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介護離職後の再雇用のしくみを設ける企業はまだ一部。介護経験者はこうした問題にどう向き合うのか (※写真はイメージ)
20代、30代も…「介護離職」その後の新しい働き方〈週刊朝日〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20161028-00000053-sasahi-life
週刊朝日 2016年11月4日号より抜粋
離職した従業員が、介護を終えて再び元の勤め先に戻れる。そんな支援制度が、近年広がっている。
奨学金貸与事業などを担う日本学生支援機構は、介護を理由にやめた職員の再雇用制度を4月に始めた。介護を終えて職場に戻りたい場合、3年以内だと退職時相当の給与で復帰できる。
「ハッピーターン」などの菓子メーカーの亀田製菓は、介護や育児などでやめる従業員が復帰希望を登録できる「ハッピーリターン制度」を昨年11月に始めた。大日本印刷の「re‐work制度」は、介護や育児で退職した勤続3年以上の社員を再雇用するしくみだ。介護理由での利用者の中には、20代後半と30代前半の社員もいた。人事担当者は「介護は中高年の課題と思われがちですが、若い世代も突然関わるもの。先の話と思う若手も含め、社員への周知が課題」という。
「2〜3日で勘を取り戻せた」「マニュアルの整備で以前より働きやすい」
こんな体験談が並ぶのは、外食チェーンのすかいらーくのサイト。離職したパートらの再雇用を広げようと、職場に復帰した人らの生の声を今年3月から伝えている。
再雇用のしくみを設ける企業はまだ一部。離職者の多くは、新たな生活の糧をどう得るかに悩む。
明治安田生活福祉研究所とダイヤ高齢社会研究財団が2014年に発表した調査「仕事と介護の両立と介護離職」を見ると、厳しい実態がわかる。
介護のために転職した正社員が新職場でも正社員として働けたのは、男性が3人に1人、女性が5人に1人。転職前後の年収を比べると、男性は557万円から342万円に4割減り、女性は350万円から175万円へと半減していた。
退職の決断、再就職の苦労、新たな働き方探し……。介護経験者はこうした問題にどう向き合うのか。
電気工事業の向洋電機土木(横浜市)の横澤昌典広報部長(44)は、介護離職を経て9年ほど前に同社へ転職し、正社員として働き始めた。きっかけは、当時の社長の一言だった。
「うちには今、介護で困っている社員がいない。君が働きやすい職場になれば、いい会社になれる。会社の将来につながる」
自らが味わった苦労を、ほかの人には経験させたくない。そんな思いから、新たな職場では介護や育児に関するさまざまな「使える」制度づくりを進めてきた。
法定に沿った制度に加え、介護休暇は年5日以上(有給)とし、失効した有給休暇を介護や看護に使えるように積み立て制度を創設。モバイル機器を使い、場所や時間にとらわれずに働けるテレワークもとりいれた。業務担当を原則2人とし、カバー態勢を整えた。
父(69)に胃がんが見つかったのは約12年前。「余命半年」と宣告された。「畳の上で死にたい」との願いをかなえようと、母と自宅で介護を始めた。
当時は独身で、転勤の多い大手企業で働いていた。仕事後の真夜中に高速道路を走り、横浜の実家へ戻る日々。相談できる人がなく、ヘルパーに頼める買い物なども自分でやり、介護を背負い込んだ。横澤さんはこう振り返る。
「夜遅くに帰り、父の世話をして仮眠。朝3時に起きて洗濯し、朝食を準備して5時に職場へ向かう毎日でした。点滴を打ちながら、介護を続けました」
父は手術を経て奇跡的に回復したが、歩行が困難となり、要介護3に。半年後に実家へ近い事業所に転勤できたが、今度は母が体調を崩した。
「このままでは、家族みんながダメになる」
有給休暇を使い果たした横澤さんは、介護休業の取得を申し出た。しかし、上司から「前例がない」「売り上げに影響して困る」と突っぱねられた。管理職で組合の助けも借りられず、30代前半で退職した。
職場で起こった上司との出来事が、今でも忘れられないという。
会議中、携帯電話に「父が危篤」と知らせが入った。中座したいと告げたが、返ってきたのはこんな言葉。
「今帰っても、間に合わないでしょう。君の発表は代わりがいないから、困る」
耳を疑ったが、結局終わるまで退席できなかった。
会社をやめてから、父の世話を続けつつ、介護に理解がありそうな会社へ転職した。ほっとしたのもつかの間、入社数カ月後に転勤の打診が来る。「話が違う」と反発したが、入社から1年もたたずに再び離職に追い込まれた。
横澤さんはこう話す。
「短時間勤務や有給休暇取得など、制度を整える企業は増えました。ただ、実際に使えないと意味がない。今の会社では、介護や育児で時間に制約があっても力を発揮できるしくみ作りを任された。ニーズを掘り起こすため、社員一人ひとりの聞き取りから始めました」
実体験を生かした地道な取り組みが評価され、仕事と家庭の両立支援に取り組む企業として表彰されるまでになったという。
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