★阿修羅♪ > 経世済民115 > 261.html
 ★阿修羅♪  
▲コメTop ▼コメBtm 次へ 前へ
米クアルコムが驚きの5兆円でNXPを買ったワケ ポストスマホ時代のターゲットは自動運転車用半導体(JBpress)
http://www.asyura2.com/16/hasan115/msg/261.html
投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 11 月 03 日 10:34:40: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

                米国・サンディエゴにあるクアルコムの本社(出所:Wikipedia)


米クアルコムが驚きの5兆円でNXPを買ったワケ ポストスマホ時代のターゲットは自動運転車用半導体
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48286
2016.11.3 湯之上 隆 JBpress


 半導体ファブレスの米クアルコムが、10月27日、オランダのNXPセミコンダクターズ(以下「NXP」)を470億ドル(約4.9兆円)で買収すると発表した。この買収規模は、米AvagoTechnologiesが米Broadcomを買収した金額の370億米ドル、ソフトバンクが英ARMを買収した3.3兆円を上回り、半導体業界で過去最大となる。

 クアルコムは半導体設計に特化したファブレス企業で、スマホ用のプロセッサを主力事業とし、2015年の世界半導体売上高では、インテル、サムスン電子、SK Hynixに次ぐ4位、ファブレスの売上高ランキングでは世界1位の座にある。

 一方、NXPは、エレクトロニクスメーカーのフリップスの半導体部門が独立した垂直統合型(IDM)の半導体メーカーで、車載用や認証端末用等の半導体が主力であり、2015年に旧モトローラの米フリースケール・セミコンダクタを買収し、世界半導体売上高では7位、車載半導体ではルネサスや独インフィニオンを抜いて売上高1位となっている。

 したがって、この買収を一言でいえば、「ファブレス世界1位のクアルコムが、車載半導体世界1位のNXPを買った」ということになるであろう(図1)。

          
          図1 車載半導体(マイコン)の売上高シェア(出所:IHS)


■クアルコムはなぜNXPを買収したのか?

 クアルコムは、スマホ用プロセッサで一時は世界半導体売上高3位にまで上り詰めたが、台湾メディアテックが台頭し、スマホメーカーがプロセッサを内製化してクアルコム依存度を下げる動きが広がり、さらに、スマホの出荷数自体が飽和してきた。その上、クアルコムにとってもっと大きな市場となっている中国で、独占禁止法に違反したとされて1150億円の罰金を払わされた。

 このような結果、クアルコムは一時の勢いが衰え、窮地に立たされていた。したがって、NXP買収は、次の成長への布石であり、それは自動運転用半導体を見据えたものであると思われる。

 本稿では、2015年2月27日に半導体産業人協会の主催で行われたクアルコムの特別顧問、山田純氏の講演「技術開発会社としての生き方 -クアルコムの苦悩と挑戦-」を参考に、クアルコムとはどんな会社か、どのような生い立ちとどのような試練を経て半導体売上高3位にまで上り詰めたのか、その後、どのような苦境に立たされ、それをどのように打開しようとしているか、等について論じたい。


■クアルコムは半導体企業とは言えない?

 クアルコムは、2014年の半導体売上高では、インテル、サムスン電子、TSMCに次いで世界4位だった。しかし、山田氏は、のっけから「クアルコムが半導体企業と言えるかどうかは分からない」という。

 2014年9月期の決算を見ると、売上高が26億4900万ドル(約3兆2000億円)、営業利益が7億5500万ドル(約9000億円)、営業キャッシュフローが8億8900万ドル(約1兆円)となっている(図2)。

        
         図2 クアルコムとはどんな会社か(出所:山田純氏の講演資料より)

 事業分野別では、売上の3分の2がスマホのプロセッサのチップセット、3分の1が知財ライセンスである。これが営業利益になると、チップセットは3分の1、知財ライセンスが3分の2と逆転してしまう。パテント等のIPライセンスビジネスがクアルコムの肝なのだ。だから、山田氏は、「クアルコムは果たして半導体企業と言えるか?」という疑問を持っているという。

 次に、営業キャッシュフローを地域別に見ると、その2分の1は中国である。ファーウエイ、レノボ、ZTEなど中国のスマホメーカーがクアルコムのカスタマーである。そして、クアルコムの約8割の売上は、アジアに依存していることが分かる。

