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コラム:
「トランプリスク」は幻影、円安再開へ
村上尚己アライアンス・バーンスタイン(AB) マーケット・ストラテジスト
[東京 18日] - 9月掲載のコラムでは、円高局面が終わりつつあると述べた。当時そして現在も指摘される円高要因は、米大統領選挙、米利上げが困難になるショックの発生などだろう。そして、日銀の金融政策決定会合が期待外れとなり、今年に入って何度か見られたパターンが続くとの疑念もあるだろう。
筆者は、英国の欧州連合(EU)離脱選択(以下、ブレグジット)でドル円が一時100円を割れた夏場以降、上記の材料は円高要因にならないと一貫して主張してきた。実際、10月になってからドル円は一時104円台半ばまで戻り、100円割れのリスクは遠のいたように見える。
むろん、米大統領選で9月末から劣勢が伝えられるドナルド・トランプ共和党候補がここから逆転勝利すればサプライズになろうが、そもそも米大統領選が円高要因となるのかは不明だ。
米国の政治都合に日本の当局が振り回され、円高が起きてきた歴史のトラウマがあるのは理解できるが、トランプ氏の言動を過大評価し、例えば日本の自動車メーカーが米国で大きな雇用を生み出している状況を、市場関係者は十分理解していないのではないか。とどのつまり、米大統領選が円高要因になるとの見方は根拠が薄いポジショントークにすぎず、ドル円の方向性にほとんど影響しないと筆者は見ている。
<米大統領選が話題になるうちは投資機会>
為替市場で「トランプリスク」が最も色濃く表れたメキシコペソ(5月に下落し始め、9月初旬には急落)にせよ、第1回の大統領候補テレビ討論会直前の9月末には大底をつけ、その後は民主党のヒラリー・クリントン候補が優勢との見方とともに反転している。
また、そもそもメキシコペソとドル円の相関は低く、為替市場で「トランプリスク」が円高要因として市場で意識されているようには見えない。
恐らく、日本の市場関係者の多くが「トランプリスク」を強く意識した背景には、予想外と言える6月のブレグジットの影響があるのだろう。グローバルな政治の潮流について、筆者は深い見識を持っているわけではないが、ブレグジットを受けて、ポピュリズム(大衆迎合主義)的な動きが各国に広がりつつあるとの論説が投資家心理を過度に悪化させた可能性もありそうだ。
確かに、日本を除く、欧米、中国、中東、中南米など多くの地域で政治は不安定化しており、リスク資産の下げ材料となってきた。昨年夏場の人民元切り下げ以降高まった中国当局への不信が投資家の心理を抑制した面もあろう。
ただ、不安定な政治情勢は今に始まったことではなく、2010年の欧州債務危機やアラブの春(中東・北アフリカ諸国での政変)以降続いていることである。これらは当初こそ悪材料となったが、今となって考えれば、いずれも底値でリスク資産に投資する機会をもたらした。中国懸念や原油急落局面など2015年以降の政治経済イベントも同様に位置付けることが可能だろう。
こうした筆者の見方が妥当なら、為替アナリストらが米大統領選を円高要因と言及しているうちは、まだ投資機会が残っていることを示唆しているのではないか。
<リフレ政策「失敗」論の根拠薄弱>
実際にドル円の方向性に影響するのは、世界経済と米国金利、そして脱デフレを後押しする日本の財政金融政策である。世界経済については、5月にコラムを書いた時から状況は同じで、最悪期を抜け出し、緩やかながらも回復が続いている。
それでも、米国の長期金利が歴史的な低水準にとどまっていたのは、米連邦準備理事会(FRB)が利上げ再開に慎重姿勢を保っていたこと以上に、日欧で長期金利がマイナス圏に低下したことが大きかった。実際にはFRBの12月利上げを阻む要因はなくなりつつあり、また日欧の行き過ぎた金利低下が是正され、今なお低い米長期金利はファンダメンタルズで説明可能な水準まで上昇すると予想する。
加えて、2016年の円高局面の主たる要因は、日銀や政府の経済押し上げ政策に対する失望である。これが今後変わるかという点で、政府の財政政策と日銀の政策転換をどう考えるかが重要になる。
