという考えと、根深い反ロシア的な考えとのあいだを揺れ動いている。この揺れはメルケル首相の心の中にもあると思います。ロシアとは戦略的なエネルギー上の提携関係が必要だといったかと思えば、突然、プーチンは現実離れしている、という。私はプーチンこそ現実主義で、メルケルのほうがよほど現実離れしていると思いますが。


エマニュ工ル・トッド Emmanuel Todd
(フランス国立人口学研究所研究員)
1951年生まれ。パリ政治学院を卒業後、ケンブリッジ大学で博士号を取得。人口学・歴史学・家族人類学者。世界的ベストセラーになった『帝国以後』2003年、藤原書店)など、著書多数。
http://www.kaz-ohno.com/articles/emmanueltodd.html
 

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