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電通(ロイター/アフロ)
電通社員の過労死、助長する法案が国会提出…残業上限撤廃、超過分残業代不払い合法化
http://biz-journal.jp/2016/10/post_16968.html
2016.10.22 文=溝上憲文/労働ジャーナリスト Business Journal
電通の女性新入社員の過労自殺が世間の反響を呼んでいる。昨年12月25日に同社女子寮で投身自殺した高橋まつりさん(当時24歳)の1カ月間(同年10月9日〜11月7日)の時間外労働は、過労死ラインの月間80時間を超える約105時間。三田労働基準監督署は今年9月30日、長時間の過重労働が自殺の原因だったとして労災認定した。
10月7日、高橋さんの母親の記者会見で経緯が明らかにされたが、自殺に至るまでの仕事の状況を高橋さん自身がSNSで発信していたメッセージも含めて、メディアで大きく報じられた。さらに10月14日以降、東京労働局や各府県の労働局が電通本社と支社3カ所、主要子会社5社に立ち入り調査(臨検)を実施。そのなかには、過去に大手企業4社を労働基準法違反で東京地検に書類送検した「過重労働撲滅特別対策班」(通称:かとく)も含まれている。
過労自殺の労災認定をきっかけに刑事事件を視野に入れた大がかりな臨検が行われるのは、極めて異例の事態といえる。厚生労働省が10月7日に発表した「過労死等防止対策白書」によれば、「勤務問題」を原因・動機のひとつとする自殺者は、年間で2159人(2015年)に上る。
今回臨検が行われた背景には、1991年に入社2年目の男性が過労自殺し、最高裁判決で初めて会社の安全配慮義務違反を認め、多額の損害賠償を支払った電通が再び自殺者を出したこと。もうひとつには、安倍晋三首相自ら議長を務める「働き方改革実現会議」の改革の目玉に、「長時間労働の是正」を掲げていることもある。菅義偉官房長官も記者会見で電通への臨検について、「結果を踏まえ、過重労働防止に厳しく対応する必要がある」と述べるなど、官邸や塩崎恭久厚生労働大臣の強い意向が働いたことは確かだ。
安倍政権が検討している長時間労働是正策の具体的な中身は時間外労働規制、つまり残業時間に上限を設けることだ。日本の労働基準法では、使用者は1日8時間、週40時間を超えて労働させてはならないと定めている。これを法定労働時間という。これ以上働かせると「使用者は懲役6カ月以下又は30万円以下の罰金」が科される規定がある。
しかし実態は労基法36条に基づく労使協定、いわゆる「36(サブロク)協定」を結べば、法定労働時間以上に働かせることができ、事実上無制限になっている。これに上限を設けることについては、長時間労働を強いられている人たちにとってはありがたいことだ。
一見、政府はブラック企業を退治する正義の味方のようにみえるが、実はこの上限規制の抜け道となるような労働時間の改革案を、すでに国会に提出している。それが第2、第3の電通事件を引き起こしかねない可能性もあるのだ。
■労働基準法改正法案
それは労働基準法改正法案の「高度プロフェッショナル制度の創設」と「企画業務型裁量労働制の対象者の拡大」だ。
高度プロフェッショナル制度とは、管理職を除く労働者の時間外・深夜・休日労働に関する労働時間規制の適用を外そうというものだ。実施されれば、「時間外労働」という概念がなくなり、使用者は社員へ残業代を支払う義務もなくなることになる。
対象者は高度の専門的知識、技術または経験を要するとともに業務に従事した時間と成果との関連性が強くない業務とされている。対象業務の例としては金融商品の開発、ディーリング、アナリスト、コンサルタント、研究開発業務など。年収要件は1075万円以上とされている。対象業務は曖昧であるが、管理職ではないのに年収1000万円以上を稼ぐ人はそんなに多くはない。だが、高年収で有名な電通のような大企業には存在する。
政府は電通などの大手企業の社員が対象になることを想定し、時機をみて年収要件を下げていくシナリオを描いているとみられる。なぜなら当初から経済界がこの制度の導入を政府に提言し、年収要件も引き下げるように要望しているという経緯があるからだ。
■企画業務型裁量労働制
もうひとつの企画業務型裁量労働制とは、労使で話し合って1日の労働時間を9時間に設定すれば、法定労働時間の8時間を超える1時間分の手当は出るが、9時間を超えて働いても残業代が出ない仕組みだ。簡単にいえば、ブラック企業で問題になっている「固定(定額)残業代」を合法化するものだ。
しかし、現行の企画業務型裁量労働制の業務は、「企画・立案・調査・分析」業務を行う人に限定される。しかも労働基準監督署への報告など手続きが煩雑であるため、導入企業は0.8%と少ない。
そのため経済界は対象業務の拡大と手続きの緩和を求めてきた。その結果、追加された業務が(1)提案型営業と(2)プロジェクト業務の2つである。もちろん年収要件はなく、法案が成立すれば20〜30代も対象になるだろう。
電通をはじめとする広告代理店の多くは、広告営業が主要な業務であるが、その内容はまさに提案型営業といってもよい。従来の企画業務型裁量労働制の対象からは外れるが、新たにこの2つが対象業務になれば、一定の制限があるとはいえ、社員の多くを現行の労働時間規制の枠外に入れることが可能になる。
現時点では、高度プロフェッショナル制度と企画業務型裁量労働制の対象者の拡大を含む労基法改正案は、国会に提出されたまま審議されてはいない。政府・与党も国民の受けがよくないことを知ってか、様子見の姿勢であるが、虎視眈々と狙っている可能性は高い。
■過労死増加の要因に
この法案は長時間労働の抑制どころか、経営者が労働時間の上限を気にすることなく労働者を働かせることができる。労働時間規制を守らない企業を野放しにすれば、どんな結果になるのか目に見えている。その結果、心身の不調による過労死が増えることになる。そのことを象徴しているのが、今回の電通過労死事件だろう。
電通に対する大規模な臨検について、塩崎恭久厚生労働大臣は「全国で(長時間労働の)実態は一体どうなっているのか徹底的に究明したい」と発言している。今回の臨検によって送検し、まさか「電通は例外的な特殊な企業ですよ」と言い張るつもりはないだろうが、予断を許さない。単に一企業の電通を批判するだけではなく、その背後で意図する政府の狙いも注視していく必要があるだろう。
(文=溝上憲文/労働ジャーナリスト)
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