財政政策については、10月に成立した第2次補正予算のみであれば限られた財政拡大にとどまる。いわゆる「ヘリコプターマネー」には程遠い小粒な財政政策だが、2014年の消費増税以来の緊縮財政政策を転換したことは意味がある。今後、安倍政権の政権基盤が強まり、この路線転換をより鮮明に打ち出すことができるようになれば、財政政策は円安要因になるだろう。
金融政策については、依然大きく見方が分かれている。9月21日に日銀が導入した「イールドカーブ・コントロール」と「オーバーシュート型コミットメント」は金融緩和強化と位置付けられると筆者は見ている(前回コラム参照)。
こうした見方に対して、主に2つの異なる見解がメディアで聞かれる。1つは、ベースマネーターゲットを曖昧にしたことは、「リフレ政策の失敗」であり、テーパリング(量的緩和縮小)の始まりを意味するとの見解だ。実際には、日本国債市場に対する日銀の関与という点で考えると、10年国債をゼロに誘導する政策はより強力である。
また、日銀のバランスシートを増やすことだけがリフレ政策であるとの認識は、的外れな議論だと考える。リフレ政策とは、緩和的な財政金融政策を徹底し、インフレ期待を引き上げてデフレからの完全脱却を果たし、完全雇用・経済正常化を実現することと筆者は認識している。
メディアで聞かれるもう1つの見解は対照的だが、今回は政策枠組みを変えただけで、金融緩和としては不十分との批判である。この見解については、これまでの円高やインフレ期待の低下を踏まえれば、筆者も理解できる。ただ、現在の政策枠組みは、インフレ期待により強く働きかけることが可能であるという点において、高く評価できると考える。
2016年初頭からのインフレ期待低下による円高トレンドは、6月のブレグジット後の市場変動が大底となり、日銀の政策レジーム転換によって反転すると筆者は引き続き予想している。
*村上尚己氏は、米大手運用会社アライアンス・バーンスタイン(AB)のマーケット・ストラテジスト。1994年第一生命保険入社、BNPパリバ、ゴールドマン・サックス、マネックス証券などを経て、2014年5月より現職。
*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。
(編集:麻生祐司)
http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-naoki-murakami-idJPKBN12H0OP
ファンドマネジャーの米株見通し、強気派が支配
By JACK WILLOUGHBY
2016 年 10 月 18 日 09:14 JST
? バロンズ・ビッグ・マネー調査
本誌は春と秋の2回、ベータ・リサーチの協力を得てビッグ・マネー調査を実施している。今回は118人のポートフォリオマネジャーから回答を得られた。調査回答者は、小規模な会社から米国最大級の運用会社のファンドマネジャーに及ぶ。
?強気が復活
2008年から2009年の金融危機以降に、立ち直りの早い投資家が米国株式市場を押し上げてきた。理由が企業の利益成長再開期待であれ、代わりの投資対象の欠如であれ、株式市場に資金を大量に投資してきている。本誌最新のビッグ・マネー調査によると、株式市場は現状からさらに上昇する可能性があり、経済成長率上昇と、高配当利回り銘柄からグロース銘柄への乗り換えがけん引役になる。マネー・マネジャーたちはダウ工業株30種平均(NYダウ)が2017年末までに約9%上昇すると予想している。
マネジャーの45%が、2017年半ばまでの株式市場の見通しに強気または非常に強気と回答しており、その割合は春の調査時点で過去最低だった38%から上昇している。強気の割合が上昇した背景は様子見派の転身で、中立との回答は春の46%から39%へ低下している。世界の経済成長率の小幅上昇やコモディティー価格の上昇がマネジャーの疑いを晴らしたとみられる。
