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重慶のビル群。不動産価格高騰の抑制と経済成長を両立させるヒントが隠れているかもしれない
中国の不動産価格暴騰はもはや「治安維持問題」の域に
http://diamond.jp/articles/-/105943
2016年10月27日 陳言 [在北京ジャーナリスト] ダイヤモンド・オンライン
中国政府は高騰を続ける不動産価格のコントロールに乗り出しているが、それは犯罪行為の摘発なども含め、政治問題となっている。一方、価格高騰を生み出している経済的な3つの要因には放置されたままだ。
中国の不動産バブルについては、日本でもたいへん関心が高い。
「昨年の価格と比べて、今は5割も高くなっている。もう仕事をするなんでばかばかしい」と、深セン衛星テレビ局で打ち合わせをしていると、地元のジャーナリストが深センの不動産価格について、こう漏らした。
「“階層”はすでに相当に固定化されているのではないか。住宅を持っている人は、よほどのことがなければ永遠に豊かだが、一方でこれから農村や地方から都市に出てくる人は、たとえ高い給料をもらっても、もう北京や上海、深センでは、一生住宅を買えないのではないか」と、共産党系新聞『人民日報』傘下のある新聞社の副社長は不満をこぼす。普通の人よりはるかに収入が高いが、そんな地位にある人でも、北京郊外で住宅を買おうとしても、いまではほぼ無理である。
住宅問題さえなければ中国の市民はもっと消費におカネを回せるし、社会の安定も維持される。このあまりにも高い住宅問題を解決するには、普通の政策ではすでに対応できなくなっており、不動産をめぐる犯罪摘発にまで政策が発展しているという点で、最近では重要な政治問題にまでなっている。しかし、それでも効果は見えてこない。
■住宅高騰は国の安保に関わる
中央の指導者が自ら指示を出す
北京から深セン、南京から東莞まで、20都市の政府要員が数日間不眠不休で作業し、不動産購入・賃貸制限政策を相次いで発表した。
政策決定者たちは、住宅価格が異様なほど高くなったという現象は、もはや「国の安全保障問題に関わるまでになっている」と認識しているようだ。下記のニュースの数々を見れば、それが分かるだろう。
先月の9月8日、上海市警察は、不動産市場に関するデマを拡散した容疑者7人を逮捕し、上海市ネットワーク情報事務室は、微信(Wechat)の5つの公式アカウントを閉鎖した。
10月4日には「不動産価格を釣り上げて暴利をむさぼることをもくろみ、デマを流し、消費者に不動産購入を煽るデベロッパーや不動産仲介業者計45社」を列挙したブラックリストが、住宅と都市・農村建設部(住建部)より発表された。
10月11日、深セン市警察は「不動産コントロール政策で投資家が飛び降り自殺」とのデマを流したとして、容疑者3人を刑事拘留した。10月12日、中央官庁住宅建設部が杭州、深センの不動産市場に関するデマの拡散事件を通達し、不動産市場の秩序を乱す違法・ルール違反行為を、法令法規に照らして厳しく処分することを各地に求めた。中央銀行は、大手国有銀行5行と民営銀行12行のトップを招集し、不動産コントロールに関する会議の方針を伝えた。
昨年7月の株式市場暴落後の「市場救済」行動と同じく、今回の不動産コントロールもまた一つの政治キャンペーンとなってしまい、地方政府が全面的に緊急非常態勢を取っている。
どうしてこのようなことになってしまったのか。
ネット上では、ある噂が飛び交っている。それは、ある指導者が「不動産価格がコントロールできなくなることを非常に心配している。もし不動産価格がコントロールできなくなったら、責任を追及しなければならない」という指示を下したというものだ。
この噂は、10月14日に一部実証された。政府系メディアの『澎湃ニュース』のその日の報道によると、住建部のある官僚が取材を受けた際、「これまでのコントロール措置は、すべて国務院が直接政策を発表したが、今回の不動産コントロール政策は中央指導者が自ら指示を下したため、そのコントロールの重点はこれまでと少し異なる」と話した。
中国において、「中央」とは実に曖昧な言葉である。広義の「中央」とは、国務院を含む中央政府だが、狭義の「中央」なら、共産党中央のみを指している。「中央指導者が自ら下した指示」とは、どの中央指導者を指すのかは言わずとも、習近平総書記と想像できる。
そのため、今後少なくとも数ヵ月の間は、各地の不動産価格が徐々に下落することは予想できる。ことここに及べば、不動産価格を引き上げようとするいかなる人間も太刀打ちできないだろう。