 つまり、クアルコムは、スマホのプロセッサを中国などのアジアに販売して世界ランキング4位の半導体売上高を誇るが、利益の3分の2は知財ライセンスで得ているという、世界に類を見ない不思議な会社なのだ。


■自力で携帯端末と基地局をつくったが・・・

 しかし、今日の地位を獲得するまでの道のりは平坦なものではなかった。クアルコムの波乱万丈の歴史を追っていこう。

 クアルコムは、MITからカリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)に転任してきたアーウィン・ジェーコブズを中心にした大学の先生7人が、1985年に創業した会社である。

 最初に手掛けたことは、軍用の通信技術をモバイル通信技術に転用することであった。これは、実用化が難しく世界の誰もが尻込みしていた開発だったが、クアルコムの創業者がこれに挑戦した。そして、1998年に第3世代の通信技術の方式「CDMA」を完成させた。そして、米国の業界団体TIAに認められた。

 ところが、この当時、第2世代の携帯電話で市場を占有していたノキアやモトローラ、および基地局を制していたエリクソンやエリクソンは、CDMAに見向きもしなかった。というのは、第2世代の方式で十分ビジネスが成立していたため、新参者のクアルコムがつくったCDMAなどにカネを払ってまで使う理由がなかったからである。

 それならばと、クアルコムは自力で携帯端末をつくり、基地局をもつくってしまうのである。山田氏曰く、その携帯端末は現在のスマホの原型とも言えるような構成だった。ところが、端末も基地局もまったく売れなかった。

 携帯端末が売れなかった理由は2つある。まず、当時の携帯電話はアナログ通信が主流で、データ通信になじみがなかった。つまり、携帯端末は電話するもので、ネットに繋ぐなどということはほとんどなかった。そのため、携帯電話は通信時間で課金され、今のようなパケット方式ではなく、それゆえ、クアルコムの携帯端末でネットに繋ぐと、トンデモない電話代を請求される羽目になった。

 もう1つは、コンシューマー用のビジネスを行うためには、安く製造しなければならない。しかし、そのようなノウハウもなく、どこかに製造を頼もうにも、今ほどEMSが普及しておらず、生産に苦労した。結局、苦労の程には儲からないことが分かった。また、信頼性が重要な基地局については、できたてほやほやのスタートアップ企業に受注するようなところは皆無だった。


■ビジネスモデルを大きく転換

 クアルコムは、1999年にエリクソンに基地局事業を、2000年に京セラに携帯端末事業を、それぞれ売却した。その結果、クアルコムの会社の規模は半分以下になり、当時はもうダメかと社内は大騒動になったという。

 しかし、この手痛い失敗が功を奏した。

 創業以来クアルコムは、ワイヤレス通信とモバイル端末に、売り上げの20%を超える研究開発費をつぎ込んできた。その技術が社内に蓄積されている。その技術を幅広く提供するには、どうしたら良いかを徹底的に考えた。その結果、自社では最終製品を提供せず、CDMAに関する知財をライセンスし、CDMAを実現する携帯端末用プロセッサを提供するビジネスモデルに行きついた。2000年当時、このような水平分業を積極的に推進しようとしたのはクアルコムだけだった。ここから、ファブレスとしてのクアルコムの躍進が始まった。

 クアルコムにライセンス料を払って第3世代の通信方式CDMAを採用し、携帯端末をつくろうとしたメーカーは、サムスン電子やLG電子などの韓国勢、および京セラやシャープなどの日本勢だった。いずれも、ノキアやモトローラが世界シェアを独占していた時代には、通信機器メーカーとしては無名の存在だった。

 一方、ノキアやモトローラは我が世の春を謳歌しており、クアルコムのCDMAを無視し、韓国や日本の端末メーカーがやることを嘲笑っていた。


■スマホ時代到来、韓国や台湾のメーカーが急成長

 だが、2007年にアップルがiPhoneを発売したことで、流れが一気に変わる。スマホが爆発的に普及し、2015年には世界で15億台ものスマホが販売されるようになった。