ただ、強気派でも目標は幾分低下しており、NYダウ予想の平均は2017年6月が1万9184ドル、2017年末が1万9687ドルとなっている(先週末は1万8138ドル)。S&P500指数の予想は、2017年6月が2281、2017年末が2344である(先週末は2133)。ナスダック総合指数の2017年末の予想は5657となっている。
弱気派は15%で、春とほぼ変わらなかった。弱気または非常に弱気と答えたマネジャーの2017年6月のNYダウの予想は1万7114ドル(現状から5.5%低下)、S&P500指数の2017年末の予想は1990(同約7%低下)、ナスダック総合指数は4764(8%超の低下)となっている。
強気センチメントの高まりにもかかわらず、バリュエーション面ではマネジャーの3分の1は株式市場が割高だと考えており、57%が妥当な水準だとみなしている。90%が、今後12カ月以内に10%超の調整があり得るまたはその公算が非常に大きいと考えており、そのきっかけとして景気減速または景気後退(35%)、金利上昇(22%)、期待外れの企業利益(10%)、地政学的危機(8%)、ドナルド・トランプ氏の大統領就任(8%)が挙げられている。
マネジャーは、今後の株価上昇率が過去平均を下回ると予想しており、今後5年間の米国株式市場の年間上昇率が過去の長期平均(9%)と等しいまたはそれを上回ると考えているのは20%にすぎない。ただ、今後10年間では、60%のマネジャーが過去の長期平均と等しいまたはそれを上回るとみている。今後20年間では、70%が長期平均並みとしている。
?株式が最も選好される
資産クラスの中では株式が依然として選好されており、62%のマネジャーは株式が最も魅力的で、今後12カ月で他の資産クラスをアウトパフォームすると考えている。他の資産を最も魅力的と答えた割合は、現金と不動産がそれぞれ10%、コモディティーが8%となっている。金に対する関心も高まっており、8%のマネジャーが最高の資産クラスになると予想している。
世界的にみると、米国が今後1年間で最高のパフォーマンスを上げると考えるマネジャーは43%で最も多いが、春の53%からは低下している。34%(春は23%)が新興国市場と考えている。日本(36%)と欧州(23%)のパフォーマンスが、日銀と欧州中央銀行(ECB)の低金利政策および金融刺激策にもかかわらず最低になると予想されている。
米国企業の利益見通しについては慎重ながらも楽観的で、80%超のマネジャーが今後12カ月での増益を予想している。ただし60%が、過去平均以下の1〜5%の増益を予想している。S&P500指数構成企業の1年前の利益は117.97ドルで、市場のアナリスト予想は今年が117.84ドル、2017年が133.45ドルとなっている。市場予想に基づくと、S&P500指数の予想株価収益率(PER)は2016年が18倍、2017年が16倍となる。
向こう12カ月でPERが上昇すると予想しているマネジャーはわずか4分の1で、42%が横ばい、31%が低下と予想している。
?金利見通し
連邦準備制度理事会(FRB)が早ければ12月にもフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を引き上げる見込みで、債券の見通しはマネジャーを引き続き恐怖に陥れている。FF金利誘導目標は、現在は0.25〜0.50%で、約75%のマネジャーが2017年半ばまでに1回ないしは2回の利上げを予想している。
市場金利は既に利上げを織り込み済みで、10年債利回りは7月8日に過去最低の1.366%を付けて以来上昇傾向にあり、先週は1.798%となっている。半分以上のマネジャーが、10年債利回りが2017年6月までに2%に上昇すると予想する一方、30%は2.5%まで上昇すると予想している。
65%のマネジャーが、債券を最も魅力に欠ける資産クラスとみなしており、同じ割合のマネジャーが債券のパフォーマンスが最低になると予想している。債券の中では、85%のマネジャーが米国債に弱気で、80%は米国外の債券を好んでおらず、73%が米国の社債に弱気となっている。税制上優位にある地方債でさえファンは少なく、64%が弱気と答えている。
?選好セクター・銘柄
