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写真は豪海軍に売り込まれていたそうりゅう型潜水艦「はくりゅう」 photo from US NAVY(PublicDomain)
日本が敗北したオーストラリア潜水艦商戦。いまだ余波やまず
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20161017-00113278-hbolz-int
HARBOR BUSINESS Online 10月17日(月)16時20分配信
――「使用を許可することはできません」
その返事に驚いた。
筆者は、豪海軍に書籍に使うための写真3点の許可を申請していた。無論、私が書いた本の中身は、国防省批判でもなく、反軍事的でもない。豪潜水艦契約をめぐる交渉プロセスを、オーストラリア現地からの視点で記録しただけだ。
2016年4月、豪政府は次期潜水艦12隻建造のための「競争評価プロセス」の結果を公表。ターンブル豪首相は共同開発先としてフランスのDCNS社を挙げた。豪史上最大の巨額契約、約500億豪ドル(約4兆4000億円)のブロジェクトだった。
三菱重工業と川崎重工業と日本政府が一体となり、「官民連合」として契約取得をめざした日本チームの名前はそこになかった。
◆豪海軍の「気遣い」
「(契約話と)日豪トライデントに直接のつながりはなくとも、読者がまるでオーストラリアが日本を打ち負かしているかのような、あるいは追い求めているかのような、そんな印象を持ってしまうことを、我々は望んでいないからです」
豪海軍からの返答は、日本に対する気遣いがにじみ出ていた。
申請した写真3点のうち2点は、日豪トライデント(日豪共同軍事演習)のもの。日本のそうりゅう型潜水艦「はくりゅう」が日豪海軍の艦船と隊列を組み、大海原を躍進しているものだ。
「本の内容はビジネスの交渉プロセスについてです」
「軍事的な議論をすることはありません」
「豪政府の潜水艦選定について、なにか意見をしたり、日本を選ぶように呼び起こすものでもありません」
「日本チームが将来、外国におけるビジネス交渉を成功させていくためにも検証はきっと役立つだろうと、すでに公表されている経過をまとめたに過ぎません」
筆者はそう詳しく説明して、再度申請を行った。
すると、豪海軍はようやく1点の写真を許可してくれた。
「この写真のほうが我々にとっても居心地が良いのです」
申請した3点とは別の写真で、日本の潜水艦「はくりゅう」がシドニー湾に浮かんでいる1枚だった。豪海軍の艦隊や潜水艦は写っていない。
豪海軍の対応に決して強硬な意味合いはなく、どちらかといえば親切なくらいに感じられた。こちらの意図を組んで、出来る限り対応してくれている。
ただ、微妙な問題だけに、神経をとがらせ、ひどく慎重になっている気がする。ふだんの豪政府関連の写真許可ではあまり聞かないくらいの細かさだった。
ここまで慎重なのには理由があった。オーストラリア現地では、潜水艦開発問題の「余波」が続いていたからだ。
◆豪潜水艦開発問題の「余波」
オーストラリア現地では、潜水艦開発問題の「余波」が続いている。
フランスDCNSがインドで行っている潜水艦開発に関連して8月、情報漏洩が発覚した一件だ。
DCNSはブラジル、マレーシア、チリなどにもスコルペヌ級の技術提供をしており、各国で警戒感が強まった。豪潜水艦建造の本拠地である南オーストラリア州選出の無所属ゼノフォン上院議員は、「すべての真相が明らかになるまで、(フランスとの)交渉中断を考慮するべき深刻な漏洩」と声明を出している。
NSW州最高裁判所は、2万2400ページの機密文書を入手した豪新聞社に対し、機密事項の報道の禁止と入手情報の返還を命じた。
DCNSが過去に契約したマレーシアでは、殺人事件も起きている。
2002年にDCNSはマレーシア政府にスコルペヌ型潜水艦2隻、総額12億米ドルの売り込み交渉を行った。その際、政府幹部に対して贈収賄を行った疑いがメディアに報じられた。現地紙シドニー・モーニング・ヘラルド(SMH)などによれば、DCNS関連会社は、当時防衛大臣を務めていたナジブ・ラザク氏(現マレーシア首相)に対し、技術顧問料を支払ったという。その額にして3000万ユーロ(約34億円)だ。このとき通訳をした女性(28歳)は、クアラルンプールの郊外で2006年、他殺体で発見されたのだ。(2015年5月9日、SMH)
女性が交渉内容をもとに金銭を要求していたとの報道もある一方で、殺害した元警察官のふたりのうち1人はすでに死刑判決で収監。もう1人はオーストラリアに逃亡後、身柄を拘束され、いまはシドニー郊外の難民収容所にいる。本人は殺害を「命令された」と述べており、いまだ捜査継続中だ。
すでにフランス検察当局は「外国人公務員に対する贈賄容疑」でDCNS関連の捜査を開始したという(2016年2月5日、Financial Times)。
今後の展開によってはDCNSのセールス手法が明らかになる可能性もある。
◆豪国防省幹部だったDCNS現地法人トップ
オーストラリア国内では、「潜水艦契約の金額は高すぎたのではないか」という声も止まない。
2016年9月に入っては、コスト高と改造設計への懸念を示す経済人有志らの全面広告が新聞に掲載されている。
その広告には、「ドイツでも日本でも、少なくとも3割は割安な価格で、最先端技術の既存ディーゼル稼働潜水艦を選択することもできたのに、非常に複雑な選択肢を選んでしまった」と書かれている。
また、広告を出した経済人有志はラジオインタビューで「原子力潜水艦を設計し直し、わざわざディーゼル推進に載せ替えて使うなんて馬鹿みたいだ。世界の笑いものになる」とも語っている。
豪海軍から不許可になったうちの1枚は、DCNSオーストラリアのCEOショーン・コステロが、以前に豪国防省で働いていたときのものだ。白いワイシャツ姿のショーンが、当時のジョンストン国防相と共に、豪空軍基地でFA-18Fスーパーホーネットのコックピットを覗き込んでいるとい写真だ。
この写真が撮影されたのちに、ショーン首席補佐官は国防省を去り、退職から4か月後、DCNSオーストラリアのCEOに就任。潜水艦大逆転の立役者となったのだ。
豪州の公務員に課せられた民間就職への規定では、「疑わしいまたは実際の利益相反を避けるべき」とある。豪海軍はおそらくはショーンの過去の経歴をあまり取り沙汰されたくないのだろう。
潜水艦は急浮上すると海面を突き抜け、周辺に大きな波を立てる。余波は落ち着きそうにない。先行きはまだまだ不透明だ。
<取材・文/沢木サニー祐二>
【沢木サニー祐二】
オージー文化評論家。1965年、茨城県生まれ。国際調停人。大学で心理学を専攻後、講談社に入社。編集者として『週刊少年マガジン』、『科学図書ブルーバックス』などを手がける。94年に退職後、オーストラリアの独立移住ビザを取得、現在までシドニーに在住。現地でカンタス航空機内誌の副編集長を経て、編集プロダクションを運営。月刊誌やガイドブック製作などに携わりながら、移住・資産運用・法務サポートなどを行う。日本経済新聞シドニー支局現地記者(2013-15)、ニューサウスウェールズ州治安判事、オーストラリア全国調停人協会認定調停人、英国仲裁人協会会員。著書に『「おバカ大国」オーストラリア – だけど幸福度世界1位!日本20位!』 (中公新書ラクレ)、『潜水艦 Option J いつか浮上へ: 海外に挑もう がんばれ日本ビジネス』(KDP)など
ハーバー・ビジネス・オンライン
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