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太陽光発電ブーム終焉でも参入、「草刈機まさお」などダジャレ商品名…ヘンな超優良企業(Business Journal)
http://www.asyura2.com/16/hasan115/msg/170.html
投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 11 月 01 日 00:34:05: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

              乗用雑草刈車 Hey Masao(「筑水キャニコム HP」より)
 

太陽光発電ブーム終焉でも参入、「草刈機まさお」などダジャレ商品名…ヘンな超優良企業
http://biz-journal.jp/2016/11/post_17056.html
2016.11.01 文=宮永博史/東京理科大学大学院MOT<技術経営>専攻教授 Business Journal


 ブームは時に機会ではなく、企業を苦境に陥れる危機となりうる。再生可能エネルギーもそのひとつになりつつある。東日本大震災の翌2012年に始まった固定価格買い取り制度(FIT)で、多くの企業が太陽光発電市場に参入した。太陽光発電は再生可能エネルギーのなかでも比較的参入が容易だったことと、国が買い取り価格を「固定」で保証したことが参入に拍車をかけた。

 新規参入を促すという意味では成功だったが、想定以上に参入が多かったことが思わぬ事態をもたらした。電力系統に影響を及ぼしかねないと再生可能エネルギーの受け入れを拒否する電力会社が出てきたり、買い取り価格も「固定」ではなく減額となったりしたのである。

 その結果、太陽光発電事業者も太陽光発電パネルを生産するメーカーも苦境に立たされている。将来はさらに暗そうだ。ある大手調査会社では、20年度の太陽光発電の国内市場規模は、15年度比65%減と大幅に縮小すると予測している。
 
 その一方で、太陽光発電市場を成長市場ととらえる企業もある。農業機械メーカーの筑水キャニコムだ。

■ユニークな商品名で業績を伸ばす

 福岡県うきは市で農業機械を専門に扱っているのが筑水キャニコムだ。ダジャレを使ったユニークな商品名が話題で、よくメディアにも登場する。たとえば、四輪駆動の草刈り機は「草刈機まさお」、四輪駆動の芝刈り機は「代表取締役社長 芝耕作」といった具合だ。前者はNHKの大河ドラマ『真田丸』で真田昌幸を熱演した草刈正雄さんの名前から、後者は人気漫画『島耕作』(講談社)に由来していることはいうまでもない。

 ユニークな商品名は国内だけではない。海外で販売する大型雑草刈り車には「ブッシュ カッター ジョージ」という名前をつけている(「やぶ」を意味するブッシュとジョージ・ブッシュ元米国大統領の名前とをかけている)。

 商品名にダジャレをつけ始めたのは1980年からというから、すでに35年以上の歴史を持つ。当時、開発中であった草刈機を試したところ、その切れ味に驚き「どんな草でも真っ青」と感じたことから思いついたようだ。今では200種類以上もの商品にダジャレが使われている。

 こうしたネーミングは農家にとって実に覚えやすく、なじみやすい。なかには「うちの“まさお”が」と親しみを込めて呼ぶ農家があるほどだ。農業機械の多くはアルファベットと数字を組み合わせた商品名だ。そうしたなかで、筑水キャニコムの商品名は特徴を表しながら親しみを持てる実に見事なネーミングだ。

 筑水キャニコムの商品が農家に愛される理由は、名前だけではない。同社の開発部隊は実際に農家を訪問して丹念に要望を聞いている。しかも、すぐに試作品をつくり、要望を伝えてくれた農家にフィードバックする。たいていのメーカーが要望を聞いて聞きっぱなしにしてしまうのとは大違いだ。

 要望の聞き方も実に念が入っている。ビデオカメラで農家の要望を集める際にも、正式なインタビューが終わってほっとした瞬間を逃さない。そうした時に思わぬ本音が漏れたりするからだ。撮影したビデオは会社に持ち帰って再生し、多くの技術者たちと共有する。そうした地道な経営努力が同社の強みであろう。 

■太陽光発電市場は成長市場?

 さて、筑水キャニコムが太陽光発電市場を成長市場と見立てて、メガソーラー(大規模太陽光発電所)に適した商品を開発したという。一体、どういうことだろう。
 
 話は14年頃に遡る。草刈り機まさおは、普通は果樹園で使われる機械だ。果樹園では定期的に除草をするため、雑草の高さがそれほど高くなることはない。ところが、メガソーラーを新たに建設する造成地では、果樹園ではありえないような高さの雑草を刈らなければならない。既存の草刈り機まさおでは力不足であった。

 メガソーラーが増えていくなかで、そうしたニーズをつかんだ筑水キャニコムは、早速、商品化を開始する。凹凸や障害物が多くても壊れにくい、草の密集度が高くても速く刈れる、ほこりが多くでもエンジントラブルを起こさない、ボタンひとつで高さを変えられる利便性など多くのメリットを盛り込んだ商品コンセプトを創造し、技術開発を行っていった。

 ようやく商品化の見通しがたち、15年9月には商品発表までこぎ着けた。ところがそこでトラブルが発生する。試作品を過酷な状況で稼働させたところ、なんと50時間ほどで動かなくなってしまったのだ。問題はモーターにあった。量産まで時間のないなかでモーターの選定からやり直し、なんとか16年春の量産に間に合わせることができた。そして今や予約待ちができるほど売れ行きは好調だという。

■太陽光発電市場は成長市場?

 国内にはおよそ4000カ所(15年末時点)のメガソーラーが存在する。冒頭に述べた状況から、新たな設立は減るだろう。つまり造成のために草を刈る需要は減ることになる。しかし、既設のメガソーラーでも十分草刈り需要があるのだ。発電パネルに雑草がかかると晴れの日でも発電効率が低下する。雑草を除くために羊や山羊を使って試験している事業者もあるほどだ。筑水キャニコムは、そうしたメガソーラーの事業者にこの新商品をプロモーションしている。

 太陽光発電市場そのものは縮小しても、筑水キャニコムのように、そこを成長市場ととらえる考え方は、ゴールドラッシュ時代に金鉱掘たちにジーンズを提供して成功したという逸話を思い出させる。16年のノーベル医学・生理学賞を受賞した大隅良典先生は、道なき道を行くことをモットーにしている。マーケティング用語でいえば、レッドオーシャンではなくブルーオーシャンを志向してきた方だ。

 ブルーオーシャンを目指すのは言葉で言うほど容易ではない。大隅先生は基礎研究の重要さと、短期志向の競争的資金に頼る大学の危うさを指摘されているが、企業経営においても心すべきことだ。そのためには、ブームを少し離れたところから見る、世阿弥の言葉でいう「離見の見」が重要ということであろう。

(文=宮永博史/東京理科大学大学院MOT<技術経営>専攻教授)

【参考文献】
1.茂った雑草におさらば、日経産業新聞、2016年9月6日
2.筑水キャニコム 商品名にダジャレ、日経産業新聞、2013年10月2日
 

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