セクターの乗り換えが、市場全体の上昇以上に重要な役割を果たす可能性がある。高配当銘柄の魅力が薄れ始めており、約4分の1のマネジャーが、金融セクターが市場を主導すると予想している。金利が上昇すれば、特に銀行が大きな恩恵を受ける可能性がある。今後12カ月で最もアウトパフォームするセクターとして、22%のマネジャーがハイテクを挙げ、16%はヘルスケア、14%はエネルギーと答えている。一方で、最悪のパフォーマンスとなるセクターとしては、約3分の1が公益と予想している。
個別銘柄では、アップル(AAPL)、バイオ医薬品会社のギリアド・サイエンシズ(GILD)、アマゾン・ドット・コム(AMZN)、バンク・オブ・アメリカ(BAC)、製薬大手のブリストル・マイヤーズ・スクイブ(BMY)が挙げられている。
一部のマネジャーは、アマゾン・ドット・コムを最も割高とみなしているが、より多くのマネジャーが、電気自動車メーカーのテスラ・モーターズ(TSLA)や動画配信大手ネットフリックス(NFLX)の方が割高と考えている。両銘柄共に株価は直近のピークから大幅に下落しているものの、予想PERはテスラ・モーターズが122倍、ネットフリックスが117倍となっている。また、食品大手のキャンベル・スープ(CPB)が割高株のリストに挙げられたのは今年2度目だ。予想PERは18倍だが、過去の水準と比較すると割高となっている。
?政治・経済見通し
景気に関して、大半のマネジャーは比較的楽観的だ。世界経済が2017年に減速すると予想するのはわずか20%、米国が景気後退入りするとみるのは20%以下にすぎない。米国の国内総生産(GDP)成長率に関しては、4分の1のマネジャーが今後12カ月は2%を下回り続けると予想する一方、60%以上のマネジャーが2〜2.5%の範囲になると予想している。一方で、2020年のGDP成長率が4%を超えると予想するマネジャーはわずか4%だ。
ドルについては、52%のマネジャーが今後12カ月間に対ユーロで上昇すると予想し、対円では63%が上昇すると考えている。インフレ率は、大半のマネジャーが今後12カ月は1.5〜2%、その後5年間では2〜3%とみている。
FRBの利上げに関しては、半分以上のマネジャーが年内に行われるとし、41%が0.50〜0.75%への引き上げを予想している。その後については、積極的な利上げは想定されておらず、2017年半ばの水準は1〜1.25%との見方だ。約80%のマネジャーが、5年先のFF金利誘導目標を2〜3%と予想している。
FRBと米国人にとっての不確定要因は11月の大統領選挙で、60%のマネジャーがヒラリー・クリントン氏の勝利を予想し、40%はトランプ氏の勝利を予想している。共和党寄りの傾向のあるマネジャーの好みは分かれており、クリントン氏とトランプ氏をそれぞれ31%が好んでいる。
大統領選挙の結果にかかわらず、56%のマネジャーは共和党が上院を支配すると予想し、90%は共和党が下院を支配すると予想している。大半のマネジャーは、クリントン氏にせよトランプ氏にせよ、次期大統領が世界的な貿易協定に背を向けるとは予想していない。33%のマネジャーが、次期大統領の最優先課題が税制改革になるべきだと考えている。
https://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0ahUKEwjJo83cvOPPAhXohlQKHdapAz0QFggeMAA&url=http%3A%2F%2Fjp.wsj.com%2Farticles%2FSB11722542889903014546304582379140028682190&usg=AFQjCNFGF5BRgEjUtDjd0OZVuJ7mJE8l2w
ケインズ博士:勇気こそ投資のカギ
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偉大な経済学者であると同時に偉大な投資家でもあったジョン・メイナード・ケインズ博士PHOTO: TIM GIDAL/PICTURE POST VIA
By
JASON ZWEIG