 では、2000年当時の携帯端末の覇者たちはどうなったか。モトローラは携帯端末事業から撤退し、その事業は丸ごとGoogleに買収された。また、世界中に携帯端末を売りまくって長らくシェア1位に君臨していたノキアも、端末事業はマイクロソフトに買収された。

 結局、後発のサムスン電子やLG電子、それに台湾メーカーなどが、CDMA方式の携帯端末で急成長し、ノキアやモトローラを撤退に追い込んだのだ。

 また、それに伴って、クアルコムにはCDMAに関する莫大なライセンス料が入り、それが利益の3分の2までを占めるようになった。さらに、携帯やスマホ用プロセッサの個数や売上高で世界一のシェアを築くまでになった。その結果、2014年にファブレスの売上高で世界1位、半導体売上高4位の座を占めるに至った。

 山田氏曰く、携帯やスマホのプラットフォームを提供することにより、「クアルコムは携帯端末の新規参入メーカーのお役にたった」。

 成功した要因として、CDMAという通信の標準規格を掌握していることと、クアルコムのプロセッサがどの携帯端末でも動くように設計されていることを挙げていた。その根底には、自社では最終製品をつくらず、知財ライセンスとプロセッサを提供することに徹したということがある。


■立ちはだかる低価格スマホ

 このようにファブレスとして大成功を収めたクアルコムだが、その後、2つの壁に直面する。

 クアルコムの最大のカスタマーであり、アップルを抜いてスマホの世界シェア1位だったサムスン電子が、2014年4〜6月期の連結決算で9年ぶりの減収減益となった。サムスンの業績に急ブレーキがかかった理由は、サムスンの利益の7割を支えるスマホ関連事業が失速したことによる。そしてサムスンのスマホが売れなくなれば、クアルコムに大きな影響が出る。なぜ、サムスンのGALAXYの売れ行きが鈍ったのか?

 最大の原因は、100ドルスマホや25ドルスマホなど低価格スマホが急速に普及したことである。特に、2013年で4.5億台と世界最大のスマホ市場となった中国で、低価格化の進行が激しかった。この低価格スマホの仕掛け人は、台湾のファブレス、メディアテックである。

 メディアテックはどんな戦略で、サムスンやクアルコムを窮地に追い込んだのだろうか。

 米国のエレクトロニクス誌「EE Times」の主任国際特派員として中国の半導体を取材している吉田順子氏によれば、その第1の要因は、「ソフトウエアの開発に注力したことだ」という(EE Times 2012年10月25日)。

 スマホの機能を司っている心臓部が、アプリケーションプロセッサ(AP)である。APはスマホにとって最も重要なハードウエアであるが、そのAPを制御しているソフトウエアがさらに重要である。そのソフトウエアの出来如何によって、スマホの使い勝手などが大きく左右されるからだ。

 ところが台湾では、優秀なソフトウエアエンジニアが不足していた。そこで、メデイアテックは中国本土に目をつけ、優秀なソフトウエアエンジニアを片っ端から雇っていった。後からエンジニアを探しに来た日本メーカーは、「メディアテックの通った後はぺんぺん草も生えていない」と言ったという。

 こうして開発した制御ソフトウエアとAPをセットにして、メデイアテックは、スマホ端末メーカーに提供している。さらに、メデイアテックは、そこに、スマホの設計図である「レファレンス」をつける。その上、推奨部品リストまで添付する。つまり、スマホ端末メーカーは、メデイアテックからAPさえ買えば、制御ソフトウエアはついてくるし、設計図は手に入るし、あとは推奨部品リストに従って部品をかき集め、組み立てるだけなのだ。その結果、中国では、「靴屋でも明日からスマホメーカーになれる」と言われるようになった。

 こうして、中国では、大した開発費もかけずに、そこそこの性能のスマホを、極めて安価につくれるようになった。そして、ファーウエイ、クールパッド、シャオミなどの地場メーカーが台頭し、格安スマホが急速に普及したのである(図3)。

         
          図3 中国市場におけるスマホの企業別シェア(出所:易観国際の調査結果)

 2012〜2013年の中国市場におけるスマホ用AP出荷個数のシェアを見てみると、2012年はクアルコムが52%のトップシェアを獲得している(図4)。ところが、2013年に、メディアテックがクアルコムを逆転し、シェア47%でトップに躍り出た。

