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先進国で経済政策や金融政策が 期待できないわけとは?
http://diamond.jp/articles/-/105720
2016年10月28日 中原圭介 ダイヤモンド・オンライン
昨年、円安の終焉と日本株の低迷をズバリ予測し、見事的中させた中原圭介氏が、いま先進国で経済・金融政策がうまく機能しなくなった理由を解き明かす。
■2000年以前の常識が通用しなくなった
私は2000年以降の世界経済、厳密には中国がWTOに加盟した2001年以降の世界経済を、それまでの世界経済とは分けて考えるようにしています。便宜的に2000年以前を「プレ・グローバル経済」、2000年以降を「グローバル経済」と意識して、経済を分析するようにしているのです。
もちろん、現実の経済は決して断絶することなく連続性を持って動いているので、2000年を起点に明確に区切ることは難しいかもしれませんが、当時12億7000万人もの人口が資本主義社会に組み込まれた意味は非常に大きいといえるでしょう。とりわけ教育水準が高く、かつ労働力が安い中国を資本主意義社会が包摂することによって、世界経済は全体の規模を拡大させただけでなく、平均の成長率を引き上げることができたからです。
しかし、その副作用として、先進国の成長率が低下していくことは、避けられない状況となりました。
グローバル経済が全体で成長するには安い労働力が原動力になっている一方で、その安い労働力はかつて良質な雇用といわれた先進国の雇用を次々と奪っていったからです。そのうえ、中国が投資主導の経済成長を進めるなかで、原油をはじめとしたエネルギー資源の需要が爆発的に増加したために、人々の実質的な所得が減少することとなったのです。
確かに、米国の住宅バブル崩壊や世界的な金融危機の後遺症もあるのは事実ですが、その後の景気回復の過程で人々が生活の豊かさを実感できないでいるのは、雇用の問題が深刻化するのに加えて、エネルギー資源の高騰によるインフレが人々の可処分所得を減少させているという現実があるわけです。
経済学の分野ではそのことに着目せずに、GDPやインフレを重視する姿勢が常識として変わらないままでいるのは残念なことです。
■2%の成長率は「低成長」ではない!
インフラがある程度整っている先進国が、インフラ投資をしても経済効率はかつてほど高まりませんし、ありとあらゆるモノがあり溢れている昨今では、消費そのものが劇的に伸びるのは不可能だと思われます。そういった意味では、米国経済は低成長に甘んじているといわれて久しいですが、それでも近年2%台の成長をしているのは凄いことであると考えています。
経済メディアは米国の2%台の成長を「低成長」と評価し、否定的な見方を披瀝していることが多いのですが、そもそも近年の2%台の成長率と住宅バブル期の4%台の成長率を比較すること自体がナンセンスです。
2007年までの住宅バブル時は、米国民が住宅を担保に無理な借金を重ねて、過剰な消費を繰り返していたのです。借金に過度に依存した成長率を通常の成長率と取り違えて論評していることが、根本的な認識の誤りにつながっているわけです。
同じような認識の誤りは、2%台のインフレを目指すという日銀の金融政策にも当てはまります。
グローバル経済下では先進国で実質的な所得が伸びにくい状況になっているのに加えて、日本でバブル真っ盛りだった1980年代後半でも、物価上昇率は1%台後半であり、この時期には、企業が無謀ともいえる借金をして設備投資や土地・株式への投資をしていたため、成長率だけでなく物価上昇率までもが嵩上げされていたことを考えると、いまの日本で2%台のインフレを目指す必要はありません。
経済メディアのなかで著名な経済学者たちが間違った認識を垂れ流すことによって、多くの人々がそれを常識として捉えてしまっています。こういった現状を変えることができなければ、米国や欧州、日本などでまともな経済政策や金融政策が実行されることは期待できないでしょう。
経済学の世界が現実をありのままに直視し、経済の本質を捉えることができるように変わってほしいと切に願っています。
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