2016 年 10 月 18 日 06:59 JST
次回株式市場が大暴落すれば、われわれの誰もが一歩踏み出して大胆にも株式を買うことだろう――少なくとも想像の世界では。
ところが、市場が大暴落しているときに株式を買うことの難しさは想像をはるかに超えている。偉大な経済学者であると同時に偉大な投資家でもあったジョン・メイナード・ケインズ博士が、米株式市場が最高値から最安値まで80%以上も下落した1929年のウォール街大暴落の直後にどのように投資したのかを調べた新たな研究が発表された。ケインズ博士の経験は、すべての投資家に準備、勇気、忍耐の大切さを教えてくれるはずだ。
ケインズ博士は1920年代初めから死去した1946年までに数冊の本を著し、経済政策に大改革をもたらし、現在の世界金融制度の構築にも寄与した。ケインズ博士は本業とは別に、ケンブリッジ大学のキングス・カレッジの大学基金の運用も行っていた。最悪の株価大暴落、最悪の恐慌、近代史における最悪の戦争などがあった1922年から1946年までの期間、ケインズ博士の株式ポートフォリオは平均すると、英株式市場を年率6%ポイント近くもアウトパフォームした。
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それでも、ケインズ博士は史上最高の投資家とは見なされてこなかった。割安の株式を買うことを重視する今日で言うところのバリュー投資家だったケインズ博士は、1920年代の超強気相場で置いてきぼりを食ってしまった。ケインズ博士は世界大恐慌の到来を予期しておらず、1929年当時には他の大学基金のほとんどが圧倒的に国債を選好していたにもかかわらず、大学基金の約90%を株式に投資したまま米株の大暴落を迎えていた。
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1929年の株価暴落後にニューヨーク証券取引所の外に集まった群集 PHOTO: LIBRARY OF CONGRESS
ケインズ博士のポートフォリオは、1929年の終わりまでの5年間の累積で、英株式市場を40%ポイントもアンダーパフォームしていた。
しかし、ケインズ博士はすでにそのパフォーマンスを好転させた。
ケンブリッジ大学ジャッジ・ビジネス・スクールで金融学を教えるデービッド・チェンバース教授とバッキンガム大学の経済学者アリ・カビリ氏は、学術誌ビジネス・ヒストリー・レビューに掲載された新しい研究論文で、ケインズ博士が大暴落とそれに続いた大恐慌で打ちのめされた米国株に多額の投資を行うための勇気をどのようにして奮い起こしたのかを分析している。
底値買いの好機
ケインズ博士は1930年9月まで、その大学基金の投資先として米国株をほぼ完全に無視していた。驚くべき時期に米国株に関心を持ったものである。米株式市場はそれまでの12カ月間で38.4%も下落していた。ところがケインズ博士は、米国で広がっていると見た底値買いの好機に余りにも興奮し、その株式市場と自分の投資アイデアをリサーチするためにニューヨークの小さな証券会社ケース・ポマロイと連携した。米国株が47.1%も下落した1931年とさらに5.9%下げた1934年には米国を訪問し、滞在期間の大半を自分の投資アイデアのリサーチの糧となりそうなウォール街、政府、企業などの関係者たちとの会合に費やした。
ケインズ博士は不景気のあいだずっと米国株を買っていた。米国株が38.6%も下落した1937年にも、それにひるむことなく買い増していた。1939年には、その大学基金の主要ポーフォリオの半分を米国株が占めるまでになっていた。ケインズ博士は高配当の優先株、投資信託(今日のミューチュアルファンドに似た分散型株式ポートフォリオ)、そしてのちには公益事業株を選好した。ケインズ博士は株価純資産倍率(PBR)が低い少数の株式に的を絞り、株価が上昇してようやく純資産額が反映されるようになるまでそうした株式を8年以上も保有し続けることが多かった。
勇気も必要
