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「ゼンリン HP」より
前代未聞の地図作成計画始動…ゼンリン、自動車業界を左右する「最重要」企業に
http://biz-journal.jp/2016/10/post_16930.html
2016.10.18 文=編集部 Business Journal
地図情報で、日本国内断然トップのゼンリンは9月、車載ソフトウェア開発・販売の米アバルタ・テクノロジーズの発行済み株式の75%を10億円で取得し子会社にした。
アバルタは2003年設立で従業員は50人。スマートフォン(スマホ)のアプリ画面を車載機器に表示したり、車載機器からスマホアプリの操作を可能にしたりする「ウェブリンク」と呼ぶ技術に強みがある。買収により、ゼンリンはスマホと連携したさまざまなサービスを国内外のカーナビメーカーに提供する計画だ。
ゼンリンは「自動運転銘柄」として株式市場で注目を集めている。株価は11年11月25日の安値651円から16年5月11日の高値2816円まで4.3倍に上昇した。自動運転時代の有力のプレーヤーになると期待されている。
■住宅地図からカーナビ用地図、自動運転用地図へ
ゼンリンの創業は1948年で、大分県の別府温泉で観光客用の温泉マップを手掛けたのが始まり。温泉宿の名前まで細かく掲載した地図が大ヒットし、創業者の大迫正冨氏は「一軒一軒の情報を掲載した地図」の製作を思いついた。それが現在、ゼンリンが圧倒的なシェアを誇る住宅地図につながっていく。本社を小倉市(現北九州市小倉北区)に移転、61年に有限会社西日本写真業版(現ゼンリン)を設立した。現在の本社は北九州市戸畑区だ。
80年、正冨氏が急逝し、息子の大迫忍氏が社長を継いだ。82年、他社に先駆けてデジタル地図の作製に着手。90年に世界初のカーナビゲーション用地図を発売し、国内でトップシェアを勝ち取った。これが評価され、94年福岡証券取引所、96年東京証券取引所・大阪証券取引所の各2部に上場。06年東証1部に指定替えとなった。
NHKの人気番組『プロジェクトX 挑戦者たち』で、ゼンリンが「列島踏破30万人 執念の住宅地図」(04年10月12日放送)として取り上げられ、知名度は全国区になった。
忍氏は「年を取ると老害になる。55歳で引退する」と宣言、2001年社長を退任。59歳の若さで亡くなった。「同族経営は弊害を生む」として、遺言により息子たちには継がせず、社員の中から社長を選ぶようにした。01年、銀行出身の原田康氏、08年に生え抜きの高山善司氏が社長の椅子に座った。
ゼンリンは米グーグルや米マイクロソフトなどにもデジタル地図を提供。スマホやパソコンで見られる日本地図の多くがゼンリン製だ。
16年3月期の売上高は549億円で、営業利益は30億円。従来の地図帳の販売は17%で、残りはほぼデジタル地図が占める。住宅地図の出版やカーナビ事業は漸減傾向にあるが、地理情報システムの販売が好調で増収増益を達成した。中長期経営計画で20年3月期の連結売上高700億円を目標に掲げる。自動運転用の地図で計画の達成を目指す。
■オールジャパンで挑む自動運転地図
6月、三菱電機、ゼンリンなど6社は自動車メーカー9社とともに自動運転向けの高精度地図の事業化を目指す新会社、ダイナミックマップ基盤企画を設立した。
資本金は3億円で、出資比率は三菱電機18%、ゼンリン17%、パスコ17%、アイサンテクノロジー6%、インクリメント・ピー6%、トヨタマップマスター6%。自動車メーカーは、いすゞ自動車、スズキ、トヨタ自動車、日産自動車、日野自動車、富士重工業、本田技研工業、マツダ、三菱自動車工業がそれぞれ3.3%。社長は三菱電機が中島務氏を送り込んだ。
自動運転時代に欠かせない新種の地図をつくる。高精度なデジタル地図を目指しており、そうなれば高速道路と真下にある一般道の違いを認識できる。正確な運転には坂道の勾配やカーブの状況などの情報が欠かせない。これに信号情報を加味すれば交通状況を先読みすることが可能となり、急停車や急発進のリスクを防げる。
ゼンリンは15年9月、三菱電機など6社と共同で内閣府が進める「SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)・自動走行システム」の高精度地図の調査・検討業務を受託し、検証を進めてきた。6社に自動車メーカー9社が加わり、「オールジャパン」体制で3D地図の事業化を目指す新会社を設立。17年度をめどに自動車メーカーと共同で、データの仕様をどうするかなどの標準化を進める。
ゼンリンがメンバーに加わったのは、カーナビ用地図の作製で培ったノウハウを持っているからだ。得意の人海戦術で玄関までの情報を集め、ドアtoドアのサービスを可能にする地図のデータベースを構築した。17年の秋には、人口20万以上の都市で玄関まで案内できるナビが登場する。
この機能は、自動運転が実用化された時に威力を発揮する。カーナビで蓄積したルート案内のノウハウも生きてくる。
ゼンリンは高精度の3D地図を自動車メーカーに提供して収益の柱に据えるビジネスモデルを描く。株式市場がゼンリンを「自動運転銘柄」と見なしている理由がここにある。
■先行する欧米勢を追う日本
自動運転技術に対応する高精度なデジタル地図や位置情報サービスの開発競争は熾烈だ。自動運転の安全性を担保するには、車と道路の位置関係を正確に把握する必要がある。カギを握るのが次世代の高精度の3次元地図だが、この分野では欧米企業が先行している。
米グーグルはグーグルマップなどの地図情報とリンクさせ、ハンドルやアクセル、ブレーキペダルがない自動運転車の公道実験を始めた。独アウディとBMW、ダイムラーは共同で、フィンランド・ノキアのデジタル地図サービス子会社、ヒアを3400億円で買収した。独ボッシュもオランダのカーナビ大手、トムトムと自動運転用のデジタル地図を共同開発する。
日本勢はオールジャパンで自動運転の3D地図を構築、国際標準づくりを目指す。その一翼を担うゼンリンは、地図出版会社から地図情報会社へと大変身を遂げることになる。
(文=編集部)
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