■不動産価格を支える3つの柱
依然不足している土地供給
中国社会の多くの人々はすでに不動産価格の高騰に嫌気がさしている。中央の指示もあり、誰もこれ以上の価格釣り上げはできなくなると思われている。しかし、本当にこれで不動産価格は下落するだろうか。いままでこのコラムで何回か中国の不動産価格について書いたので、その繰り返しになるが、現時点では不動産価格を支える3つの柱に、大きな変化は起きていない。
第一に、ほとんどの大都市では今後2年間を予想しても、人口が大都市に集中していく現象は緩和されず、土地供給が不足しており不動産の数は依然として足りていない。
第二に、通貨発行の増加は引き続きGDP成長率を大幅に上回り、余剰資金に投資先がなく、流動性は依然として過剰なままである。
第三に、中国の経済発展は、高度成長から成熟への転換、言い換えれば高成長期から中成長期へ変化しているが、6.5〜7%の成長速度に落ち着くのかどうか。これ以上の成長率の下落に歯止めをかけるためには、不動産以外になんの手段があるのか。不動産自体は相変わらず国民経済の柱であるため、その価格抑制を目標とする政策は、一貫して優柔不断で、動揺し矛盾している状態にある。
重要なのは、大半の人には見えない富の移転が、この国で密かに行われているということだ。
過去数年で起きたことを思い出してみよう。通貨の超過発行でインフレが起こり金銭(現預金)の価値が下落。地方都市の住民が銀行に預金するのに対し、大都市の住民はローンを組んで不動産を購入している。地方都市の富裕層の子女は大都市の大学を卒業した後、そのままそこに残って不動産を購入する。高速鉄道が主要都市をつなぎ、三大都市圏の政府が地下鉄などのインフラ整備に巨額の投資をしている。
富は迅速に大都市に移転し、集中していっているのだ。今後数年、中国の人口ボーナスは加速度的に終焉を迎え、各都市の間で人口の獲得戦が爆発する。将来、人口と富が集まるのは、直轄市、省政府所在地、経済中心都市になる。都市間の「80:20法則」(パレートの法則)がさらに顕著になる。つまり、「20%の人が、80%の富を持つ」というわけである。
■不動産価格の安定と経済成長を
両立させた重慶の改革
一方、こうした問題の解決の糸口が、重慶にある。
過去6年間、重慶の住宅価格はほとんど6000〜7000元/平米(日本円で約10万円)に安定しており、直轄市として、その住宅価格が中国では終始最低ラインにある。しかも、それでいて過去2年間、重慶のGDP成長率は連続して全国1位を維持している。
重慶が飛躍的な経済成長を実現するとともに、住宅市場の安定を維持できるのは、充分な土地供給と「二級制住宅供給システム」によるところが大きいという。この2点は戸籍制度改革と土地徴収制度改革によるメリットである。
2015年9月、重慶は農業戸籍と非農業戸籍の区別を撤廃することを発表し、また都市で5年以上、郊外で3年以上仕事を続けた人に対して戸籍の付与を始めた。この政策によって、重慶の都市戸籍を持っている人の比率(都市化率)は、2015年に一気に60.9%まで引き上げられ、全国平均レベルの56.1%を超えた。都市住民の急速に増加することによって住宅が不足し、住宅価格が高くなるはずであったが、重慶ではほとんどそのような現象はなかった。重慶の充分な土地供給によって住宅価格の安定維持ができたと見られている。
さらに重慶は二級制住宅供給システムを取り入れることで、住宅市場における市民の異なる需要に応じている。まず、政府は公営住宅の建設に土地と補助金を提供し、低所得者層の需要を満たす。低所得者層は月10元/平方メートルの安価で公営住宅に賃貸で入居できるようになる。同時に、重慶は商品住宅の供給を増やし、他の60%〜70 %の市民の需要を満たすようにしている。過去5年間、重慶の宅地供給量は上海と北京を4〜6倍上回っている。
こうした重慶のケースは、最近、大変注目されているが、都市住民と農村住民を分ける戸籍制度、農作業用地とその他の用地を厳格に区分する現在の土地制度を改革しようとする挑戦が、重慶以外の都市でも出ているわけではない。
結局、大都市住民が不動産価格の異常な高騰に対抗するには、政治キャンペーンの手法で対応するほかはない。それは一時的な高揚感があるが、それで社会問題が解決されたという前例を、中国ではあまり見たことはない。キャンペーンが終わると、これからの1、2年は住宅価格はまた上がるのではないかと中国社会ではまだ思われている。
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