投資に影響を与えてきた人物はあまたいるが、ケインズ博士が80年前に著した「雇用、利子及び貨幣の一般論」の12章は、そのほとばしる才能が最も凝縮された章の1つであり続けている。その言葉からはウォール街が流血していたときに株式を買う上で必要だったはずの決意がうかがえる。
「現代の投資市場の惨状はときに私をある結論に向かわせてきた。その結論とは、投資資産の購入を結婚のように永続的で、死やその他の深刻な理由なしでは解消できないものにすれば、現在の諸悪の有効な治療法になるかもしれないというものである。そうすれば投資家は長期的な見通しだけを考えることになるだろう」
ケインズ博士は米国の伝説的なバリュー投資家、ベンジャミン・グレアム氏と同様、弱気相場は余りにも予測不可能なので、確実にそれを避けるのは不可能に近いということ、そして投資で資金を失うことの痛みにはほぼ耐えられないということを理解していた。
それでも、ケインズ博士は弱気相場を避けようとするのではなく、そこに踏み込んで買うのが勝利する方法だということを知っていた。長い目で見ると、株式には下落の幅以上に上昇するという傾向があるので、下落相場で積極的に株を買うための度胸は投資家が持つことができる最大の武器の1つと言える。
これには資金と勇気の両方が必要になる。
今日の米国株は過去最高値からまだそれほど下がっていないので、現金での保有がこれまで以上に得策に思える。
そして、勇気を強固にしておくことも大切だ――退職している、または退職が近い場合は話は別で、おそらく株式の保有割合を縮小させておくべきだろうが。25%、50%以上の株価暴落があったら、株式を買い増しすることを約束する自分との契約書を作成し、友人や家族に証人になってもらうといい。数年後にはそれをしておいて良かったと思うことだろう。
ヘッジファンド投資で年金に4000億円損害とNY州−会計検査官を批判
Simone Foxman、John Gittelsohn
2016年10月18日 11:23 JST
会計検査官は何年も行動を起こさなかったとDFSが報告で指摘
DFSには政治的動機があると会計検査官の広報担当者は反論
運用成績が芳しくないヘッジファンドから職員退職年金基金の資金を引き揚げる決定をニューヨーク州の会計検査官が行わなかった結果、標準を下回るパフォーマンスと手数料負担によって38億ドル(約3950億円)の損害が生じたと州金融サービス局(DFS)が報告で指摘した。
DFSの報告は、地方公務員と警察・消防職員を対象とする2つの年金基金のために1810億ドルの投資を統括するディナポリ会計検査官について、「外部のヘッジファンド運用会社のいわゆる『アクティブ運用』に過度に依存していた」とした上で、「会計検査官は何年も行動を起こさず、外部の運用会社がヘッジファンドのパフォーマンスにかかわらず数百万ドルの手数料収入を得るままにさせた」と主張した。
会計検査官の広報を担当するジェニファー・フリーマン氏は、DFSには政治的動機があると述べ、「残念ながらDFSは政治的ゲームを行うことにより関心があるようだ。国内で最もうまく運用されている公的年金基金の一つが取った行動を理解していない」とディナポリ氏を擁護した。
ウォール街
ウォール街 Photographer: Michael Nagle/Bloomberg
ヘッジファンドをめぐっては、金融危機以降の運用成績が株式市場の標準的なパフォーマンスに届いていないことが多いことや法外なコストに対して顧客からの批判が高まっている。米最大の年金基金であるカリフォルニア州職員退職年金基金(カルパース)もコストの高さや複雑な仕組みを理由に2014年にヘッジファンドからの資金引き揚げを決定。ケンタッキー州の退職年金基金の投資委員会も今後3年でヘッジファンドから15億ドルの資金を引き揚げることを14日に決めた。
原題:Hedge Funds Cost N.Y. Pension Plan $3.8 Billion, Report Says (2)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-10-18/OF7XP76TTDSL01
ヘッジファンドの手数料は「口に出せない重要な問題」−アルボーン
