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トヨタ自動車の豊田章男社長とスズキの鈴木修会長(右)=12日、東京都文京区(写真:フジサンケイビジネスアイ)
トヨタ流「仲間づくり」は欧米対抗の要 次の100年、日本の産業発展支える
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161026-00000503-fsi-bus_all
SankeiBiz 10月26日(水)12時15分配信
フランスで開幕された今年のパリモーターショーはさながら自動車の“大電化ショー”となった。「ゴルフ」の価格帯で400キロ以上の航続距離を持つコンセプトカーがショーの目玉となってくれば、電気自動車(EV)の時代が現実的に迫っていることを思い知らせる迫力がある。独フォルクスワーゲン(VW)のディーゼル不正事件以降、初のメジャーショーとなるパリには、「電化」を軸に危機を乗り切ろうとする欧州メーカーの強いメッセージが込められていた。
VWのEVコンセプトモデル「I.D.」は、1回の充電で走行できる距離が400〜600キロにも達するという。ちなみに、現在の日産の「リーフ」が280キロである。「ゴルフ」並みの価格を目指すというから、実現すれば驚きだ。フランス勢も黙ってはいない。ルノーは「リーフ」派生車である「Zoe」のEVレンジを従来の240キロから400キロへ引き上げたモデルを発表し、あからさまな対抗意識を示した。
VWディーゼル不正問題は、欧州自動車会社の技術戦略に多大な影響を及ぼす結果となった。ディーゼルや直噴ダウンサイジング・ガソリン技術で先行する戦略は、大きな曲がり角に差し掛かっている。加速化されて規制効果を受ける排ガス規制への対応には、排気量の大型化や補充機器追加による車重増大を招き、小型化・軽量化が必須な環境規制との整合性が難しくなってしまった。
世界一厳しい環境規制を実施し、その技術開発へサプライヤーを開発の早期段階で巻き込み、先立って先進技術を確立する。技術の標準化を進め、新興国を囲い込んでいくことは欧州産業戦略の基本であった。燃費規制と対応技術は、まさにその典型例といえるだろう。しかし、VWの犯した不正の結果、戦略は落とし穴に陥り、自らが敷いた規制の中で、対応と費用増大に苦しむ結果を招いた。
この解決策に欧州各国で共有化される新戦略が「電化」の加速化と「脱内燃機関」を手繰り寄せることである。VWは2025年までにグループ販売合計の20〜25%を電動車両に置き換える考えだ。戦略の切り札は、「MEB」と銘打ったEV専用プラットフォームである。高効率で低コストのEV開発を先導し、競争優位性を構築する考えである。ルノーは、日産自動車−三菱自動車の資本提携をグループ戦略に取り込むことで、一段と電化戦略に弾みをつけると考えられる。
今年9月、スズキの鈴木修会長は、トヨタ自動車の豊田章一郎名誉会長を訪ね、トヨタとスズキの歴史的な提携交渉の開始にこぎ着けた。故郷を共有する日本企業が手を握り合い、自動車産業の国家間競争を勝ち抜ける姿とは一体どのようなものか。国内自動車産業を牽引(けんいん)してきた2人の卓越した老経営者は、あるべき布陣の方向性を示したといえるだろう。
両社が目指すものは、まさに国家間競争を生き抜く「仲間づくり」である。日本の自動車産業の強みとは、アジア地域を中心とする「ものづくり」やハイブリッド化にある。トヨタ・スズキ連合は、内燃機関の競争力を高め延命化を果たすだけでなく、次の100年の産業発展を支え、欧米メーカーに対抗する非常に強い関係となりえるだろう。自動車産業は国家の経済と雇用の要である。この戦いは、どの国も負けることが許されないのである。
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【プロフィル】中西孝樹
なかにし・たかき ナカニシ自動車産業リサーチ代表兼アナリスト。米オレゴン大卒。山一証券、JPモルガン証券などを経て、2013年にナカニシ自動車産業リサーチを設立し代表就任(現職)。著書に「トヨタ対VW」など。
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