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カルロス・ゴーン日産自動車社長(左)からの慰留を受け入れた益子修・三菱自動車「社長」。外部の血で、地に落ちたブランドは再生できるか Photo by Akira Yamamoto
ゴーン会長就任で始まる三菱自動車「植民地化」
http://diamond.jp/articles/-/105521
2016年10月24日 週刊ダイヤモンド編集部
燃費不正問題で経営不振に陥っている三菱自動車の新体制が固まった。1999年に倒産寸前だった日産自動車に派遣されたルノー出身のカルロス・ゴーン日産会長兼社長が、自ら三菱自の陣頭指揮を執り再建に挑む。ゴーン氏は三菱自を「リバイバル」させることはできるのか。すでに、ゴーン流の改革は始まっている。(「週刊ダイヤモンド」編集部 浅島亮子)
日産自動車は、傘下に収める三菱自動車の新経営体制の布陣を決めた。カルロス・ゴーン日産会長兼社長(62歳)が会長に就任し、益子修・三菱自会長兼社長(67歳。三菱商事出身)は引き続き社長として留任する。
うその上塗り──。8月末、三菱自が燃費不正の発覚後にも、都合の良いデータだけを選んだ不正な測定方法を取っていたことが明らかになった。もとよりゴーン氏からの信任が厚い益子氏だが、さすがに日産・三菱自社内で経営責任を問う声が高まった。極め付きは、所管する石井啓一・国土交通相が怒り心頭に発していたこと。この時点で、「益子続投」は消えたかのように見えた。
だが、端的に言えば他に“役者”がいなかった。別の思惑から、日産と三菱自の経営陣は共に益子氏留任を望むようになっていた。
日産側は、「益子さんが辞めると、残された社長候補は白地さん(浩三副社長。三菱商事出身)しかいない。交渉事を進めるには線が細い印象だ」(日産幹部)。
三菱自側は、「最初は益子さん辞任もやむなしとも思ったが、どうせ日産から乗り込んでくるのならば、ナンバー2の西川廣人・日産副会長ではなく、格上のゴーン氏に来てほしい。ゴーン氏と渡り合えるのは益子さんだけだ」(三菱自幹部)。
当の益子氏本人の心中はどうだったのか。
「自身は中興の祖と呼ばれてもおかしくない働きをしたのに、最後に裏切られたというじくじたる思いがあったはず。でも、8月の一件から後は、自分を完全に押し殺して淡々と仕事をこなしていた。三菱グループ主導の再建で(三菱自の)自浄作用が働かなかったのならば、この際、日産を利用してやろうと割り切っているようにも見えた」(別の三菱自幹部)
実際に、最近の三菱自の取締役会でも、活発に発言することが多い山下光彦副社長(日産出身)の意見にじっと耳を傾けていることが多かったという。
10月20日、日産は三菱自株式の34%の取得を正式に決めた。同時に、ゴーン氏による慰留のラブコールを受け入れるかたちで、益子社長続投が決まった。
今回の日産傘下入りで三菱自への影響力が弱まる三菱グループ3社(三菱商事、三菱東京UFJ銀行、三菱重工業)は、“餞別”として日産側に最大限の配慮を忘れなかった。
まずは、燃費不正に伴う将来的な損失をさらに積み増して、きっちりと損切りをしたこと。この下方修正により、2017年3月期通期決算では営業損失280億円と、12年ぶりの営業赤字へ転落するのだが、「この下半期以降は営業黒字。日産による再建下ではV字回復するシナリオになっている」(三菱グループ関係者)。
次に、主力の三菱銀ら銀行団で新たに800億円程度に上る融資枠を設定する方針であること。三菱自の手元資金は潤沢で当座のところ資金難に陥ることはないが、今後の開発投資などの資金需要に備える。
このように、三菱グループ3社は、財務的に“身奇麗な体”にして三菱自を送り出すことにした。度重なる不祥事で三菱自のブランド失墜が止まらないにもかかわらず、日産が当初の予定通りの金額でデューディリジェンス(資産評価)を終えられたのも、こうした親心の配慮が効いているようだ。
■日産再建から17年
ゴーン流改革の始まりは幹部人事
ゴーン氏が再建請負人として仏ルノーから日産へ送り込まれてから17年。強力なリーダーシップで徹底的なコストカットと組織改革に挑み、いまや日産は親会社のルノーをはるかに凌ぐ存在になった。これから、ゴーン氏は地に落ちた三菱自の再生という難題に挑むことになる。
ゴーン流改革はすでに始まっている。日産社内では三菱自専用のプロジェクトチーム──共同購買、開発、生産、タイをはじめアセアン地域など──が並行して立ち上がっているのだ。
そして、これらのプロジェクトを円滑に進めるために要となるのが、幹部人事である。人で組織を動かすのは“ゴーン流経営”の特徴でもある。
ゴーン氏は、山下副社長(開発担当)に加えて、新たに渉外担当の川口均専務執行役員と経理担当の軽部博常務執行役員を取締役として三菱自へ送り込む。さらに、日産CPO(世界6地域のマネジメント等を担当)のトレバー・マン氏を三菱自のCOO(最高執行責任者)として派遣することも決めた。特に、マン氏はゴーン氏の参謀であるだけに、三菱自改革でも大ナタを振るうことは必至。日産による三菱自の「植民地化」は着実に進行している。
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