Bei Hu、Klaus Wille、Haslinda Amin
2016年10月18日 12:00 JST
アルボーンは顧客の手数料交渉支援で新たなイニシアチブを18日発表
手数料情報を収集し、投資家が最良条件を交渉できる仕組みを構築へ
ヘッジファンド投資の大手助言会社が不透明で度を超したヘッジファンド手数料の抜本改革を呼び掛ける。
英投資助言会社のアルボーン・パートナーズは18日、投資家が適切な手数料を見極める助けになるプランを発表する。アルボーンのサイモン・ルディック会長(ロンドン在勤)が明らかにしたもので、手数料情報を収集し投資家が最良の条件を交渉できる仕組みを構築するという。アルボーンが助言する投資家は、ヘッジファンドなどオルタナティブ投資で合計4000億ドル(約41兆円)強を運用している。
同会長はブルームバーグテレビジョンのインタビューで、「手数料は目下のところ、誰もが口に出せない重要な問題だ」と指摘。「ヘッジファンドの地味なリターンと運用の複雑さを考えれば、業界は手数料問題で透明性を高めるべく一歩前進どころか大きく飛躍する必要がある」と述べた。
預かり資産の2%の管理料と運用益の20%を報酬として徴収する手数料モデルは2兆9000億ドル規模の世界のヘッジファンド業界に定着してきた。しかし、投資家はさえないリターンでも高い手数料を支払うことに二の足を踏んでおり、年金基金や寄付基金、財団は高額手数料で運用成績が悪化するとしてヘッジファンドへの投資配分を削減。チューダー・インベストメントやオクジフ・キャピタル・マネジメント・グループ、サード・ポイントなどは手数料を引き下げている。
アルボーンのウェブサイトによれば、同社はヘッジファンドや寄付基金、財団、ファミリーオフィスなど253の顧客にヘッジファンド調査を提供している。ルディック会長は現在の手数料交渉が投資家とファンドの間で秘密裏に行われるケースが多く、不透明な体系になっていると指摘。投資家の利益と運用者の利益を調整しない手数料体系である点も投資家が不満を持っていると付け加えた。
原題:Albourne Takes Aim at Hedge Fund Fees as ‘Elephant in the Room’(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-10-18/OF80K56TTDTG01
ヘッジファンドのハッチン、香港オフィスを閉鎖へ−開設から約1年半
Bei Hu、Katia Porzecanski、Nishant Kumar
2016年10月18日 10:10 JST
汎アジア戦略はパフォーマンス基準を満たさず
ハッチンは代わりに米国での投資機会に集中へ−投資家向け書簡
ニール・クリス氏率いる米ヘッジファンド、ハッチン・ヒル・ キャピタル(運用額34億ドル=約3500億円)は、1年7カ月前に開設した香港オフィスを閉鎖する。
17日に投資家に宛てた書簡によると、同ファンドの汎(はん)アジア・イベント・ドリブン戦略は運用開始以来「多少の利益」を出しているものの、シンジケート・アクティビティに利益が大きく左右され、中核部分はパフォーマンス基準を満たしていないという。ハッチン・ヒルは代わりに米国での投資機会に集中する方針を示した。
ニール・クリス氏
ニール・クリス氏 Photographer: Patrick T. Fallon/Bloomberg
書簡によれば、ポートフォリオの大部分は既に現金化されており、残りは向こう数週間に売却される。同社はコメントを控えた。
同社は2015年3月に香港でアジア初のオフィスを開設し、10人を雇用していた。
原題:Hutchin Hill Plans to Close Hong Kong Office After 19 Months (1)(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-10-18/OF7W6S6TTDSV01
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