        
         図4 中国市場におけるスマホ用プロセッサの企業別シェア
(出所:台湾の拓撲産業研究所調べ、出荷数量ベース)

 こうして、サムスンと共にクアルコムは、窮地に★立たされることとなった★。


■さらなるクアルコムの試練

 クアルコムのビジネスを取り巻く環境はますます厳しくなっている。

 2013年以降、メディアテックが低価格スマホ用APで急成長したため、クアルコムもリファレンスと推奨部品リストを添付した上で、APの価格を下げざるを得なくなった。コスト競争の激化は、クアルコムの売上高や利益を直撃した。

 また、2015年2月に中国で、クアルコムが独禁法違反で罰金1150億円を課せられた。その根底には、CDMAのライセンス料が高すぎるとの批判がある。クアルコムは、スマホ最大の市場となった中国でのビジネスを継続するために、罰金を払わざるを得なかった。その上、中国関係者には、「ライセンス料をもっと下げないと、3年後にはまた罰金を科すぞ」などと脅されているらしい。

 さらにアップルやサムスンが、64ビット&16/14nmに移行しているのに、クアルコムは一度、躊躇した。その判断の遅れが、サムスンの「Galaxy S6」でデザインウィンを失うという結果を招いた。

 その上、スマホメーカーが、プロセッサメーカー(特にクアルコム)への依存度を下げるために、APの自社開発を加速しようとする動きが活発になってきた(表1)。サムスンは、Galaxy S6から自社APを採用し、2015下期からAPと通信用のベースバンドチップの一体化(シングルチップ化)を行い始めている。ファーウエイは、傘下のハイシリコンがAPを設計することになった。シャオミは、リードコアとAPを共同開発することになり、いずれ自社設計すると発表している。ZTEもグループ内のファブレスでAPを設計し始めた。

    
     表1 スマホメーカーがAP内製化を加速

 このように、クアルコムのお得意様が軒並み、クアルコム離れを起こし始めている。加えて世界のスマホの成長率が鈍化し始めた。

 以上の結果、クアルコムのAP売上高、ライセンス料などが急激に減少し、2015年7月には4700人のリストラを発表するに至った。


■ポストスマホ時代のターゲットは?

 ここまで、クアルコムの生い立ち、成長過程、そして直面している試練を見てきた。

 クアルコムは、通信技術を基にして、携帯端末、基地局、そして携帯端末用プロセッサの設計と事業構造を変革してきた。

 山田氏が「将来、クアルコムは半導体企業ではなくなるかもしれない」とまで言っている通り、その時々に応じて事業構造を変革してしまう柔軟さが、クアルコムの強さなのではないだろうか。これは、半導体売上高世界1位のインテルや、ファンドリー世界一のTSMCには、絶対に真似ができないことである。

 その後、新聞などで、クアルコムはポストスマホとしてドローン、サーバー用プロセッサ、ディープラーニング機能を備えた人工知能(AI)プロセッサに参入しようとしていことが発表された。

 この中で私はAIプロセッサに注目していた。現在、AIはクラウドの向こう側にある。しかし、クアルコムは、スマホの中で動作するAIプロセッサをチップセットとして供給しようと考えているようだ。つまり、クラウドなしで強力なAIをスマホ経由で提供しようという計画だ。これは、今、競争が激化している自動運転車にも応用できると思っていた。

 そのようなときに、クアルコムが車載半導体シェア1位のNXPを買収すると報道された。この買収で、クアルコムは自動運転に必要なすべての半導体を手に入れることができた。クアルコムは、ポストスマホとして、自動運転車用半導体をターゲットにしたと考えられる。今後、NVIDIAやインテルとの熾烈な開発競争が待ち受けている。その行方から目が離せない。



 

  拍手はせず、拍手一覧を見る

フォローアップ:


★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
投稿コメント全ログ  コメント即時配信  スレ建て依頼  削除コメント確認方法

▲上へ      ★阿修羅♪ > 経世済民115掲示板 次へ  前へ

★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/ since 1995
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。
 
▲上へ       
★阿修羅♪  
経世済民115掲示板  
次へ